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1月21日(水)には、変形時間割で、実力テストが行われた。午前中に英語・社会・数学、午後に理科・国語である。“千里たち”は、例によって英語と社会をY、国語をR、数学と理科をBが分担して問題を解いた。
今回の勉強会グループの成績順位(春→夏→今回)
玖美子1-1-1 蓮菜2-3-2 田代3-2-3 美那22-14-12 穂花25-16-11 千里40-26-22 恵香43-32-28 沙苗65-41-36 留実子74-58-47 セナ78-81-68
セナが勉強会に毎日来るようになったのはこの冬休みからである。女装したさ(女装させられたさ)に参加するようになった。この学年は2学期以降82人なので夏の実力テストではブービー(*8)だった!
(*8) ブービー(booby)は本来は最下位のことであるが、日本では最下位の1つ上という意味での使用が定着している。これはブービー賞欲しさにわざと最下位を狙うプレイを排除するためとも言われる。それで日本では最下位のことは、ブービーメイカーと言うが、こういうboobyの使い方及びブービーメーカーという言葉は日本独自のもので、英米では通用しない。
1月24-25日、千里Rはいつものように高速バスで旭川に出て、きーちゃんの家にお邪魔した。フルートと龍笛(と、ついでにピアノ)の指導を受けるためである。
実際には旭川駅前で彼女の車(トリビュート)で拾ってもらったが、千里は彼女が着けている喪章に気付いた。
「誰か亡くなったの?」
「実は釧路で千里も会った佐藤小登愛が亡くなったのよ」
「え〜?まだ若かったのに。まだ20歳くらいだったよね?」
「23歳かな。私もちょっとショックだった」
「病気か何か?」
「なぜそう思った?」
「だって、子宮の調子が悪そうだったから」
「・・・・・」
実は小登愛の遺体は検屍された時に、死因とは関係無いものの、初期の子宮癌も見付かっていたのである。きーちゃんは彼女の病気には気付いていなかった。
「まあ事故のようなものかな」
「へー。ほんとに気の毒に。凄い才能の高い人だったみたいなのに」
「うん。凄い子だった。私、あの子が亡くなった時、海外に居て。何かそれも悔やまれる」
「自分を責めてはいけないよ」
「そうだけどね」
きーちゃんは小登愛には“霊的防御”をもっとしっかり指導しなければいけなかった、と後悔していた。
この日は、彼女の家でまずは龍笛を3時間、お昼を食べてからピアノを2時間、おやつを食べてフルートを3時間指導してもらった。
「千里はどんどんうまくなってる。ほんとに音楽的な才能がある」
「そうかな」
ピアノもこの日はついにツェルニーを卒業して次からはハノンをやろうと言われた。
「我流で弾いていた部分がきちんとした弾き方になって、弾きやすくなったでしょ?」
「そうなんだよね。なんか今までより小さなエネルギーで同じ曲を弾けるようになってきた」
「やはり長年の歴史で開発されてきた演奏法というのは合理的にできてるよね」
「千里」
ときーちゃんは笑顔で千里に声を掛けた。
「うん?」
きーちゃんはいきなり千里にエネルギー弾を撃った。千里は瞬間的にバリアを張って、それを跳ね返した。倍のエネルギーにして!!
「おお、さすが」
「びっくりしたぁ。脅かさないでよ。きーちゃんじゃなかったら、私反撃してたよ」
いや、しっかり反撃したじゃん!私が焦ったぞ。
「ちゃんと防御できたね」
「この程度は反射するよ。でなきゃ剣道の試合はできない」
「そっかぁ!あんたは剣道やるから瞬間的に反応できるんだ」
「今はきーちゃんが声を掛けたから、何でもできる体勢になってた。何も気配の無い所から攻撃されても、私防御できるよ」
「霊能者は剣道を覚えるべきだなあ」
「あ。それはいいと思う」
翌日は越智さんが来て午前中剣道の指導をしてくれた。千里が新人戦留萌地区大会で優勝したと言うと
「君の実力で地区大会なら優勝できるだろうね」
と言った。
「今年の夏の大会は全国大会に行けるよう頑張ろう」
「それ全道で2人しか行けないですぅ」
「だから道大会で優勝すればいいんだよ」
「厳しそう」
「次回からはもっとハイレベルの指導をする」
「きゃー!」
お昼を越智さんも入れて一緒に食べた後、午後からはまた、きーちゃんに龍笛とピアノの指導をしてもらった。そして天子のアパートに送ってもらい、天子・瑞江と3人で夕食を取った。
「あれ?最終バスに間に合う?」
「大丈夫、大丈夫、留萌まで走って帰るから」
JRの最終は19:16, バスの最終は18:20である。
実際には千里Rは18時半頃、瑞江に送ってもらって旭川駅まで行くと、最終列車にも乗らず、駅前の西武(*9)で買物した後、消えちゃった!
(面倒くさい時は消える!)
(*9) 旭川駅前の西武百貨店は1975年に開業し、2016年9月30日に閉店した。現在は2004年1月。
土日は(町中にある)留萌Q神社でご奉仕していた千里BがACOOPで買物をして帰り、御飯を作った。Bは
「なんか私、月に数回しか買物してない気がする」
などと、独りごとを言っていた。
(YはP神社で勉強会をしていたが、勉強会の後、帰宅途中で消滅)
剣道部では、女子の1年生3人(千里・玖美子・沙苗)はこの3人でも対戦するが、男子たちとも対戦させてもらっていた。でも半分くらい女子1年が勝つので
「お前らほんとに凄い」
と男子たちが感心していた。
「やはり男子に全勝できるように頑張ろう」
と玖美子は千里や沙苗にハッパを掛けていた。
さて、2月14日はバレンタインである。女の子にとっては1年で最大のお祭りである!?
