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■春銅(20)
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ゆみとアクアはあの後、メールを通して話し合い、アクアがゆみのマンションを2億円で買い取る話がまとまり、8月1日(土)に双方の弁護士を伴って直接会い、売買契約書を交換した。今月中にゆみが退去し、クリーニングしてから引き渡すということにした。
(2020年)7月19日、ビデオガール・コンテスト2020の本選が東京都内のホテルを会場に行われた。そして、その参加者を“空輸”する作戦が前日の18日に行われた。参加者は20名で、その保護者(各2名以内)も運ぶので全部で60人ほどである。二次予選通過者の居住地は下記である。
旭川 青森 茨城 栃木 東京(2) 神奈川 山梨 石川(2) 愛知 大阪(2) 兵庫 広島 高知 福岡 熊本 奄美大島 宮古島
ケイと千里・江藤さんの3人でネット会議をし、このような“作戦”を建てた。
●石川県は能登空港、九州は佐賀空港、大阪は神戸空港、愛知は名古屋空港(小牧)、など、できるだけ余裕のある空港を使用する。
●茨城・栃木・東京・神奈川・山梨の子(6名+保護者)は車で会場に運ぶ。
●兵庫・大阪の子は車で神戸に運ぶ。福岡と熊本の子は車で佐賀に運ぶ。広島と高知の子は中間点に近い松山に運ぶ。ほか各々県内は車で移動する。
ホンダジェット(定員7名) AM.旭川→青森→羽田 (2×3=6)
PM.能登→羽田 (2×3=6)
G650(定員11名) AM.宮古島→奄美大島→小牧→羽田 (3×3=9)
G450(定員14名) AM.神戸(3)→羽田 (3×3=9)
PM.松山(2)→佐賀(2)→羽田 (4×3=12)
G450よりG650の方が少し大きいが江藤さんのG650はVIP仕様になっていて座席自体ゆったりサイズだし、ラウンジなどもあるため定員が少ない。千里のG450は元々16席仕様だったのをベビーベッドを設置するのに2席取り外したらしい。
空港のスケジュールは緩い所もあるが、かなりシビアな所もある(特に羽田は厳しい)ので、充分ゆとりのあるフライトスケジュールで組んだが、どの飛行機のクルーも正確に運航してくれて、ケイたちはホッとした。
コンテストは、雪渡知香・新里好永の2人がダブル優勝で、初代ビデオガールの名前をシェアする。その他、上位入賞者を勧誘して、下記の6名が信濃町ガールズに加わることになった。
須舞恵夢、菱田ゆかり、植野純央、横山朋菜、緒方飛蝶、杉浦舞美
杉浦さんは上位入賞者ではないが、本人がぜひとも参加したいというので、その熱心さを買って信濃町ガールズ参加を認めた。この中で植野さんは都内在住なので自宅から研修所に通って訓練を受ける。彼女に関しては事務所のスタッフが学校または自宅との間を送迎する。
須舞恵夢・菱田ゆかりの2名はコンテストの途中および終わった後に男子であったことが判明したので、来月作る予定の男子寮に入ってもらい、残りの3人+優勝者2人は足立区の女子寮に入ってもらうことになった。
コンテスト参加者および家族の地元への帰還については、優勝者や信濃町ガールズに入る子は手続きなどのために数日東京に留まったし、個人的な用事で数日後に帰りたいという要望もあったので、かなり分散して帰ることになり、もっと楽なフライトになった。
7月31日(金).
