広告:オトコの娘コミックアンソロジー-~小悪魔編~ (ミリオンコミックス88)
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■春銅(14)

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「まあテストしてみればいいね」
と千里が言って、そのまま入団試験(?)になる。
 
「じゃ今日来ているメンバーと1on1をやってみるというので。誰か1人にでも勝てたら合格」
 
「はい」
と言って武者震いする。頑張れば1人くらいには勝てるかも。
 
それで最初に元日本代表ポイントガード・森田雪子が出てくる。
 
さすが代表を張るポイントガードである。ミナミは全く勝てなかった。
 
ついでキャプテンの竹宮星乃、副キャプテンの河合麻依子とやるが勝てない。次々と選手が出てくるが、全く勝てない。
 
1on1は休憩を挟んで続く。1度目の休憩では誰かのお土産らしい筑紫餅、2度目の休憩で牛丼!が出て来たのでびっくりしたが、みんな美味しそうに食べている。ミナミも食べてお腹も満ちて気分も少し変わる。
 
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休憩明けに若い志村美月とやる。こちらの攻撃では5回の内3回抜けた。向こうの攻撃は5回の内4回を停めた。
 
「ミナミちゃんの勝ち!」
とキャプテンの星乃が宣言する。
 
ミナミはホッとした。ホッとしたら調子が出て来て、その後、わりと勝った。
 
対戦は続いていき、結局16人の内、6人(志村美月・島田司紗・広丘聡美・後藤真知・森下誠美・呉服桂華)に勝てた。日本代表の森下に勝てたのはミナミ自身もびっくりしたが、彼女はセンターなので、必ずしもマッチングは上手くないことを割り引く必要があるなと思った。
 
「この成績ならロースター入り決定」
と星乃は言う。
 
「ということで、オイル(広丘聡美)はロースター落ち決定」
と星乃が告げると
 
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「え〜?」
と言って、その広丘聡美が頭を抱えている。その仕草がユーモラスだったので、ミナミはつい微笑んでしまった。
 
「まあオイルは練習して、私をロースターから引きずり降ろすといいね」
と現役日本代表・松崎由実が笑いながら言っていた。
 
ミナミはこのチーム、ほんとに楽しそうなチームだなと、このチームが気に入った。休憩時間中も和気藹々としていて、ジョークとかがたくさん飛んでいたし。
 
「だけど、ローキューツに居た須佐ミナミとは別人なのね」
と後藤真知が言う。
 
「そうそう。同姓同名なのよ」
と佐和国香が言った。
 

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なお、(こちらの)須佐ミナミは、立川社長、村山オーナーと話し合い、年俸600万円で契約した。来年以降は今期の活躍次第である。住まいについては、取り敢えず船橋市内の寮(寮費月5万円・朝夕食込み)に入ることにした。
 
取り敢えず常総ラボで受けとっておいた、アメリカで生活していた間の荷物は若生暢子さんが2トントラックを持って来て、数人の部員さんで積み込んで、寮に移動してくれた。みんな男性顔負けの腕力を持っている。
 
この寮は、40 minutes, Rocutes, 江戸娘(えどっこ)の3チームで共同運営しているもので、寮から練習場所(深川アリーナ・千城台体育館)及び船橋駅・西船橋駅との巡回バス(無料)も運行されている。2019年春に3チームのオーナー(千里・ケイ・マリ)の3人が共同で、中古マンションを土地ごと3億円で買い取ったものである(1人1億円ずつ出した)。
 
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実は極めて不便な場所にあったため、入居者が全く無く、所有していた千葉市内の会社経営者が買い手を探していたのを直接取引で買い取った(この会社はこのマンションを売ったことで資金に余裕ができてコロナ不況を生き抜くことになる)。
 

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地下1階・地上8階建てで、住居は2〜8階に設定されていた。2〜6階は1K×7戸、7〜8階は1K×1戸+2DK×4戸という構成で、合計45戸である。基本的には単身者向けのマンションである。
 

 
1階は管理人室、スタッフルーム、そして唯一の入居人であった焼鳥屋さんがあったのだが、この焼鳥屋さんには、そのまま営業継続してもらい、選手たちのために定食メニューなども設定してもらっった。結果的には寮関係の売上が8割ほどを占めるようになり、事実上の寮食化していくことになる。
 
本来は焼鳥屋さんだったのだが、親しくなった選手たちからの要望で、カレーライス、ラーメン、ハンバーグ、スパゲティ、などのメニューもできていく。店主さんがノリのいい人で「**作れない?」「よし。作ろう」などといって、高校生の娘さんに“監修”してもらって洋食メニューなども設定していった。
 
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おかげで“カレーライスやラーメンのある焼鳥屋さん”としてテレビや雑誌の取材まで受けることになった。
 
この焼鳥屋さん一家はこのマンションの7階に住んでいた(ほんとに唯一の入居者だった)のだが、1階の管理人室に移動してもらい、奥さんに寮の管理人をしてもらうことにもなった。
 

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このマンションの地下は(自走式の)駐車場だったのだが、千里は言った。
 
「ここをバスケットの練習場に改造していい?費用は私が出すからさ」
「まあいいよ」
 
それで千里はここにフローリングを敷き、ラインも引き、バスケットゴールも設置した。1週間ほどで改造終わったよというので、ケイは見に行った。
 
「結構広いね」
 
「元々の駐車場が自走式のためのスロープまで入れて32m×18mほどあったからね。それでバスケットコート28m×15mをひとつ取った上にシュート練習場まで作ることができた」
 
