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3月17日(水).
15日にS中を卒業し、16日にS高校・特進科に合格した亜蘭は、セナを自分の部屋に呼ぶと言った。
「これ私のS中セーラー服、クリーニングに出して戻って来たから、約束通り、あんたにあげるね」
「ありがとう」
「早速明日からこれ着て、学校に行く?」
「明日からなの〜〜?」
「まあ4月からでもいいよ」
「それまでに考えさせて下さい」
自分が実は1月からずっと校内ではセーラー服を着ていることは姉を含む家族には言っていない。先生からも何も言われないので、先生から保護者が呼び出しになるようなことも起きていない。
「じゃ取り敢えず、今夜は寝るまでこれを着て過ごすといいよ」
「うん。それくらいなら」
ということで、セナは夕食時も、その後の家族で過ごす一時もセーラー服を着ていたが、父親は
「おお、可愛いじゃないか」
などと嬉しそうに!?言っていた。
「私が卒業したから中学の制服はあげたんだよ」
「だったら、世那は4月からはその服で通うといいな」
と父は笑いながら言っている。
「賛成、賛成」
と母も姉も言う。弟まで
「姉貴が2人になるのもいいなあ。僕が長男になるし」
などと言っている。
ぼく、ホントにこれで学校に通っていいのかなあ、とセナは真剣に悩んだ。
翌日、3月18日(木).
姉はセナに言った。
「ということで性転換しようか」
「え!?今日なの?」
「下着の性転換よ」
「えっと」
「あんたもう、男物の下着は着てないでしょ」
「・・・着てないかも」
「だからそれ全部捨てちゃお」
「え〜〜〜!?」
「必要無いものをタンスに入れておくことはない。明日は布紐類の日だしね」
「捨てようかな」
「よし」
それで姉が母も呼んできて、ついでに弟も入って、セナの服を生理、もとい!整理したのである。
「これ僕がもらっていい?」
と弟の慧瑠(さとる)が言うものは、全部あげた。
男物のパンツは全て廃棄。シャツは、傷んでないものは慧瑠がもらい、傷んでいるものは廃棄する。上着のシャツも、右ボタンのシャツ、男の子っぽいデザインのシャツは、全部廃棄または慧瑠にあけた。
普段着のズボンは、パジャマやスウェットなどを除いて、全部慧瑠にあげた(一部傷んでいるものは廃棄)。普段着用のボトムがほんとに無くなってしまうが、姉が
「私のを少しあげる」
と言って、スカートを3着くれた。
つまりセナはもうズボンを穿いて出歩くことはできない。出歩く時はスカートを穿かなければならないことになる。
「3着じゃ足りないだろうから、春休みに少し買い足してもらえばいいよ」
と姉。
「うん。一緒に買いに行こうね」
と母。母は何だか楽しそうである!娘が増えるというのはどうも母親にとっては嬉しいことのようだ。
「ワイシャツも捨てよう」
「え〜〜〜!?」
「学校にはブラウス着てけばいいよ」
「そしたら明日着ていくワイシャツが」
「私のブラウス2〜3枚あげるからさ。それで終業式までは乗り切れるでしょ?春休みの間に新しいブラウス買ってもらえばいいし」
「ブラウスとか着てて叱られないかなあ」
「大丈夫。バレないって」
実は1月からずっと校内ではセーラー服を着ているのでその下には毎日ブラウスを着ている。ブラウスは実はP神社で小町が洗濯してくれている。
そういう訳で、セナのタンスの中からは男物がほとんど無くなってしまったのである。
「今タンスの中が少し寂しいけど、すぐ女の子の服でいっぱいになるよ」
と姉は言った。
セナも本当にそうなりそうな気がした。
ぼく・・・じゃなくて私、もう後戻りできない所まで来てしまったのかも、とセナは思った。
(とっくの昔にPoint of No Return を過ぎていることをセナは認識していない)
2004年3月20日(土).