青葉は午前中の放送局での仕事を終えると、この日の午後は火牛スポーツセンターでの水泳の練習は休んで自宅で仮眠を取った。そして夕食を取ったあと、マーチ・ニスモに乗ると、夜通し、北陸道→上信越道→関越道と走って、8月1日朝、浦和の千里たちのマンションに辿り着く。
出勤する彪志(最近医療関係のバックアップで薬品関係も忙しい)とハイタッチして入れ替わるように彪志の寝ていた布団に潜り込んで数時間寝る(千里姉に起こしてもらった)。そして午後から、ケイ・ラピスラズリと一緒に作曲家さんの所に取材に出かけた。今回は4日間で4人の作曲家にインタビューをしている。
山上御倉・吉住尚人・吉野鉄心・関沢鶴人
今回は4人とも常識人で、青葉にしてもラピスラズリにしても、比較的リラックスして取材をすることができた。例によって各先生から、ラピスラズリに
「ぜひこの曲を歌って」
といって楽曲を頂き、あるいは指定され、ラピスラズリはまたたくさん曲を吹き込むことになる。
青葉の浦和滞在中、マンションの部屋はこのように使った。
Room 1. 彪志・青葉
Room 2. 千里・京平
2つの家庭が共同で暮らしている状態である。彪志が青葉の手料理を食べたがっているようだったので、千里は「あんたが作って」と言い“8月1-4日については”青葉が作った。食材については、青葉が事前に伝えておいたメモに沿って、準備してくれていた(買物は先週既にしてある。買物は原則として週2回:火・金である)。
青葉はテレビ局の仕事は4日(火)で終わったのだが、土日の代休で5-6日(水木)が休みになっている。更に7日も青葉の休日出勤が多すぎるからというので休みにしてもらったので、結局、8月10日(月)から出社すればよいということだった。それで8月8日(土)の夜に帰ることにしたので、約1週間、彪志と甘い日々を送ることになるかと(彪志は)期待していたようだが。
そうは行かないのは当然である!
§§ミュージック関係、特にアクア関係の打ち合わせで、ほぼ毎日信濃町の事務所や、大田区のあけぼのテレビに詰めることになった。帰りもかなり遅くなり、5日以降、青葉は彪志に手料理を作ってあげることはできなかった。でも一応コスモスが配慮してくれて、0時前には帰られるようにしてくれた(浦和まではスタッフが車で送ってくれる)。
更にコスモスからラピスラズリのファーストアルバムに入れる曲を頼まれ、これは高岡に戻ってから書いて送ることにしてもらった。
また帰るのも8日夜に帰ることができず、9日いっぱいまで仕事して、9日夜に結局、千里姉が青葉のマーチを運転して送ってくれた。
ゆみは8月3日(月)、マンションから一部の荷物を運び出した。家具などの大物は引越業者さんに頼むし、貴重品は和繁が自分の車で運ぶと言っている。しかし荷物の中には、あまり他人に(特に和繁とか高崎さんたちには)見られたくないが今捨てるにはしのびないものもある。それで自分ひとりでこの作業をしていたのである。
マンション内で荷物をバッグに詰め、手で持って下まで降り、近くの駐車場に駐めたレンタカーのノアまで運ぶ。だいたい積み終わったら、郊外のストックルームに持って行くつもりである。
2度往復して、3度目の荷物を持ち、部屋を出て下まで降りた所で、偶然その子に会ったのである。
「おはようございます、ゆみさん」
と彼女は挨拶した。その顔には覚えがあったものの名前を思い出せない。
「あ、すみません。私、アクアの親友で南川彩佳と申します」
「思い出した。アクアのファンクラブ会員番号31番さんだ」
「はい。ゆみさんは37番でしたね」
「番号が入れ替わっていたことあったもんね」
「1と7が似てるから、札を置いた人が間違ったんですよね」
「でもたくさん、お荷物お持ちですね。手伝いますよ」
と言って、彩佳はゆみが4つ手に持っていた荷物の内の2つを手に取った。
「あ」
と一瞬声を出したが、ゆみは
「ありがと。アクアちゃんの所に行く所だったの?」
とすぐに言った。
「はい」
「じゃアクアちゃん待っているのでは?」
「いえ。自分の鍵で開けて入ってきました」
「鍵持ってるんだ!?」
「28歳になったら婚約しようと言っているので」
「それ婚約じゃないの?」
「アクアは男女交際禁止ですから。何度か誘惑したんですけど、あいつ、いつも逃げるんですよ」
「あはは」
ゆみは、アクアが逃げるのは女同士だからではないのかと内心思った。
結局、彩佳に半分持ってもらって駐車場に向かう。実は3往復目なので、結構疲れてきていて、手伝ってもらうのはありがたかった。それにこの子、口が硬そうだしとも思う。
ゆみと彩佳はその後、更に2往復して“やばい”荷物をノアに移し終えた。彩佳が「これ向こうでも大変ですよ。私、付いていきます」というので、結局ゆみの運転するノアに同乗してストックルームに行き、そこに荷物を移した。
ノアをレンタカー屋さんに返却に行き、ゆみは自分のフェアレディZに乗り換えて彩佳と一緒に代々木のマンションに戻る。部屋に行き、ローズヒップティーを入れた。少しおしゃべりしていたが、ゆみは彩佳が割としっかりしてそうだと思い、彼女に言った。
「でもあの子、女の子だよ」
「構いません。レスビアンのテクニックも勉強しました」
「へー!」
「それにですね。あの子、私も不確かなんですけど、性別が不安定なんですよ」
「不安定?」
「あの子を何度か裸にまではしてみたことあるんですけど、ちんちんがある時と無い時があるんです」
「嘘!?」
「それどころか、中学生の頃、裸になってイチャイチャしている最中に唐突にちんちんが出現したこともあるんですよねー」
「そんなことがあるんだ?」
ゆみは、ずっと以前にクリトリスが性的に興奮するとペニスサイズまで大きくなる人がいると聞いたことがあったのを思い出した。もしかしてそういう体質とか??
