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■娘たちの面談(22)

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ローズ+リリーはケイ本人から聞いた話では、実際には2007年8月1日に偶然福岡市で一緒にステージに立って歌ったのが最初の歌唱らしい。何でも女の子向け漫画のキャラクターショーで2人とも着ぐるみを着て歌ったということだった。
 
ふつうの格好で一緒に歌ったのはその5日後の8月6日で東京都内でギターとベースを持って街頭ライブをしたらしいが(ケイは結構万能プレイヤーだがマリがベースを弾けるとは知らなかった)、その2日前の8月4日に伊豆のキャンプ場で一緒に曲を書いており、それが後にアンコールの定番曲となる『あの夏の日』ということであった。
 
初期のローズ+リリーをプロデュースした須藤美智子とはその最初の8月1日の突発ライブ以来の関わりらしいのだが、そういえばあの人とは私も小学生の頃に遭遇して蓮菜と2人で突発ライブをやったなというのを千里は思い起こしていた。この業界では何人か須藤美智子に突発ライブをやらされたと言っている人がいるので、本来歌うべきアーティストが来てない時に近くに居た人を徴用してライブをやらせてしまうというのは、どうも彼女の得意技のようだ。
 
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ローズ+リリーが本格的に活動しはじめたのはこの突発ライブから1年後の2008年8月3日、宇都宮のデパート屋上で、リリー・フラワーズという女声デュオの代役だったらしい。須藤さんの会社の名前《宇都宮プロジェクト》というのはここに由来する。
 
そのライブが好評で「CD無いんですか?」などとお客さんから訊かれたので須藤さんは1日でCDを作ってしまった。
 
これがローズ+リリーの記念すべき最初のCD『明るい水』で、鍋島康平さんが数年前に別の歌手に歌わせたものの全く売れなかった曲である。しかしこの歌がマリとケイの声と歌い方に偶然にもマッチしていたこともあり、10万枚のヒットとなる。翌年5月に亡くなった鍋島康平さんにとって最後のゴールドディスクとなった。
 
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彼女たちはあまりにも急速に売れてしまったため、実は各々の親の承認を取らずに活動していた。それがバレるきっかけになったのが、2008年12月19日の写真週刊誌によるローズ+リリーの『正体』すっぱ抜き報道なのだが、その情報をその週刊誌の契約記者に売ったのが、マリの元婚約者・花見啓介だった。
 
この騒動でローズ+リリーは活動休止に追い込まれ(ライブ予定やテレビ出演などのキャンセルなどで恐らく数千万円の損害が出た)、須藤美智子は解雇されて半年間の音楽マネージメント活動禁止、マリ・ケイおよびその周辺人物との接触も禁止という処分をくらうのだが、この事件が起きた時、○○プロの事実上の経営者である浦中部長は
 
「週刊誌にチクったのは誰なんだ? 明日の日の目が見られないようにしてやる!」
と言った、と千里は後にケイから聞いた。
 
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この人もなかなか恐いがこの人の場合普段から強面である。新人アイドルが浦中さんにじろっと見られただけで泣き出したという伝説もある。しかし千里は時々思うのだが、いつもニコニコしている∞∞プロの鈴木社長の方がひょっとすると、もっと恐いのかも知れない。
 
その浦中さんのせいなのかどうなのか、花見の周辺に怪しげな黒服・サングラスの男たちが出没し、脅迫電話のようなものが掛かってくるようになったらしい。
 
ただ、この時点ではまだ浦中さんのバックにいる組織(警察や自衛隊のOBから成る私立探偵集団。警察関係者とのコネが凄いので高い調査能力を持つ)は、情報提供者が誰かを突き止めていなかったようである。
 
青葉によればこれはこの件に怒った政子による呪いが起こした超常現象ではないか、つまりいわゆる"Men in Black"ではないかという。実際電話は電話線を引き抜いても鳴っていたらしい!
 
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それで結局花見は逃げ出す。高速バスを乗り継いで鹿児島まで行くが、その旅先にも黒服の男が出没する。ついにフェリーに乗って沖縄まで行くとやっと黒服の男の姿は消えたが、お金も無くなってしまい、彼は工事現場で働き簡易宿泊所に寝泊まりする生活を始めた。
 
その後彼は仕事仲間に誘われて九州に戻り、あちこちの工事現場で働いて一時は富山や青森の新幹線の工事現場で働いていたらしい。しかし2年弱の放浪生活を経て2010年の秋頃、仙台の食品製造会社に就職することになる。ところがここが震災でやられてしまい、彼は同系列の埼玉の工場に異動した。
 
