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■娘たちの面談(4)

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しかし高いだけあって、ひつまぶしは物凄く美味しかった。ボリュームもあるので政子が喜んでいる。
 
「ひつまぶしって3度美味しいって言うよね?」
と桃香が訊く。
 
「1度目はそのまま食べる。2度目は薬味を掛けて食べる。3度目はお茶漬けにする」
と千里が説明する。
 
「よし、そうやって食べよう」
 
実際には冬子は半分くらいしか食べなかったので、その残りは政子が食べていた。政子は凄く元気で
 
「美味しい美味しい。ほんとに美味しい」
と言って、楽しそうに食べていた。
 

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お店を出た後は冬子が
「休める所があるから」
と言って冬子の伯母・田淵風帆の家に連れて行き、そこで結局夕方まで休ませてもらうことにする。風帆は
「来た以上はお稽古してもらう」
などと言って、冬子に胡弓、政子にも三味線を渡して弾かせていた。
 
「あんたたちも何かしてみる?」
と千里・桃香にも声を掛ける。
 
それで千里は胡弓、桃香は太鼓を借りて演奏してみる。桃香の太鼓は
「あんたリズム感いいね」
と褒められた。千里の胡弓については
「経験者?」
などと訊かれる。
「私ヴァイオリンを弾くからその応用です」
と千里は答えた。
 
「なるほどー。それでいきなり音を出せたわけだ」
と風帆は感心していた。実際桃香も胡弓を少し触ったが、全く音が出なかった。
 
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「ヴァイオリンはどのくらい弾くの?」
と風帆の娘で実家にいりびたっている美耶が訊く。
 
「下手ですよ〜」
「どのくらい下手なのか弾いてみて」
と言って、自分のヴァイオリンを持ってくる。ヤマハのV20Gという楽器だと言っていた。
 
千里が弾き始める。ヴィヴァルディの『四季』より『春』第一楽章である。
 
「お、うまい」
と桃香が声をあげた。冬子も美耶も「へ〜」という顔をしている。
 
ところが
「え!?」
という声が思わずあがる。桃香が難しい顔をする。
 
そして千里は約3分半の第一楽章を弾き終える。
 
一応みんな拍手をしてくれる。
 
「なんか時々つっかかっていた」
と桃香が言う。
 
「私は移弦する時に一瞬音が分からなくなるんですよ」
「なるほど〜」
 
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「つまり移弦しなければ上手いんだ!」
と美耶が言う。
 
「そういうことで、全体的には下手であるということで」
と千里。
 

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しかし政子は
「何か間違ったんだっけ?」
などと言っている。
 
「間違ったと言っても6-7セントの違いだった。だから、音感の発達していない人には間違ったこと自体が分からない」
と美耶は言う。
 
「今ここにいる人のほとんどはその6-7セントの違いの分かる人ばかりだったみたいね」
と風帆伯母は笑いながら言っている。
 
「どうも私はそのほとんどから外れる人のようだ」
と政子。
 
「その問題は、練習すればわりと短期間で改善される気がする」
と冬子が言う。
 
「その時間が無いもので。すみませーん」
と千里。
 
「まあ確かにバイト忙しいみたいだもんなあ」
と桃香は言った。
 

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風帆伯母の家で結局、夕食までいただいてしまう。このままここで1泊して明日の朝帰ればいいよ、などという話になりつつある。
 
「千里ちゃん、太鼓もうまいね〜」
「高校時代に雅楽の合奏団をやってたんですよ」
「雅楽かあ。担当楽器は?」
「いろいろやりましたよ。龍笛、篳篥(ひちりき)、鉦鼓(しょうこ)、和琴(わごん)」
「和琴聞いてみたいなあ」
 
