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■女子中学生の生理整頓(3)

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男子の準決勝の後、女子の決勝戦と3位決定戦が行われる。第1場で決勝戦、第2場で三位決定戦である。
 
決勝戦の相手はむろんR中である。向こうのオーダーはこのようになっている。
 
先鋒・鹿島(1年)2級
次鋒・風間(2年)2級
中堅・麻宮(2年)1級
副将・前田(1年)1級
大将・木里(1年)初段
 
最初に鹿島さんとこちらの先鋒・宮沢(2年2級)が戦う。接戦だったが終了間際に鹿島さんが1本小手を取って勝った。こちらの次鋒・武智(2年2級)が出て行く。鮮やかに武智が2本取って勝った。向こうの次鋒・風間さんが出てくる。結構接戦となり双方1本ずつ取るが、残り30秒で風間さんが1本取って2本勝ちとなる。
 
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こちらの中堅・玖美子(1年1級)が出ていく。1分で2本取り勝つ。玖美子は続いて向こうの中堅・麻宮さん(2年1級)も撃破した。向こうの副将・前田さん(1年1級)が出てくる。玖美子の良きライバルである。
 
戦いはかなり熱くなった。本割では1本ずつ取って勝負が付かず延長戦になる。ここで前田さんが際どい勝負で1本取り、前田さんが勝った。
 
それでとうとう千里の出番である。
 
千里は小学校の時の前田さんとの勝負を思い出し、この人けっこう強かったよなあと思っていた。対峙すると、昔の感覚が蘇ってくる。向こうの攻めが来るが反射的にかわす。そして相手がまだ体勢を整え直す前にきれいに面で1本取る。
 
対峙する。
 
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こちらから攻めてみようかと思った。
 
それで何も気配の無い所から瞬間的に面を打つ。
 
鮮やかに決まった。2本目なので千里の勝ちである。
 
結果的にはわずか28秒で勝負が付いた。
 
礼をした後で前田さんが
 
「村山さん、既に三段くらいの力がある!全く歯が立たなかった」
などと言っていた。
 
そんなに!?私1級だし、しばらく剣道してなかったのに。
 

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木里さんも難しい顔で腕を組んでいた。大将の彼女が出てくる。彼女は13歳の誕生日が過ぎているので初段になっている。
 
彼女とは激しい攻め合いになる。息つく間もなく、お互い攻めて攻められである。しかし彼女の攻撃を千里は軽くかわしていく。しかし彼女も千里の攻撃をたくみにかわしていく。
 
1分経ったところで千里の面が決まり、まず1本。しかし2分経ったところで彼女から返し胴を取られて1対1である。
 
そして更に両者激しい闘いが続いたが、残り10秒で千里が面を取って勝った。
 
礼をした後で木里さんは首を振って
「全然かわなかった。今日の村山さんは全く動きの予想が付かなかった。春までに鍛え直してくる」
などと言っていた。
 
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これで団体戦はS中が優勝した。
 
S中大将の沙苗は最後まで座り大将だった!
 

観客席に取られている各校の控えスペースに行き、お弁当を広げる。試合場では男子の決勝と3位決定戦が行われているが、こちらはもうお昼休みモードである。
 
玖美子は千里が“青いスポーツバッグ”からお弁当を取り出すのを見て何やら頷いていた。
「だけど、今回でS中が優勝できたのは“勝ち抜き方式”だからだな」
と言っていた。
「うん。1人ずつ対戦する方式なら、こちらが圧倒的に不利だった」
と武智部長も言っていた。
 
なおS中男子は2回戦でK中に敗れたので、3決にも出ていない。
 
「原田〜。もう一度性転換して男になる気無い〜?」
などと工藤君が沙苗に言っている。
 
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「あれ?そういえば沙苗は女子で出たんだね」
と今更気付いた千里が言う。
 