千里Rはいつものように高速バスで旭川に出た。
きーちゃんは最初に言った。
「まだハツキリしないけど、私、もしかしたら7月か8月頃、道外に引っ越すかもしれない」
「へー。転勤?」
「まあそんなものかな。でも私がどこかに行っても、この家は自由に使えるようにしておくから。越智さんにも引き続き剣道の指導をお願いすると頼んだ」
「分かった。ありがとう。重宝させてもらう」
「千里、2年後に高校行くのに旭川に出てくるなら、ここに住んでもいいよ」
「ああ、そういう手もあるかもね」
「でも山形も雪多そうだよね。雪の質が違うかもだから気をつけてね」
「・・・・私、山形って言ったっけ?」
「あれ?言わなかった。そう聞いた気がしたから言っただけだけど」
この子には・・・隠し事ができない。いかにも普通の人みたいな顔をしていて実は全てを見透かしている。もしかしたら自分はこの子のパワーを見誤っていたかも。
きーちゃんは思いっきりのエネルギー弾を千里に向けて放った。
千里はそのエネルギー弾を反射せずに分散させた。窓ガラスが割れたし、壁時計が壊れて落下した。他にもあちこち壊れる音がしたけど、仕方ない。
「びっくりしたぁ」
と千里は言っている。
「反射しなかったんだ?」
「今のは反射したら、きーちゃん死ぬと思ったし」
「うん。死ぬかもしれないと思ったけど試してみた」
「でも間違って殺してしまったら嫌だから、ここまで強いのは勘弁して」
やはりこの子は・・・いつも手加減してるんだ!フルパワーのこの子を見た人は・・・きっと生きてない!
「そうだね。山形に引っ越してからでも何か関わりができることはあるだろうし、千里にまだ色々なことを教えたいしね」
と、きーちゃんはやっと笑顔になって言った。
この日はふたりで1時間ほど掛けてお部屋の掃除をして、窓には取り敢えずカーテンの布を貼り付けて風が吹き込むのを防いだ。それからガラス屋さんに電話して、ガラスの交換をお願いした。午後には来てくれたが「何があったんですか?」と驚いていた。
この日も、龍笛・ピアノ・フルートと習ったが、お掃除に時間を取られたので、ピアノが少し短めになった。そして翌日は越智さんに午前中剣道の指導を受けたが、特例で初段認定してもらったと言うと
「実際は三段くらいの力があるけどね」
と言いながらも喜んでくれた。
どうも、きーちゃんが越智さんに「同段者のつもりで攻撃して」と言ったようで、この日の越智さんの攻撃は物凄かった。さすがに全部は防ぎきれなかったものの
「君の力を見誤っていた。ここまで防御できるのはほんとに凄い」
と感心していた。
「これなら本当に全国大会に行けるかもよ」
と言って、越智さんのハイレベルの指導は続く!
来月も似たような水準で指導を受けることになりそうである。千里は一瞬たりとも気が抜けないので、内心「きゃー」と思って対峙していた。
2日目の午後もまた龍笛・フルートの指導を受け、夕方には天子の家に行って一緒に夕食を取った。
その後、最終JRで留萌に帰った。(ことにした!)
3月24日(水).
S中では終業式が行われ、約2週間の春休みが始まった。
「沙苗は始業式までに性転換手術を受けておくように」
「セナは始業式には性別変更届けを出すように」
などと言われて、2人ともドキドキしながら学校を出た。
ついでに祐川君まで
「4月からはセーラー服を着てくるように」
と言われて
「え?俺もなの!?」
と焦っていた(でもどう見ても言われて喜んでいる)。
まあ来年度はクラス替えあるだろうけど、もしクラス替え無しで3年生まで行ったら、このクラスの男子の大半が女子になっちゃったりして、などと鞠古君は思った。
鞠古君は個人的にはセーラー服を着たい気持ちはある(女の子になりたい気持ちはない。スカートが好きなだけ。彼は性別意識の揺らぎは無い)ものの、姉からもらったセーラー服で学校に出てきた日には、みんなから
「変態にしか見えん」
「痴漢として警察に捕まるぞ」
などと、さんざん言われたし、セーラー服に限らずスカートを穿いていると留実子に殴られるので、セーラー服はセナに贈呈した。またスカートも自宅以外では穿いていない。
自宅の彼の衣裳ケースにはスカートが10枚くらい入っている。しかし女の子になりたい訳ではないから、パンティやキャミソールは着けない。但し現在病気治療のために女性ホルモンを投与されていて胸が膨らんでいるので、ブラジャーは着けている(体育の時間や部活の時はスポーツブラを着ける)。彼は後ろ手でブラのホックを留めることもできる。でもこれはあくまで胸が膨らんでいるから仕方なく着けているだけである。
2004年3月24日(水). 大安・ 一粒万倍日・三隣亡・とず(閉)。
年末に『黒潮』で新人ながらRC大賞を取った松原珠妃の2枚目のシングル『哀しい峠』が発売されたが、全く売れなかった。
この曲には多数の不運の積み重ねがあった。