などと言っていた時に、冬子の携帯に着信がある。
 
「あ、はい。明日の朝1番ですか?ちょっと待って下さい」
と言って冬子は
「東京行きの最終は何時だっけ?」
と美耶に尋ねる。
 
「22:10.もう間に合わない」
「高速バスは?」
 
「冬子、高速バスに乗るくらいなら、私たちが送って行くよ。だいぶここで休ませてもらったから」
と千里が言う。
 
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「そうしようかな」
 
それで冬子は電話の向こうの相手に明日朝1番に行くと伝えていた。
 

「じゃ出発しよう」
「ああ、おにぎり作ってあげるよ。夜食に」
と言って、美耶がおにぎりをたくさん!作ってくれた。大半は政子のお腹に入るであろう。風帆もコーヒーを入れてスタバのタンブラーに入れてくれる。
 
「タンブラーは今度名古屋に来る時に返してもらえばいいから」
「じゃお借りしていきます」
 
それで結局22:30頃に風帆伯母の家を出て、千里は途中富士川SAで30分ほど休憩しただけで走り続け、朝4時前、東京の冬子のマンションに辿り着いた。(実際に運転したのは《こうちゃん》である)
 
「ありがとう。助かった」
「冬子、随分忙しいみたいだけど無理しないようにね」
「うん。気をつけるね」
 
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その後、千里は千葉まで走り、5時頃に桃香のアパートに辿り着く。桃香は走っている間も、ほぼ寝ていたのだが、部屋に入ると
 
「なんか眠い」
と言って、スヤスヤと眠ってしまった。千里は微笑むと車を駐車場に入れてきて、そのあとジョギングに出た。
 

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2011年9月12日(月).
 
出雲の藤原民雄から青葉に連絡がある。
 
「青葉ちゃん、君の性転換手術をしてくれるかもって所を見つけたよ」
「ほんとですか?どこですか?」
「アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコ近くのバーリンゲーム市という所にあるX医院という所。君、B先生は知ってる?」
「はい、もちろん。でも数年前に亡くなられましたよね?」
「うん。ここの院長さんはB先生の下で技術を学んだ人らしい。だから技術は確かだと思う」
「わあ」
 
「こちらも少し向こうの病院と話したんだけど、中学生の性転換手術をした実績はあるらしい」
「ほんとですか!」
「一応特例でも16歳以上なんだけど、倫理委員会の許可が下りたら15歳でも手術できるということらしい。だから来年の5月22日以降なら手術してもらえる可能性がある。まあ手術後の療養を考えたら夏休みだろうけどね」
 
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「嬉しいです。実際16歳でやってくれる所もなかなか無いんですよ」
 
「一度診察してもらいに行く?予約が必要らしいし、何なら君が直接その病院に問い合わせた方がいいかも。青葉ちゃん、英語はできるよね?」
「ある程度は。でしたら、連絡してみます。電話番号教えてください」
 
「うん」
 

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それで青葉は向こうの開院時間に合わせて電話をしてみた。日本から電話していると言うと、向こうの院長先生が出てくれた。それであれこれ訊かれることに答えていったのだが
 
「そういうことであれば、15歳になったら手術できる可能性があると思います。一度こちらにいらしてください」
と言われる。
 
「分かりました。それでは日程を調整してからあらためて予約させて頂いていいですか?」
「うん。待ってるよ」
 
それで青葉は朋子と相談した。
 
「私はあんたの保護者だから当然付いていくけど、私、英語がわからない!」
と朋子は焦ったように言う。
 
それで結局桃香に電話する。
 
「なんと15歳で手術してもらえるかも、ということか! OKOK.私も一緒に行くよ。でも旅費ある?」
と桃香は言っている。
 
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「旅費は私が何とかするよ」
と朋子。
 
「だったら千里も連れて行こう。あの子も英語ができるし、同じ立場の者が一緒にいれば心強いだろう」
 
「確かにそうね。だったら千里ちゃんも都合のつく日程を確認して。それに合わせて私は有休、申請するから」
 
「ところで母ちゃん、パスポート持ってる?」
「私は2年前に社員旅行で韓国に行った時に作った。あれまだ使えるよね?」
「有効期限は5年か10年で作っているはずだから、大丈夫だと思うよ。でも青葉のパスポートが要るかな」
「あれ申請したらどのくらいでできるのかしら?」
「2〜3週間掛かるはずだよ」
「すぐ申請に行ってくる!」
 