「協会が今大会については許可してくれたから女子で出た。春の大会はどうなるか分からない」
と玖美子が言う。
 
「出番は無かったけどね」
と本人。
 
実は沙苗を出すなら「大将にして」というのは、協会の人が女子としての出場を許可する文書を交付した後で“口頭で”岩永先生に言ったことなのだが、生徒たちは知らない。できるだけ彼女の実戦を減らすためである。
 

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そんなことを言っていたら、F中の桜井さんが通り掛かった。F中は人数が少なく5人揃わなかったので、今回の大会には個人戦のみに参加し、団体戦には出ていない。
 
「原田さん、今回は女子で出たんだね?」
と笑顔で言う。
 
「医師の診断書とか提出したら、今回の大会に限っては女子として参加していいと言われたんですよ」
と玖美子が代わって説明した。
 
「原田さん、間違いなく女の子だもん。女子として参加すべきだと思うよ」
と彼女は沙苗のバストにさわりながら!言っていた。
 
(触って性別を再確認しているのでは??)
 

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食事が終わった後、玖美子がトイレに行き、控え場所に戻ろうとしていたら、途中で小春と遭遇した。
 
「くみちゃん、これ千里の予備の道着持って来た。借りたのは洗濯して返させるから」
「さんきゅ、さんきゅ。私も着替えたいと思ってた」
と言って、小春から道着・袴を受け取ると、いったん控え場所に戻り、着替えの入ったバッグを持って更衣室に行った。そして下着から全部交換した。
 

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さて、乗りたかったバスを逃した上で遠回りするバスに乗ってしまった千里Rだが、9:00から試合が始まるというのに留萌駅前でバスを降りたのがもう8:55である。当然開会式に間に合わない。私、オーダーから外されたかも〜などと思いながら、必死で会場に向けて走っていた。
 
『私が居なかったら、工藤君が女装して女子に加わってたりして』
などと妄想している。
 
女子剣道部は現在、千里と沙苗を含めて5人しか居ないのである。
 
信号に引っかかったりしたのもあり、9:10頃、完璧に遅刻して勤労体育センターの前まで来た。全力で走ってきたので息が荒い。かなり汗を掻いているので、これは道着に着替える前に下着を交換しなきゃなどとも思った。
 
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それで勤労体育センターに入ろうとした時
「千里、やっと来たか」
という声がするので反射的に
「ごめーん」
と謝るが、声を掛けたのは留実子である!
 

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「るみちゃんは・・・応援団?」
「何言ってるの?バスケの大会じゃん。千里、完璧に遅刻だぞ」
「ごめーん。バスを逃してって、バスケって何???」
 
「まだ起きてないみたいだな。とにかく来て」
「え?ちょっと待って。私、剣道の大会に行かなきゃ〜」
と言うものの、千里は留実子に強引に市民体育館の中に連行された。
 
「おお、やっと来たか」
と久子が言う。
 
「千里ちゃん、ちょっと来て」
と言って、久子は千里を本部に連れて行った。
 
「すみません。この子なんですが」
と久子が何かお偉いさんという感じの人に言っている。
 
「君はS中の生徒なのね?」
と言われるので
「はい」
と答える。
 
「生徒手帳、持ってる?」
「生徒手帳ですか?」
と言って取り出してみせる。
 
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その生徒手帳の身分証明書欄にはこのように書かれている。
 
身分証明書
下記の者は本校の生徒であることを証明する。
所属 1年1組
氏名 村山千里
生年月日 平成3年3月3日 性別 女
住所 留萌市C町**−**
 
留萌市立S中学校 校長 木原光知
 
これを見て大会長さん(と後で知った)は頷いている。
 
「関係無いけど、校長先生の名前、なんか昔の水泳選手に似てるね」
「ですよね。“子”を付けたら、水泳選手の木原光知子さんになります。でも本人は水泳は苦手らしいです。ついでに全く女に見えないから女装は無理だと言ってました。スカート穿いたら痴漢にしか見えないらしいです」
と久子が言うと、大会長さんは笑っている。
 
