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■春銅(3)

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2016年夏に渡米してアメリカの大学に入りバスケットボール部に入れてもらった須佐ミナミは、最初の頃はなかなかベンチが遠かったものの、2017年夏頃から何とかベンチ枠に入れてもらえるようになり、少ない出場機会に結構活躍することができて、2017-2018のレギュラーシーズンからロースターに定着。2018-2019のシーズンでは"Sixth woman"として、勝負所に投入されるようになった。そして4年生となった2019-2020シーズンでは正SGとして活躍し、チームの躍進にも貢献した。
 
2020年4月17日におこなわれた WNBAドラフトでは、どこかに拾ってもらえないかなあと少し期待していたのだが、残念ながらどこからも指名されなかった。WBDA(セミプロリーグ)で2〜3年鍛えてWNBAに指名されるように頑張ろうかとも考えていたのだが、2020年のWBDAはコロナのせいで(少なくとも当面は)開催されないことになった。
 
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そこで取り敢えず5月の卒業式が終わったら帰国しようと思ったのだが、これがなかなか大変であった。
 
そもそもコロナの影響で卒業式は延期され6月4日にずれこんだ。それから何とか航空券を確保したものの、日本に帰ると2週間の自己隔離が必要である。空港から隔離場所までは公共の交通機関が使用できない。田舎の父にそのために成田まで来てもらうのは申し訳無い。そもそも田舎には老齢の祖父母もいるので、万が一自分経由で感染させてしまった場合、高齢者は命に関わる。
 
そうなると成田空港近くのホテルに2週間滞在する手しかないのだが、その費用がかなりかかる。貯金足りるかなあと不安を感じていた。
 
そこに連絡が入ったのである。
 
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見たことない名前からのメールだったのでそのまま削除しようかとも思ったのだが、念のため開いてみると驚くべき内容だった。
 
《佐和国香と申します。2017年6月にロサンゼルスでお会いしたのですが、覚えていらっしゃいますでしょうか?近々帰国なさることを聞き、高校時代のご友人の**さんとコネがあったのでメールアドレスを教えて頂きました。須佐さんのNCAAでのご活躍はフォローしておりました。うちのチームのオーナーが須佐さんに興味を持っております。こちらは"40 minutes"(フォーティーミニッツ)という社会人チームで、地域リーグの東日本Bに所属しています。もしお時間が取れましたら、帰国後一度お会いできませんでしょうか?》
 
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確かに3年前、初めてベンチ入りした日の試合をたまたま日本人の夫婦が見ていて、試合後声を掛けられたのである。むろん須佐ミナミはそれを覚えていた。もらった名刺はどこかに行っちゃったけど!
 
しかし地域リーグ(*1)というのには、ややがっかりする。Wリーグならなあと思うが、アメリカで活動していた自分をWリーグの関係者は見ていないだろう。それなら、いったん地域リーグに入り、そこで活躍してWリーグのチームに拾ってもらう手もあると、須佐ミナミは考え直した。それでお返事を書いた。
 
《覚えております。私に興味を持って下さってありがとうございます。ぜひお会いしたいですが、帰国した後、成田市内のホテルで2週間の自己隔離する予定なので、その後でよろしいでしょうか?》
 
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(*1)現在日本の女子バスケットはWリーグを頂点として、その下に地域リーグ、都道府県リーグというのがある。それ以外にO-40(40歳以上), O-50(50歳以上), エンジョイ、オープンといったリーグも作られている。つまり地域リーグというのはWリーグのすぐ下のリーグであり、そこに参加しているチームというのは、かなりの強豪である。現在女子の地域リーグは東日本と西日本に分割され、東日本はチームが多いのでA・Bという2つのリーグに分割されている。つまり現在女子の地域リーグは3つある。(地域リーグ下位と都道府県リーグ上位で、入れ替え戦が行われる)
 
実は東日本Aには佐藤玲央美たちのジョイフルゴールドが所属しており、東日本Bに40 minutes が所属していて、各々のリーグでの圧倒的覇者でもある。またこの2チームは既にWリーグのライセンスも認定されている。実際問題としてどちらもWリーグ下位のチームよりよほど強いし、2021-2022シーズンからWリーグに昇格することになっているのだが、そのあたりの事情は須佐ミナミはさすがに知らない。
 
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須佐ミナミは佐和国香と数回メールのやりとりをした上で電話で話しましょうということになる。それで佐和国香から電話がかかってきた。
 