そしてたまたま都内に出てきていた時、偶然ケイと遭遇する。
 
ケイは自分自身は怒ってないが、一度須藤さんには謝りに来てこの件にきちんと決着を付けておいた方がいいと勧め、彼もそれに同意して2011年12月8日、UTPに来ると言っていたのだが、彼は現れなかった。
 
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ケイが困惑して彼にもらっていた名刺に書かれた勤め先に電話すると、突然辞めてしまったので困っているという話である。実家にも電話してみたが、お母さんは彼が埼玉に来ていたことを知らなかったようである。ケイは高校時代の友人の谷繁さんや花見のお母さんとも話をして、全国版のスポーツ新聞に広告を出した。
 
《啓介、全て許す。父病気、帰ってこい》
 
というものである。たったこれだけの広告でも全国紙に出すとなると料金は5万ほど掛かる。現在の花見さんの家庭には辛い負担だったようなので、この広告代はケイが出してあげたらしい。
 
実は彼は2008年秋に起こしたレイプ事件の補償問題も抱えていた。バイト先の同僚の女性をレイプしたが、花見の両親が被害者と両親に土下座して謝り、600万円の賠償金を支払うことで和解し告訴はしないことにしてもらった。その賠償金は毎月10万ずつ60回(5年)に分けて払うことで合意していたらしい。
 
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しかし直後に彼自身が失踪してしまい、賠償金は彼の父が頑張って毎月払っていた。しかしその父も会社の倒産で失業し、体調も悪くて再就職もできず、支払いが滞っていた。先方は金が欲しくて言うわけではないが、約束は守って欲しいと主張。娘が結婚することになったので本人ももう忘れてしまいたいと言っているので、もうここで清算してもらえないかと言ってきて、お母さんは本当に困っていたらしい。
 
(ちなみに強姦罪には告訴時効が無い。つまり15年経過して事件そのものが時効になるまでは告訴可能である)
 

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12月27日の朝、花見は貴司からホテルに1晩泊まって、お風呂にでも入ってから東京に戻るといいですよと言われホテル代までもらったので新今宮駅近くの一泊2000円のホテルに泊まり、着ていた服もコインランドリーで洗濯した。朝ホテルのモーニングサービスのおにぎりを食べてからチェックアウトすると、なんば駅まで歩いて行き、東京行き4000円の夜行バスの切符を買った。普段ならもう少し安い便があるのだが、年末でどうしても高騰していた。
 
(実際にはホテル代に1万円、新幹線代1万5000円にお弁当代5000円として合計3万円もらっている)
 
午前中のスーパーでシールが貼られ50円になっているパンを3つ買っておき、1つをお昼用、2つは夕食用にする。ペットボトルの空きに公園の水飲み場で水を入れておき、これを飲み物にする。1000円の散髪屋で髪を切ったら、かなり気分がよくなった。
 
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午後は知り合いの「雑誌拾い屋」さんと一緒にゴミ箱などから捨てられている雑誌を拾って集めて売るバイト?をして、これでこの日は800円もらった。
 
夕方、とっておいた夕食用のパンを食べる。そしてなんば駅まで歩いて行き、バスを待つ。雑誌拾いとかもよくしている習慣で、ゴミ箱に落ちていたスポーツ新聞を拾ってバスの出発時刻まで読んでいたら、その広告に気付いた。
 
《啓介、全て許す。父病気、帰ってこい》
 
この『啓介』って自分のこと〜〜?
 
でも「父病気」って・・・。父ちゃん、病気なのか?
 
花見は居ても立っても居られなくなり、公衆電話を探すと、落ちてたのを拾って持っていた!穴の塞がれた!?怪しげなテレホンカードを入れて、実家の電話番号を押した。
 
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「啓介なの?」
と母の声がする。
 
「新聞の広告見た。父ちゃんどうしたの?」
「それよりあんた今どこに居るの?」
「大阪に来ていたんだけど、東京に戻ることにして、今バスを待ってる」
「それ何時に着くの?」
「東京駅鍛冶橋に朝6:50の予定だけどずれると思う」
「私そこに行くから、絶対そのバスに乗ってよね」
「分かった」
 
それで花見は28日朝母と3年ぶりに再会したのであった。その場にはこの件で色々骨を折ってくれていた、高校時代の友人・谷繁太郎(元書道部部長)の姿もあった。
 

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12月27日(火).
 
