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■娘たちの面談(10)

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10月29-30日の土日、クロスロードのメンツで伊豆の温泉に行った。参加者は下記である。
 
桃香・千里・青葉、和実・淳・胡桃、冬子・政子・春奈、あきら・小夜子・みなみ
 
春奈はスリファーズという3人組歌唱ユニットのメンバーでMTF(Pre-op). 現在中学3年生である。彼女は元々は男性的な名前だったのを既にこの「春奈」という名前に改名済みである。
 
彼女は小学5年生の時に学校にスカートを穿いて登校し
「今日から私は女の子になる。名前は春奈ね」
と宣言し、その後、女子で通してきている。中学に入る時は制服問題で学校側と一悶着あったものの、最終的には学校側が折れてくれたらしい。
 
この日はシーズンオフで客も少なかったことから女湯を1時間貸し切って全員で一緒に入った。青葉や千里は堂々と女湯に入ってしまうものの、あきら・淳は女湯に入るのは抵抗があるようだった。しかしそのふたりも貸切ならということで一緒に入った。むろん過去に入った経験はあるらしい。
 
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なお、この中で男性として社会生活を送っているのは、淳だけである。彼女はこういうプライベートな集まりでは女装して淳を名乗るが、会社には男性用のスーツを着て、淳平の名前で勤めている。
 
あきらは本人は「男として生活している」と主張しているものの、誰もそう思っていない。名前も戸籍名は晃なのだが「ひらがなで書いた方が女らしいよ」と美容室のオーナーに言われて、美容室のホームページには「浜田あきら・女」として表示されている。そもそもスカート穿いてお化粧して勤務していて、男ですという主張は無い、と同僚には言われているようである。
 
今回の集まりでは、生まれて1ヶ月半の、みなみがアイドルと化して、みんなに抱っこされて愛想をふりまいていた。あまり人見知りしない子のようである。桃香・淳・あきらは恐いと言って抱かなかった。
 
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「春奈ちゃんは、女子高生になれそう?」
 
「はい。今の中学の校長先生が進学予定の高校に話してくれて、何度か面談もしたのですが、これだけ女らしければ、女子生徒として受け入れていいよと言ってもらっています。向こうも色々体制を整えたいから、推薦入学でという線で話している所です」
 
「確かに準備整えていて、他の学校に行かれては空振りになるよな」
「どこの学校?」
「地元の公立高校で**高校という所なんですが」
「公立!?」
 
「公立で大丈夫?出席日数とか足りなくなったりしない?」
「大丈夫とは思うんですけどね〜」
 
スリファーズの3人の内、彩夏は成績が微妙で公立は厳しいかも知れないということで、私立で芸能人もけっこう通学している東京北区の私立高校も滑り止めに受験するらしい。千秋は成績が良いので、春奈と同じ高校をやはり(本来の意味での)推薦で受けるらしい。
 
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女湯の中で、胸は本物か?という議論が出る。
 
全員他の子のバストを見回していたが
 
「みなみちゃん以外は全員本物」
という結論に達する。
 
「ちんちんがまだ付いているのは何人かな?」
「4人じゃないかな?」
「いや6人だと思う」
 
ここで「6人」というのは、淳、あきら、青葉、春奈、千里、和実で6人なのだが、ずっと後になって
「あの時のちんちんの本数は4で正解だったと思う」
と多くの子が言った。
 
「でもあの時『4人じゃないかな』と言ったのは誰だろう?」
「確かに誰か『4人』と言ったよね」
「それ誰が言ったか覚えてないんだよね〜」
 

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この時は、例によって冬子がみんなに「早く手術して女の子になっちゃいなよ」と煽る中で、あきらと淳がドキドキするような顔をしていたし、青葉と春奈は結構考え込んでいる感じだった。
 
「でも私は来年アメリカで手術しちゃうよ」
と青葉が言うと
 
「青葉さんって、私と同い年くらい?」
と春奈が訊く。
 
「春奈さんより1つ下ですよ」
「凄ーい。アメリカだとそれで手術してくれる所あるんだ?」
「病院紹介しましょうか?」
「教えて、教えて」
「じゃ、後で病院の名前と住所・URL教えますね」
 
