広告:ここはグリーン・ウッド (第2巻) (白泉社文庫)
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■春社(12)

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4月21-22日は「クロスリーグ」の開幕戦であった。
 
40 minutes, ローキューツ、ジョイフルゴールド、レッドインパルスの4チームによるリーグ戦で、今回は21日に40 minutes対レッドインパルスを行い、22日にローキューツとジョイフルゴールドの試合を行った。アイドル歌手のライブをハーフタイムにやったのも効いてチケットは1500席が2日間ともソールドアウト。リーグ戦は黒字スタートとなった。
 
初日40 minutesとレッドインパルスの試合は激しい試合になった。
 
千里が3月までいたチームと4月から入ったチームの戦いである。スターティングオーダーはこのようになっていた。
 
4m PG.森田雪子 SG.中折渚紗 SF.中嶋橘花 PF.若生暢子 C.森下誠美
RI PG.入野朋美 SG.村山千里 SF.広川妙子 PF.鞠原江美子 C.三輪容子
 
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両軍合わせて日本代表が5人も入っている!
(雪子・誠美・千里・妙子・江美子。代表経験者なら8人)
 
そして両軍のシューター、渚紗と千里はどちらも33の背番号を付けている。
 

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誠美と容子のティップオフは誠美が日本代表の貫禄で勝って雪子がドリブルで攻めあがる。レッドインパルス側が守備体制を整える前に渚紗にパス。渚紗はスリーを放り込んで40 minutesが先制する。
 
しかしレッドインパルスも江美子から朋美、千里とパスでつなぐ速攻でこちらもスリーを放り込む。試合はスリーの応酬から始まった。
 

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どちらも無駄なパス回しなどはせず、どんどん走ってどんどん攻める。むろんマンツーマンだが、実際問題としてマッチングが固まる以前に速い攻めで得点を奪うケースが多かった。
 
交代要員も層が厚く、40 minutes側は主将の竹宮星乃、副主将の河合麻依子のほか橋田桂華、松崎由実、松山聖子など、プロ級の選手をどんどん送り出す。レッドインパルスも渡辺純子、久保田希望、黒木不二子、小松日奈など並みのチームに行けばエースを張れるメンツを送り出す。
 
観客の中から
「すげー。男子の試合みたいだ」
という声が漏れるほど、スピードとパワーあふれる試合展開となった。
 

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第2ピリオドも終わりかけ、そろそろ選手も疲れが出てきた頃。ドリブルで攻めあがってきた40 minutesの暢子が前の方に33番を付けた選手がいるのを見てそちらにパスした。
 
ボールをもらったのは千里である。
 
暢子はパスした瞬間「あっ」という声を出していた。
 
完璧に間違ったのである。
 
しかし千里は顔色1つ変えず、もらったボールをドリブルして速攻。軽いフットワークと絶妙なフェイントで暢子を抜くと、スリーポイントラインの所まで辿り着き、即シュート。3点取った。このプレイで前半終了となった。
 
「渚紗と同じ33だから間違った」
と追い付いてきた暢子が言う。
 
「間違いだろうと何だろうともらったボールはシュートする」
と千里。
 
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「千里、高校時代は相手チームの選手が間違ってパスしたボールを外に投げ捨てて相手チームに返してやったね」
 
「あの頃はまだ今ほど厚かましくなかったんだよ」
 
「お互いに年取ったな」
と暢子。
「お互い成長したんだよ」
と千里。
 
ふたりはお互い肩を叩き合って、各々のベンチに引き上げたが、暢子は主将の星乃から「罰金。あとで全員にコーラおごること」などと言われていた。
 

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23日の日はオフであったが、エヴォン銀座店で冬子と会い、音楽関係のことや★★レコードの新しい体制などを中心に意見を交わした。なお、エヴォン銀座店は3月いっぱいで和実が退職したので、現在如月乃愛が店長をしている。
 
