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■娘たちの面談(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-04-04
(修正 2023-09-19 この時期天子は弾児と同居してない。完全な勘違い)
 
千里は富山から9月5日(月)の朝に戻ってきた後、5,6日にもバイクの教習に行って第1段階を終了。7-9日(水〜金)で第2段階も終了して12日(月)に卒業試験を受け1発で合格した。それで修了証書をもらい9月13日(火)に幕張の近くにある千葉運転免許センターに行き、普通二輪免許を手にした。これで千里は400ccまでのバイクに乗ることができることになる。また免許証の帯の色がグリーンからブルーになった。有効期限は2014年4月3日までとなる。
 
なお桃香は今年春の誕生日に免許更新を迎えてブルー免許(有効期限2014.5.17まで)に切り替わっている。千里と桃香はほぼ同時に免許を取得したのだが、その時点では誕生日の関係で、千里の免許は2012.4.3まで、桃香の免許は2011.5.17までと、ほぼ1年ずれていた。しかし千里がここで二輪免許を取ったことでいったんふたりの免許の有効期限は近い日付になった。
 
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9月10日(土).
 
あきらと小夜子の最初の子供・みなみが生まれた。千里は桃香と一緒にお見舞いに行った。
 
「午前中に和実ちゃんと淳ちゃんが来て、ついさっき政子ちゃんも来てたんだよ。冬子ちゃんは何か忙しいらしくて、時間を見つけて来ると言っていたらしい」
とあきらは言っている。
 
「ああ、今音源製作してるからね」
と千里が言う。
 
「ローズ+リリーの?」
「いや別のアーティストの。冬は色々なものに関わっているから」
「へー」
 
この時期は芹菜リセの音源製作に入っているはずである。主導しているのは蔵田孝治だが、洋子(冬子)の関与も大きい。それで製作と作曲の名義はヨーコージ(洋子+孝治)である。
 
「自分は子供なんて作れないと思っていたから、いざこうやって自分の子供が生まれてみると、もう嬉しくて嬉しくて」
とあきらは満面の笑顔である。
 
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「まあ、性別を変更する人は自分に正直に生きる決断をした時点で子供は諦めているからね」
と千里は言ったが
 
「いや、性別を変更するつもりはないんだけど」
などとあきらは言っている。
 
「まあ性別不詳だよね」
と小夜子。
 
「うーん。。。一応男のつもりなんだけど」
とあきらは言うが
 
「いや、少なくとも男には見えない」
と全員から言われている。
 

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「みなみって由来とかあるの?」
 
「この子を産んだ時に唐突に《みなみ》ということばが浮かんだから」
と小夜子が言う。
 
「あ、それはあるのよね。きっと、赤ちゃんが自分の名前はこうしてねって自己主張してるんだと思う」
と千里。
 
「でもそれ以外に私たちが初めてデートしてキスした場所が南紀白浜だったというのもあって。まあ正確には偶然遭遇しておしゃべりしただけなんだけどね」
 
「初デートの場所か〜!」
「そういう記念碑的な名前もいいよね」
 
千里は唐突にそのことを思いついた。
 
「その初デートの時、あきらさんはどんな格好してたの?」
「えっと、あの時はまだ高校生だったら、普通の高校生っぽい服だったと思うけど」
となぜかあきらは焦った表情で言う。
 
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その表情を見て桃香は気付いた。
 
「つまり女子高生っぽい服を着ていたんだ?」
「そんなことないよぉ」
「まあ、あの時、私はてっきりそこにいるのは女の子だと思ったのよね〜。アッキーだったんで、びっくりした」
 
「なるほど〜!」
と納得の声があがる。
 
「いやスカートも穿いてなかったし」
とあきら。
「そうだね。膝上のキュロットにピンクのブラウスで可愛い麦わら帽子を被っていたね」
「ふむふむ」
 

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千里は二輪の免許は取ったものの、少し練習しなきゃ不安だよなあと思った。それで自分のディオチェスタで走って、千葉市郊外の中古バイク屋さんを訪れた。
 
