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■春銅(16)

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351号室が浴室ですからと言われていたよなと思い、そこのドアを開けて入る。中には誰も居ないようだ。換気扇が動いている。きっと換気に気をつけたいるのだろう。脱衣籠がいくつもあり、消毒済の札が貼られている。「使った後はこちらへ」という掲示もある。そこに重ねて後で消毒するのだろう。
 
吉田は服を脱ぎ、タオルだけ持って中に入った。
 
髪を洗い、身体を洗ってから、湯船に浸かっていたら、何か足が痛いような気がした。打ち身かなぁ、などと思い、そこを揉みほぐした。追突はムチ打ちが怖いのだが、先輩も吉田も衝突時には頭をヘッドレストに付けていたし、衝突も低速だったせいか、首の付近はなんともない。
 
お湯がとってもいい湯加減で、それで吉田はうっかり寝そうになった。
 
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慌てて起きる。
 
壁の時計を見たら21:02である。
 
しまった!21:00までに上がってくださいと言われていたのにと思い、慌ててあがる。
 
身体をバスタオルで拭き、ちょっとためらいはあったものの、ショーツを穿き、ブラジャーは考えたけど省略してキャミソールを着た。
 
その時、突然浴室のドアが開いたのである。
 
え!?
 
と声を出しそうになった。
 

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入ってきたのは女性である。17-18歳くらいに見えた。女子高生だろうか?
 
「あ、すみません。まだ入っておられました?」
「いえ。もうあがります」
 
と言うと、吉田はキャミソール・ショーツの上に病院着を羽織った。
 
女性は
「失礼しまーす」
と言って中に入ってくると、病院着を脱いでしまった。彼女の下着姿が露わになる。
 
待て。男の俺がいるのに、なんでこの子堂々と脱ぐのさ?と思ったが、早く出た方がいいと思う。それで吉田は病院着の紐も結ばずに、脱衣籠の中の服を抱え、籠は「ここに置いてください」という所に置く。ブラジャーを落としてしまったので拾う。そして
 
「ではおやすみなさい」
 
と言って、浴室を出た。そして病室に戻ったが、お風呂に入ったせいか眠くなって、すぐに眠ってしまった。
 
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翌日は6時に目が覚める。看護助手のおばちゃんが来て、体温と脈拍を測られた。昨日はお風呂に入っていて足が痛い気がしたのだが、今は特に痛くない。
 
7時に朝食が運び込まれてきたので食べる。食器を廊下のワゴンに下げてからベッドに戻り、スマホでニュースなど見ていたら、7時半頃、看護助手の人が入ってきて、この時、初めて病室の各ベッドを囲っているカーテンが全部開けられた。
 
吉田はまだスマホのニュースを見ていたのだが、何か微妙な違和感を感じて、病室内を見回した。
 
あれ?
 
と思った。
 
実は自分以外の入室者が全員女性なのである。
 
みんな年齢の高い人ばかりである。
 
6人部屋だが、真ん中の列を使わずに4人だけ入れているようである。
 
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左側のベッドは60歳くらいの女性、左前は80歳くらいの女性、正面は40代くらいの女性である。
 
最近はあまり男女気にせず病室に入れるのかなあ、などと吉田は思った。
 
8時頃、診察室に来てくださいと言われたので整形外科の診察室に行く。
 
「どこか痛いとかはありませんか?」
「昨日お風呂に入っていた時に右足のこのあたりが痛い気がしたのですが、今はもう痛くないです」
 
「そこMRIで見てみようか」
と言って、吉田はリアルタイムMRIの部屋に行った。
 
「どのあたりが痛かった?」
「このあたりですが」
 
「うーん。特に異常は見られないなあ」
「だったら気のせいでしょうかね」
 
医師はその周囲もかなり見ていたが、特に異常は見られないようだった。
 
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結局、何かあったら受診してくださいということで退院許可が出た。それで吉田は病室に戻り、荷物をまとめて、同室の人たちに
「退院します。みなさんお大事に」
と声を掛けてから病室を出た。312号室を覗いてみたが、先輩は居なかった、先に退院したか、あるいは診察中か。
 