P神社では例年のように、誰に贈るかとか、手造りするかとかいった話が1ヶ月くらい前から出ていた。千里たちのグループもだが、隣のテーブルで勉強会をしている5-6年生のグループも、勉強のことより、そちらのおしゃべりが多くなっていた。5-6年生だと、まだ「あげる相手」が居ないという子も多いようだ。
「蓮菜は当然田代君にあげるとして」
「え?雅文?要ると言うなら考えてもいいけど」
「千里はもちろん細川君にあげるとして」
「細川って誰だっけ?」
「なんか釣り上げた魚には餌を遣らない人が多いようだ」
(“この千里”は、千里が貴司と付き合ってるなどとは知らない!)
結局、1月31日(土)に、中1のグループ(恵香・美那・穂花・沙苗・セナ)で一緒にジャスコ(*10)まで行ってチョコを物色した。
(蓮菜と千里は「別に贈るあて無いし」と言ってパス。玖美子はこの手のイベントには興味ないのでパス)
(*10) ジャスコ留萌店は史実では1997年8月にオープンし、2012年6月には親会社の体制変更によりマックスバリュ留萌店としてリニューアルした。ただしこの物語では1994年に既にあったことにしている。ここは市街地から(深川方面に)かなり離れており、車で買物にくる前提の店舗である。でも車を運転できない中学生の恵香たちはバスでここに移動する。駅前で乗り換えるので結構大変である。
恵香たちのグループでは結局
「手造りするより買った方がいい!」
という結論に達したので、バレンタインの特設コーナーで少しゴージャスな感じのチョコを見た。
バレンタインコーナーは当然中高生の女子でいっぱいである。
沙苗もセナもこんな所に来たのは初めてだったので、ドキドキしながら見ていた。ふたりとも贈るアテは無いと言ったのだが
「バレンタインは雰囲気を味わうだけでもいいのよ」
といって、恵香たちに連行されたのである。
(結局沙苗もセナもP神社の宮司さんに渡して、宮司さんが嬉しがっていた!)
千里Bは2月7日(土)にQ神社でご奉仕した後、バスでジャスコまで行き、貴司に贈るチョコを買った。ロイズのトリュフとプラリネのセット2000円(+消費税100円)である。そして翌日8日(日)に、神社内でいつものようにマンガを読んでた貴司に
「これ、バレンタイン。来週は試験前で神社に来れないから」
と言って渡した。
「サンキュー!嬉しい!キスとかできないよね?」
「いいよ」
というので、貴司は千里の頬にキスをした。
(まだ唇と唇でキスする勇気はお互いに無い:千里は晋治とは1度だけ舌まで入れるキスをしているが貴司とはまだそこまで進んでいない)
千里Bも言ったように、S中では2月16-18日は期末試験があるので、2月14-15日はQ神社でのご奉仕もお休みにすることにしている。一方、P神社に来ている子たちは普通に勉強会をしているので、たまにお客さんが来れば巫女衣装で昇殿祈祷をすることもある。
しかし貴司は勉強などしない!ので、2月14日も15日も自宅からジョギングでQ神社まで(約4.5km)行き、ほとんど貴司の私室と化している倉庫部屋で『スラムダンク』を読んでいた。なおこの部屋に貴司のマンガが100冊以上置かれている。
お昼になったので、近所のチューオー(地場のスーパー)まで行ってパンでも買って来ようと思って出掛ける。
するとバッタリと千里(実は千里R)と遭遇する。
「あれ〜。貴司だ。何してんの?」
「神社でマンガ読んでた。千里は?」
「私は夕飯の買物しに出て来た」
「ね。急がないなら少しデートしない?」
「じゃ、お昼一緒に食べる?」
「うん!」
と貴司は嬉しそうに言い、結局一緒にマクドナルドに入る。
それで千里はベーコンレタスバーガーのセット、貴司はビッグマックのセットを頼んで一緒に食べた。楽しくおしゃべりしていた時
「そうだ。これバレンタイン。こないだ旭川に出たから買っといた。学校で渡すつもりだったけど、ちょうど会ったから」
と言って、千里は貴司にチョコを渡す。
先日旭川に行った時に駅前の西武デパートで買っておいたゴディバの生チョコ(2000円)である。ところが貴司は首を傾げる。
「え?でも千里、こないだもチョコくれたじゃん」
「は!?」
と言って、千里の顔が曇る。
「へー。チョコもらったんだ?人気のある貴司だから、チョコくれる女の子も多いだろうね」
「え?だってこないだQ神社で千里くれたじゃん」
「ふーん。Q神社にわざわざ訪ねてきて貴司にチョコを渡した女の子がいたのね。随分ご熱心じゃん。だったら、その子と仲良くすれば?」
と千里(千里R)は言うと
「私帰る」
と言って、席を立ち帰ってしまった!
訳が分からないのは貴司である。
「何で怒るんだよ!?自分で渡しといて!」
でも考えている内に「俺誰かと勘違いしたかなあ」と不安になった。チョコ自体は全部で10個くらいもらっているし、貴司にデートして下さいと言った子もいたが、丁寧にお断りしている。