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■春銅(8)
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目次 #
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「みんなが見ている所でやるとは、大胆だな」
と桃香が言っている。
広実は自分の精液を勝手に使用されて『うっそー!?』という顔をしている。
「女の子しかいないから大丈夫だよ」
と美来は言ったものの、それで織絵は思い出した。
「そうだった。広実のちんちんを切らないと」
と織絵は言う。
「美来、包丁持って来て」
「包丁で切るの〜?」
「キッチンばさみがいいか?カッターナイフがいいか?」
「あのぉ、麻酔とかは?」
「そんなもの無い」
「止血とかは?」
「できる訳が無い」
「私、帰ろうかな」
と広実が言っていた時、千里が声を掛けた。
「結局、広実ちゃん、女の子になりたいんだっけ?」
「なりたい」
「じゃ女の子にしてあげるよ。ちょっとこちらにきて」
と千里は広実に言い、
「織絵ちゃん、こちらの部屋貸して」
と織絵に声を掛ける。
「ちらかってるけど」
「平気平気」
それで千里が広実を連れて“散らかっている”6畳の部屋に入る。
さっき広実が採精(つまり射精)した場所である。
20分後。
「信じられない」
などと言っている広実が千里と一緒に出て来た。
「どうしたの?」
「女の子になっちゃった」
と広実。
「その手に持ってるビニール袋は?」
「胸から摘出したシリコン」
「シリコン抜いたんだ?」
「本物のおっぱいができたから、これは邪魔」
「へー」
「この子、もうちんちん無いからここに居ていいよね」
と千里が言う。
「ほんとにちんちん取ったの?」
「無くなっちゃった」
と広実。
「ちんちん切るくらいすぐできるよ。胸のシリコン摘出の方がわりと大変だった」
などと千里は言っている。
「桃香もちんちん切ってあげようか」
と千里が言うと
「いやいい」
と桃香。
「まあいいや。千里が言うのなら大丈夫だろう。じゃこれ飲みたまえ」
と言って、光帆は広実にグラスを渡し、氷だけ入れてウィスキーをそのまま注ぐ。
「頂きます」
と言って広実はウィスキーを飲んだ。
「おお、いい飲みっぷりだ」
と織絵が嬉しそうに言う。
「今日は女の子になれて嬉しい。私、飲みます」
「よしよし」
「だけど、今6人もいるね。密っぽいからそろそろ退散しようか」
と優子が心配して言ったのだが
「じゃ誰か感染してないかチェックしてあげるよ」
と言って千里は検査キットを取り出した。
「本当は唾液でも検査できるんだけど、みんな飲み食いしちゃってるから、この状態の唾液では検査できない。鼻腔内から採取していい?ちょっと痛いけど」
「検査キットがあるのか」
「じゃよろしくー」
ということで、6人全員、千里が綿棒を鼻の穴に入れて検体を採取し、検査キットに浸透させた。イムノクロマト法の検査キットである。PCR法に比べると精度は落ちるが、とにかく短時間で結果が出る。
検査結果は15分ほどで出た。
「全員陰性」
「良かった」
(陽性の場合は5分ほどで出る。15分待つのは慎重を期すため。ただし、全員陰性であることは、実は《びゃくちゃん》が最初から判定していた)
「じゃ朝まで飲もう」
「そうなるのか」
「まいっか」
ということで宴会は本格化してしまった。
一方、千里2はこの日(6/9)、ハイゼットで高崎まで走り、玉依姫神社で販売する招き猫をいつもの工房で仕入れた。そして帰る途中、浦和に寄る。駐車場にハイゼットを駐め、歩いて京平が行っている幼稚園に行く。スマホで時刻を確認すると12時少し前である。
「だいたいこんな時間かな」
と独りごとを言って幼稚園の園庭に入ると、お迎えのお母さんたちが既に数人来ている。お母さんたちはだんだん増えてくる。12時の時報が鳴ると、玄関が開き、先生が園児たちを連れて出てきた。