春奈はその病院に連絡を取り、実際に診察を受けて「16歳になったら手術してもよい」と認定される。それで翌年夏(高校1年)に性転換手術を受けることになるのである。春奈は4月22日が誕生日なので、高校に入学してすぐに16歳になる。つまり先に女子高生になった後で、肉体的にも女の子に変身することになる。
 
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お風呂からあがった後は、小宴会場でマグロ尽くしの料理を食べる。大間直送のシビマグロということだった。他に地元産の花鯛のお刺身もあった。
 
「金目鯛はいつ頃からだっけ?」
「12月頃からなんですよ」
「だったら、その頃、また来たいね」
 
という意見が出ていた。
 
これは結局翌年の1月に実現する。
 

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一行は10月30日夜、東京に戻り、青葉は次の連絡で高岡に戻った。
 
東京21:40-23:35長岡23:56-2:35
 
新潟方面行き最終新幹線から急行《きたぐに》を使うパターンである。多くの参加者が東京駅で別れたが、千里も
 
「バイトに入るから」
 
と言って東京駅で桃香たちと別れると、葛西のマンションに入って頼まれていた楽曲を書いた。温泉に入っていた間にいくつか思いついたメロディーがあったのでそれを元に組み立てていく。
 
だいたい組み立てたものの、少し不満がある。
 
「ドライブしながら考えようかなあ」
 
などと独り言を言い、朝4時頃、駐車場に行く。この時期、インプレッサは桃香のアパートに近い立体駐車場に駐めていることが多いのだが、葛西の駐車場にST250を駐めているので平気である。バイクで千葉まで行き、インプを出してST250を駐める。そこの立体駐車場ではバイク固定装置が使えるようになっている。
 
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ところがそもそも葛西のマンション近くの(平面)駐車場に行って、バイクに乗ろうとしたら何か違和感がある。
 
「ん?」
 
懐中電灯で照らして良くみると、そこに駐まっているのはST250ではなく、かなり巨大なバイクである。
 
あれ〜。ここ誰か他の人の駐車スペースだった?と一瞬考えたのだが、そのバイクに何か紙が貼ってあるのに気付く。
 
雨宮先生のメッセージである。そこにはこう書かれていた。
 
「すまん。千里のバイク、鍵がささったままだったから借りていくね。年明けくらいには返せると思う。それまでこのバイク使ってていいから」
 
「ちょっとぉ!」
 

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また鍵を差しっぱなしにしちゃったか、と思いつつも、バイクが無いのは困るので深夜ではあるが、雨宮先生の“彼女”の携帯に電話する。
 
「なんであんた、私が****と一緒にいること知ってたのよ」
「だって雨宮先生の携帯に掛けても、先生出ないじゃないですか」
「まあね」
 
「それでバイク、困るんですけどぉ」
「あんたバイクの免許取ったんでしょ?だからそちらにしばらく乗っててよ。私がそのバイクに乗っているという情報が知れ渡っているみたいだから、そのバイクで移動するのはやばいのよ」
 
「もし私が先生と間違われて射殺されたりしたら、うちの親に賠償金1000億くらい払って下さいよ」
 
「ああ、万一の場合は1000円くらい香典入れておく」
 
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「でも私、普通二輪の免許しか取ってないから、こんな大きなバイク動かせないんですけど」
 
そういう訳で目の前にあるのはKawasaki ZZR-1400という大型バイクである。ライムグリーンの明るい色だし、翠星石の派手なイラストが入っている。こりゃ目立つよな、と千里は思った。
 
(正確にはバイクの左右に翠星石と蒼星石のステッカーが貼られていた)
 
なお、このバイクは2012年からは排気量を1441ccに改訂して「Ninja ZX-14R」という名前になるが、ここにあるのはそれ以前のタイプで"Ninja"の名前は冠しておらず、排気量は1352ccである。1352ccなのに"1400"と名乗るのはどうかと思うのだが、以前はこのように「四捨五入」して命名するケースは結構あった。
 