★★レコードの町添部長は、それでなくても多忙な所に太荷問題の処理もあって、思わず「自分が2人欲しい」などと言ったりもする中、何とか時間を作ってタイに飛んだ。
 
HND 12/27 1:00-5:30 BKK BKK 12/27 22:35-12/28 6:55 HND
 
バンコクまで実質日帰りである。
 
ここで町添さんが無理してバンコクに行ったのは、マリのお父さんと面談しておく必要があると思ったからである。
 
町添さんは12月上旬にケイのお父さんとは面談をし、ローズ+リリーの活動再開について内諾を取っている。
 
「あの子も手術して本当に女の子になってしまったし、そこまで覚悟しているのであれば、私も止めません。よろしくお願いします」
とケイの父は言っていた。
 
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マリの父は勤めているデパートが12月27日は店休日ということだったので、それに合わせて飛んだのである。
 
タイは一応1月1日も祝日ではあるのだが、むしろタイの暦での旧正月である4月13-15日の方が盛大に祝われる(その他に華僑たちは旧暦の正月:今年は1月23日:も祝う)。それでこの時期はわりと通常運用なのである。
 

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お土産なども渡し、お忙しいでしょう?などと世間話もした上で本題に入る。
 
「あの子たち、実際問題としてどのくらい人気なんですか?」
「11月に出した『涙のピアス』と『可愛くなろう』は『涙のピアス』が100万枚を突破しましたし『可愛くなろう』も現在65万枚売れています」
 
「そんなに・・・」
 
「実は発売した時に混乱してしまってローズクォーツ名義で出てしまったのですが7月に発売した『夏の日の想い出』は当初名義が違っていたのであまり注目されなかったものの、実質ローズ+リリーのCDだということが知られてからはぐいぐい売上げを伸ばして10月末に100万枚を突破しています」
 
「連続ミリオンですか」
「震災の直後に発表した『神様お願い』に関しては、売上枚数を公開しないという条件のもとに、印税を全て震災の被災地に寄付することになっています。これが実は260万枚を突破しているんですよ」
 
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「え〜〜〜!?」
 
「これは歌謡史に残るヒット曲です。歴代8位の売上です」
と町添部長は言った。
 
これ以上売れた物は、およげ!たいやきくん(子門真人)/女のみち(ぴんからトリオ)/TSUNAMI(サザンオールスターズ)/だんご3兄弟(おかあさんといっしょ)/君がいるだけで(米米CLUB)SAYYES (CHAGE & ASKA)Tomorrownever knows (Mr.Children) の7曲しか無い。
 

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「政子さんも、ご両親に認めてもらうために色々頑張っておられます。大学の単位も早めに取れるものは取ってしまっておられるようですよね。ですから来年もローズ+リリーは限定的な活動に留めて単位を取れるだけ取り、再来年はほぼ卒論だけの作業になるので、本格的に音楽活動をしたいと思っておられるようなんですよ」
 
と町添さんは説明する。
 
「あの子の将来とか考えていたのですが、あの子はどう考えてもOLとか務まらない気がしますしね」
 
とお父さんは言う。
 
「あの子がOLなんかしたら1日でクビになると思う」
と隣でお母さんは言う。
 
「今ケイさんと話しているのでは来年の春以降、来年度は4回くらいのライブができないだろうかという線なんですが」
 
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「ああ、そのくらいなら学業にも負担にならないでしょうね」
と言ってから、お父さんはもっと根本的な問題を尋ねた。
 
「でも今回のシングルは久しぶりの発売だったので買ってくれただけということはないでしょうか?だから実際に復帰してもそうそうは売れないということはないでしょうか?」
 
「ローズ+リリーのCDというのは、実は定期的に出ていたんですよ。まずは2009年6月にベストアルバム『長い道』をリリースして40万枚売れています」
 
「アルバムで40万枚というのは凄いですね」
 
「10月には価格0円で『雪の恋人たち』をネットストアでリリースしました。これは85万ダウンロードされています」
 
「0円とはいえ凄まじいですね」
 
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「2010年の1-3月にはふたりの受験勉強の生中継『ローズ+リリーと一緒に受験勉強』というのをラジオで放送しまして、これが凄い聴取率でした」
 
「やってましたね!」
「2010年9月には一般発売はせずに放送局やカラオケ屋さんなどにだけ配る『恋座流星群』を発売しましたが、実際には海賊版がネットストアに登録されて、レコード会社が気付いて公開停止されるまでの10日間に23万件のダウンロードがありました」
 
「10日で23万件ですか」
「何も宣伝せずに口コミだけで情報が広がってそれだけですから、普通に発売していたら間違い無く100万枚突破しています」
 
「うーん。。。」
 
「同様の騒ぎは2011年1月に公開された『Spell on You』でも起きまして、この時はプレスされた海賊版が国内外で35万枚売れています」
 
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「凄いですね」
 

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娘たちの面談(22)

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