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■娘たちの面談(2)

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桃香は実家に到着するとそのままお昼まで寝ていた。それで桃香が起きてから昼食を取りながら本題に入る。昼食にはこの夏の余り物のそうめんを茹でて食べた。
 
今日は金曜日なので青葉は学校に行っている。実はその青葉が居ない間に3人で話し合いたかったようである。
 
「青葉を実質的な養女にしたということで、親戚とかに引き合わせて行ってたんだけどね」
と朋子は言う。
 
「うちの母さん(敬子)や典子(朋子の妹)は市内だから5月中に会わせた。この2人には青葉が戸籍上は男の子であることも言ってある」
 
「まあ典子叔母ちゃんは物わかりが良いから」
と桃香。
 
「富山・石川近辺に住んでいる親戚にはだいたい6月までに引き合わせているけど、青葉の性別のことは言ってない」
 
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「わざわざ言うこともないと思う」
と桃香は言う。
 
「大阪の喜子姉ちゃんはお盆に旦那と娘連れてこちらに来たんだよ。じいちゃんの25回忌だからと言って」
 
朋子が言う“じいちゃん”というのは戸籍上は伯父(父の兄)の湯川鐵國である。喜子はその娘(養女:鐵國の恋人の娘だが鐵國の種ではない)だが、朋子の実父・湯川芳晴が早く亡くなったため、鐵國は朋子に自分を「お父ちゃん」と呼ばせていたし、朋子は喜子のことを「お姉ちゃん」と呼んでいた。
 
鐵國は結局生涯独身で子供も居なかった(少なくとも朋子は聞いてない)のだが、喜子・朋子・典子の3人の女の子をひとりで育てた(敬子は娘たちを放置して東京で暮らしていた)。
 
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ここの家は鐵國の死後、それを相続した喜子(当時既に大阪在住)から朋子の夫・光彦が買い取ったものである。その資金は銀行から借りて20年ローン(2007年完済)にしたが、光彦も間もなく亡くなったので本当にローンを払ったのは朋子である。喜子はこの家を売ったお金を元に大阪でマンションを買った。結果的にはその資金を朋子に出してもらったようなものなので、そのことを済まないとずっと朋子に言っていたという。喜子としては鐵國の実の姪である朋子ではなく、血の繋がっていない自分が遺産を相続したこと自体、後ろめたい気持ちもあった。そういう経緯もあり、喜子と朋子は今でも仲が良い。
 

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「二十五回忌法要とかしたんだっけ?」
「私も忘れていたから、慌ててお寺さん呼んで仏壇の前とお墓でお経をあげてもらったんだよ」
「そうだったか」
 
「その時に青葉を引き合わせて、喜子姉ちゃんにも青葉の性別のことは言ってあるけど、こんなに可愛かったら問題無いと言ってくれた」
 
「可愛いかどうかは性別とは関係無いけどね。でも喜子伯母ちゃんは、やや取り扱いに注意が必要だけど、筋を立てて話せば理解してくれる人だし、色々味方になってくれる人だ」
 
と桃香。
 

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「それで、今度、四国の和彦(にぎひこ)さん所につれていきたいんだよ。本当は夏休み中に行きたかったけど、あの子、合唱大会とかで忙しかったから」
 
「なるほどー」
 
和彦は朋子の夫(桃香の父)光彦(あきひこ)の父である。四国の土佐清水市に住んでいる。
 
「私だけでは不安だし、桃香も一緒に来てくれる?」
「うん。いいよ」
 
「それでまず青葉の性別のことだけど、どう思う?」
と朋子は少し迷うような顔で桃香に訊く。
 
「言わない方がいいと思う」
と桃香は即答する。
 
「やはりそうよね」
 
「和彦さんたちに言えば、結果的に親戚中に言わないいけなくなるけど、中にはこういうことに理解のない人もいる」
 
「うん。それを心配したのよ」
「実際、聖火(みか)さんとこの清(きよし)さんが実質女になってしまっているみたいだけど、お姉さんの萌枝(もえ)さんがかなり反発しているらしいね。洋彦(きよひこ)伯父から聞いたんだけど」
と桃香が言うと
 