24日は経堂のアパートで、掃除・洗濯・食料の備蓄作りに精を出した。そしてその日の夕方からまた北区の合宿所に入り、オリンピックに向けての第2次合宿に入った。
 
桃香とはほとんどすれ違いである!実は4月8日の朝以来桃香と会っていない。
 

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4月27日(水)夕方。
 
Jソフトから千里のスマホに「合宿中で申し訳無いけど夜になってからでもいいから、これちょっと見てもらえないだろうか?」という連絡が入った。このスマホは《きーちゃん》と《せいちゃん》が共用しているものである。
 
『これ誰が分かる?』
『それは千里Cだな』
『しゃあねえな。行ってくるよ』
 
それで《せいちゃん》は合宿所を抜け出してJソフトに行って問題の生じていた箇所を修正した。作業はデータの再調整作業まで含めて翌日の昼近くまで掛かった。
 
『やっと終わったよ』
『お疲れ様〜。あ、戻ってくる時、ついでに用賀のアパートからきーちゃん用の龍笛・篠笛・フルートと着替えも持ってきてくんない?』
『へいへい』
 
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29日からローズ+リリーのツアーが始まるので28日は午後から沖縄に移動することになっていた。
 
それで《せいちゃん》はJソフトを出て二子玉川駅から東急に乗るとすぐ次の用賀で降りて、アパートに寄り、《きーちゃん》から教えられた場所に入っていた、やや赤味のある外観の龍笛、白っぽい感じの篠笛、アルタスの総銀フルートA1007(Eメカ)を楽器用のハードケースに入れる。千里が通常制作やライブ演奏に使用しているのは本棚の所に置かれている黒い外観の龍笛、朱塗りの篠笛、サンキョウの総銀フルートArtist(New-E)である。
 
ついでに《きーちゃん》用のタンスの引出しから着替えをバッグに詰めて持った。普通は女物の服を男の眷属には触らせないのだが、最近《せいちゃん》は女装している時間が長いので、女の眷属たちから《半分女の子》扱いされていて、結果的に便利に使われている。
 
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ともかくも、荷物を持ってからそれで電車で移動する。
 

用賀から合宿所までの移動は神保町で乗り換えて三田線に乗るのだが、その頃には《きーちゃん》の方も合宿所を出て、本蓮沼駅から三田線に乗っていた。彼女はそのまま三田駅まで乗ってエアポート快特に乗ればいいのだが、その途中の神保町で荷物の引き渡しをすることにしていた。
 
それで《せいちゃん》が荷物を持って神保町で《きーちゃん》を探していた時、トントンと後ろから肩を叩かれる。
 
「わっ」
と言って振り返ると、17-18歳くらいの女の子が4人並んでいる。
 
「こんにちは、千里お姉さん」
とひとりの子が挨拶する。
 
お姉さんってことは・・・・この子たちは多分、青葉の友達で。えっとえっとと《せいちゃん》は必死に記憶を辿る。
 
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「えっと、せりなちゃんと、みつえちゃんだったっけ?」
「世梨奈と美津穂でーす」
「ごめーん。間違った」
 
あと2人は久美子ちゃんと照香ちゃんということだった。
 
「ローズ+リリーのツアー伴奏で沖縄まで行くのに新幹線で東京に出てきたんですよ」
と彼女らは言っている。
 
高岡から沖縄に行くのには伊丹空港を使う方法と羽田空港を使う方法があるが、料金は伊丹経由が安いものの、時間は羽田経由の方が速い。それでサマーガール出版からは羽田経由の料金でお金をもらっていたので、朝一番の便で東京に出てきて、新宿や神保町を散歩していたらしい。
 
「これから羽田空港に向かうんですよ。お姉さんはお仕事中ですか」
「あ、いやこちらも羽田に向かおうとしていたのだけど」
 
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「あれ?もしかして、青葉の代理で今回龍笛を吹くのは結局、お姉さんになったんですか?」
 
