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■春銅(2)
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5月31日、博多での撮影が終わった後アクアは、山村マネージャーと一緒に福岡空港に向かうと称してレンタカーに乗り込んだものの、実際には山村はそのままレンタカー屋さんに乗り付けて車を返却し、自分とアクアを静岡県の白浜に転送してしまった!
アクアについては、新幹線や航空会社の飛行機は使用禁止!とTKRの松前社長からまで言われているので、アクアの移動には、千里所有の Gulfstream G450 を使うか、転送!している。
そういう訳で、今年は事実上のアクア専用機となっている G450 は実は飛行機大好きの山村が千里にねだって4年前に4億円で買ってもらった中古機体である。
江藤さんのG650でバードストライクがあった時に、怪我した機長に代わって操縦してくれたご褒美に買ってもらったもので、山村(こうちゃん)の“遊び道具”になっている。千里は「事故だけは起こさないように」とこうちゃんに言っているが、彼は時間があったら飛ばして楽しんでいる。彼は正規の G450操縦免許を所有している。こうちゃんは「免許無くても飛ばせるよ」と言ったが、使う以上ちゃんと免許を取りなさいと言い、G450を買う前の2015年にアメリカに行って取ってこさせた。
しかし今回は、伊豆にアクセスするのに適当な飛行場が無い!(いちばん近いのは多分羽田)という問題からG450 は使用せずに、転送にした。
そういう訳でアクアは明日、伊豆白浜で今度は清涼飲料水のCMに出演することになっている。今日はこの後オフなので、東京で休んでいたアクアFも呼び寄せ、2人のアクアでのんびりと美味しい御飯も食べてくつろいだ。
この日6月1日(月)、アクア、ドイツのミハエル・クラインシュミット、ブラジルのリョーマ・ケルナー、の3人が主演する映画『気球に乗って5日間』が約1ヶ月遅れで劇場公開された。
アクアは本来は公開日には都内の劇場に行って舞台挨拶する予定だったのだが、アクアが舞台挨拶するなんていったら物凄い人が押し寄せて密集してしまうのは確実なので、実は西村・新型コロナ対策担当大臣から直接、配給会社・中映の社長に電話がかかってきて中止になった(大臣から電話がなくても中止の方向で話し合っていた)。
それで事前にアクアと河村助監督が挨拶したビデオを当日ネットで公開することになった。
そういう訳でこの日は東京での舞台挨拶は無くなったので、福岡でのCM撮影を入れたのであった。
白浜の旅館では、夕御飯を食べた後、お風呂に行くことにする。時間指定制になっていて、アクアは19:30-20:00という指定だったが、FとMが一緒に移動するわけにもいかないので、各々、女湯脱衣室・男湯脱衣室の前まで《わっちゃん》に転送してもらった。
(こうちゃんさん(山村)はどこかに行っている。多分近くのメスの龍でもナンパしてるのだろう)
アクアFは服を脱いで浴室に入り、髪と身体を洗ってから、浴槽につかり、しばらくボーっとしていたが、誰かが浴槽に入って来たのに音で気付く。ふと見たら最初、ローズ+リリーのマリに見えた。
「ぎゃ」
と思い、わっちゃんに頼んで脱衣室に転送してもらおうかとも思ったのだが、よく見たらローズ+リリーのマリではなく、ローザ+リリンのマリナだ。
彼女なら問題無い。
「あれ、アクアちゃんか」
とマリナ。
「マリナさんですか。びっくりしたぁ。マリさんが来たかと思って逃げなきゃと思った」
とアクア。
彼女とはわりとリラックスした状態で、のんびりおしゃべりを楽しみ、やがて時間になったので、一緒にあがった。
Mと脳内で通信すると男湯にはケイナが入ってきたらしい。へー。ケイナさんは男湯に入れるのかと思った。ケイナさんは性転換した訳ではないんだろうか?去勢と豊胸だけ?去年名古屋の温泉の女湯で遭遇した時は間違いなく本物バストだと思ったし。でもおっぱいある人が男湯に入って大丈夫なのだろうか??