「それでセックスしようよと言ったんだけど、もう少しお互いが大人になってからにしようよと言われちゃった」
「へー。まあ中学生にはセックスは早いよね」
と言いながら、ゆみは“あの頃”を思い出して心が痛む。
「凄く特殊な半陰陽なのかもしれない気がします」
「半陰陽というのは、私もそんな気がするよ」
「まああの子は肉体的には性別が微妙なんだけど、心は男の子だから、結婚してもいいかなと思うんですけどね。あいつの精神的な性別は、どうも“女装が好きな男の子”みたいなんだけど、恋愛自体は分からないと言うんですよ」
「ああ」
「誰かに拉致されて強制的に性転換手術されちゃったりしたら普通に女の子として生きていけるだろうけど、自分の心は男だと言うんですよね」
「あの子、きっとうまく唆されて自分で性転換しちゃうか、本人の意志無視して勝手に性転換されちゃうかだと思うよ。もしまだ男の子だったとしても」
「あいつのタンスの中は9割が女物です。私、時々あいつの部屋に行っては男物捨てちゃうんだけど、しつこくまた買ってるんですよね。実際にはほとんど女物しか着ないくせに」
「なるほど、その作戦遂行中だった訳か」
とゆみも微笑む。
「女の子の裸を見ても何にも欲情しないらしいです。といって別に男の子の裸にも興味は無いらしいです」
「それって睾丸が無いからじゃないの?」
「睾丸には触ったことあるし、存在はするんですよね。でも本物かどうかは怪しい気がします。ひょっとしたら、シリコンのダミーを入れているのかも」
「でないと、18歳にもなって声変わりが来ないことは説明できないと思うよ」
とゆみは言う。
「ですよねー。ちんちんは立つから、ちんちん自体は本物だと思うけど」
ふーん。“立つ”ことまでは確認している訳か。でもこの子まだバージンだよね?
「だったら、いっそ、ひょっとしたらセックスができるかも知れない女友だちくらいの感覚がいいのかもね」
「私はあの子のこと好きだけど、実際向こうは女友だちの感覚に近いと思います。でも私のこと嫌いではないみたいだし、ちんちんがあったら普通の男女セックス、女の子だったらレスピアンセックスすればいいかなと開き直っているんですけどね。おっぱいくらいは別にあっても構わないし」
「おっぱいはあるよね?」
「既に中学の頃にはAカップはありましたよ。一緒にブラ買いに行ったこともあるし」
「やはりね」
アクアが女性体型なのは、やはり女性ホルモンが作用しているからなのだろう。天然のものか人工的なものかは分からないが。
「でもそこまで割り切っているのなら、そういう子もいいかもね」
結局、2人は2時間くらいアクアのことでおしゃべりした。お腹が空いたので途中で冷凍ピザをチンしたり、(やはり冷凍していた)ウィンナーをボイルしたりして一緒に食べた。
「でも今日は、ありがとう!助かったよ」
「いえ、お互い様ですよ」
「じゃさ、お礼代わりに、彩佳ちゃんに“アクア”をあげるよ」
「え?」
「だからさ、こういうことしない?」
と言って、ゆみは彩佳に、思いついた“悪巧み”を語ったのであった。
8月12日、Wリーグ、ステラ・ストラダの選手に感染が確認された。チームでは選手やスタッフで彼女と接触のあった人全員のPCR検査を行い、選手2名の陽性が判明した。チームは今回陰性であった人も、念のため一週間の自己隔離をしてもらうことにし、チーム活動は当面停止することになった。
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春銅(20)