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■春銅(21)

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(C)Eriko Kawaguchi 2020-11-22
 
「次はお化粧してみよう」
と言われ、恵馬はドレッサーの前の椅子に座った。
 
「産毛(うぶげ)を剃ろうね」
と言われ、最初にハサミでもみあげの毛をきれいに切られた後、三枚刃の女性用カミソリで口周りを中心にきれいに“産毛”を剃られる。
 
「あんた顔の産毛は薄いね。あまり剃らなくてもいいでしょ?」
「週に1回くらいかな」
「うんうん」
 
それから眉をカットされた。最初に眉毛コームを当ててそこからはみ出す眉毛を全部眉毛ハサミで切られる。その上で眉毛自体、細く残して下側をきれいに切られる。
 
「眉毛切る時は上側を切らないこと。下側を切るのが基本」
と言われる。
 
しかし眉毛をカットされただけで顔の印象がガラッと変わったのでびっくりした。
 
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顔全体を化粧水を染み込ませたコットンで拭かれる。化粧水が肌に浸透していく感じが心地良い。ついで乳液を付けられる。顔全体にファンデーションを塗られる。
 
アイメイクに行く。アイカラーを濃淡2段に塗られる。アイライナーを目の周囲に塗られるが、アイライナーペンシルが目に刺さりそうでわりと怖かった。アイブロウペンシルで眉を丁寧に描かれる。なんかすごいきれーいと思う。
 
「眉毛って1本ずつ描くんですね」
「そうだよ。なんで?」
「うちのお母ちゃんとか、すーっと横一線で描くだけだから」
「それは古い流儀だね」
「へー」
「最近は自然な眉毛に見えるようにちゃんと1本ずつ描くんだよ」
「ああ」
 
マスカラをたっぷり塗られる。こんなにたくさん塗るのかと驚く。ビューラーでカールを付けられた。下睫毛にもマスカラを塗られる。そんな所にも睫毛があったのかと驚いた。上睫毛は意識していても、下睫毛は意識したことがなかった。
 
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目がパッチリとして、睫毛も長くカールしていて、凄く可愛い目になった。少女漫画のキャラみたい、なんて思う、
 

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大きなブラシを使って、チークをまた濃淡2段に入れられた。
 
唇の所を紅筆で輪郭をまず入れられる。
 
「最近はこの輪郭を塗らずにボカすのが好まれるけど、今日は基本で輪郭を取ってみよう」
「はい」
「イーっとして」
というので「イー」と発音するように唇を広げる。唇の端までしっかり塗られる。そして輪郭の中をきれいに塗られる。口紅のリップスティックは使わないのかな?などと思った。その口紅の上にグロスを塗られる。輝く感じが可愛い。
 
これで完成だか、元の自分の顔とはまるで別人のような美少女になってしまったので恵馬は本当に驚いた。
 
「まあ可愛くなるのがメイクアップ。しばしばおばちゃんたちの化粧はメイクダウンになってる」
 
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「あはは」
 

「“仮名E”ちゃん、買い物しに街に出てきたと言ってたね」
「はい。フルートのクリーニングペーパーを買いに来たんです」
 
恵馬は“仮名E”、恵馬を美少女に変身させてくれた女性は“仮名A”ということになっていて、お互い本名は名乗っていない。
 
「だったら、この格好でその買い物をしてくるといいね」
「え〜〜〜!?」
 
こんな格好で道を歩いていたら、変態と思われて逮捕されないだろうか?などと変な不安が心をよぎる。
 
「私が一緒に付いて行ってもいいけど」
「お願いします!」
 

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西湖は住んでいたアパートの建て替えのため、7月下旬から代々木のアクアのマンションに居候していたのだが、荷物を全部持って行くのも大変なので、大半の荷物は、この土地の南側にある小さな家に置いていた。
 
これは元々ここに建っていて千里が土地ごと4000万円で買い取った家ではなく、それが土地のリセットで壊れてしまった後、こうちゃんがどこからか持ってきた家である。こうちゃんは“ヴィラ”と呼んでいた。西湖は分からなかったが、千里は、ドイツ語やフランス語で別荘を意味する単語だろうと言っていた。あの後こうちゃんが手続きをして、水道は引いてある。電気は電力会社とは契約せずに、太陽光パネルを載せて自家発電している。電話はスマホを使うから特に必要無い。テレビは置いてないからNHKとも契約していない。ガスはあまり使わないだろうしガス漏れ事故も怖いということで無しだが、代わりにIHヒーター・電子レンジ・オーブントースター・ケトルを彼は置いていった。
 
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ここは本当に小さな家で建面積7坪の2DKである!
 