「だったらこちらもすぐパスポート申請するから」
と桃香は言った。
 
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それで桃香が千里に尋ねてみると
 
「10月22-23日、11月5-6日を避けてもらえばいい」
と言う。
 
「あまり遅くなってもいけないし、10月の上旬くらいでまとめてみよう。千里、パスポートは持ってたっけ?」
「持ってるよ。今年は何度も海外に出てるし」
「そういえばそうだったね。じゃ私もパスポートを取らねば」
 
それでパスポートが出来るまでの時間を考えて10月5日頃以降という線で青葉が向こうの病院と交渉した所、結局10月7日(金)に診察してもらうことになった。それで10月6日(木)にこちらを発つ。
 
パソコンの前で桃香が悩んでいる。
 
「どうしたの?」
「日程が近いから、あまり安いチケットが無い」
「ああ、そうだろうね」
「これがいちばん安い。往復81,210円」
「へー」
「直行便だとどうしても往復10万するんだけど、SVO経由でこの値段。SVOってどこだっけ?」
「それモスクワだけど。シェレメーチエヴォ国際空港。モスクワ経由でアメリカに行くって、つまり地球を反対向きに回っていくということ?それ何時間かかるのよ!?」
 
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「42時間15分」
 
「直行便で行こうよぉ。今回、旅費はお母さんが出してくれるんでしょ?直行便なら10時間で行けるのに4倍も時間を掛けるメリットを見い出せない」
 
「そうかなあ。でも2万違うよ」
「2万円の差で30時間も余計に時間を使うのは割に合わない」
 

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それで今回は桃香も渋々直行便を選択した。
 
HND 10/7 0:45 - 10/6 19:15 LAX (DL636 B777 10h30m)
 
深夜の出発なので少しだけ安くなるようである。
 
6日はロサンゼルスに1泊し、翌7日朝一番の飛行機でサンフランシスコに移動する。所要時間は1時間半くらいなので6時の飛行機に乗れば7時半くらいに着く。サンフランシスコ空港からバーリンゲームへはバスで20-30分で到達できるので、サンフランシスコ空港付近で朝食を取る(ただし青葉は検査を受けるので前日夜9時以降絶食)。
 
結局青葉と朋子の行程はこのようになる。
 
高岡10/6 13:38(はくたか15)15:56越後湯沢16:04(Maxとき332)17:20東京
羽田空港10/7 0:45 (DL636) 10/6 19:15ロサンゼルス空港(泊)
ロサンゼルス空港10/7 6:00(WN3959)7:20 サンフランシスコ空港
サンフランシスコ空港 8:06(バス)8:27 バーリンゲーム市内
 
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桃香はその日程を使うことにして、その格安チケットサイトで予約を入れる。この時、旅行者の名前と年齢・性別はこのように入力した。
 
Tomoko Takazono F 51
Momoka Takazono F 21 Aoba Kawakami M 14
Chisato Murayama M
 
そこまで入力してから、千里の方を振り向いて尋ねる。
 
「千里、誕生日来てたっけ?」
「まだだよ。私の誕生日は3月。だからまだ20歳」
 
桃香が後ろを向いている間に、桃香の後ろに突然指が出現し、キーボードを操作して、千里の性別をFに変えてしまった。
 
「そうか、そうか。おひな祭りだったね?」
「そそ。3月3日」
 
それで桃香は画面の方に向き直って
 
「年齢は20っと」
 
と言いながら20と入力する。振り向いていた間に性別が書き換えられていることに桃香は気付かない。
 
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そして桃香は《名前のスペル》に間違いが無いか指でたどって確認した上で確認ボタンを押し、そのまま予約を確定させた。
 
 
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