当時、珠妃が所属するζζプロでは、珠妃の理解者であった兼岩源蔵が、武芸館での珠妃襲撃事件の責任を取って社長を退任して会長に退き、普正堂行が社長に昇格していた。普正は演歌が大好きなので、事務所の有望スターである珠妃に演歌を歌わせたかった。それで演歌調の曲を発注した。
作曲者は『黒潮』と同じ木ノ下大吉だが、この頃、木ノ下は調不調の波が激しくなっており、『黒潮』は良かったが『哀しい峠』は微妙だった。ハッキリ言えば駄作だった。
『黒潮』が海を越えてデートする恋人たちを描いているのに対して『哀しい峠』は険しい峠を越えてデートする恋人を描いていて、テーマが完全に同じだった。まさに2匹目のドジョウを狙った曲である。しかもこの歌は悲劇的な終わり方をしていた。
『黒潮』は発売前に披露された段階では悲しい終わり方だったが、大量の助命嘆願が届き、兼岩社長の決断で、プレスの終わっていたCDを廃棄して、急遽奇跡的に救われる結末に改変して発売したことが大ヒットに繋がった(加藤銀河やケイの見解)。
今回は普正社長が「日本人は涙で感動するんだ。黒潮は最初の悲しい結末の方が良かった」と主張して、悲劇的な終わり方で制作するよう指示した。
★★レコードで当時珠妃を担当していたのは湯畑真路(ゆはた・まさみち)(*16)である。彼も元々演歌が好きで、歌謡曲調の『黒潮』はあまり好きではなかったという。
「ファやシの音を使うのは西洋かぶれの邪道で、ペンタトーンこそが日本の美だ」
と彼は言っていた。
それで今回の演歌調の曲を支持していた。また彼は
「『黒潮』はCDは売れたけど、難しすぎてカラオケで歌える人がほとんど無く、カラオケの売上げは悲惨だったもん。今度の歌は音域も狭くて歌いやすいから、きっとカラオケでも凄い売上になるよ」
などと言っていた。
関係者の中でひとり否定的な反応をしたのは、珠妃をスカウトした事務所の先輩・しまうららである。
「珠妃ちゃんにこんなつまらない歌を歌わせるの?」
と言っていたが、社長が強力に推していると言われると、それ以上異論は唱えなかった。
★★レコードで4月から珠妃の担当を引き継ぐことになっていた加藤銀河は
「この曲は珠妃に合ってない。彼女の能力を全く活かしていない。こんなの歌唱力の無い下手糞でも歌える歌だ。そもそも曲自体の出来が悪い」
と思ったものの、制作段階ではサブの立場だったので、反対意見を述べることができなかった。
この曲は、まだ兼岩さんが指揮を執っていた時期か、或いは加藤が担当になった後であったら、絶対珠妃には歌わせなかった歌である。物凄くタイミングが悪かった、
ミリオン売った後の曲なので、FMなどでも事前に流されたしTVスポットも大量に流された(宣伝費に5億使っている)が反応が悪く、多くのFM局では1度流しただけで、その後は流さなくなってしまった!
それで蓋を開けると初動0枚(報告枚数未満)という、あまりにも悲惨な売上スタートとなっていたのである。この曲はその後、1度もランキング100位以内に現れなかった。レコード会社は3万枚売れたと主張しているが、怪しいと思う。
(“出荷”は30万枚された(とレコード会社は主張する)ので珠妃は30万枚に対する印税(約200万円)を受け取ったが、レコード店の店頭では全く見かけられなかった。レコード店はあまりに売れないのでスペースだけ食うこのCDを早々に店頭から撤去して箱に戻し、半年経った所でそのまま返品したのではと言われた。たとえ30万枚出荷しても全く売れてないので、当然、ゴールドディスクには認定されていない)
それで“RC大賞を取った歌手は翌年売れない”といジンクス通りになった。
湯畑さんはカラオケの売り上げを期待したようだが、あまりにも売れないので、5月にはカラオケの配信から削除された!
(*16) 湯畑真路は3月いっぱいで★★レコードを退職し、郷里の広島県に帰って“お嫁さんに行った”らしい。加藤銀河は“お嫁に行く”という話を聞いた後で彼(まさか彼女?)の言葉を聞くと、やや女っぽい話し方のように聞こえないこともない気がした。彼がもし女性だったとしたら彼の名前・真路は“まさみち”ではなく“まろ”と読むのかも!?
(でもこの業界は元々男でも女っぽい話し方の人はわりと普通にいるので、あまり気にならない。そもそも規格外の人が多い業界である)
なお彼(彼女?)の体型を見てもバストがあるようには見えなかったし、加藤は何度か(男子用)トイレで彼と並んだことがある。のぞき込んだりはしてないのでペニスの存在までは確認していないが!(ペニスが無くても小便器を使えるのだろうか??)また彼の声自体は普通の男声だったし、喉仏もあるように見えていた。
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女子中学生の生理整頓(14)