一方男湯に入っていたMも身体を洗ってから浴槽につかっていたらケイナが入ってきたので、Mも、へー、ケイナさんは男湯に入るのか?と思い、彼の身体を観察すると、ちゃんとちんちんが付いているので、性転換手術した訳では無かったのかと思う。じゃ、マリナさんだけ性転換手術したのかな?
あれ?でもマリナさん、妊娠したんだっけ?マリナさんを性転換させたのは誰なんだろう?何人か、妊娠可能になるような性転換をさせられる人を知ってるけど?などと考えていた。女湯に入っているFと脳内で会話すると女湯にはマリナさんが入っているらしい。
旅館の女将さんが言っていたのでは、浴室で密集が発生しないように、時間帯を細かくわけて1度に入るのは、2〜3組にするという話だった。それで入浴時間がわずか30分しかないのだけど、その“2〜3組”に偶然自分たちと、ローザ+リリンがぶつかったわけかと思う。
でも一般の人とぶつかって騒がれるより、ローザ+リリンの方がやりやすい、とMはFと脳内で話し合った。
Fはどうも時間ぎりぎりまで入っているつもりのようだが、Mは先にあがることにしてケイナと一緒にあがった。
ケイナとは浴槽の中で結構“男の話”をしたが、その内容はブロックして、Fには伝わらないようにした。Fはその手の話に興味を持ちそうではあるが。
その日は結局山村は戻ってこなかったので、旅館の部屋に山村とアクア用に2組布団が敷かれていたのに、FとMが1人ずつ寝た。仕事が忙しいので、温泉に浸かってから寝ると、ぐっすり熟睡し、疲れも随分取れた気がした。
翌朝(6/2)、朝御飯を食べてから、チェックアウトの時間になっても山村が戻って来ないので、放置することにしてアクアは自分で精算して宿を出たが、いいお値段のする宿だなあと思った。料理は美味しかったけどね!
宿の駐車場に“アクアのアクア”を転送してもらっている。この日はその“アクアのアクア”が2台並んでいたので、アクアは思わずスマホで写真を撮った。マリナさんが“アクアのアクア”を買ったと言っていたから、もう1台は彼女の車だろう。
それで結局アクアは《わっちゃんさん》に“アクアのアクア”を運転してもらい撮影現場に入った(よほどのことがない限り自分で運転するのは禁止とコスモス社長から厳命されている)。
それでアクアが《わっちゃんさん》=和城理紗(§§ミュージックのマネージャーにしてもらっている)及び別途来ていた高村マネージャーと一緒に、撮影担当の人やメーカーの人と打ち合わせをしていたら、やっと山村が来る。
「ごめん。ごめん。寝過ごして」
などと言っている。
打ち合わせの内容は《わっちゃんさん》が要点をメモしていたので、山村もそれを見て、問題無いと言った。
現在アクアはこのメーカーの清涼飲料水のCMをしていて、既に3年の付き合いなのだが、20歳になったら、同じメーカーのビールのCMに出て欲しいと言われている。その時は今CMをしている清涼飲料水は、ラピスラズリあたりに譲ることになるかも知れない。
ラピスラズリは今、§§ミュージック内でアクアに次ぐ歌手になってしまった。デビュー曲『亜麻い雨』がいきなり70万枚も売れ、5月に出たセカンドシングル『赤いセンターライン/夢見るからくり人形/青い傘』はミリオンを達成した。
アクアは“追われている”感覚を初めて感じている。
すぐにCMの撮影が始まる。
撮影は、早朝から高村友香マネージャーの運転するエスティマに乗って東京から来ていた信濃町ガールズの中学生4人と一緒に、白浜の美しい海岸でかき氷とかフラッペを食べ、清涼飲料水を飲み干すというシナリオになっている。
ガールズの中学生4人は(女子)水着姿だが、アクアはアロハ姿である。
(寒くないように実はカメラの死角で焚き火をし、休憩中は暖かい服を羽織らせている。暖かいスープやおしるこなども飲ませている)
アクアは
「ボクも水着でいいですよ」
と言ったのだが、男子水着を着せるか女子水着を着せるかでメーカー側の担当者の意見がまとまらず!「アクアさんはアロハで」ということになってしまった。
「ボクは男子水着でも女子水着でも着れますよ」
とは言ったのだが!
