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■春社(13)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-08-04
 
千里の第二次合宿は4月25日から5月11日までの17日間で、途中にオーストラリアチームとの強化試合も設定されていた。
 
その間、5月2日には青葉が「水泳部の怪」の解決にあたって、幽霊の集団との戦いをした。この時、千里はちょうど紅白戦のハーフタイムに入ったので、青葉に密かに付いている《びゃくちゃん》を媒介にして、青葉の身体を勝手に使って瞬嶽から預かっていた秘法のひとつを作動させた。
 
その場の自然の気を集めて竜巻のようなものを作り相手にぶつけるもので、いわば風遁の術である。瞬嶽はこれはパワーさえ注ぎ込めば鯨1頭くらい簡単に倒せるし、コンクリートのビルを破壊できると言っていた。
 
しかしさすがにこんな大技を発動させるには千里も本体が一時的に動けなくなる。これはうまくハーフタイムに掛かったので良かったのである。また体力回復にも時間が掛かるので、千里はこの日はローズ+リリーのライブが無くて《きーちゃん》が使えるのをいいことに、後半は《すーちゃん》を代わりにベンチに座らせ自分は部屋で仮眠していた。
 
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ローズ+リリーのライブは4.29-5.1 5.3-5,8 とうまい具合にこの日が休養日になっていたのである。《きーちゃん》はこの時間帯は広島から札幌への移動中で大阪に居たのだが対応してくれた。
 
千里の代役を務めた《すーちゃん》はスリーは撃たないものの、華麗なフットワークでランニングシュートを決めたりして
 
「千里、今日はいつもと動きのパターンが違う」
「いつもよりスピード速くないか?」
 
などと言われていた。
 
「でもなぜスリーを撃たん?」
「まあ紅白戦だし、いろんなパターンを試してみようかと」
「ああ。そういうの色々試すのにいいチャンスだよな」
 
ただひとり勘のよい玲央美だけが腕を組んで何か考えていた。玲央美は千里が眷属使いであることを知っている。
 
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国際強化試合は、5月7日長岡市シティプラザホール・アオーレ、9日と10日は東京の代々木第2体育館で行われた。いづれも2試合セットで、日本のU23代表と韓国のKDB生命、日本のA代表対オーストラリア代表という試合を続けておこなう。
 
結果、U23はKDB生命に3勝したものの、A代表は結構マジだったオーストラリア代表に全く歯が立たず3連敗。千里や玲央美は「世界」のレベルの高さを再認識し、新たな闘志を燃え上がらせた。
 
この間、青葉がこないだから数回に分けて貸しておいたお金を6日に返してくれたので、電話して少し話した。2日の日の戦いのことについても青葉が少し無謀であったことを注意しておいた。
 
9日になって《びゃくちゃん》が意外なことを報告してきた。水泳部の事件で青葉自身は「最初の死者」と思い込んでいたジャネさんは、実際には死んだのではなく、意識不明の植物状態で丸1年入院しているのだという。それで青葉は圭織と一緒に病院に行き、彼女の脳内の傷を治療し、おかげでジャネは意識を回復するに至る。この時、《びゃくちゃん》からそのことを聞いた千里は試合前ではあったものの《びゃくちゃん》にパワーをある程度分け与えて、青葉に協力してジャネの治療に当たらせた。
 
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その日の試合が終わったのは21:03である。
 
7日の試合が80-41とダブルスコアだったので今日はもう少し何とかしようと頑張ったものの、81-55とやはり大差がつき、選手たちは精神的に疲れていた。千里は他の選手と一緒に合宿所に帰りシャワーを浴びて取り敢えず寝ようとしたのだが、突然そのことを思いついた。
 

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先日の高知の葬儀で会ってアドレスを交換しておいた舞耶さんにメールを送ってみる。
 
《足首で切断って、足首の上ですか?下ですか?》
《確認させる。ちょっと待って》
 
それで千里は《びゃくちゃん》に確認すると「足首の上」ということであった。
 
《そういう人が運動できるようにする義足って無いもんですか?》
《研究中のがある。まだ試作品の段階》
《じゃ、ちょっと日本代表クラスのスポーツ選手で実験してみません?》
 