幼稚園は本来9時から15時までなのだが、コロナ感染防止で園児の密度を下げるため、あらかじめ保護者にアンケートを取り、9:00-12:00の午前組と、13:00-16:00の午後組に分割している。千里はどちらでもいいと回答しておいたら午前組に振り分けられた。それで9時登園、12時お迎えになっているのである。
それで先生から京平を引き取る。
「あれぇ、今日は2番おかあちゃんだ」
などと京平は言っている。
「まあ色々都合があるからね。千葉の玉依姫神社まで行くけど、一緒に行く?」
「行く行く」
と京平は嬉しそうに言った。
やはり男の子は乗り物が大好きである。千葉までのドライブをハイゼットの助手席(チャイルドシートを付けている)で楽しんだようである。
玉依姫神社に着くと、ここの巫女長・後藤真知に声を掛けて招き猫を搬入した。
「あ、京平君だ、久しぶり〜!」
「真知お姉ちゃん、こんにちは」
「おぉ、よしよし。よく名前覚えてたね」
「ボク、わりと人の名前御覚えるの得意」
「凄い凄い」
「特に美人さんはよく覚えるよ」
「こらこら、子供のくせにお世辞など使わなくてもよい」
「でもここの女神様も美人だね」
と京平が言うと、《姫様》も笑っていた。
社務所には、千葉市内の和菓子屋さんで仕入れてきたお団子、大福、なども降ろす。この大福には神社の紋の焼き目を入れてもらっているし、お団子はパックに神社の紋のシールを貼っている。元々はここでデートするカップルがわりといるのでおやつに用意していたものだが、最近はお土産に箱入りで買っていく人もある。
なお、デートするカップルのために、お団子も大福も2個入りパックにしている。当初はお店のほうで売っているのと同じ3個100円だったが、3個はハンパだという意見から、増量して2個100円にした。
串団子は3個刺さっている串を3本だったが、5個刺さっている串2本に、大福は50gの大福3個だったのを80gの大福2個にと、いづれも増量した。
招き猫と、大福などの和菓子を降ろしてから、ハイゼットには神社で出たゴミを積み込んだ(むろんゴミ等を運搬した後はちゃんと洗浄する)。
京平がもっとドライブしたいようだったので、その後、千里は東京湾を一周してアクアラインを木更津から川崎へと走り、その後、浦和まで行って京平を降ろす。その後、晩御飯(麻婆豆腐)を作って、彪志が帰宅するのを待ち、一緒に御飯を食べてから、各々の部屋で寝た。この日はRoom1で彪志、Room2で千里2と京平が寝ている。
一方、織絵たちのマンションでは、ハンドルキーパーだったはずの千里もついお酒を飲んでしまい、混沌としてきはじめていた。
ここで飲んだのは1番である。3番は酔うと仕事に差し支えるので“裏”に回った。千里たちは龍虎たちとは違い、体液は各々独立循環なので、ひとりが酔うと全員酔うようなことはない。
かなり混沌としてきた所で、唐突に広実が言った。
「気のせいかな、桃香、お乳の匂いがする」
「下の子がまだおっぱい卒業してないから」
と桃香。
「子供がいるの?」
「うん。今、上が3歳、下が1歳」
「嘘。桃香が男の人とするなんて信じられない」
「どちらも人工授精だよ」
「ああ。男とセックスした訳じゃないんだ?」
「そんなのする訳無い」
「少し安心した。でも子供2人も作るって凄いね」
と広実は感心している。
「いや、桃香は絶対10人くらい子供がいる」
と織絵は言っている。
「私が知ってる範囲で6人だな」
と千里が言っている。
「ちょっとちょっと」
「6人もいるんだ!?産みまくってるね」
と広実が驚いている。
「私との子供が早月と由美、季里子ちゃんとの子供が来紗と伊鈴、早紀ちゃんとの子供が小歌と小空」
と千里は名前をあげる。
「なんか相手が女名前ばかりのような気がする」
と広実。
「そりゃ桃香が男の人の子供を産む訳がない、みんな相手の女の子に産ませたものだよ」
「桃香って精子があるの?」
と広実が驚いたように言うと
「それは間違いなくある」
と織絵と千里が同時に言った。
「じゃ産みまくったんじゃなくて産ませまくったのか」
