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■春銅(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2020-11-06
 
栄宝は夢を見ていた。
 
どこか道を歩いていると、トンネルがあった。暗いのでリュックに入れていた懐中電灯を出し点灯して中に入っていく。岩盤を人力で掘って作られたトンネルのようで、歩く地面は凸凹している。何も灯りが無い中、懐中電灯の灯りだけを頼りに進んでいく。途中の壁に、お地蔵さんがあったので、思わず手を合わせた。更に先に進んでいくと、何かよく分からない自然石の碑のようなものがあった。トンネルはそこで終わっていて先に進めなかった。
 
栄宝はこの先、どうしたらいいんだろう?と思った。
 

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「祝いめでたの若松様よ、若松様よ、枝も栄えりゃ葉も茂る、エーイッショウエ、エーイッショウエ、ショウエ、ショウエ、ションガネ。アレワイサーのエッサーソエーのションガネ」
 
2020年5月31日(日)、アクアは九州で主として販売されているインスタントラーメンのCM制作のため福岡市を訪れたのだが、コロナ禍の中、アクアが本当に来てくれるかかなり心配していた現地の食品会社の部長さんはアクアを歓迎して博多祝い歌(祝いめでた)を歌ってくれた。
 
「めでた」は日本各地にある歌だが、地域によって2番以降の歌詞が結構違っている。博多では
 
旦那大黒、御寮さんな恵比寿、御寮さんな恵比寿、できた子供は福の神
 
となっている所が、例えば富山では
 
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飲めや大黒、唄えや恵比寿、愛の酌取り、福の神
 
となっている。
 
ただ多くの地域で冒頭は「めでためでた」なのだが、博多だけは「祝いめでた」と歌い出す。
 
なんて話をケイ先生が話していたな、とアクアは思い出していた。
 

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今回のCM撮影は3月に続き2度目で、博多を拠点とする女性集団アイドルのメンバー3人と一緒にラーメンを食べるシーンを撮影しているが、食品会社の部長は、アクアのマネージャーにおそるおそる
 
「アクアさんの、山笠のはっぴ姿とかは撮影できませんよね?」
とお伺いを立てた。
 
アクアは“女子疑惑”があるので、バストなどがあったら、とてもそういう格好はできないだろうと部長としては考えたのだが、マネージャーは
 
「あぁ、それは全然問題ありません」
と答え、アクアに締め込みをつけさせ、上半身裸の上に山笠のはっぴを着せた。
 
そして予め待機させておいた男衆3名(アクアがはっぴ姿にならなかった場合は彼らだけで撮影する予定だった)と並んで、商品名を言うところも撮影した。
 
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それで部長をはじめ、撮影に立ち会った人たちは、やはりアクアさんって男の子だったんだなぁと思った。さっき一緒に撮影をした集団アイドルの女子3人も、アクアを憧れるような目で見ていた。
 

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ところで、西湖は現在、用賀駅近くのアパートに住み、そこからS学園に通っているのだが、このアパートは実際には千里が借りているもの(後述)で、西湖には実はここに置いている“鏡”の番人をしてもらっている。
 
しかし西湖は来年の3月にはS学園を卒業してしまう。その後をどうするか、千里は今年初め頃から悩んでいた。西湖が卒業後にどこか適当なマンションに引越した後、誰か適当な男の娘を見つけて住んでもらうというのがひとつの手だが、その場合2つの問題がある。
 
・そう都合良く男の娘は見つからない。
 
・西湖がおキツネさんたちと親しくなっており、西湖も彼らと別れがたく思っている。
 
そこで千里は、西湖に卒業後もここに住んでもらうことを考えた。西湖もそれでいいと言っているが、億の年収があるタレントが1Kのアパート住まいというのも色々問題がある。
 
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そこで千里はこのアパートをマンションに建て替えることを考えたのである。
 

千里は5月下旬、ここを所有している不動産屋さんを訪ねた。
 
「お世話になります。用賀の“井鳴荘”102号室を借りている村山ですが」
「ああ、あそこですね」
「あのアパートの件で、支店長さんにちょっとご相談があるのですが」
と千里が言うと、窓口の女性の顔が曇る。
 
実はこのアパートは千里が入居する前は住人が居着かなかった。家賃の安さにつられて入居しても、だいたい1ヶ月以内に逃げるようにして退去していた。実際、現在も人が入居しているのは102号室だけなのである。
 
それで窓口の女性は「幽霊が出る」とか「ポルターガイストが起きる」とかのクレームかと思ったのである。
 
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千里が応接セットの所で待っている所にやってきた支店長も、果たして不安そうな顔で
「何かありましたでしょうか?」
と千里に尋ねた。
 
しかし千里は言った。
「この場所がとても気に入ったので、このアパート、適当な額で土地ごと買い取れませんでしょうか?」
 
「適当な額というと?」
「例えば2億円くらいで」
 
支店長は仰天した。しかし次の瞬間言った。
 
「売ります!」
 

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千里は支店長に、できたら隣接する駐車場も買い取れないかと打診した。実はこの駐車場も、駐車場という看板は立っているものの、利用者が全く無いようなのである。
 
「そちらも2億か3億くらいでどうでしょうか?現金で払いますよ」
「分かりました。現金で頂けるのでしたら、両方あわせて4億円でお売りします」
 
それで千里の土地買い取り交渉は成立したのである。
 

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千里はその場で4億円を不動産屋さんの口座に振り込んだ。
 
そして司法書士さんに頼んで、この2つの土地を合筆した。
 
そこまでの作業ができた所で、千里は京平のコネで、伏見の彦三郎様という、大物のおキツネ様に来て頂いた。
 
「この土地の荒れているのをリセットしていただくことはできませんでしょうか?」
 
「ああ、かなり荒れておじゃるな」
 
「はい。昔お稲荷さんがあったのを前の前の持ち主がいきなり潰してしまったんですよ。それで怒っておられたおキツネ様には、あるお方のお力で伏見にお帰りいただいたのですが、その時、この土地が回復するには3年はかかると言われたんです。それが5年前の春でして」
 