《それって、こちらがお願いしたいくらい。その人の足の太さ、長さとかの寸法が欲しい。身長・体重も。それとできたら写真、レントゲン写真とかも》
 
《明日そちらに送らせる》
 

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翌日、千里が朝御飯の場に出ていくと、やはり連日の敗戦がこたえているようでみんな暗い。
 
「みなさん、どうしたんです?今日こそ頑張りましょうよ」
と高梁王子(たかはし・きみこ)が1人元気に、みんなにハッパを掛けている。
 
「全くですよ。プリンの言う通り。今日はこちらがダブルスコアで勝つつもりで行きましょうよ」
と割と調子の良い湧見絵津子が言って、それで広川さんや武藤さんなどベテラン組も
 
「私らがそれ言うべきところだったね。よし気合い入れ直して行こう」
と言って、だいぶムードが改善された。
 

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「そうだ。私、こないだ鱒鷹さんに会ったんだよ」
と彰恵が言い出した。
 
一瞬千里や絵津子たちの世代に緊張が走る。
 
「それって**高校の鱒鷹さん?」
「そうそう」
 
「どうしてるの?彼女」
 
鱒鷹さんは優秀なスモールフォワード兼シューターで、インターハイにも出てきたことがあり、千里も1度対戦している。しかし、彼女は化学実験をしていた時に薬品が爆発し、顔に大火傷を負い失明したのである。火傷は1年ほどで何とか回復したものの、傷ついた目の視力回復はならなかった。
 
「バスケットやってるんだよ」
「嘘!?」
「じゃ視力回復したの?」
「ブラインドバスケットとか言うんだって」
 
それで彰恵が《ブラインドバスケット》のシステムを説明すると
 
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「なるほどー。それなら何とかなる気がしてきた」
という声があがる。
 
「でもそれ1度見てみたいね」
という声も上がった。
 
ちょうど食堂にやってきた高田コーチに相談すると、コーチも興味を示す。
 
「そういうの見るのは士気高揚にも役立つかも」
と言い、彰恵から彼女の連絡先を聞いた。
 

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10日の試合は、日本側が気合いを入れ直して必死に食い下がった結果、やはり敗戦はしたものの、84-73という僅差のゲームになった。
 
合宿は翌日11日に終わったのだが、高田コーチが連絡を取った鱒鷹さんからブラインドバスケットを運営している神奈川県の某大学の仲村教授と連絡が取れ、バスケのフル代表の人たちに興味を持ってもらえたのなら、ぜひ1度見てあげてくださいと向こうから言ってきた。
 
それで12日、合宿の終了翌日、都内の体育館に興味のある人だけ移動し、そこで彼らのゲームを見せてもらうことにしたのである。実際には予定が入っていて都合の付かない人以外ほぼ全員が見学した。
 
チームは男女混合で編成されていた。主催者の教授の話では先天性あるいは幼児期に失明した人と中途失明者の割合はだいたい1:2ということであった。
 
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「全盲の人は赤い腕カバーを付けています。彼らはボードに当たっただけで得点にします」
 
「男女ではハンディは無いんですか?」
「ハンディつける流儀もありますが、うちのチームの女子は男子並みの実力者ばかりなので」
と教授は言っている。
「性別の曖昧な人にも優しいな」
とひとり冗談で言ったのだが
「ああ。性別が微妙な選手もいますよ」
教授。
 
「やはりいるのか」
 
コートの周りには色付きのマットを敷いてインとアウトを識別できるようにしている。ゴールの所に音源があり、特定の高さの音を常時出している。またボールの中にも音源が入っている。
 
鱒鷹さんは片方のチームの4番を付けている。赤い腕カバーは付けていないので、微かに見えるのだろう。しかし彼女が相手チームの男性選手からボールをスティールしてみせたり、ランニングシュートを決めたりするので、観戦していた日本代表メンバーの中にどよめきが起きる。
 
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「クムカちゃん、実は見えてない?」
と旧知の子たちが声を掛ける。
 
「いやー、見えるようになったら神様に大感謝セールだけど、見えない。目の前が明るいか暗いか、どんな色が主かくらいしか分からない」
 
と本人は答えていた。
 
その鱒鷹さんがその後、スリーポイントゴールを決めると
 
「うっそー!?」
という声が上がった。
 
「目が見えないのにスリーを決められるのは、今日本国内では彼女だけですよ」
と仲村教授は言っていた。
 
「でもさすがに目が見えていた時ほどは入らないんだよ。3回に1回くらいしか決まらないもん」
と本人が言うと
 
「それ私よりよほど確率良いじゃないですか!」
と高梁王子が言っていた。
 
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千里はこのBlind Basketballの「公式戦」が今度の週末神奈川県内の某大学で行われると聞き、その夜、青葉に電話して、週末ジャネさんを連れて東京に出てきて欲しいと連絡した。
 
