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婦人科の検診を受ける。
最初に全部服を脱いで下さいと言われ、裸の状態を女性の婦人科医が観察した。
「あなた、ペニスは?」
「ほぼ消滅しました」
「切断したの?」
「自然に小さくなってしまったんですよ。見ていいですよ」
と沙苗が言うので、沙苗は内診台!に乗せられて、股間を観察された。
そこには陰裂が見られ、ペニスや陰嚢などは観察されない。
「まるで女の子のお股のように見えるんだけど、性転換手術したの?」
「身体に一切メスは入れてませんよ。ペニスはその割れ目ちゃんの中にあるんです」
「陰裂を開いていいですか?」
「どうぞ」
それで開いて見る。医師は「あれ?小陰唇が無い」と思った。しかし、陰裂の内部にはクリトリスと思われる突起がある。
「女の子に似た形だね」
「ペニスが小さくなりすぎて、体内に埋もれてしまい、排尿に障害が起きていたので、それを改善するための処置をしてもらっただけです」
「へ?」
それで沙苗は内診台に乗せられたまま!S医大で受けた治療の内容を説明した。
・尿が排出される方向が不安定になっていたので、体内に埋もれているペニスを引っ張って外に引出し、亀頭を露出させた上で、手術糸で固定する。それで固定した尿道口の方向(斜め後方)におしっこは排出されるようになった。亀頭を露出させてから固定したのは、包皮に覆われていると尿の排出方向が予測つかなくなるのと、恥垢が溜まるからである。
・排尿の際、かなり広い範囲が濡れてしまい、拭くのが大変だったし不衛生なので、陰嚢を畳んで大陰唇状にして手術糸で固定した。これで固定されたペニスがこの疑似大陰唇の中に隠れるので、排尿の際に濡れるのは、大陰唇内に限定され、排尿後に拭く範囲が狭くて済むようになった。
「結果的にほとんど女性の股間に見える」
「そうなんですよねー。だからこれしてもらってから凄く精神的に安定しました」
と沙苗が言うと、先生は頷いている。
「メスを入れずに糸で縫合しただけだから、これって、二重まぶたの加工なんかと同じ、プチ整形なんですよ」
「確かにプチ整形だ!そしてこれタックだよね」
ああ。性別検査をするだけあって、タックのことを知っているんだと思う。
「そうなんです。タックと同じです。通常のタックだと接着剤で固定するから数日しかもちませんけど、これは手術糸での固定だから、数年は持つだろうということです」
「うん。そのくらい持つと思う。一応ペニスのサイズ計らせて」
「どうぞ」
それで先生は沙苗の大陰唇を開き、中に隠れているマイクロサイズのペニスの計測をしていた。
「外に出ている部分が5mm, 直径は3mmかなあ」
「そんなものでしょうね」
「尿道が付いてなかったらクリトリスにしか見えない」
「自分ではクリトリスだと思うことにしています」
「うん。それでいいと思う」
内診台を戻してから先生は尋ねた。
「ペニスがいちばん長かった時期って何cmくらいだったか分かる?」
「たぶん小学3年生の頃かなあ。よくは分かりませんけど、4-5cmくらいでしょうか。昨年春にS医大で最初に測られた時3.2cmと言われたんですけど、いちばん長かった頃でも、その時期より少し長かった程度という気がするので」
「4年生頃から縮み始めたの?」
「その少し前、3年生頃から、こっそり女性ホルモンを飲み始めたので」
「なるほどねー。でも女性ホルモンの入手先は?」
「最初の頃はお小遣いでエステミックス買って飲んでたんです。でもあれ高いし、売っている所も少ないから留萌では入手しづらくて。そんな時、私がエステミックス飲んでることに気付いた、MTFの友人が、男に戻る気無いなら、いっそエストロゲン飲めばいいよって言って。それで彼女が女性ホルモンの入手ルートを持っていたので、分けてもらって(*21)、4年生の頃からエストロゲンを飲んでたんです。やはりエステミックスは男性化を停める程度の力しか無かったみたいだけど、エストロゲンを飲むようになって、乳首が立ったりするようになって脂肪も女性的に付くようになった感じです」
「ああ」
「ペニスがいちばん長かった頃、睾丸はどのくらいのサイズだった?この中から選んでくれる?」
と先生は言って、たくさん楕円球のブラスチック製模型が入った箱を渡す。沙苗は何個か握ってみていたが
「このくらいかな」
と言って、20という印字(*23)のされた玉を取りだした。医師は頷いていた。
