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■春銅(17)
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(C)Eriko Kawaguchi 2020-11-21
恵馬は自分の股間が平らで、女の子みたいにまるで何も無いように見えるのを見て信じられない思いだった。
睾丸は体内に押し込まれた。そしてペニスは後ろ向きにされた状態で女の子用パンティを穿かせられると、パンティの上から見る限りはそこに何も無いかのようである。
睾丸が体内に収納できることは知っていた。でもそれをしても、ブリーフでは空間がありすぎるので、すぐ飛び出してくる。でも女の子用のショーツだと空間がないから(そこに何も無い人用の下着だし)それがしっかり押さえられるんだなあ、恵馬は思った。
陸上をしている友人がサポーターを使っていて「実は女の子用のパンティでも行けるらしいけど、さすがにそんなの穿けないし」と言っていたので、サポーターあるいは女の子用ショーツならひょっとして睾丸が降りてこないように押さえられるかもという気はしたか、サポーターもショーツも持ってないから試してみられなかった
しかしパンティは足ぐりの部分もウェスト部分もたっぷりレースが使われている。こんなドレッシーな下着なんて着たこと無かったし見たことも無かったので、物凄くドキドキしている。お母ちゃんのはでっかいパンツだし、お姉ちゃんのはシンプルで装飾性のあまり無いタイプだ。しかしこのショーツはゴムとかが入ってないから、凄く頼りない感じもする。
ガードルを穿かせられる。
しっかり押さえられて、スッキリしたお股になった。本当にそこに何も付いてないかのように見える。
「サポート性の強いショーツなら、ガードル無しでもわりと行けるんだけど、このショーツは押さえる力がほとんど無いから、ガードル付けないと、こぼれちゃうからね」
あ、やはりそうだよね?
「ちんちんもタマタマも取っちゃえばこぼれてくるものも無くなるけど、何なら今取っちゃう?」
「ちょっとそれは・・・」
「じゃそれはまた今度ね」
“また今度”の時は、ちんちん取られちゃうのかな?などと思ってドキドキする。
上半身を起こすように言われ、上半身の服を脱がされる。(男子用の)シャツもゴミ箱に放り込まれた。脇毛を剃られる。そこの毛が無くなると、とても美しくなった気がした。普段でもここは剃っておこうかなという気になる。
「あんた、腕毛や胸毛は無いね」
「はい」
「男性ホルモンが弱いのかな」
「そうかも」
ボディコロンで身体を拭かれる。凄くいい香りがする。
可愛いフリルたっぷりのピンクのブラジャーを着けられるのでドキドキする。カップの中に柔らかいシリコン樹脂製のパッドが挿入された。肌に粘着する。この粘着があるので、歩いていても脱落したりはしないらしい。
「触ってごらん。できたてのハンバーガーのように柔らかいよ」
と言われてブラの上から触ってみる。本物のおっぱいみたい!
7月2日、COVID-19で3月から入院していた月村山斗が退院した。しかし退院したのはコロナウィルスが体内に見られなくなったから退院したというだけであり、症状は重いままで、家庭で酸素吸入が必要な状態だった。親友の横居剣一は彼の自宅に行って話し合い、実際にはほぼ名前だけになっていたが、プロデュースしていることになっていた、Fly20グループから月村が離れることを決めた。
横居はその後、レコード会社とともに、各グループをどこかが引き受けてくれないか、受け皿探しに奔走する。横居が主として東京で活動する各グループ、レコード会社が地方で活動するグループの受け皿探しをした。
地方のグループについては、11個のグループの内8個で受け皿が見つかり、そちらに移管されることになった。残りは解散である。
東京拠点の4グループだが、FireFly20については、先日のアルバムは望坂拓美の曲で構成していたので、横居は最初に、望坂拓美プロジェクトを主宰する王絵美さんに相談してみた。その結果、王さんは「楽曲提供だけならいい」と言った。それでFireFly20についてはKGレコード内の担当部隊をそのまま残留させ、横居自身が名目上のプロデューサーを引き受け、事務所も横居が関わっているシルバー・ヴァインに移籍させることにした。
