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■春銅(22)

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8月13日(木)、千里は康子から連絡を受けた。
 
「実は立ち退きの補償金が8割出たんで、引越先を探したいんだけど、太一が出張で九州に行っててさ、いつ帰ってくるのか分からなくて。千里ちゃんも忙しそうなのに申し訳無いけど、引越先選びに付き合ってくれない?」
 
「いいですよ。今日はたまたま空いていたので。そちらに行きますね」
 
それで千里はアテンザを運転して千葉まで行き、康子をピックアップした。
 
補償金は移転の契約が成立した段階で8割支払われ、今の家が撤去(解体)された時点で残りの2割が支払われるらしい。
 
「家の解体の手配もしないといけないんだけど、どこか安い業者さん知らない?」
「ああ。だったら友人がやっている建築会社を紹介しますよ。たぶんあの家なら100万円くらいで解体してくれますよ」
「安い!じゃお願いしようかな」
「連絡しておきますね」
 
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桶川市に行き、ネットで目を付けていた不動産屋さんに入って適当なマンションを探す。駅からは遠くていいので、車を使うのに便利な場所がいいと告げる。
 
「なるほど。駐車場付きで2DKくらい、ご予算は2000万円くらいですね」
「はい。立ち退きの補償金がそのくらい出たので」
 
康子が住んでいる土地は路線価が低いので、補償金も低くなってしまった。しかし桶川ならそのくらいの価格でもたぶん2DKは買えるのではと千里は思っていたのだが、やはりあったようである。
 
「こちらの物件はいかがでしょう?桶川加納ICから5分で、3DK 1800万円ですが」
 
千里は地図を見せてくれと言った。そしてそれを見て
「この地域は良くないです。この付近でありませんか」
と言って、別の地域を指でなぞって示す。
 
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「その界隈がいいですか。でしたら、これは?」
 
と言って不動産屋さんが見せてくれたのは、3DK 2100万円というものである。
 
「1人暮らしなので、3DKは広すぎるので2DKくらいがいいのですが」
 
「そうですね・・・。あ、あれがあった」
 
と言って見せてくれたのは、桶川加納ICから10分ほどの、2DKマンションで1200万円である。
 
千里は地図、図面を見せてもらい方位も確認した。
 
ああ、ここはあれか。安い訳だ。
 
「これいいですね。現地を見られますか?」
と笑顔で言う。
 
「はい。お連れします」
 

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それで不動産屋さんの車で現地に行く。
 
「環境はいいですね(どこが?)。中も見られます?」
「ええ」
 
エレベータで3階に上がり、中を見る。千里は窓からの景色なども見た。
 
「ここいいですね。お母さん、ここにしましょう」
「そう?じゃここに決めようかな」
 
それで部屋を出て不動産屋さんの車でオフィスに戻ることにするが、マンションの玄関を出た時に、康子は「あれ?」と言った。
 
「どうかしました?」
「さっきここに来た時と、今とでマンションの雰囲気が違う気がする」
「あれ?そういえばそうですね」
と不動産屋さんまで言った。
 
「さっきより日が高くなったからでは?」
と千里は言ったが
「いや、その程度の変化ではないと思う」
「まあそんなこともあるでしょう」
と千里が言ったので、康子さんは千里が“何かした”のではと察したようだった。不動産屋さんは首をひねっていた。
 
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手続きをする。代金はその場で手付金として振込で100万円を払った。残額は1週間後に物件を引き渡す時に払えばよいということであった。準備しておいて欲しい書類(本人確認書類と住民票・印鑑)、代金以外に必要なお金(管理費の日割り金や税金など)を確認した。
 
不動産屋さんを出たのが11:30だったので、通りがかりの大型スーパーでお弁当を買い、車内で食べた。
 
住む所が決まったので、この後、中古車屋さんに行く。
 

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「コンパクトカーがいいんですか?でしたらアクアとかはいかがですか?」
とお店の人は言う。
 
「ハイブリッドって、なんか面倒くさそう。ガソリン車の方がいいんだけど」
「でしたら、ヴィッツとかフィットとか」
「そのあたりがいいかな」
 
と言って見てまわる。白いポルテに目を留める。
 
「これ何?5万円って」
「走行距離が長いので」
「動くの?」
「動くことは動きますが」
「千里さんどう思う?」
 
事故車だというのは即分かったし、なんか憑いてるなあと思ったが《りくちゃん》に命じて除霊させた。そして平気な顔で言う。
 
「少し試乗していいですか?」
「はい、どうぞ。今キーをお持ちします」
 

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それでお店の人も同乗して、千里が運転席、康子が助手席に乗って、エンジンを掛けると、明らかに異様な音がする。でも千里は全然気にせず発車させた。中古車屋さんを出て、その付近をひとまわりしてきた。この走行で除霊した後、少し残存していた“かけら”も全部振り落としてしまう。
 
「奥さん、すごく運転がうまいですね」
「国際C級ライセンス持っているので」
「それは凄い!レースとか出られるんですか?」
「年間3回くらいですけどね。ライセンス維持するのにも必要だし」
「凄いですね」
 