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「普通二輪って980ccまで?」
と雨宮先生が言う。
 
「400ccまでです!」
と千里。
 
「400ccも1400ccも大差ないよ。1が付くかどうかじゃん」
「じゃ、今後の作曲印税は7%ではなく17%で」
「それは待った!」
と言ってから先生は言った。
 
「取り敢えず大型二輪の免許取ってよ」
「え〜〜〜!?」
「大型二輪取ったら、ちょっと書いて欲しい曲がある。バイク乗りをテーマにした映画の企画があるのよ」
「そういうことなら取ります」
「その曲は買い取りになるけど、代わりに今頼んでる春川典子に渡す曲だけ特例で印税14%で考えてもいい。著作権使用料は通常の1.2倍で」
 
「春川典子の印税って2倍になっても20万円程度という気がするんですが」
 
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演歌系の人のCDは売れてもせいぜい数千枚だ。仮に3000枚売れたとして、1400円のCDの2曲の内の1曲を書いた場合、もらえる印税は
 
700円×0.9×0.14×3000枚=264,600円
 
となる。著作権使用料はJASRACが徴収した金額を原盤権者と作曲者で山分けする。つまり普通は50%を取るのだが、1.2倍ということは60%をこちらにくれるということなのだろう(但し1〜2割の手数料をJASRACに払う)。演歌系の人の場合、実はカラオケや有線での使用料が大きく、CD印税よりそちらの方が美味しいことが多い。むろんいづれもその金額を作詞者の蓮菜と山分けすることになる。
 
「200万円になるかもよ」
と雨宮先生。
 
200万というのは3万枚くらい売れた場合だが、近年ではトップアイドルのCDでもなかなか10万枚に到達しない。AKBの場合はあれはCDが売れているのではなく投票券や握手券が売れているのにすぎない。
 
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しかし雨宮先生の無茶振りは今に始まったことではないので千里は妥協する。
 
「分かりました。じゃ取り敢えず大型二輪の取得に自動車学校に行きます」
「免許センターに行って、一発試験受ければいいのに」
「それは無茶です」
 

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そういう訳で仕方ないので、千里はその日は電話でタクシーを呼んで千葉市まで行き、インプレッサを駐車場から出して関東周辺の早朝ドライブをした。それで何とか楽曲はまとまった。
 
それが、問題の春川典子に渡す『ふたりの七夕』という曲である。名義は東郷誠一なので、基本的には出荷額から「ケース代」を除いた額の7%を受け取る契約なのだが、今回だけ特例で14%を受け取ることになる。また著作権使用料も通常より割り増しで受け取ることになる。
 
こういう約束をしたことを、雨宮先生は1年後にちょっとだけ後悔したのである。
 

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千里は10月31日に自動車学校に行き、大型二輪のコースに申し込んだ。普通二輪を持っているので、教習時間は第1段階5時間と第2段階7時間である。卒業試験まで入れて最短で 5/2+7/3+1=3+3+1=7日間で卒業できることになる。
 

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一方伊豆から戻った冬子は、10月31日、KARIONの制作の件で、和泉と一緒に加藤課長・町添部長と秘密の会談をした。
 
ここで和泉・冬子の主導で制作したKARIONの次期CD『星の海』を2人に聞かせるとともに、『恋のブザービーター』の作り直した音源も聞かせる。
 
「見違えたね!」
と2人は改訂作を高く評価してくれた。この改訂版は『星の海』を12月14日に発売した後の、12月28日に発売する予定である。
 
そしてこの時、和泉に促されて冬子はローズ+リリーのCDの、須藤がまとめた音源と、その後冬子が和泉の協力で作り直した音源とを聞かせた。
 
「須藤君の音源なら10万枚しか売れないけど、作り直した音源なら80万枚行く」
と加藤課長は言ったが
 
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「私は最初のだと5万枚、作り直したのはミリオンと思いました」
と同席した和泉は言った。
 
町添部長は滝口さんが勝手な制作をしてKARIONに迷惑を掛けたことをあらためて和泉と冬子に陳謝した上で言った。
 
「実は鬼柳次長から提案されたんだけど、僕もそうだと思った。ケイちゃんとマリちゃんはUTPと手を切るべきだと思う。須藤君のやり方については春にJASRACからも注意されたよね」
 
「その件に付いて、マリともかなり話し合ったのですが、近々須藤に申し入れるつもりです」
と冬子は言う。
 
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娘たちの面談(10)

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