「何か安い250ccバイクないですか?」
とスタッフさんに尋ねた。千里が250ccがいいなと思ったのは、何といっても車検が無いので維持費が安く済むからである。
 
「ビッグスクーターですか?」
「いえ。MT車がいいです。練習したいので」
「ああ、大型狙いですか?」
「そういう訳でもないんですけどね。たぶん最初はぶつけたり倒したりすると思うんで、少々壊しても惜しくないようなのがいいんですよ」
 
「ああ。だったら、安いのでいいですね」
とスタッフさんも千里の趣旨を理解したようで、探してくれる。
 
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「これはどうですか?」
と最初に見せられたのはヤマハのYBR250である。
 
「これFI車だから楽ですよ」
「済みません。FIって何でしたっけ?」
 
スタッフさんは一瞬「うっ」という顔をしたものの、笑顔で説明してくれる。このあたりが女の子のお得な所である。
 
「FIはフュエル・インジェクションで、燃料噴射装置ですね。電気の力を使って燃料と空気を混ぜ合わせるんですよ。エンジンで燃料を燃やすには燃料を霧状にして空気と混ぜることが必要なのですが、それを電子制御でやってくれるんです」
 
「FIが付いてない場合は?」
「キャブレーターという機械的な仕組みでそれをやります。電気を使わずにベルヌーイの定理を使ってこれやるんです。ベルヌーイの定理ってご存知ですか?」
 
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「高校の化学(ばけがく)で出てきた気がする。圧力の高い所から低い所へと流体が移動すると、より後押しされる力が働いて流体は加速されるってやつでしたっけ?」
 
「そうです、そうです」
とスタッフさんは言っているが、多分化学ではなく物理学で習っている!それもおそらく高校ではなく、大学の教養部であろう。
 

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「ですからキャブレーターを使った車、略してキャブ車は始動に要領がいるんですよ。今、四輪自動車はほとんどFI車になってしまいましたが、バイクではけっこうキャブ車が残っているんですよね」
とスタッフさん。
 
「でしたら、キャブ車の方がいいです。大変な方で練習したいので」
「なるほどー。あ!それなら、確かあれがあったんじゃないかな」
 
と言ってスタッフさんが連れて行ってくれたところにあったのはスズキの ST250 E-type という車種である。
 
「練習にということなら、これがいいかも。これはセルスタートとキック・スタートのどちらもできるんですよ」
 
「キックスタートって、何かペダルを数回踏んでスタートさせる奴ですか?」
「そうです、そうです。最近じゃ、かなり数が減りましたけど」
「それで最近のボタン式でも始動できるんですね?」
「ええ。これはそれが併設されてるんですよ。ちょっとやってみます?」
 
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と言ってスタッフさんはやり方を教えて、キックスタートとセルスタートの両方でエンジンを掛けさせてみてくれた。
 

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「ありがとうございます。練習には最適ですね。これにしようかな。お値段は8万くらいですか?」
と千里は言った。
 
「お客さん、そりゃ無いですよ。ここに書いてある通り12万8千円です」
とスタッフさんは言う。
 
「9万くらいにまからない?」
「無理です」
「98,000円」
「いや、128,000円でもかなりお値打ち品ですよ。新車なら49万円ですよ」
「そこを何とか10万以下で。納車はこちらに取りに来ますし」
 
「うーん。。。。じゃお客さん、美人だから諸経費込みで175,000円の所を17万ジャストというのではいかがです?」
「ぜひそれを15万ジャストで」
「うーん。。。。。169,000円」
 
千里もここは無理しなくてもいいかなと思った。
 
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「では168,000円で」
「168,900円」
「じゃそれで」
と千里はそこで妥協した。
 
「ありがとうございます。お支払いはローンにしますか?」
「今、現金で払いますよ」
「それはありがとうございます!」
と思わずスタッフさんの笑みがこぼれる。
 
「現金で払うから、これのブレーキパッドだけでも交換できません?」
 
スタッフさんは参った!という顔である。これは実は《げんちゃん》が費用が掛かっても交換させろとアドバイスしたのである。
 
「じゃそこまではサービスで」
とスタッフさんも笑顔で言った。
 

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それで千里は事務所の中に入って書類を書き、その場で1万円札を17枚数えて渡す。そして1100円のお釣りをもらった。
 