中古車屋さんに戻って来る。
 
「エンジンの調子が微妙ですが、大きな問題は無いと思います。友人の整備に詳しい人(こうちゃん!)に整備させますから大丈夫ですよ」
 
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「じゃこれ買おうかな」
「ではこちらで契約を」
 
諸経費を入れると20万円になったので康子がスマホから振込んだ。これで取引は成立した。
 
車庫証明が必要なので、この後さっきの不動産屋さんに行ってもらってくることにし、電話連絡したら、用意しておきますということだった。
 
それでアテンザでさっきの不動産屋さんに戻り、書類をもらってからまた中古車屋さんに行った。
 
中古車屋さんは、車庫証明を受けとってから
「このままお持ち帰り頂いてもいいですよ」
と言った。それで千里は
「でしたら、後で山村という友人の女性に取りに来させます」
と言ったら、その名前をメモしていた。
 
「済みません。その山村さんの年齢は?だいたいでいいですから」
「本人は1446歳と言っていますが」
「え?」
「きっと14がなくて46歳ですね」
「分かりました」
 
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その後、千葉までアテンザで康子を送っていき、夕食も一緒に食べてから浦和に戻った。
 
なお、この日の京平のお迎えと夕飯の支度は2番がした。
 

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《こうちゃん》(6番)はぶつぶつ言いながら、女装した上で、その中古車屋さんにやってきた。
 
「俺は女装あんまり好きじゃないんだけどなあ」
などと言っている。
 
「お昼頃にポルテを買った川島康子の友人で山村と申します」
と言うと
「ああ、山村さん、お待ちしておりました」
と言い、中古車屋さんは、運転免許証(山村勾美名義)を確認した上で車を引き渡してくれた。
 
それで《こうちゃん》はポルテを運転して中古車屋を出るが
 
「なんじゃ、このエンジンは〜〜?」
と声をあげる。
 
「これ普通の奴が運転しようとすると簡単にエンストするぞ」
などとも呟く。
 
「全く、千里の買物って、いつもこんなんだ」
と文句を言う。
 
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取り敢えず、板橋ラボに持って行き、駐める。
 
「このエンジンを整備しろなんて鬼だよ。面倒くさいから新しいの買ってこよう」
 
と言って、ポルテに搭載されているのと同じ1NZ-FEエンジン(1497cc)の新品を買ってくると、交換してしまった。ATFもかなり酷い状態だったので、取り敢えず4分の1交換した。またフレームが歪んでいる所があったので、手でぐいっと引っ張って!正しい形に戻した。
 

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「よくまあ、こんな鉄くず同然の車を買うよ。これタイヤも新品に交換した方がいいな。こんなタイヤで走ってたらスリップ事故起こすぞ」
 
などと文句を言ってタイヤも新しいのを1セット買って来て全部交換した。他にブレーキパッド、ワイパー、ヘッドライト、室内灯も交換。バッテリーも瀕死だったので、これも新品に交換する。マフラーも錆付いて脱落寸前たったので新品に交換する。エアコンも修理不能だったので新品を買ってきて入れ替えた。
 
「あの婆さん、方向音痴っぽいしなあ」
などと呟いて、サービスで最新のカーナビ(バックモニタ付き)を付け、更にETC、ドライブレコーダー、ワイドミラー、コーナーセンサーも取り付けておいた。コーナーセンサーが無かったら絶対ぶつけると思った。そして急発進防止装置と自動ブレーキも付けておく。こういうのが無いと絶対コンビニとかに突撃しそうだと思った。
 
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「スピードも出しそうだしなあ」
と思って、リアスポイラーも取り付けた。
 
「鍵も絶対掛け忘れるよな?」
と言って、スマートキーのシステムも取り付ける。
 
結局この整備に掛かった費用は、材料代だけでも軽く100万円を超えている。車の本体価格は5万円だったのに!
 
《こうちゃん6》が文句を言いながら板橋ラボで車の整備をしていたら、ここに練習に来た左倉ハルが
 
「お疲れ様です、山村さん」
と声を掛けてくれて、アイスクリームの差し入れまでしてくれた。
 
「ありがとう!」
と言って微笑んで受けとる。可愛い女子大生に声を掛けられて、彼は少し元気が出た。
 
結局、丸3日かけて整備した上で《こうちゃん6》は呟いた。
 
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「これ新品のフル装備の車を1台買って来て、渡した方が早かったかもしれん」
 
しかし、彼がこの車を整備(?)したことから、康子(現在66歳の若葉ちゃん)はこの車にこの先10年近く乗ることになる。その間の走行距離は20万kmを越えた。そして9年後の免許更新の時に反射神経の低下を指摘されて自動運転機能のある車に買い換えることになる。
 
でも康子が手放したこの車を買った20代の女性がその後5年6万km乗ることになる。廃車にした時の走行距離が50万km近く、「走る奇跡ですね」と言われた。
 

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