そして話し合った結果、なんと帰国の費用・自己隔離の費用を40 minutesが出してくれるという話になる。むろん話し合いの上で入団にならなかった場合でも、返却は不要とのこと。また自己隔離の場所として、茨城県常総市にある小さなバスケット練習場を提供してくれるということになった。そこは宿泊ができる設備もあり、(無償で)食材も配送してくれるので、一切外に出なくて済むらしい。衣服やシューズなどの用具、トレーニング用品、また雑貨などが欲しい時は言ってもらえば、それも配送しますよと言われた。
 
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「隔離中は練習パートナーがなくて不便でしょうけど」
 
「いえ、ドリブルやシュートの練習ができるだけでも嬉しいです。ホテルに2週間隔離されていたら、バスケができなくて気が狂うかもと思ってました」
 
常総市までの交通手段としては適当な車を1台確保して、成田空港でキーを渡すと言われた。日本の運転免許を持ってないことを言ったら、国際運転免許証を発行してもらえばいいですよと言われたのですぐ手続きに行くことにした。
 
この話し合い後、即、須佐ミナミの口座に7000ドルの振込があったのでびっくりした。これは多分ビジネスクラスのロサンゼルス−成田間の運賃相当+αだろうと思った。私、格安チケット(むろんエコノミー)を900ドルで買ったのに!
 
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でも即振り込めるということは、向こうはアメリカの銀行に口座を持っているわけだ。スポンサーに大きな企業でも付いているのかな?と須佐ミナミは考えた。
 

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今から5年前の2015年春、千里はある夜、夢を見た。
 
千里は山道を歩いていて、沿道にたくさんきれいな花が咲いていた。やがて洞窟があるので中に入る。穴はけっこう狭くなっていたし、ところどころ分かれ道もあったものの、千里はやがて外に出た。目の前に大きな滝があって、その滝の所に1対の銅鏡が掲げられていた。
 
「その鏡は京平の依代である。別々の場所に保管せよ」
という声がどこからともなく聞こえてきた。
 
そこで目が覚めた。
 
そして枕元に1対の鏡が置かれていた。
 

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「模様は同じだけど色が違う」
と千里がひとりごとのように呟くと、普段は寡黙な《くうちゃん》が
 
『左の赤いのは青銅、右の白いのは白銅だよ』
と教えてくれた。
 
「青銅と言っても青くないね。むしろ赤い。あかね色というか」
『錆(さび)が青いから青銅というんだよ。いわゆる緑青(ろくしょう)だね』
「ああ」
『青銅の色は実際には赤銅色(しゃくどういろ)、赤銅、赤い銅の色だよ。10円玉が青銅でできている』
 
「赤銅って合金もあるんだっけ?」
 
『現代で赤銅といえば、銅と金の合金だけど、十円玉に使われている青銅は、銅95%に亜鉛3-4%錫1-2%を混ぜている。この青銅鏡の場合は、銅85%に亜鉛8%錫7%くらいと見た。ひょっとしたら鉛も混じっているかも知れないけど自信が無い』
と《くうちゃん》は言う。
 
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「青銅が十円玉で白銅が百円玉だっけ?」
 
『そうそう。五円玉は黄銅、五百円玉は洋銀だね。百円玉の組成は銅75%, ニッケル25%。でも歴史的な白銅鏡の成分は、ニッケルではなく錫を使用する。この白銅鏡は、銅70% 錫30% くらいだよ』
 
「へー。同じ名前でも違う金属があるんだ?」
 
『合金ってそういうものだよ。同じ名前でも様々な組成のものが作られる。指輪によく使われるホワイトゴールドには、金と銀でできたもの、金・銀にパラジウムを混ぜたもの、金にニッケルを混ぜたものがある。メーカーによってその比率や組成は結構異なるんだよ』
 
「そうだったのか」
 

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千里は《くうちゃん》の助言に基づき、鏡を収めるための桐の箱を2つ作った。当時千里は千葉市内の桃香のアパートに同居(?)していたのだが(実質的には、桃香は季里子と同居し、千里は葛西に住んでいた)、ふたりとも大学院を卒業して就職するのに伴い、“味噌汁の冷めない”距離に別れて住むことにした。千里は用賀駅の近く、桃香は経堂駅の近くにアパートを借りた。
 