「マンション自体の建て面積よりずいぶん広いね」
「たくさん車を駐めるために敷地いっぱいまで地下駐車場を作っていたみたいね。駐車枠は20台分切ってあったよ」
 
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それで見ていたケイは重大な問題に気付いて言った。
 
「千里、質問がある」
 
「どうかした?」
「地下駐車場の天井って、こんなに高かったっけ?」
「男は細かいこと気にしない」
「私、女だけど」
「女はもっと気にしない」
 

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地下駐車場を潰してしまったので、車を駐めるスペースはマンション前面の地上駐車場だけとなる。ここは約18m×16mほど(マンションの建面積とほぼ同じ)あり、駐車枠の白線を暫定的に12台分引いておいた。
 
しかしたまたま通り掛かった若葉が言った。
 
「住人が45人もいるのに駐車枠が12台って足りないよ」
「一応住人が全員駐められるだけの駐輪場を作れば違法じゃないんだけどね」
 
「こんな不便な場所で自転車だけでは辛いと思う。スーパーも遠いじゃん。私が駐車場を建ててあげよう」
 
「へ?」
 
「立体駐車場ならたくさん収納できるよ」
「それ建設費が凄まじくない?」
 
「1億くらいで建つと思うけどなあ」
「このマンション自体を3億で買ったんだけど」
「男は細かいこと気にしない」
「私、女だけど」
「女はもっと気にしない」
 
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それで若葉は、勝手にここに機械式立体駐車場(垂直循環式)を2基、建ててしまったのである。2つの垂直循環式駐車場はひとつの建物の中に納められており(実際マンションの建物と一体化している)、システムとしては統合的に動くので、利用者はそのどちらに収納されたかを意識する必要はない。ボタンを押せば自分の車が収納されている側が回転して、その車を地上まで運んでくれる。
 
前面の垂直循環に21台、後の垂直循環に22台入るので合計43台の車を駐めることができる(前面に22台入れると後面の車が出せなくなるので21台で留める)。これに前面の地上駐車枠を入れたら、入居者全員に最低1枠の駐車枠を提供できることになった。
 
マンション前面のスペースは練習場や駅などとの“巡回バス”を停める他は来客用の一時駐車場としても利用できるようする。ただし無断駐車を防ぐため囲いを作りゲートも設置しており、住民に渡しているカード、また室内のパネル操作でゲートを開閉するようにしている。
 
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千里といい、若葉といい、わりと勝手な造作をする人が多いなとケイは思った。千里はきっと“体育館作りたい病”だ。
 
しかしこの地下練習場は千城台や深川まで行くのが面倒な時に結構使われることになる。
 

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なお、買物は忙しい人のために前日までに予約しておけば、スタッフでまとめ買いしておいてくれることになっており、スーパーなどに行かなくても生活できる。このシステムは特にコロナ流行でとても助かることになった。買物スタッフは食肉や野菜などは生産者から直接仕入れている(ヤフオクなども使う)ほか、不足するものの購入では、今年2月以降は、マスク・手袋・帽子をつけて人の少ない14時頃にドラッグストアやスーパーに買物に行っているらしい。
 
ミナミも食材はまとめ買いをできるだけ利用して、洋服などの購入もできるだけ通販を使うよう言われた。スポーツドリンクなど、また靴下などの消耗品も大量にストックされている。
 

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寮に入り、荷物も運び入れ、ここで暮らしながら毎日深川アリーナに行って練習をするようになって3日目。
 
ミナミは練習を終えてシャトルバスで寮に戻り、中に入ろうとしていた所で、買い物用っぽい肩掛け鞄を持った志村美月と遭遇した。彼女は駐輪場の方から来たようである。揚げ物(多分フライドチキン)の臭いがする。自転車でコンビニにでも行ってきたのだろうか。
 
「お疲れ様ー」
「お疲れ様ー」
と声を交わす。ミナミはエレベータの前に行ったが、美月は向こうの方に行く。
 
「予約していた食材の受け取りか何かですか?」
と声を掛けると
 
「食材は午前中に受けとっているけど、階段から行くから」
と美月は言う。
 
「ミツさん、何階ですか?」
「私は8階」
「8階まで歩いて登るんですか?」
「ミナちゃんは何階?」
「私は7階です」
 
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「この寮に入っている選手でレギュラー格の子はだいたい上の方の階に部屋が取られている。なぜだと思う?」
 
ミナミは考えたが分からなかった。上位陣は特別待遇で上の良い部屋??
 
「レギュラーを張るほどの選手なら、階段で足を鍛えて欲しいからだよ」
と美月は言った。
 
ミナミは驚いた。
 
「そうだったんですか!」
と言い、
 
「私も階段で行きます」
と言った。
 
「うん。頑張ろう」
「はい!」
 
それでふたりは階段の方に行き、そこを登り始めた。ちなみにミナミは703号室2DKだが、美月は804号室1Kの部屋らしい。
 
「いちばん頑張れということだと思っている」
「私も頑張ります」
「うん」
 
7階まで行って別れる所で、チキンを1個お裾分けしてもらった!
 
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