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■夏の日の想い出・無茶言うなよ(5)
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目次 8
時間索引 #
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あけぼのテレビの番組司会は、紆余曲折の末、2022年3月現在、下記のような形で暫定運用されていた。★☆がAT3で、他の3人は“見習いキャスター”である。
キャスター担当(暫定)
__(18時台)___(19時台)
月:松島ふうか・鈴鹿あまめ★
火:鹿野カリナ・夕波もえこ☆
水:石条ぼたん・古屋あらた☆
木:松島ふうか・鈴鹿あまめ★
金:古屋あらた・夕波もえこ☆
立場上あまり文句が言えないリーダーの鈴鹿あまめに代わって夕波もえこが3月頭、コスモスに要望した。
「今の体制だと準備作業なども入れるとほとんど余裕が無いです。私もきついですが、あまめはかなり無茶な勤務状態になっています。ふうかは4月からは独り立ちでいいと思うから、あまめがダウンする前に、見習いキャスターを2人くらいでもいいから増員してもらえませんか?」
「うん。何とかする。いつもありがとうね」
とコスモスも答えた。
2022年3月23日(水.なる).
岩槻の社員寮隣接地に建設中であった§§ミュージックの第2社員寮が完成。播磨工務店から§§ミュージックに引き渡された。
あけぼのテレビと大和映像は12月にCG制作会社“まほろばグラフィックス”を立ち上げている。この会社は取り敢えず浦和に小さな事務所を置き、1月から2月に掛けてリモート!勤務で100人ほどのバイト技術者を雇用していた。同社は3月に岩槻データセンターを立ち上げ、そこに本社機能も移転している。
ここでバイトしていた技術者で、3月末で大学や専門学校を卒業する人にこのまま正社員になるつもりのある人は居ないかと勧誘した所、30人ほどが応じてくれて、その大半が入寮を希望した。
このほか第1社員寮の抽選に漏れて入れなかった人も入寮を希望したので、いきなり50人ほどを受け入れることになった、
こちらにも付き添いロボットを3体導入したが、女子社員たちにより、まね、ビーナ、セシルと名付けられた。
1号館の付き添いロボットは、最初に導入された3体がアクア、セレン、クロムで、追加された2体がリズム、アケミである。
命名基準がよく分からない!
でも多分、ハルコとかエーヨとか入ってないのは、きっと頼りなさそうだからだ!
「2年後くらいには第3社員寮を考えないといけないかも」
「2年持てばいいですね」
コスモスが社長になった時、居た社員はコスモスとゆりこ、マネージャーの田所・沢村・月原、経理の溝上、そしてアクアの付き添い用に新規採用した鱒渕の7人だった。事務所も信濃町の雑居ビルの20平米ほどの1室だった。
2016年に田所は§§プロに移動し、溝上は退職、鱒渕は過労で離脱したから当時から居る一般社員は沢村部長と月原課長の2人だけである。そして現在、§§グループはいくつもの子会社・関連会社を持ち総社員数は400人ほど、バイトさんを入れると多分1000人を越える。売上は当時の200倍になり、事務所も信濃町のビジネスビルの1フロアを占有している。
タレントの所属人数こそそんなに多くはないものの、芸能事務所の経営規模と資金力では間違いなく大手のひとつとなっている(*29).
コスモスは多くの学校で終業式が行われた3月24日、信濃町ガールズの大仙イリヤ(高3)・山本コリン(高2)の2人を呼んだ(学年はいづれも4月からの学年)。
「昨年A契約に移行する子が相次いで、B契約の子で主としてデビュー間近レベルの子で支えられていたあけぼのテレビの人手が足りなくなって。その隙間を鈴鹿あまめ・夕波もえこで埋めてきたのだけど、このふたりに、更に追加した古屋あらた・松島ふうかを加えてもまだまだ多忙な状態が解消されてない」
とコスモスは背景を説明する。
「それでわりとトークのうまい君たちにも、キャスターとして入ってもらえないかと思ってね」
「あまめちゃんたちが凄いハードワークになってるとカリナから聞いてたから私とかに声がかかるかもと思ってました」
と山本コリンが言う。
「まあ。君たちは、あけぼのテレビ専任というわけではなくて、単発の仕事とかあったらそれもまたお願いするから」
とコスモスは言ったのだが、直後から感染対策問題で在来局のプロデューサーと交渉決裂し、タレントを引き上げた番組が相次いだので、在来放送局の番組の仕事が大幅に減り、この2人はしばらく、ほぼ、あけぼのテレビ専任状態になる。
さて、私は3/30に青葉を奪われた後、取り敢えず熊谷で待機していた。政子は大阪だから“ごはんをあげる”心配もしなくていいし(ほとんどペット。でも貴昭の子供たちがまともなごはんを食べられているか心配だ)。
しかし青葉を拉致していったのは〒〒テレビの制作部のチームだろう。私が関わっているミュージシャンアルバムは〒〒テレビの報道部の番組である。だからこれは同じテレビ局の制作部と報道部の戦いだ!
4月1日の夜、ムーランエアーのフライト予定表に、4/2 16:00→17:00 能登→郷愁 Honda-Jet
Black(PT) という表示が出たのに気付いた。PTは: Phoenix Trine で千里の会社である
元々は千里の資産管理会社だったと思うが、現在は多数の会社の持株会社となっている(*28).
どうも話を聞いていると“朱雀フード”が出発点だったらしい。これは彼女が中学生の時に設立した会社だと言う。その頃から千里は何をしていたのだろうか。
(答え:熊カレーを作っていた!)
私は、多分青葉がこの便に乗って来るとみて、午前中仮眠した。15時過ぎ、郷愁飛行場に入る。17時すぎ、黒い機体のHonda-Jetが着陸してきたのが目で確認できた。
私は到着ゲートの所で待っていた。
飛行機から降機したっぽい人たちが歩いてくる。
ところが青葉が居ない!?