なお銀行に退院することを報告すると
「念のため明日まで自宅療養して。明後日から出社して」
と言われたので、自分のアパートに戻ることにした。
 
なお、病院代は後日会社から支払われるということだったので、吉田個人は何も払う必要は無かったが、医療費の金額のメモだけ渡された。電話で銀行に金額の報告もしておいた。
 
なお退院の際に、次受診する時のためと言われて診察券を渡された。
 
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診察券には
 
《吉田邦生 1997.08.28生 F》
 
と印刷されていたのだが、"F"という表示に問題がある(?)ことに、吉田は全く気付かなかった!
 

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“桃香”は健康診断を終えた後、病院を出て駅まで歩いて戻る。
 
その途中で千里と遭遇した!
 
やばっ!と思った。
 
千里は京平・奏音・早月・由美を連れている。
 
「桃香、ここで何してるの?」
「いや、ちょっと用事があってこちらに出て来たんだよ」
「どんな用事?」
「いやもう終わったんだけどね」
 
「だったら、ディズニーランドに付き合ってくれない?京平が早月たちを連れていってあげたーいとか言うから出て来たけど、1人で子供4人は、なかなか辛いと思ってた」
 
「分かった、付き合うよ」
 

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早月が「おかあちゃーん」と言って、“桃香”に抱きつく。結局、“桃香”が早月と奏音の手を引き、由美を抱っこした千里が京平の手を引いて、ディズニーランドに入園した。代金はむろん千里が全員分払う。
 
小さな子供連れなので、ジェットコースターのようなものには行かない。
 
蒸気船マークトウェイン号に乗ったり、シアター系のものを見たりするが、これだけでも結構楽しむことができた。京平はイッツ・ア・スモール・ワールドを随分気に入っていたし、早月と奏音はシンデレラのフェアリーテイルホールに見とれていた。アリスのティーパーティーは、京平と桃香で乗って来た。早月・奏音には「あんたたちにはまだ早い」と言っておいた。
 
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たっぷり遊んで夕方、パークを出る。
 
「千里、ここまでどうやって来たの?」
「セレナに子供4人乗せてきたよ。チャイルドシートを4つ取り付けられるから便利。助手席に桃香が乗れるから一緒に浦和に帰る?」
「あ、うん」
と答えながら、桃香は、やばいやばいと思っている。
 
ところがそこに電話が入ったのである。
 
「あ、はい、はい」
と千里が相手と話している。
 
「分かりました。取り敢えずそちらに向かいます」
と言って電話を切る。
 

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「急用?」
「うん。桃香は日帰りの予定だったんだっけ?」
 
「いや、3〜4日滞在する予定で実は“ホテル”取っておいたんだけど」
「何だ。だったら、悪いけど、この子たちをそちらに連れてってくれない?セレナ運転して」
「私が運転しても大丈夫?」
「浦安から“緑区”くらいまではぶつけないよね?」
と千里が言うので桃香は
 
季里子の家に泊まっているのがバレてる〜!と思う。
 
「女の子だけなら一緒に泊められるよね?京平は性転換する訳にもいかないし、仕事中おとなしくしてるだろうから私が連れてくから」
「分かった」
「それで早月たちは、7月4日の朝、川島さんちに連れてきてくれない?」
「了解」
 
桃香は完全にバレてる〜と思った。
 
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「あとさ、桃香、保証人が2人必要でしょ?1人は私が署名してあげるよ」
「なんでそんなことまで知ってるの〜〜?」
 
でも助かるので、桃香は身元保証書を出して千里に署名捺印をしてもらった。
 
「川島千里じゃなくて、村山千里なの?」
「近いうちに籍を抜くから、フライング」
「ああ。抜くんだ?」
「結婚したいからね」
「えっと、誰と?」
「むろん貴司とだよ」
「彼、離婚したの?」
「まだだけど、離婚は近いと思う」
「へー」
「心配しなくても、“もう1人の桃香”とも結婚してあげるから。だから重婚かな。桃香も重婚だから、いいよね?」
 