しまったぁ!その話は内緒にしないといけなかった。千里に叱られるぅ!と《せいちゃん》は焦る。
 
「あ、えっとその件はケイさんたちも含めて他の人には内緒で。正体不明の《禁断の吹き手》が参加することにしているから。これで顔を隠して参加するんですよ」
 
と《せいちゃん》は言って、《きーちゃん》用の荷物に入れていた覆面をかぶってみせる。
 
「おお、プロレスラーみたい」
「でも、秘密にするのは問題ないですよー」
「私たち、口が硬いもんね」
 
口が硬いというのに関しては、すごーく怪しい気がする。
 
「でもお姉さんも沖縄に行くのなら一緒に行きましょうよ」
「うん、そうだね」
 
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と言って、《せいちゃん》は結局彼女たちに促されるように、三田線の乗り場の方に移動していった。
 
その様子を少し離れた所から見ていた《きーちゃん》は「うーん」と腕を組んで悩んだものの
 
「ま、いっか。後で入れ替わればいいし」
 
と言って、取り敢えず合宿所に戻ることにした。
 
なお航空券とツアーのバックステージパスは《くうちゃん》が転送してくれた。
 

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那覇空港を出た後、《せいちゃん》は覆面をして、世梨奈たちと一緒に今日泊まるホテルに入った。覆面をしているとゆいレールの中で随分視線が集中していた。
 
ロビーで待機していた氷川さんに《ローズ+リリー伴奏者/禁断の吹き手》というバックステージパスを見せると、氷川さんは顔色一つ変えずに
 
「お疲れ様でした。18時からリハーサルをしますので、早めに夕食を取っておいてください」
と言って、ホテルの部屋の鍵とレストランの食事券を渡してくれた。
 
《せいちゃん》はこの人、大物だと思った。
 

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覆面姿で出歩くのは怪しすぎるので、普通の男性の姿になって食事を取っておいた。そのあと部屋で休んでから17:40くらいに千里に擬態し、自分用の女性下着を着けバストパッドも入れて完全女装した上で髪をまとめ覆面をつける。そして楽器の入ったケースを持ってリハーサルをする会場に入った。
 
《きーちゃん》に『そろそろ交替してくれない?』と呼びかけるのだが、反応が無い。そんなことをしている内に、覆面姿の彼を見て、マリが興味津々な様子で近寄って来て
 
「あのお、お名前お聞きしてもいいですか?」
と言うので、
 
「謎の男の娘ということにしておいてください」
と取り敢えず女声で答えておく。
 
「男の娘なんですか!?」
「ちんちん付いてますよ」
「ほんとに? 見せて」
「そんなの見せたらセクハラです」
 
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実際には股間はJソフトに勤務する時はテープタックしている。きーちゃんにはメンテが楽な接着剤タックを勧められているものの、接着剤タックは《おいた》をしたくなってもできないという重大な問題がある。あれはもう男を捨てている人のものだが《せいちゃん》は取り敢えず男を辞める気は無い(たぶん)。
 
マリとそんなやりとりをしている内に、七星さんが
「何か吹いてみてもらえます?」
と言ってくる。
 
さすがにやばいぞ、と思った瞬間、《きーちゃん》が位置交換をしてくれて《せいちゃん》は合宿所の千里の部屋に来ていた。
 
目の前に覆面をつけた女が居るが、千里ではないようだ。これは誰だ? と思った次の瞬間、その女の姿は消えて覆面をつけた《きーちゃん》が出現した。《きーちゃん》はすぐ覆面を外す。
 
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(つまり覆面は同じ物が、せいちゃん用・きーちゃん用・実際の演奏者用と3枚ある)
 
「助かったぁ。俺が龍笛吹いたら、速攻で首になってたよ」
と《せいちゃん》。
 
「いや、吹いてもらう人がすぐにはスタンバイできなかったんだよ。それで時間が掛かった。何とか間に合ったね」
と《きーちゃん》
 
「やはり千里じゃないよね?あれ誰なの?」
「内緒。千里ではない人が吹いているというのも、他の子には言わないで」
「それはいいけどさ」
 
「でもあんた、何もわざわざ男の娘ですと言わなくてもいいのに」
「いや、ただの冗談のつもりだったんだけど、真に受けられたかも知れん」
「まあいいか。でも、あんたも関わっちゃったし、今回のシークレット・オペレーションに参加してよ」
「いいよ。女装してソフト書いてるよりは面白そうだし」
 
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