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そして言った。
 
「S中の生徒なら特別に参加を認めます」
「ありがとうございます!」
 
この時、この身分証明書欄を見た久子も大きく頷いていたのに千里は気付かなかった。
 

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千里はさっぱり分からなかったが、S中の待機場所に来てから久子が説明した。
 
「実は友子と数子とが風邪で休んでいて」
 
「この季節、風邪には気をつけないとね〜」
と言っているのが、後で知ったが博実さんといって助っ人で来ているテニス部の人らしい。
 
「えっと・・・」
 
「だから選手が私とユミリンとヒロミンと、るみちゃんの4人しか居なくてさ。でも千里が来るだろうからというので千里もエントリーシートに書いて出した。でもユミリンとヒロミンは事前に参加許可取ってたんだけど、千里の名前が部員名簿にも事前許可者リストにも無いと言われたからさ。病人が出て急遽頼んだんですと言ったら、来たら本人連れて来てと言われたから連れていった」
 
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「じゃ私に出てってこと?」
「そうそう。この際、仕方ない」
 
「ちょっと待って」
と言って、千里は赤い携帯を出すと玖美子に電話した。
「ごめーん。遅刻しちゃって。エントリーどうした?あ、何とかなったの?ごめんね。だったらもしかして私、午前中はそちらに行かなくてもいい?うん実はバスケ部の子に捕まって、隣の市民体育館でやってるバスケの試合に出てくれないかというからさ。いい?ごめんね。うん。午後からの個人戦は頑張る」
 
どうも剣道の方は千里が遅刻したので誰か代わりの子を入れてエントリーシートを出したようである。誰が代わりになったか聞かなかったけど、ほんとに工藤君が女装してたりして、などと考えると楽しくなる。
 
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「剣道部の方が何とかなったみたいだから午前中だけでも出るよ」
「まあそれでもいいけどね」
と久子は言った。
 
久子としてはどっちみち3試合目は相手がこの地区の女王R中で千里を入れても勝てるとは思えないから、棄権でもいいかなというところである。なお、バスケでは退場者や負傷者が出ても選手が2人いれば試合続行できる(1人ではスローインができない!)が、試合開始時には5人いなければ没収試合となる。
 

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千里は体操服を持って来てないと思ったのだが
「はい、これ」
と言って、小春が渡してくれた。
 
実は隣の勤労体育センターで道着に着替えたBが着てきていた体操服である!(小春は今日は忙しくなりそう、と思っている)
 
それで千里はその体操服に着替え、久子から渡されたゼッケン(マジックテープ仕様)を貼り付けた。(S中女子バスケ部はお金が無いのでユニフォームが無く、学校の体操服にゼッケンを付けている)
 
バスケット新人戦は、女子4チーム、男子6チームの参加ということだった。今回はどちらも総当たり戦方式になっている。女子は4チームで総当たり、男子は3チームずつ総当たりでやって、各々のトップ同士で決勝戦をするという方式である。タイムスケジュールはこのようになっていた。迅速な試合進行にするため“男子の決勝戦・三決以外は”各ピリオド最後の2分間を除いてボールデッドになっても時計を止めないし、タイムアウト無し、という特別ルールである。
 
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9:00 男子1-2 4-5
9:55 女子R-C S-M
10:50 男子3-1 6-4
11:45 女子S-C R-M
12:40 男子2-3 5-6
13:35 女子C-M S-R
14:30 男子3rd Final
 
千里は2試合目が終わるのが12:35くらいなら、それから隣の勤労体育センターに移動すれば13:00から始まる剣道の個人戦に間に合うな、と考えていた。もっとも40分間バスケットで走り回った後の剣道の試合は辛い気もしたが!
 
ただ千里は前回準優勝でシードされていると思うから、剣道の最初の試合はおそらく14時半か15時くらいになるのではという気がした。それなら体力を回復させる時間はありそうだ。
 

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