それで千里は、2つの鏡は別の場所に置けと言われていたので、この2つのアパートに1個ずつ鏡を置くことにしたのである。青銅鏡のほうを経堂のアパート、白銅鏡のほうを用賀のアパートに置いた。
 
なお《くうちゃん》によれば、依代が2つあるのは、万一片方が損傷した場合、もう片方を手本として作り直すためだということだった。依代が1つしか無いとそれが破損した場合どうにもならなくなる。それで別の場所に置かないといけないということらしい。
 
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2つの鏡はどうも白銅鏡がマスターで青銅鏡はミラーになっているようだと感じた。(ミラーのミラー!)それでやはり自分が住むアパートに白銅鏡を置いて正解だったようだと思った。
 
この2つの鏡は伏見と繋がっているようで、京平自身もしばしばこの鏡を通って千里のアパートにやってきた。また京平のお友達のたくさんのおキツネさんもここにやってきた。おキツネさんたちは青銅鏡のほうを通って経堂のアパートにも(多少は)出没していたのだが、桃香は霊感ゼロなので、目の前で多数のおキツネさんたちが出入りしていても全く気付かなかった!
 

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2017年春に千里は3人に分裂したのだが、2018年春、千里1が川島信次と結婚することになり、千里1は用賀のアパートから退去した。鏡のある場所を空き部屋にするのはよくないので、千里2は困ったなと思った。ところがちょうどうまい具合に天月西湖(今井葉月)が近所のJ高校に入学することになったので、彼にお願いして、(家賃無料で)ここに住んでもらうことにした。鏡の番をする係である。
 
(ただし入学する高校は《こうちゃん》の悪戯のおかげで共学のJ高校ではなく女子高のS学園になってしまった)
 
西湖はこの鏡を通してやってくるおキツネさんたちに気に入られ、彼自身の運気も随分あがったようであった。
 
2018年7月、川島信次は工事現場の事故で死亡し、千里1はしばらく信次の実家で暮らしたのち、10月に信次の百ヶ日法要が終わった所で経堂の桃香のアパートに転がり込み、そこで一緒に暮らし始めた。そして2019年1月には信次の忘れ形見・由美が生まれ、経堂のアパート(1K)の住人は桃香・千里・早月(2017.5生)・由美の4人になった。
 
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2020年1月、阿倍子が再婚に伴い京平を千里に託してくれた。それで京平も千里たちと一緒に暮らすことになったのだが、さすがに1Kのアパートに5人暮らすのは無茶である。特に男の子の京平がいる前で、女の子の早月や由美を着替えさせるのは問題がある(特に京平と由美は血が繋がっていないので注意が必要)。桃香は「京平君性転換しちゃおう」と大胆な提案をしたが、千里は却下した。そこで千里と桃香は引っ越すことにして、浦和に3DKの賃貸マンションを確保。2月4日、そこに引っ越した。翌2月5日、京平がここに合流した。
 
ここの部屋の利用計画としては
Room1. 早月・由美
Room2. 京平
Room3. 千里と桃香
 
と住めばよいということにしていたのだが、実際には京平は本当の母親である千里と寝たがり、結果的に桃香は早月・由美と寝ることになり、桃香は千里と全然セックスができなかった。もっとも“この”千里は桃香とセックスする気は毛頭無い。
 
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3月21日、青葉の卒業式に出るため桃香・千里および京平・早月・由美の5人は高岡に行った。しかし青葉の卒業式は結局リモートで行われ、“卒業式参列”は空振りとなった。桃香たちは代わりに高岡の自宅で青葉の卒業祝いをした。
 
千里はそれが終わると、桃香・早月・由美を高岡に置いたまま京平だけ連れて浦和に戻った。京平だけ連れてきたのは、幼稚園が始まる(予定だった)からである。もっとも千里はわりと不在がちなので、夜だけでもお世話をお願いしたいと言って、大宮に住んでいる(青葉の婚約者)彪志君にしばらく同居してもらうことにした。彪志君も、日中は仕事をしていて、夜はコロナによりお店が早く閉まり、買物ができなくて困っていたので、同居で助かることになる。
 
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ここは3DKなので、千里・京平・彪志が1部屋ずつ使用することにしたが、京平は千里がいる時は千里の部屋、いない時は彪志の部屋で一緒に寝ることが多かった。また青葉が仕事で上京してきた時は、青葉が彪志と同じ部屋で寝ていた。
 

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