(過去には男子水着姿で出たこともある)
ところで和実が仙台で経営しているクレールの本店(若林店)だが、テイクアウトを拡充したことで、ドライブスルーに並ぶ人がたくさんできた。それで隣接する若林公園を所有する千里と交渉して、クレールの土地の一部と若林公園外縁の“半端な”土地の断片とを等価交換し、クレールの駐車場と若林公園の駐車場がつながるようにしている。
その結果、クレールの駐車場に入りきれない車が若林公園の駐車場で待機することができるようになった。実際には若林公園側の駐車場で待っている車の所までクレールのオーダー係のメイドさんがオーダー伝票(注文自体はスマホから可能なので9割以上の客が伝票に印刷されているQRコードからオーダーを入れてくれる)を配っている。
さて実はクレールの駐車場と若林公園の駐車場がつながったことにより、ここにあった道路(というより実は私有地を勝手に通行していただけだった)が切れてしまい、この道路(?)を使用していた近所の住人からクレームが入ったのだが、和実は
「駐車場は自由に横断して下さい」
と言った。ところが最初の内はそれで良かったのだが、ドライブスルーに並ぶ車が増えてくると、この“駐車場の横断”が困難になってしまったのである。
一応元道路(?)だった部分に白線を引き、この部分には停めないで下さい、と言っているものの、必ずしも守られないし、その指示が周知されていない。リピーターさんはそこを空けてくれるが、初めての人は分からないようである。
ずらっと待っている車が途切れなく並んでいると、そこを横切れないし、歩行者は危険な場合もある。
そこで再びクレール側にクレームが来た。
「どうしようか?」
と和実が困ったように言った時、たまたまこちらに来ていた“副社長”若葉が
「私が取り敢えず向こうの話を聞いてくるよ」
と言って、町内会に出て行った。
そして2時間後に戻って来た若葉は言った。
「立体交差化することにした」
「へ!?」
それは話し合っている最中に、住民の1人が
「いっそ車の上を飛び越えられたらいいんですけどね」
と言ったのに対して、若葉が
「それいいかも」
と言って、立体交差方式が検討されることになったのである。
「駐車場にたくさん車が停まっている中、そこを横断するのだから、駐車場の上か下に通路を通せばいいんですよ」
と若葉は言った。
つまりオーバーパス(橋)かアンダーパス(地下トンネル)を作ればいいという案であった。若葉はその費用は全部こちらで出すと明確に言ったので、その後はオーバーかアンダーかという話し合いになった。
地下トンネルは費用がかかるのではと心配する声もあったが、若葉は大丈夫ですよと言った。それで双方のメリット・デメリットを検討する。
・アンダーにしてもオーバーにしても、車は良いが歩行者は辛い。
→若葉からアンダーの場合は、動く歩道を設置すると表明。オーバーの場合は雨雪に曝されるので設置困難であるとした。
・オーバーパスを通る車の騒音が結構遠くまで響くことが考えられる。
・オーバーパスは夜間通過している時に、道路の端を見誤ると転落の危険がある。また、風が強い時に歩行者が転落する危険がある。
→若葉から、オーバーの場合は、転落防止も兼ねて防護壁を作ると表明。
・アンダーパスの場合、大雨になった時に水没するのでセンサーなどによる通行止め制御、排水ポンプなどの設備が必要。
・オーバーパスの場合、除雪がわりと大変である。
などのポイントが出た。若葉はアンダーの場合、センサーによる通行止め制御システムの導入や排水ポンプの設置、雨水流入防止設備の設置費用は全然構わないとした上で、騒音問題と転落の危険・積雪などを考えると、アンダーパスの方が良さそうですねと言い、町内会側も、そのあたりの費用をクレール側で負担してもらえるのなら、アンダーパスの方が良さそうだということでまとまった。