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「あの人は名前の読み方を『さやか』と変えたらしいよ」
と朋子が言う。
 
「へー。改名したのか。結婚しているのによく改名が認められたね」
と桃香は言ったが
 
「漢字を変えずに読み方を変えるだけなら裁判所とかの審判は必要無い。役場に届けるだけで終わり」
と千里が言う。
 
「そんなに簡単なんだ!」
「桃香も読み方を『いさむ』とかに変えちゃう?」
 
「うーん。。。。少し悩んでみようかな」
 
(実際にはそもそも読み方を管理していない自治体もあり、その場合は何の届けも必要無い。単に知人に浸透させるだけで済む)
 

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朋子と桃香はしばらく四国方面の親戚のことで色々情報交換をしていた。それで千里が言った。
 
「いろいろ込み入った話もあるみたいだし、私はしばらく席を外してようか?」
 
しかし桃香は言った。
「いや。千里にも知っておいて欲しい。千里も一緒に行くんだし」
 
「なんで〜?」
「千里は私の奥さんだから、夫婦は一緒に行く」
と桃香。
「いつの間に私、桃香と結婚したのよ?」
と千里。
 
「いや、千里ちゃんも向こうの親戚に会わせておきたいから、一緒に来て」
「でも私別に桃香さんと夫婦じゃないですけど」
「うん。でも千里ちゃんも青葉のお姉さんだから」
「そういうことなら、いいですよ」
 
それで結局千里も敬老の日の連休に桃香たちと一緒に向こうに行くことになった。
 
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この日は午後に、冬子と政子が高岡にやってきた。千里が買物ついでにインプレッサで富山空港まで2人を迎えに行った。
 
「これ冬の車と似てるね」
と政子が言ってる。
 
「冬子の車って何だったっけ?」
「カローラ・フィールダーなんだけどね」
「じゃ同系統の車だよね」
と千里は言う。
 
「今回はあまり予算が無いから、そのフィールダーに乗ってくるつもりだったんだけど、知り合いが借りて行ってしまったもんだから、結局チケット屋さんで格安チケット買って、飛行機で来た」
 
などと冬子が言っているので、千里は吹き出すのをこらえるのに苦労した。
 

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「でもうちのフィールダーより、このインプレッサの方がパワーがあると思う。1800ccくらい?」
と冬子が訊く。
 
「1994cc」
と千里は何とか普通の表情を保ちながら答える。
 
「なるほどね〜」
「冬のフィールダーは?」
「あれは1496cc」
 
「なんでそんな半端な数字なの〜?2000ccとか1500ccとか、きっちりした数字にすればいいのに」
と政子は言っているが
「その必要性が無いから」
と千里と冬子が同時に言った。
 
「越えたらまずいんだよね」
「そうそう。2001ccになってしまうと5ナンバーではなく3ナンバーになってしまう」
 
「あ、税金が高くなるんだっけ?」
「そうそう」
「だから切りの良い数字の少し下を狙う」
「そもそもエンジンは円筒形だから体積の計算は結構難しい」
「ああ、円周率掛けるしね」
 
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その日の晩に千里が山のようなボリュームの鶏の唐揚げをあげ、それをペロリと政子が食べるのを見て、桃香はあっけに取られていた。
 
「買い物した時ついでにミスドも買ってきたけど」
と千里が言って、ミスドの10個入りドーナツが3箱出てくる。
 
桃香は4個食べた。千里も4個食べた。青葉は2個食べたが、朋子は「脂っこいの苦手」と言って1個しか食べなかった。冬子は2個食べた。
 
そして政子が17個食べたので、桃香はもうポカーンとしていた。
 
「なぜそんなに入る?というより、どこにそんなに入る?」
と桃香。
 
政子はとってもスリムな体型である。体重は42kgくらいだ。
 
「政子の胃袋の謎を解明したらノーベル賞がもらえるかも」
と冬子は言っていた。
 
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しかし唐揚げ5kgの内の3.5kgくらい、ドーナツ17個を食べると、さすがに
「お腹いっぱいになった」
と政子も言っていた。
 