(*21) 沙苗は実は小学4年生頃から“夢の中で”千里が自分に女性ホルモンの錠剤をくれたり、注射をしてくれるシーンを見るようになった。最初はただの夢かと思っていたのだが、本当に乳首が立つようになったし、睾丸が小さくなった気がしたし、“女性的衝動”を感じるようになって、同級生の男子をまともに見られない気分になってきたので“夢の中”の女性ホルモンが“効いている”ことを認識した。
リアルの千里が本当に女性ホルモンの錠剤をくれたのは6年生の10月が最初だが、その後、夢のほうは見なくなった。リアルの千里は沙苗がS医大で正式にGIDと診断され、女性ホルモンを処方してもらえるまで女性ホルモンの錠剤をくれていた。
(*23) 長径20mmの楕円球である。長径が20mmの睾丸は統計的に短径は12mm程度であり、その体積は 4/3 πabc の計算式により、1.0×0.6×0.6×3.14×4÷3 = 1.5cc となる。これは小学2-3年生男子の睾丸サイズであり、沙苗が“誇張”せずに正直に申告したことを医師は感じ取った。
「あなたの声は女の子の声に聞こえるんだけど、ずっとこの声?声変わりはしなかった?」
「声変わりかなあと思う変動はありましたよ。声質が少し丸くなったというか。そして声域が少し下の方に広がりました。最高音はむしろ高くなってるかも。これは歌が好きでずっと歌ってたからかもしれないけど」
「なるほどね。喉仏はできたことない?」
「そんなものできたら凄く嫌だと思ってたけど、幸いにもできませんでした」
「ヒゲとかスネ毛とか生えたりしたことは?」
「それも生えて来たりしなかったのでよかったです。そんなの生えてきたらどうしようってずっと不安でした」
「あなたの陰毛は女性型のように見えるけど、脱毛とかは?」
「女性型だってのは友人から指摘されたことあります。脱毛は水着を着るのにビキニラインは毛を焼き切るタイプで処理しますけど、レーザーとかでの脱毛はしたことないです」
「あなたオナニーしたことは?」
「そのくらいしますよ」
「頻度は?」
「月に数回だと思います」
「オナニーの方法は?」
「普通だと思いますけど」
「普通というと?具体的な方法は?」
「お布団の中で、あそこに手をやって、指であれを押さえて、ぐりぐりと回転運動を掛ける感じかな」
「握ったりしないんだ?」
「握れるようなものないですぅ」
「いいよ。それいつ頃からしてた?」
「幼稚園の頃にはしてた記憶があります」
「小学3〜4年生の頃から頻度が増えたりしない?」
「さあ。特に増えたような気はしませんけど」
「オナニーしたら射精はしてた?」
「射精の経験は無いです。到達した感覚はあるんですけど、特に何も出ません。だから到達したと思ったらその後、少しずつ回転速度を落としていって、その快感に浸っているんですよね」
ん?
「到達したらそこでやめないの?」
「え?到達した所からゆっくり落としていきません?」
「いや、いいよ。そういう人もいるしね」
と医師は言っておく。
「夢精も起きてない?」
「経験無いです。きっと女性ホルモンを摂ってたせいなんでしょうけど」
「勃起は?」
「その経験も無いです。ちんちんが大きくなるものだとか小学5年生頃まで知りませんでした。きっと私は男の子としては欠陥品なんだろうなと思いました」
医師は沙苗の“言い方”が気になった。
「あなた男湯に入った経験は?」
「無いです。自分では自分は女だと思っていたから、男湯とかとても入れません。修学旅行では体調悪いと言って、部屋に籠もってて浴場には行きませんでした。だから実は私、男の子のちんちん自体を見たことないんですよねー。うちは男の兄弟も居ないし、父は裸で家の中を歩き回る人じゃないし」
「なるほど、分かった」
と言ってから医師は
「もう一度内診させてもらっていい?」
と言った。
「どうぞ」
それでまた内診台の下半身が持ち上げられ、恥ずかしい格好にされる。先生は大陰唇内にライトを当ててよくよく観察していたようである。
すると先生は“それ”に気付いた。
「この大陰唇内の奥にある穴は何?」
「それ先日S医大でも指摘されたんですが、正体不明だそうです。ひょっとしたらヴァギナができかけてるのかもしれないけど、あまりそういう例は無いから、取り敢えず様子見です」
「手術して作ったものではないのね?」
「私、生まれて以来手術は受けたことないです」
「この穴の中を観察してもいい?」
「どうぞ」
「入口がまるでヒーメンみたいに見える。これに傷つけないように細型の器具を入れるね」
「お願いします」