「まあ、そういう訳で駐車場の下にアンダーパスを作るから」
「それ費用が1億円くらいかからない?」
「千里が所有する若林公園側に通路を作れば千里が費用は出してくれるよ」
「え〜〜〜!?」
「実際、クレールの駐車場の下を掘ると、女子寮とクレールとを結んでいる通路や、2号店との連絡通路にぶつかっちゃうんだよ」
「あぁ」
「元の道路より公園側を通せば、そのどちらの通路ともぶつからずに道路を通すことができる」
「できるんだ!」
「結果的に地下10mくらいまで潜り込むことになるけどね。直線で結ぶより40mほど長くもなるけど、そのくらいは構わないと町内会さん側も言ってくれたから、そのルートで作ることにする」
「じゃ任せた」
「OKOK」
それで若葉は播磨工務店の青組(若林店2号館を作ったチーム:実は地下の通路の状態を正確に把握している)に勝手に指示を出して、半月ほどでこのアンダーパスを作ってしまった。費用も勝手に千里の口座から播磨工務店の口座に振り込んだ!(つまり千里は何も聞いてない)
このアンダーパスでは、車がライトをつけなくてもいいくらいまで明るくしている(道交法では、視界が50m以上確保できるトンネルではライト点灯は不要である)。また、地面から約10m潜り込むので、町内会との話し合いでも約束したように、歩行者用に動く歩道(出入り口付近は事実上エスカレーター)も設置した。(動く)歩道と車道の間はガードパイプと透明アクリル板で区切っている。
また雨水対策として出入り口の所に雨水をキャッチするための溝(地表面はグレーチング)を設置し、またトンネル内にも水を吸い上げるためのポンプを設置して、コンピュータ上のシミュレーションでは1時間に300mmの集中豪雨にも耐えられるという計算結果が出ている。それでも雨がトンネル内に溜まり始めた場合は、赤信号が点灯し、クレールまたは若林公園のスタッフが、バリケードを閉じて通行できないようにする(自動で閉じると、無理して突っ込んできた車が脱出できなくなる場合があるので閉じるのは手動)。
そういう訳で工事は1ヶ月ほどで完了した。
「もうできたんだ!」
と和実は驚いた。
「まあ播磨工務店さんならこんなものでしょ」
住民側からは、助かる助かると喜びの声があがっていた。それどころか、この道は小学生の通学路に指定されてしまった!
そもそも通行量は1日に数十台のレベルで車の通行が少ない上、大型の送風機で換気もされていて、トンネル内の照明も明るいし、雨にも濡れなくて済むので、小学生だけでなく近所の主婦なども買い物に使うようになり、かえって人間の通行量は増えた!。
若葉は更に住民の要望に応えてアンダーパスの前後100mほどの(公園敷地内の)歩道にまで、屋根を取り付けてしまった。それでここは雨・雪を避けて快適に通行できる道になったのである。なおここで照明を点けたりポンプなどを動かすのに使用する電力は、その屋根の上に取り付けた太陽光パネルである(これを設置する前はクレール2号店側から供給していた)。
和実は急に気になった。
「これ、ちゃんと開発許可取ってるんだよね?」
「さあ。そもそも私有地内の造作には許可は要らないと思うけど」
「本当に?」
「必要なものがあったら、播磨工務店さんが取ったんじゃないの?」
和実は一瞬考えたものの、気にしないことにした!
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