 
ある日、この家の前をヴィトンの本革アタッシェケースを持ちダンヒルのスーツを着てグッチのネクタイを締め、髪はきれいに七三に分けた“できる”感じの営業マン風40歳前後の男が通り掛かった。この家の、小さい割におしゃれな外観に目を留める。
 
「まるで貴族のお屋敷の離れを切り取って持って来たような贅沢な家だ」
と彼は思わず呟いた。
 
玄関のベルを鳴らしてみる。
 
「すみませーん」
と声を掛けるが返事は無い。
 
男は隣接地でマンション工事か何かをしているのを見ながらアタッシェケースを開ける。手袋をしてから、何か工具のようなものを取り出した。
 
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10分ほど掛けて彼はドアを開けた。
 
サムターン回しをすれば1分も掛からないのだが、彼はこのあまりにも豪華なドア(多分ドアだけで300万円はすると見た)に傷をつけるのは忍びなかったのである。しかし鍵は旧式のシリンダー錠なので、熟練のピッキング技で鍵自体も壊さずに開けることができた。
 

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中に入る。
 
1階はバス・洗面所兼脱衣室・トイレの他は、居間兼キッチンになっているようである。寝室は2階にあるタイプかなと判断する。キッチンの水引の戸棚など引きだしてみるが、銀のスプーン・フォークなどが入っている。無造作に立っている箸は輪島塗だ。そもそも水引に並んでいる食器も深川製磁が大半で、マイセンもある。お椀は山中塗とみた。やはりお金持ちの別宅か何かとみる。こういうお金持ちの家には無造作に札束が数千万円転がっていたりするものだ。やはりここに目を付けて正解だったと彼は考えた。今日はラッキーデイだなと思う。
 
(7-8分後に後悔する羽目になることを彼は知らない)
 
階段を登って2階に行ってみる。登り切った部屋は衣装ケースやビニル製ロッカーなどが並んでいる。衣装部屋のようだ。襖を開けて次の部屋に入る。
 
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サンダルウッドの香りがする。お香を日常的に焚いているのだろう。
 
エレクターのラックに楽器ケースがたくさん置いてある。クラビノーバもある。本棚に多数のCD・楽譜集。そしてワーキングデスク・・・というより学習机?ノートパソコンも載っているが、3オクターブ半のMIDIキーボードが接続されている。
 
もしかして音楽家の作業場所だろうか?
 
机の引出しを開けてみる。4段目は生理用品、3段目はノート、2段目に五線紙がたくさん入っていて1段目は筆記具である。大きな引き出しには教科書類が入っている。高校音楽IIなどと書かれているものもある。
 
音楽学科の女子高生か?
 
まあ生理用品を使う以上は女だろう。男には生理用品は不要だ。
 
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本棚の方かな?と考える。
 
本棚下部にある引出しを開けようとした時、突然声を掛けられた。
 
「どなた様ですか?」
 

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それまで全然人の気配が無かったので胆を潰す。振り向いてみると18-19歳くらいの感じの女の子だ。
 
「あ、すみません。電気設備の点検だったのですが、どなたかおられないかなと探していた所でした」
と立ち上がりながら言い訳をする。
 
「ふーん。それでお金のありかを探していた訳だ」
 
女の子はこちらを全然怖がっていない。もしかして武道か何か、腕に覚えがあるのかも知れないという気がする。結構な威圧感も感じる。ただ者ではない。
 
「また参ります」
と言って男は逃げ出し、階段を駆け下りた。
 
それで玄関の方に行くと、玄関の前に今の女の子がいる!
 
嘘!?
 
「あんた常習犯じゃないの?サムターンせずにピッキングでドアを開けちゃう所とか、凄く上手かったし、引出しを下から順に開けていたし。素人なら上から順に開けるもんね」
 
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見てたのか?
 
しかしどこに居たんだ?それにいつの間にここに回り込んだんだ??
 

確か階段の近くにドアがあった気がする。あれは多分勝手口だ。鍵が掛かってないかという不安はあるが、そちらから逃げられないかな?と思う。それで振り向くと、階段の上からもその女の子が降りてきて、彼の前に立ち塞がった。
 
男は前後を見る。
 
双子だったのか!?
 
