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■娘たちの面談(23)

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「それでこの時は度重なる海賊版騒動でJASRACに呼ばれて注意されまして」
と町添さんが笑いながら言うと
 
「それは大変でしたね」
と政子の父も笑っている。晃義もその“海賊版”自体が恐らくケイと町添さんが自ら仕掛けたものであることを言外に感じ取ったようである。
 
「その時JASRACから、7月までに必ずローズ+リリーのCDを一般の人が買える形で発売することを約束させられました。それで出した2枚目のアルバム『After 2 years』が現在までに52万枚売れています。そしてその後の
『夏の日の想い出』が先ほども言いましたようにミリオンです」
 
「分かりました。あの子たちは私が思っていた以上に人気なんですね」
 
「ええ。それでぜひ本格的な活動についてご両親の許可が頂きたいと思いまして」
 
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「ご主旨は分かりましたが、もう少し検討させて頂けませんか?」
「はい。よろしくお願いします」
 
両親と町添さんの対談はお昼を挟んで夕方近くまで続いた。
 

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12月27日(火).
 
この日は関東ドームでラッキーブロッサムのラストライブが行われた。千里たち元DRKのメンバーは鮎川ゆまから招待され、これを見に行った。
 
実際に行ったのは下記の10人である。
 
千里、蓮菜、花野子、梨乃、鮎奈、京子、麻里愛、孝子、留実子、恵香。
 
この時期のゴールデンシックスの正メンバーは花野子・梨乃・鮎奈・京子の4人で、音源製作の時は蓮菜も参加している。つまりこの時点ではゴールデンシックスを結成した時に、花野子が新たにスカウトしてきたメンバー(希美・香奈絵・真乃)は全員退団して元DRKのメンバーしか残っていない。その5人のほかに千里と麻里愛は作曲担当として関わっている。
 
以上7人の他に関西から呼んだ孝子、北海道から呼んだ留実子と恵香で10人となった。それ以外のメンツはバイトや勉強などで都合が付かなかった。京都・北海道から来た3人の交通費・宿泊費はゆまが「アゴ・アシ・マクラは出しますから」と言ってくれたので、ありがたく出してもらった。
 
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千里たちはライブが始まる前の楽屋にもお邪魔し、差し入れのシュークリームなどを渡した。御礼にラッキーブロッサムのメンバーが色紙に寄せ書きを書いてくれた。これは宝物である。花野子が保管しておくことにしたが、その場で全員自分の携帯で写真を撮った(千里の分は蓮菜が撮影してくれた)。またここに来てないメンバーにもデータで送ってあげた。
 
ライブは興奮のルツボであった。過去のヒット曲を合計28曲演奏。最後はゆまが体力を使い切ってふらつくほど全速力で駆け抜けていった。ゆまが所属していたドリームボーイズのダンスチームの仲間も駆けつけてきてパフォーマンスを披露したし、ゆまの友人の宝珠七星、ドリームボーイズのサックス奏者・野村博之と3人でサックスの三重奏をするパフォーマンスもあった。
 
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ライブが終わって会場を出た時、千里は桃香からメールが入っていることに気付いた。電話してみる。
 
「どうしたの?桃香」
「いや、実家に里帰りしようと思ったんだけど、全然予約が取れないんだよ。千里、今誰かから車を借りたりしてないよね?」
 
「1台ATの車を借りてるけど」
「ATだと助かる。もし千里、北海道に里帰りしないなら、一緒に高岡に行かない?」
「まあいいかな」
 
どっちみちオールジャパンがあるので、横須賀から網走までバイクで走るのはそれ以降である。
 
それで千里は千葉L神社に奉仕している《きーちゃん》と話をした。
 
『きーちゃん、悪いけど、アウディを運転して高岡まで行ってくれない?』
『それはいいけど年末年始の神社のバイトは?それに青葉と会ったら千里じゃないことに気付かれるよ』
『うん。だから途中の行程だけ代行して欲しいんだよ。向こうに着いたら私と交代』
『なるほど〜!』
 
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それで千里自身はライブが終わった後は、千城台の体育館に行ってローキューツのメンバーと練習をし、一方《きーちゃん》が桃香を迎えに行くことにした。
 