「なるほど。確かにこれはさすがの泳次郎殿でもその時点ではリセットできなかったでおじゃろう。今ならできそうだ」
 
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「お願いします」
 
「ちなみにリセットすると、ここに建っている建物は全部壊れるが良いか?」
「ちょっと待って下さい」
 

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千里は《こうちゃん》と播磨工務店のメンバーを呼ぶと、アパートから西湖が住んでいる部屋だけを“抜き出し”、適当な場所(どこだ?)に退避させてもらった。
 
それであらため彦三郎様にお願いする。
 
彦三郎様はじっと目を瞑っておられたのだが、
 
「あれ?」
と言った。
 
「何か」
「この土地は完全では無い」
「え?」
 
「あそこに民家が建っておじゃるな」
「はい」
「あの家まで元の神社の土地でおじゃる。あそこまで合筆しておかないと、リセットができない」
 
「済みません!見落としてました」
「その処理をした上で再度、麿(まろ)を呼ぶが良い」
「ご手数おかけします!」
 

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それで彦三郎様はいったんお帰りになった。
 
千里はその土地の権利関係を法務局で確認した。するとあの不動産屋さんの所有ではなく、その部分を買い取っていた人があったことが分かる。千里はその家の所有者(さすがにここには住んでいなかった)の所に行ってみた。そして交渉したところ、その家屋と土地を4000万円で売ってもらえることになったのである。千里は即その場で4000万円を現ナマ!で渡した。
 
この現ナマというのが物凄く嬉しかったようである。何せ取引の記録が残らない。ただし銀行の抵当権は、その人の責任でちゃんと解消してもらった。
 
千里は登記の移転が終わった所で、アパートおよび駐車場の土地とこの土地を合筆した。
 
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千里は《こうちゃん》に命じて、西湖の部屋を再度別の場所に退避させた。
 
それであらためて彦三郎様においで頂いた。
 
「よろしい。では初期化するでおじゃる」
「お願いします」
 
土地の中心付近から、空気の渦が生じる。それがどんどん広がっていき、土地全体に広がった。それはまるで竜巻のようであった。
 
やがて竜巻は、西湖が住んでいたアパートも、最後に買い取った住宅も巻き込み、天高く登って行った。
 
空気が物凄く清浄になった。
 
「終わったぞ」
「ありがとうございます」
 
と千里が言った途端、空中に舞い上がっていた、アパートや住宅の破片がたくさん落ちてきた。
 
「わっ」
とさすがの千里も驚いて声を出してしまった。
 
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「ああ、その破片は適当に片付けておくように」
「はい!」
 
それで彦三郎様は帰って行かれた。
 

千里は播磨工務店の手が空いているメンツを呼ぶと、この土地に落ちている瓦礫を片付けてもらった。
 
そして《こうちゃん》に相談した。
 
「取り敢えず今夜西湖が寝る場所が無いんだけど、何とかならない?」
「んじゃ、余ってる空き家が1軒あるから持って来ていい?」
「うん。よろしくー」
 
それで《こうちゃん》は西湖のためにどこかから(どこだ?)家を1軒運んで来てくれて、南側の小さな家が建っていた場所にポンと置いたのである。退避させていた西湖の部屋も持ってきて、隣に取り敢えず置いたので、千里はコシネルズのメンバーを呼び寄せて、彼女たちの手で取り敢えず荷物をそちらに運び入れてもらった。
 
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男の娘(女の娘?)の荷物なので、(一応)女性である彼女らにお願いしたのである。
 
この作業は西湖が学校に行っている間におこなったので、学校から戻ってきた西湖F(聖子)が仰天していた。
 

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「醍醐先生、だったらボクはここに住めばいいんですか?」
「不便だけど、とりあえずそうして。ここにマンションを建てるから、それができたら、その一室に入ってもらうから」
 
「分かりました」
 
それで聖子は取り敢えず、その家で暮らそうとしたものの、なにせ空き家を持ってきて置いただけなので、水道・電気・ガスが使えない!
 
「あのぉ、せめて水道だけでも」
「こうちゃん?」
 
「すまん。ここの家、元々水道も電気もガスも来てなかったから、今から水道屋や電気屋と交渉して、管や線を伸ばしてつなごうとすると、多分1ヶ月かかる」
 
「来てなかった!?」
 
「きっと家を建てたのはいいけど、祟りで近寄れなかったんだよ」
「なるほどー」
「どこかまともな所に一時的にでも退避した方がいいと思う」
と《こうちゃん》は言う。
 
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千里は少し考えた後、龍虎に電話した。
 
龍虎は西湖なら大歓迎と言ってくれた。
 
それで西湖は一時的に代々木の龍虎のマンションに同居することになったのである。これが7月下旬のことだった。
 
代々木から用賀の高校には通学が大変なのだが、幸いにも学校はすぐ夏休みに入ったので、何とかなった。
 
また、荷物を全部持って行くのも大変なので(入りきるかという問題もある)、楽器や学校の教科書、洋服の大半などはこの家に置き去りにし、身の回りのものだけ持って龍虎の所に居候している。
 
「でもこうちゃん、この家の電気・水道・ガスの接続も別途交渉してやっといてくれない?」
「了解ー」
 

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