しかし何とかして逃げなければならない。相手は女の子だ。多少空手か合気道かするにしても、突破すれば何とかなるのでは?と思い、男は(勝手口はロックされている可能性があるので)玄関の前にいる女の子の横を突っ切ろうとした。
 
ところが女の子が唐突に虎に変わってしまったのである。
 
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ビクッとして立ち止まる。
 
虎が「がぉっ」と咆哮する。
 
「ぎゃっ!」
と声をあげて、男は恐怖のあまり失神した。
 

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ツンツンとユキが男を指でつついてみるが、完全に気絶している。
 
「こんな所で倒れられても邪魔なんだけどなー」
「誰か呼んで来るよ」
と言ってツキが隣で工事をしている播磨工務店の人を呼んできた。
 
「ふーん。こそ泥か。じゃ、適当な所に“捨てて”くる」
「よろしくー」
 
それで彼は気絶している男を片手で掴むと、どこかに飛んで行った。彼が男をどこに“捨てる”のかは知らない。死ななきゃいいけどね、とユキは思った。
 

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「だけど錠も壊さず、ドアも壊さずによく開けるよね〜。荒っぽい泥棒でなくて良かった。ドアごと交換とかになってたら、このドア200万円くらいはするから」
 
「でもこの鍵、やはり不用心じゃない?」
「うん。シリンダー錠なんて昭和の遺物だし」
 
「誰かに頼んでもっといい鍵に交換してもらおうよ」
「どうせなら電子ロックがいいよね」
「サムターンがついてなくて、内側からも電子的に解錠するタイプ」
などと、ユキとツキが言っていた時、
 
「こんにちはー」
と言って、西湖がやってきた。
 
「西湖ちゃん、おかえりー」
「ただいま、ユキさん、ツキさん。何も無かった?」
「うん。別に何も無かったよ」
 
そういう訳で、この家には、ユキさん・ツキさんという、おキツネさんの姉妹がお留守番して住んでくれているのである。西湖の部屋に日常的に出没している子たちよりはお姉さんで、2人とも尾が2本ある。
 
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西湖は数日に1度、ここに荷物を取りに来ては、ユキさん・ツキさんと色々話していた。
 

「そうだ。ユキさん・ツキさん。橘ハイツで、1階の調理室で作った御飯を男子寮生たちの部屋まで配達する係を探しているんだよ。ユキさん・ツキさん、そんなのしない?男子寮が深沢に移転したら、仕事場もそちらに移動するけど」
 
「ああ。それも面白いかもね」
「深沢程度ならいいよー」
「その時はそちらにも“鏡”のコピーを置いて」
「うん。それは千里さんに頼むよ」
 
「でもタレントの卵なら、格好いい子いるかなあ」
「むしろ女の子になりたい男の子が多いかも」
「そういう子は女装の味を覚えさせるのもよい」
「下着の通販のカタログを配っちゃおう」
「お化粧も教えてあげよう」
「性転換手術の代金くらい貸してあげてもいいし」
 
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と危ないことを言っている。
 
(カタログは本当に川崎ゆりこが配っていた!)
 

ユキ・ツキが結構乗り気なので、西湖は8月13日に2人をちょうどこちらに来たコスモス社長に紹介すると
 
「うん、採用」
と社長は2人を見るなり履歴書もチェックせずにOKを出した。更に
 
「ちなみに、君たち双子の女の子デュオ歌手として売り出す気はない?」
などとスカウトしていた!
 
ユキさん・ツキさんは断ったが、コスモス社長は残念そうであった。
 
「ちなみにちょっと性別誤魔化して、双子の美少年デュオ歌手でもいいけど」
「男装はちょっと興味あるけど、パスで」
 
それで2人は基本的には橘ハイツ南側の小さな家“ヴィラ”に住んでいて、日中は橘ハイツの方に来て、食事の配達や、フロントに座って荷物などを受けとる仕事をすることになったのである。
 
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男は「君、君」と呼ぶ声に意識を戻した。
 
「君、外来の人?このエリアは一般の人は立入禁止なんだけど」
「え?ここどこですか?」
「ここは東京拘置所だけど」
「え〜〜〜!?」
「そこに転がってる鞄は君の?」
「あ、はい」
「ちょっと事情聞かせてもらっていい?」
 
彼は2日後には、ここに“正式に”入ることになる!
 

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