ここは集団アイドル、ホワイト▽キャッツの事務所でもあるが、ホワイトキャッツとは別のグループが担当して社内で競争させる形にする。
WaterFly20がいちばんスムーズに話がまとまった。WaterFly20は先日のアルバムでは、近藤早智子さんから楽曲を提供してもらっていた。近藤さんは以前、色鉛筆という集団アイドルを運営していた経験もあり、月村さんの容態を聞くとOKしてくれた。事務所も色鉛筆と同じ$$アーツに移籍することになった。
残りの2つについては、引き受け手探しが難航した。
WindFly20に3月のアルバム制作に協力してくれたローズクォーツのリーダー(と横居さんが思い込んでいた)タカに打診してみたが、さすがに無理と言われる。ColdFly20についても、先日のアルバムの楽曲を桧山羽麗さんに提供してもらっていたので、そちらにお伺いを立ててみたのだが、桧山さんもとても自分には面倒見きれないと言われる。
WindFly20は、若いメンバーが多いので、バラ売りも考えたが、◇◇テレビの響原部長が「東郷誠一さんならやってくれると思う。頼んでみるよ」と言ったので、そちらの交渉は響原さんにお願いすることにした。
ColdFly20はメンバーの年齢が高いこともあり、どこもいい返事をしないので、この時点で横居は解散を決めた。
横居は7月9日(木)、ColdFly20のメンバーを集めて言った。
「月村さんが退院はなさったものの、とても音楽制作できる体調ではないので、引退なさることになった。それで各グループの受け皿を探していたのだけど、地方グループ11個の内、8個は受け皿が見つかり、3個が解散になった。東京拠点の4グループについて、FireFly20は望坂拓美先生、Waterfly20は近藤早智子先生、WindFly20は東郷誠一先生が引き受けてくださる見込みなんだけど、どうしてもColdFly20については引き受け手が見つからなかった。それで申し訳無いけど、解散とさせてもらいたい」
みんな一様にショックを受けている。
「元々他のチームから派遣されてきていたダンサーの8人については元のチームに戻ってもらうことにした」
と横居さんが言うと、その8人はホッとしている風。
「他のメンバーで芸能活動を継続したいという場合、個別に試験を受けてもらうことになるけど、他のグループの取り敢えず練習生になる手はある。またどこかの事務所に移籍したいという場合は、移籍金無しで移籍できるように交渉する」
と横居さんは言った。
何人か、FireFly20 か WaterFly20 の練習生のオーディションを受けてみると言っていた子もいたが、リーダーの米本愛心はサブリーダーの田倉友利恵に言った。
「いっそ一緒にバンドか何かしない?ゆりちゃんギター弾けたよね?」
「それもいいかもね。だったら、スズちゃんを誘おうよ。あの子、ベースが弾けたはず」
と言って、花咲鈴美が加わることになった。彼女もバンドも面白そうと言った。
ちょうど3人が話していた所に栗原リアが通り掛かる。愛心は偶然彼女と目があった(これが結果的に“大女優”栗原リアの誕生につながることになる)。
「リアちゃんドラムスとか打てないよね?」
「お兄ちゃんのドラムスを時々打ってた。勝手に触るなって叱られてたけど」
「おぉ!打てる子が居た!一緒にバンドやんない?」
「やるやる!面白そう」
それでこの4人でバンドを結成することになり、横居さんに話して了承を得る。
「じゃデビュー曲を作ったら録音して持って来てよ。それでどこかの事務所で契約してくれないか交渉してあげるよ」
「すみません。お願いします」
それで4人はスタジオに集まって、少し合わせてみた。リアは乗りがよくて割と演奏しやすいドラマーだった。BAND-MAIDの『bubble』とか演奏してみると一発で決まる。
「私たち天才じゃない?」
などと言い合う。
この時点でのパート割は、KB/Vocal.米本愛心, Gt/Vocal.田倉友利恵, B.花咲鈴美, Dr.栗原リア であった。
「でもバンドデビューするなら絶対オリジナル曲と横居さん言ってたね」