千里は青葉、ジャネ、ジャネのお母さんの3人で想定していたのだが、翌13日水泳部4年生の圭織さんも一緒に来たいと言っているということだったので高岡の度々使っている旅行代理店に電話して、とりあえず東京までの4人分の新幹線切符をグリーンで手配し、青葉の自宅に届けさせた。
 
車椅子を使うと思うし、席の幅にゆとりがある方が良いだろうと考えたのである。
 
その日の午後、今度は舞耶さんから、ジャネさんの足サイズに合わせた試作品の義足を作ってみたので、一度本人に装着させてみせたいという連絡がある。そこで千里は神奈川でその試合を見せた後、岐阜に移動してその義足を試してみてもらおうと考えた。
 
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5月13-14日は川崎市内の体育館でクロスリーグの第二戦をした。ここはレッドインパルスがいつも練習に使っている体育館からも近い距離にある市の施設である。観客も3000人入るのだが、例によってハーフタイムにアイドル歌手のショーをしたおかげで、2日間ともきれいにソールドアウトした。今回の組合せは40 minutes対ローキューツ、レッドインパルス対ジョイフルゴールドであったが、どちらもかなり良い試合になり、盛り上がった。
 
14日の夕方はレッドインパルスを3月いっぱいで引退した餅原さんの結婚式披露宴に出席した。千里は御祝儀の相場が見当付かなかったので、素直に広川キャプテンに相談した。
 
「そんなに少なくていいんですか!」
「あんたいくら包むつもりだったのよ?」
「いやあ、音楽関係だと***万くらい包むもので」
「それはさすがに異常だ」
 
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広川さんは千里が少々多い金額を言ったら、半ば冗談で「そのくらい包んであげてもいいよ」と言うつもりだったらしいが、千里があまりに常識外れの金額を言ったので、呆れてとめたらしい。
 

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結婚相手は男子バレーボールの元日本代表の人で、バレーボール関係とバスケット関係の双方の関係者が来ており、バレーボールの元日本代表・ロサンゼルス五輪銅メダリストで、6月からバスケット協会の会長に就任予定の三屋裕子さんも顔を見せていた。
 
「赤ちゃんが生まれたら、ぜひバレーボール選手に」
「いや、ぜひバスケット選手に」
 
などと言われていた。どちらも背が高いので、子供も背は高くなりそうだ。運動能力は分からないが。
 

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ホシは医師の診断を受けていた。
 
「生理が停まっているのはあなたの身体に悪魔が寄生しているからですね」
「え?ほんとですか?」
「取り除けば生理再開しますよ」
「じゃお願いします」
「そこのベッドに寝て下さい。あ、ズボン脱いでね」
「あ、はい」
 
それでホシはベッドに寝ると、ショートパンツを脱いだ。
看護婦さんがパンティも脱がせてしまう。
 
え?
 
パンティを脱ぐと、おまたの所に松茸のような形のものが生えていた。
 
何これ〜〜〜!?
 
「これが悪魔です。大丈夫ですよ。今取っちゃいますから」
と言って医師はその付近を消毒する。さわられると、その松茸のようなものは大きくなり、ホシは何だか気持ちいい気分になった。
 
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「こんなものが付いていたら、生理の出てきようがないですからね。じゃ取ります」
と言って医師はその松茸のようなものをハサミで切り取った。
 
「これで大丈夫ですよ。数ヶ月で生理は再開します」
「ありがとうございます」
 
と言ってホシは何も無くなった股間を見ていた。
 

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少し寝ていてくださいと言われたので、そのまま目を瞑って少し眠った。
 
トイレに行きたい感覚で目が覚める。それでベッドから起き上がってトイレに行った。ショートパンツとパンティを下げ、おしっこをしようとして、股間を見てギョッとする。
 
うっそー!? 悪魔がまたくっついてるよぉ、さっきお医者さんに取ってもらったはずなのに。
 
なんで復活してしまう訳!?
 

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