やはりどうも全てバレているようだ。
 
「保証人のあと1人は洋彦(きよひこ)おじさんに頼んだら?親戚の方がいいんでしょ?」
「でも70歳未満と言われたんだけど」
「洋彦おじさんは1950年の12月生まれじゃなかったっけ?」
「そうか。まだ69歳か!」
「農業は、身体が動く限りは定年とか無いから、信用度は高いと思うよ。あまり景気にも左右されないし」
「それはあるよな」
 
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それで桃香は洋彦伯父に電話してみると、保証人はOKということだった。
 

セレナに奏音・早月・由美を乗せ、桃香が運転席に座って、セレナは出発する。千里は実は《いんちゃん》に助手席に“不可視”状態で乗って、桃香が危ない運転をしないように見てて欲しいと頼んでいる。
 
千里自身は、ドライバーの矢鳴美里さんがアテンザを運転して迎えに来てくれたので、それに京平と一緒に乗って、呼び出されたスタジオに向かった。
 
用事は楽曲の簡単な修正だった。すぐに修正は終わり、9時頃には浦和に帰ることができた。この日は彪志が先に帰っていて、御飯を作ってくれていた!
 
「ありがとう!」
 
「あれ?早月ちゃんたちは?」
「ちょっとお友達のところにお泊まり」
「千里さんは一緒でなくていいんですか?」
「うん。桃香の親戚の家なのよ。京平は幼稚園があるから連れ帰ってきたけど、女の子3人は7月4日まで預かってもらうことにした」
「ああ、それがいいかも。千里さん、本当に忙しそうだもん」
と彪志も言った。
 
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なお、この日、千里2のほうは福岡の金田町に行き、アクアのヌード写真撮影に立ち会っている。
 

千葉の紫尾家では、早月たちは大歓迎された。早月は季里子を見ると
「あ、きーママだ」
と言って、なつく。
 
しかし季里子は
「桃香がこのセレナを運転してきたの?どこにもぶつけなかった?」
とまず別の問題を心配した。
 
「ちゃんと慎重に運転してきたよ」
と答えつつ、危うく壁にぶつけそうになったのは、ギリギリでブレーキが間に合ったからなあと内心冷や汗を掻いている(いんちゃんもその瞬間は冷や汗を掻いた)。
 
「でもどうしたの?」
と季里子は訊いた。
 
「7月4日に信次さんの三回忌があるから、それに出るのに子供たちを連れて千里が出て来たんだよ。でも千里は忙しいから、4日まで預かってくれないかと言われたんで、取り敢えず預かってきた」
 
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「ふーん。千里さんと会ったんだ?」
「何もしてないよ」
「まあ子供連れては変なことはできないよね」
 
季里子としても最近桃香はあまり浮気はしていないようなので、まあ信用してもいいかなと思った。
 
「奏音ちゃんは優子ちゃんの娘か。似てるね」
「よく似てるよな。縮小コピーって感じ」
 
この日はホットプレートを2つ出して焼肉をしたので、奏音も早月も楽しそうであった。来紗と伊鈴も久しぶりに早月と会ったので、なんかハグしてた!むろん奏音ともすぐ仲良くなった。
 
寝る場所は、元々子供部屋を来紗・伊鈴・早月・由美の4人で使えるように衝立で4分割しているので、そこに来紗・伊鈴・早月・奏音が寝て、由美は小さいので、桃香・季里子の部屋に一緒に寝せた。
 
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でも子供部屋の4人の女の子たちは遅くまでおしゃべりとかしていて、季里子の母に叱られた。
 
この体制で7月4日朝まで紫尾家は賑やかな状態が続くのであった。
 
そして早月たちが居ないので京平はお母ちゃんを独占できて、嬉しそうであった!
 

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なお、伯父のところに保証人の署名をもらいに行く件は
 
「桃香が運転するなんて危ない」
と言って、季里子が早朝から自分の車(アクセラ)に桃香を乗せて往復してくれた。
 
それで桃香は6/30の朝一番に身元保証書と健康診断書を会社に提出することができた。
 
 
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