「それはそうだと思うよ。バンドはクリエイションとパフォーマンスが一体のものだもん」
と田倉友利恵が何だか難しいことを言う。
それで各自1曲書いてきて、土曜日にまた集まることにした。
それで土曜日にまたスタジオに4人は来たのだが、実際にはリアは
「ごめん。全く思いつかなかった。何か書いててもどこかで聞いたような曲になっちゃって」
などと言って謝った。
「それたくさん曲を知っている人にありがちではある」
と鈴美がフォローしてあげていた。
他の3人が書いてきたのをお互いに見てみる。
「アイちゃんの曲は、少し錬ったら使える気がする。スズちゃんの曲は構成がしっかりしてる。作曲の勉強とかしてた?」
と田倉友利恵が言う。
「ううん。特に」
と鈴美は言ったが
「やはりお父さん譲りのものがあると思うよ」
と愛心は言った。
「スズちゃんのお父さんって何してる人だっけ?」
「何言ってんの?上島雷太先生じゃん」
「うっそー!?」
「そんな大物が?」
と友利恵とリアが驚く。
「知らなかったの?」
「それ隠してたのにー」
と鈴美。
「ついでにお母さんは花村かほりさんだよ」
「嘘!?『帰りたい』の?」
2004年のレコード大賞受賞曲だが、花村かほりは、この曲の後、ヒット曲に恵まれず引退し、2005年12月、上島の娘・律子を産んだ。
「大作曲家と大歌手の娘なら、音楽センスいい訳だ」
と友利恵が感心している。
「でも私、花村かほりさんって、てっきり女装の男性歌手だと思ってた」
「うちの母ちゃん、買物とかに出てても普通に男と思われる。女子トイレで通報されたこともある」
「本当に女性だったんだ?」
「まあ私を産んだのは事実みたいだけどね」
「だからFly20グループのメンバーはほとんどの子が本名で活動してるけど、花村かほりの娘の名前は知ってる人があるかも知れないというので、花咲鈴美という芸名を使っている」
と愛心は解説する。
「本名じゃなかったんだ!」
「でもあまり芸名っぽくないね」
などと言われている。
「ねえねえ、スズちゃんのお父さんにこの曲、添削してもらえないかなあ」
と友利恵が言い出す。
「うーん。まあいいけど」
それで鈴美が父に電話すると、上島雷太は水戸から出て来てくれた。
「わあ、本物の上島先生だ」
などと言って、リアがはしゃいでいる。
「ふーん。バンドを作るのか。いいんじゃない?」
と言って、上島雷太は(リア以外の)3人が書いた曲を添削してくれた。
「このあたりを改善すると、結構使えるようになると思うよ」
「ありがとうございました!」
「君たち、どこの事務所からデビューするの?」
「全然決まってないです。横居さんには、デビュー曲の音源ができたら持っておいでと言われたんですが。それを持って営業してくださると」
「プロデューサーとかは?」
「いません」
「音源作るのにも、監修する人がいないと、まともな商業音源にはならないと思うなあ」
と上島が言った時、友利恵が言った。
「あのぉ、上島先生に監修とかして頂けませんよね?」
「うーん。僕は不祥事起こして謹慎明けだし」
「そんなの誰も気にしませんよ」
「だったら、一度横居さんと話してみるかなあ」
「お願いします!」
それで上島は横居さんに連絡を取った。これがもう(7/11)夕方だったのだが、横居さんはすぐにも会いたいと言ったので、上島はリーダーの愛心だけ連れて、横居さんに会いに行った。
横居さんは笑顔である。
「正直、この子たちだけでは不安なので、誰かプロデュースとか監修とかしてくださる人がいないと厳しいなあと思っていたんですよ。僕は手一杯だし」
と横居さんは言った。
この場で、4人のユニット名はColdFly4にすること、事務所は上島と(正確には妻の春風アルトと)関わりの深い、§§ミュージックにお願いしようというのがだいたい固まる。ただ上島が§§ミュージックのコスモス社長と連絡を取ってみると、こちらはバンドの売り方のノウハウが無いからといって、友好プロダクションの♪♪ハウスを紹介され、そちらの白河社長と話して、引き受けてもらえることになった。明日にも白河さんに実際の演奏を見てもらうことにした。
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