《きーちゃん》は神社のお勤めを27日の夜10時で辞した後、西千葉駅近くの立体駐車場に駐めているAudi A4 Avantを運転して桃香のアパートに行き、桃香を拾った。
 
「あれ?これ外車?」
「でも右ハンドルだから国産車と同じだよ」
 
「でもなんか高そうな車だ」
「ATだから桃香も運転できるでしょ?」
「ぶつけたらどうしよう?」
「保険に入っているから、大きな損傷はそれでカバーできるよ」
「だったら何とかなるかな」
 
それでコンビニに寄って非常食と飲み物を確保した上で、高岡に向けて夜0時頃、出発した。桃香と2時間程度で交代で運転することにした。
 
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それで千葉から上里SAまで(138km)を桃香、軽井沢と妙高高原で濃霧が発生して難易度の高い上信越道経由名立谷浜SAまで(218km)を《きーちゃん》、呉羽PAまで(117km)を桃香が運転する。
 
桃香が運転している間、《きーちゃん》は後部座席で寝ているのだが、その間は《いんちゃん》が桃香の運転を監視して、危ないことはさせないようにしていた。実際車が高そうだということから、今夜の桃香は慎重に運転したのでトラブルも発生しなかった。
 

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妙高SAを出た後、濃霧の出ている区間を通り過ぎる。《きーちゃん》もかなり神経を使って運転する。その後、上越JCTで上信越道から北陸道に移行するが、そのすぐ先に名立谷浜(なだちたにはま)SAがある。ここはジャンクションから距離が短いので、気をつけてないと、うっかり通り過ぎてしまう。
 
ここで休憩してその後、桃香が運転したのだが、ここからトンネルだらけの区間になる。ラジオは役に立たない。もっとも夜で外は見えないからトンネルの中も外も大差無いし、カーナビには音楽が入っている。それをランダムプレイしている。
 
千里が使っているのは車に固定する必要のないSANYOのミニゴリラである。本当は車のパーキングブレーキに接続して、パーキングブレーキが引かれていない時は操作できないようにする仕様なのだが、その端子をショートさせて他の車に簡単に移動できるようにする方法が広く知られている。このゴリラもその処置が施してあるのでインプに乗せていたのをこちらに持って来ている。
 
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カーナビに入っているのは千里の趣味で国内のポップスが多い。桃香は洋楽専門で、国内のポップスは聴かないのだが、千里の選曲はうまい歌手の歌だけで構成されているので、桃香にも充分聴き応えがあった。
 
しかしそれでも知らない曲が多いので眠くなる。
 
コーヒーが欲しいな。缶コーヒーはうっかり荷室に入れていたなあ・・・と思っていたら、カシャッという缶を開ける音がして、
 
「はい、桃香」
と言って助手席からふたを開けた缶コーヒーが渡される。
 
「ありがとう、千里」
と言ってコーヒーを受け取り、数口飲むと少し目が冴えた。
 
目が冴えてきてからふと思う。
 
「誰!?」
と声を出して助手席をチラ見するが誰もいない。
 
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「今の誰だったの〜〜〜!?」
 
桃香はさすがにやばいような気がしたのですぐ先にあった越中境PAに入り、30分ほど仮眠した。
 

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そういう訳でその後(缶コーヒーのストックを助手席に持って来て、千里が持っていたクールミントガムももらって置いた上で)1時間ほど運転して、呉羽PAに到着したのは28日8:30頃である。
 
ここは広いPAである。フードコートで朝食を食べるが、車に戻った所で、千里と《きーちゃん》が入れ替わったので、千里本人が、ここから先の約18kmを運転して、伏木にある桃香の実家に到着した。
 
千里は昨日のライブの後《りくちゃん》にインプを駐めている葛西の駐車場に運んでもらい、そこから千城台の房総百貨店体育館に行って、27日夜23時頃まで一部のメンバーと練習を続けた。その後、そのインプで最後まで残っていたメンバーを各々の自宅近くまで送り届ける。そして葛西のマンションでぐっすり寝た後、呉羽PAにいる《きーちゃん》と交代した。
 
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でも結果的に朝御飯を食べ損なった!
 