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冬子と政子は3日に“ローズ+リリー”のそっくりさん《ゴース+ロリー》という名目でのライブがあるので来ていて、ついでに青葉にヒーリングをしてもらったのだが(冬子は性転換手術の傷跡のヒーリング、政子は心のヒーリング)、ライブは14時からなので、午前中は伯母・清香と臨月の従姉・千鳥の家に寄るということだった。これも千里が送って行ったのだが、行っている最中に千鳥が産気づいて、病院に運ぶ手伝いをした。
 
その後、千里が冬子・政子をライブ会場まで送る。千里はどこか近くで終わるまで待っているよと言ったのだが
 
「楽屋で休んでいるといいよ」
と言い、中まで連れていく。ライブには★★レコードの加藤課長も来ていて、千里を見ると会釈をしたのでこちらも会釈をした。千里は加藤課長とはAYAの制作会議で2007年に会って以来、何度か顔を合わせているが、冬子たちと一緒に来たのには少し驚いたようであった。それで加藤さんが千里に何か言おうとした時、イベンターの人が来て言う。
 
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「すみません。楽屋口に駐めてあるブルーバード・シルフィは、こちらのどなたかのお車でしょうか?」
 
「あ、ごめーん!僕のだ」
と加藤さん。
 
それで加藤さんが車を移動しに行こうとしたのだが千里は言う。
 
「あ、課長さん、お忙しいでしょうし、私が駐車場に移動させておきます」
 
それで加藤課長は
 
「醍醐さんでしたね。ケイちゃんの関係者でしたか。じゃ、お願いします」
 

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それで千里は課長から鍵を受け取って車を移動しに行ったが、加藤さんが「醍醐さん」と呼びかけたので、あちゃぁ、私が醍醐春海であることが蘭子にバレたかな?と思った。しかし楽屋に戻ると冬子は特にそのことについて何も言わない。さっきの聞き落としたかな?と千里は思った。加藤さんとは冬子と政子がステージに出ている間に、色々意見交換をした。
 
「マリちゃんかなり精神的に回復してますね」
と千里は言う。
 
「うん。あれならローズ+リリーの復活も近いかなと僕も思っている」
と加藤さんも言っていた。
 
今日はあくまで「そっくりさん」と称してライブをしているのだが、これなら「本物」に戻れる日も近い、と思わせられるしっかりしたステージであった。
 
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千里たちが楽屋で待機していた間に、清香から千鳥の赤ちゃんが生まれたという連絡が入った。風の盆のお祭りの最終日である9月3日に生まれたことからまつり→茉莉花(まつりか)で「茉莉香(まりか)」と名付けられた。後のフラワーガーデンズのドラマー“ジャスミン”である。
 

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ライブが終わった後は、青葉とその友人2人、と一緒に八尾(やつお)に入り、風の盆を見る。風の盆は公式には9月3日の21時頃に終わるのだが、実はその後から9月4日朝4時頃に掛けてが、本当の風の盆のクライマックスなのである。冬子の知り合いの、地元の民謡家の先生とその家族やお弟子さん7人が街流しをしていて、冬子もそれに参加していた。この8人の後ろに青葉と友人2人が続いて歩いていたので11人編成の街流しに見える。
 
千里は桃香・政子と3人で沿道を観光客のような顔をして冬子たちに付いて歩いたが、政子が沿道の食物屋さんで色々買ってよく食べるので桃香はまた呆れていたようである。
 
午前5時頃に朋子がおにぎりとお茶を持ってきてくれて、聞名寺境内で一休みする。その後、富山市街地まで戻る。
 
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