「物理的に7-8年で6人産むのは無理。でも産ませるのなら、もっと行ける」
「いや、桃香の子供はその6人だけとは思えない」
「そうか。桃香、性転換してたのか。それでも父親になるって凄いなあ」
と広実。
「うーん。私に精子があるかどうかについては、私も自信無いのだが」
「桃香の種で私も2人産んだから、精子があるのは間違い無い」
「すごーい」
↓桃香の子供たち
早月 2017.05.10 3歳になる年度
由美 2019.01.04 2歳になる年度
来紗 2013.06.03 小1
伊鈴 2014.08.10 年長
小空 2012.04.15 小2
小歌 2013.02.14 小2
ただし遺伝子的にも桃香の子供であるのは、早月・由美・小空・小歌の4人。
桃香が“父親”を自称しているのは、来紗・伊鈴・京平の3人。
「醍醐先生質問です」
と織絵が言った。
「先生は無しだよ」
「じゃ千里さん質問です。さっき広実を女の子に改造しちゃったみたいだけど、女子を男子にも改造できますか?」
「ああ。簡単だよ」
「私たち子供欲しいんですけど、光帆をちょっと男に改造してもらえません?」
「いいよー。美来ちゃん、ちょっとおいで」
この時、美来は桃香と何か話していて、こちらの話を聞いていなかった。
「え?なんですか?」
などと言いながら、千里(実はかなり酔ってる)と一緒に隣の部屋に行く。
15分後、美来が「うっそー!?」と言いながら、千里と一緒に出て来た。
「どうしたの?」
と桃香が尋ねる。
「ちんちん生(は)えちゃった」
「美来は時々ちんちんがある気がする」
「よし、セックスしよう」
と言って織絵は美来を押し倒したが、
「こら君たち人前ではやめなさい」
と桃香が言うので、織絵は美来をひっぱって隣の部屋に行く。
30分後、満足そうな顔をした織絵と戸惑うような顔をした美来が出てくる。
「した?」
「した。気持ち良かった」
「まあ、織絵は元々ストレート寄りのビアンだからな」
と桃香は言っている。
「でも私も射精ってしてみたいな」
「織絵ちゃんも男の子になる?ちょっとおいで」
と言って、千里が織絵を連れて隣の部屋にいく。
15分後、織絵は
「やったぁ。私もちんちん出来た。ミルル、もう一度セックスしよう」
と言って、織絵はまだ頭が混乱しているっぽい美来を連れて隣の部屋に行くのだが、すぐに織絵だけ顔を出して
「すみませーん。入れる穴が無くて困ってるんですが」
「ああ、だったら美来ちゃんは女の子に戻してあげるよ」
と言い、千里も隣の部屋に行く。
「おお、凄い!女の子に戻った」
と織絵の声がドアの向こうからする。
「じゃいただきまーす」
などと織絵の声がするが、千里は1人で出てくる。
そういう訳で、この夜は、美来♂×織絵♀、織絵♂×美来♀、というセックスが行われたのである。どちらも生セックスである。もっとも2人ともその前に広実の“最後の精子”を膣に注入している。
「でもこれもし妊娠した場合、私たちの間の子供か、広実の子供かって分からなくならないかな?」
と織絵は言ったが、千里はこう答えた。
「血液型で分かるよ。織絵も美来もO型だから、ふたりの間に子供ができたら必ずO型になる。広実はAB型だから、広実と織絵あるいは美来の間に子供ができたら子供はA型かB型になる。だから生まれた赤ちゃんの血液型で、父親が誰だったかは判明する」
「子供がAB型だったら?」
「O型の母親からAB型の子供が生まれることはない」
「そうなんだ?」
「じゃ生まれたら分かるね」
「生まれる前には分からない?」
「遺伝子鑑定すれば分かるよ。高いけど」
「高いって幾らくらい?」
「20-30万円くらい」
「高ぇ!」
「生まれたら血液型で分かるんだから、それ待てばいいね」
「まあそんなものだね」
千里はその後、桃香も男に変えたような気もするが、よく覚えていない。
この夜は千里1が暴走ぎみで、織絵も美来も完璧に酔っているし、ひとり冷静に見ていた千里3は呆れていた。
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春銅(8)