《きーちゃん》の方は千里と交代で葛西のマンションに入ると、インプを運転して神社に行き、そちらの勤務に入る。彼女は桃香が運転している間寝ていたので、問題無い。
 

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なお、千里が高岡に行っている間、ローキューツの練習は運動能力の高い《こうちゃん》が千里の代理をしていた。普段誠美は彼女以外のメンツとゴール下の争いであまり勝負にならず、いちばん体格の良い桃子とやっても圧勝するのが、今日は千里に全く勝てない。
 
「誠美が勝てないなんて・・・」
「さすがフル代表だけのことある」
 
それで誠美はかなり闘志を燃やしてプレイしていた。《こうちゃん》も楽しそうに誠美の練習台を務めた。結果的に彼女にとってはオールジャパンに向けてひじょうにいい練習になったようである。
 
「しかし千里、今日は何だかワイルドだ」
「スリーは調子悪いみたいだけど、ランニングシュートがよく入る」
「普段よりパワーがある感じ」
「というより、今日は何か凄く男っぽい」
 
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「私、男の娘だし」
「ちんちん、付いてないよな?」
「秘密」
 
但しシャワールームで他のメンバーと一緒に汗を流したのは《てんちゃん》である!それで麻依子から
 
「確かにちんちんは付いてないなあ」
などと言って触られた!
 
ちなみに《こうちゃん》自身はシャワーだけ葛西のマンションのバスルームを使った。
 
「あんたに女子トイレまでは許しても、さすがに女性のシャワー室は禁止」
などと《きーちゃん》が言っていた。
 
「まあ切っちゃえば入室許してもいいけど」
「それはあと2000年くらい考えさせてくれ」
 

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一方高岡に行った千里の方は朋子・青葉と一緒におせち料理を作ったり、氷見に行って鰤を買ってきたりしていた。昨年は洋彦が巨大な鰤を丸ごと買ってもてあましたので、今年は5kgサイズの小さなものを買ってきた。例によって千里が鮮やかに3枚に下ろした上で、刺身にしたり、照り焼きにしたりして食べた。骨や頭は大根と一緒に煮ておつゆにする。
 
12月30日(金).
 
千里と蓮菜が「東郷誠一」名義で提供した山村星歌の『みずいろの片思い』がRC大賞の金賞を受賞したので賞状のカラーコピー郵送しますという連絡が新島さんからあった。この曲はYS大賞の優秀賞も受賞している。山村星歌は昨年は新人賞を取っているが、今年も金賞である。現在15歳の中学3年生。おそらく高校に入ると活動が活発化するのではないかと思われる。
 
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彼女は芸能人が多く通学している品川区のD高校に進学予定ということであった。
 

CD制作詐欺事件に関して、各アーティストへの返金と、ひととおり引き継ぎの作業が終わった12月30日、太荷は町添部長に尋ねた。
 
「ところで警察への告訴はいつ頃になりますか?もしまだ時間があるのでしたら、一度墓参りに行ってきたいのですが」
 
ここ半月ほどの彼を見ていた町添さんは言った。
 
「被害は弁済した。実際問題として何か事件があったと思っている人は誰もいない。この業界ではデビューしたい人が何百万円も個人的に負担するのはわりとよくある話」
と町添さんは言った。
 
「あ、はい・・・」
 
「それから今回の被害額は全て松前社長が個人的に負担している。しかし君は破産してしまうから、その債務も消えてしまう」
 
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「えっと・・・」
 
「だから何も起きなかったんだよ」
「では告訴は?」
 
「名古屋の近く、正確には常滑市、セントレア空港の近くにね。僕の知り合いも関わっているCDプレス工場が建設中なんだよ。というより実際にはほぼ出来ていて、4月くらいから稼働し始める。それで営業社員を募集しているんだよね」
 
「はい?」
 
「ちょっと年明けにも行って面接受けてみない?僕の名刺をあげるから」
 
と言って、町添部長は自分の名刺の裏に「太荷君を紹介します。気が弱い所があるけど粘り強いし度胸もあっていい奴です」と書くと、太荷に渡した。
 
「部長・・・・」
「まあ頑張ってね」
 
「はい」
 
と言うと、太荷は泣き出した。
 
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