それで医師はどうもその穴に処女用の極細クスコを入れたようである。
「単なる窪みだね」
と医師は言った。側壁に多数のヒダがあり、膣内部のようにも見えることは敢えて言わなかった。
「でしょ?だから正体不明なんですよ」
「深さ3cmくらいかな」
「4月3日の診察では2cmと言われました」
「深くなってる?」
「誤差の範囲では?これがヴァギナに成長したら嬉しいんですけど、そんなファンタジー小説のできごとみたいなことは期待しないことにします」
「悪いけど、もう一度MRI撮らせて」
「いいですよ」
それで沙苗は服を着た上で、リアルタイムMRIの部屋に連れて行かれた。母と阪口さんも一緒に行く。千里と岩永先生は部屋の外で待機する。
下半身の服を脱いだ上で腰の付近をリアルタイムMRIで観察される。
女性医師はしばらく考えていたが、やがてMRIでの診断を終える。そして沙苗には服を着て部屋から退出し、外で待っているように言った。
沙苗が出ていき、千里と一緒に外で待つ。母と医学委員さんが呼ばれて中に入る。
医師は、写真を見せながら言った。
「陰唇内、通常の女性の膣がある位置に小さな窪みがあるのですが、これは膣の出来かけの可能性がありますね」
「S医大でもそういうことを言われましたが、経過観察しなければ判断はできないということでした」
と母が言う。
医学委員さんはもう少し詳しく聞きたいようだったが、この場ではこれ以上は何も尋ねなかった。
これで一連の診察は終わったが、肝心の性別判定の問題について、医師はこの場では結論は言わなかった。ただ、医師はこの診断の結果に基づき診断書を書くと言った。医学委員さんも頷いていた。
この後、医学委員さんは沙苗本人と2人だけで1時間ほど話したが、主として、これまでの個人的に把握している範囲の性的発達について聞かれたと言っていた。
4月20日(火).
きーちゃん、桃源、千里、によるチームプレイでの呪いグッズの処理はこの日の夜21時頃に終了した。最後の“大物”のお焚き上げは全員で実施した。
「お疲れさまでしたぁ!」
「いや、気の抜けない作業で疲れた疲れた」
「一応この部屋は今月いっぱいくらいは霊道が入って来ないように処理してるから、遺品を持ち出す場合は、それまでに」
「分かりました。ありがとうございました」
と左座浪と義浜は言った。
それで左座浪が高岡と夕香の遺族(実は高岡亀浩(白河夜船)と長野支香)に連絡するのに部屋の外に出たのだが、この時、桃源ときーちゃんは義浜に言った。
「あんた、いいかげん、男の振りして生きるのやめたら?」
「あははは」
「いい病院紹介してあげるからさ」
「貴子さんの紹介する病院って、なんか恐い気がするんですけど」
とハイレが言うと
「わりと勘がいいじゃん」
と桃源は言った。
やはり恐い病院っぽい。でもそういう所で“まな板の上の鯉”になってもいいかもしれない気がしていた。毬毛さんに言われたように、実際この後、男として生きていく自信が無い。全てを捨てて再出発してもいいかも。
一行は翌日4月21日に飛行機で北海道に戻った。
「今回はさすがに疲れたね。千里、今月のセッションはお休みでいい?」
と、きーちゃんは言った。
「うん。私も疲れたぁ」
と千里(千里G)も言った。
Rも今週は沙苗の件で大変だったみたいだしね!
左座浪からもらった1000万円の報酬について、きーちゃんはまず最も危険な作業をした桃源に500万渡し、千里に300万、物資の調達などのサポートをした月夜(つーちゃん)に100万と、千里のガード(真名(まことのな)を知られて千里に使役されていたようで驚いた!)をした櫃美に100万渡した。
しかし、櫃美は「返上する」と言うので、灰麗に渡そうとしたが、彼女も「自分がもらっては申し訳無い」と辞退する。
それで、つーちゃんに頼んで保険屋さんを装い「夕香さんの保険が出たから」と言って、支香に渡した。支香はかなり生活に困窮していたようで「助かる」と言って、泣いて喜んでいた。
きーちゃんは、支香とその母の生活を支援する必要を感じた。それで上島雷太の夢枕!に立って高岡猛獅の霊を装い「支香ちゃんの生活を支援してあげて」と言った。それで上島も支香の窮状に気付き、取り敢えず会って話を聞いた。それで、お母さんの治療費は「お母さんの婿の猛獅に代わって」親友の僕が出すからと言った。支香はそれで何とか生活が成り立つようになったようである。
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女子中学生の生理整頓(22)