「整備して登録手続きをして、明後日にはお渡しできます」
「では15日に取りに来ます。よろしくお願いします」
「はい、お待ちしております」
 
それで千里は9月15日(木)にあらためて《りくちゃん》に運んでもらって再度店を訪れ、ST250を受け取ったのであった。ライダースーツを着て、ヘルメット、手袋などもちゃんと用意して行ったので帰りはそのバイクを運転して帰って来た。
 
そういう訳でこの後しばらくは、千里がST250を使い、ファミレスのバイトに行く《てんちゃん》がディオチェスタを使うという体制が成立する。この月は千城台に練習に行くのにも積極的にバイクを使った。乗り方自体については《こうちゃん》が結構教えてくれた。
 
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『こうちゃんって何でも運転できるね』
『俺は乗り物であれば空母から遊園地の自動車に、人間の女の子まで何にでも乗るよ』
と彼は言っている。最後の付近は聞かなかったことにした。
 
『船とか飛行機も?』
『船は大航海時代に帆船でイギリスからインドとかまで航海したこともあるし、現代の南極観測船やタンカーに原子力潜水艦も動かしたことある』
 
『飛行機は?』
 
『ジャンボもエアバスも飛ばしたことあるよ。一番よく飛ばしたのは空の貴婦人と言われたDC-8かな。自衛隊のF15イーグルも経験ある』
『すごーい。イーグル・ドライバーなんだ!』
 
『もっともベトナム戦争の時はベトコン側で参戦してMig-21(МиГ-21)を操縦した。アメリカのF-4とかB-52とか10機撃墜した。赤い星のキルマークを10個描いてたよ』
『わぉ』
 
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『実はアポロ宇宙船で月にも行って来たことある』
『マジ!?』
『月に行って来た龍は世界中で俺だけかも』
『ほんとに色々やってるね〜』
 

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さて、千里たちは青葉の付き添いで10月上旬にアメリカまで行ってくることになったのだが、その前に今月は高知に行ってくることになる。敬老の日の連休(9/17-19)を利用しての往復である。
 
青葉 高岡6:26-9:34新大阪9:45-10:30岡山11:05-13:40高知13:50-15:31中村15:41-16:42清水BC
千里 東京7:10-9:45新大阪↑
 
この週末は神社のバイトはお休みさせてもらい、ファミレスのバイトは《せいちゃん》に代理をお願いした。
 
『なんで俺が代役〜!?』
と言っているのを
『せいちゃんの女装可愛いよ』
などと言って、おだてて、メイドっぽいファミレスのユニフォームを着せてしまった。《せいちゃん》は
『スカート恥ずかしい』
と言っていた。
 
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そういう訳で9月いっぱいは《きーちゃん》と《てんちゃん》はお休みである。
 

千里本人は、土曜日の朝から桃香と一緒に新幹線に乗って岡山に向かった。新大阪で青葉たちが乗ってきて合流する。
 
「でも桃姉とかは向こうに時々顔出してるの?」
と青葉が訊くと
「いや、長く行ってない。小学生の頃に1度来たきり」
と桃香。
 
「結婚式で親戚と顔は合わせているけど、ここじゃなかったし」
「聖火(みか)さんの子供世代の結婚式に連れて行ったから九州方面に4回行っているね」
「みかさんというのが、九州に住んでおられるんですか?」
「聖火さんは与那国島」
「わっ」
「聖火さんの子供たちは、いちばん上の萌枝さんは長崎県の平戸、2番目の清(さやか)さんは那覇、3番目の芽衣さんは福岡、4番目の透(とおる)さんは与那国で、聖火さんの家の近くに住んでいる」
 
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「けっこう分散してますね」
「いや、そもそも高園家の兄弟が全国的に分散してるから」
「そうなんですか?」
「聖火さんは与那国で、風彦(たつひこ)さんは稚内だし」
「それは本当に南北に分散してる」
「うちが富山で、洋彦(きよひこ)さんが千葉だし」
「ほんとによく分散してますね!」
 
「日本一遠く離れて住んでいる兄弟だって、洋彦伯父さんが言ってた」
と桃香。
 
「与那国と稚内がいる時点でそうでしょうね」
と千里も言った。
 

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娘たちの面談(5)

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