こちらにやってきたのは千里と、同程度の年齢の女性。見覚えがある。えっと・・・そうだ。桃香の友人の優子さんだ。確か千葉に住んでる女性とビアン婚したんじゃなかったかな。普段は高岡に住んでいて。奧さんに会いに来たのかな。でも青葉はどこ??
優子さんが私に会釈して先に行く。残った千里に私は声を掛けた。
「千里、青葉は?」
「知らない、能登空港で別れたから」
「嘘!?」
「だから飛行機には私と友人で乗ってきたよ。私、明日は平塚で試合があるし」
と千里。
「“今日も”平塚で試合があったみたいだけど?」
と私は言ってやった。
「そうだっけ?だったら、きっとそこにも私出たんだよ。最近忙しくて記憶が不確かで」
むろん試合に出た千里とここにいる千里は別の千里だろう。試合に出た千里は多分3番だろうからここにいるのは恐らく1番だ(*24).
「じゃ青葉は、金沢(職場)か高岡(自宅)か津幡(練習場)に行ったの?」
「知らない。本人に電話して聞いてみたら?」
「あの子が答える訳無い」
「あはは」
私は瞬間的に決断した。
「仕方ない。もう日程が動かせないんだよ。『ミュージシャン・アルバム』の取材に、千里付き合ってよ」
「青葉無しでいいの?」
「大会前でどうしても時間が取れないので、お姉さんの醍醐春海さんに代理をお願いしましたと言うから」
「そんなぁ」
と千里が珍しく焦っている。でも大枚かけて三つ葉とボニアート・アサドを呼んだんだから、何とかしてもらおう。
それで私はホテル昭和で待機しているラピスラズリとカメラマンにメッセージを送り、千里を連行して三つ葉が待っているコテージ8021に向かった。
そういう訳で4月2日熊谷で私たちは三つ葉(17:30-19:00) とボニアートアサド(20:00-21:30) のインタビューをしたのである。
私たちは4月3日まで2日間のギャラを両者に払っていたのだが、4月2日のみで仕事が終わってしまったので3日は東京に戻って別の仕事をしたようである。この手のギャラはもらえるが早く終わって解放されるのを業界用語で“お笑い”と称する。もっとも三つ葉もボニアートアサドも本人たちはあと1日のんびりしていたかったようだが。
(*24) ケイは、3番は試合中、2番は妊娠中だから、消去法でここにいるのは1番と考えた。実際にはここでケイがキャッチしたのは北陸の案件を担当している4番(Robin)。ただし4番では三つ葉の花山波歌(かやま・しれん)と話が通じない(*25) ので、コテージに行く途中で千里たちの全体管理をしている5番(Grace) と入れ替わった。
(*25) 波歌(しれん(*26))は桃香の従姪で、“第2次統合千里”(これが分裂したのが千里1〜3)がオーディションのことを教えた。またデビュー準備期に随分アドバイスをしている。話の流れでCDが3万枚売れなかったら全員性転換!という話になった時もこんな会話をした。
「無茶なこと言うなあ。マジで性転換手術受けさせたら、テレビ局の社長が逮捕されるよ」
「ほんとに手術受けさせられるとは思わないんですけどね」
「まあ大丈夫たよ。心配しないで」
「3万枚売れると思います?」
「君は私が手術無しでちゃんと生殖能力もある男の子に性転換させてあげるから。手術は適当な身代わりに受けさせるし」
「身代わりとかいいんですか?」
「性別を変えたがってる人はたくさんいるし」
「でも結局私も男の子になるんですか?」
「ちんちんあるの楽しいらしいよ」
「それは興味が無いこともないけど」
「それに男の子になれば女装が出来る。女装は凄く楽しいらしいよ」
「わざわざ男になって女装するとか意味が分かりません!」(*27)
(*26) 波歌(しれん)は“シレーヌ”(波打ち際で歌う人魚)から命名された。彼女の姉は月音(だいな)。月の女神ダイアナが語源だが“だいあな”では長すぎるので“あ”を抜いた。弟は太陽(みとら)。太陽神ミトラから採った。この3人の名前は読み方が無茶すぎる。苗字も“はなやま”と読む人が多く“かやま”は少数派なので、彼女の名前を初見で読めたのは千里と青葉だけである。
(*27) でも女装好きのFTMさんというのは筆者の知り合いにも居る。彼は男になりたいけど、女物の服が可愛くて好きだと言う。普段は男装だけどお祭りには女物の浴衣を着ていく。多分そういう傾向の人もわりと居そう。実際性自認は男だけど女装が好きという天然男性は多いし!
(*28) フェニックストラインの主な子会社は下記である。
建設会社“播磨工務店”
酪農?会社“播磨牧場”
林業会社“朱雀林業”
製紙会社“朱雀製紙”
食品会社“朱雀フード”
音楽出版社“フェニックス音楽出版”
化学製品会社“フェニックス・ケミカル”
アクセサリーショップ“フェニックス・ドリーム”
スポーツ用品店“フェニックス・スポーツ”
土地所有会社“フェニックス・リゾート”
会社名に“播磨”が付くものは一般に“西の千里”が高校時代に始めた事業、“フェニックス”が付くものは一般に“東の千里”が大学時代に始めた事業がベースになっている。朱雀林業は、実はフェニックス・フォレストリーと播磨林業を合併して朱雀林業としたもので、朱雀製紙はその子会社である。
美鳳が最初天野貴子に渡した資金は30億円であるが、千里はそれを数千億円まで膨らませている。30億円を渡した目的は、京平に充分な教育と“実践”を経験させるためだが、千里はそれ以前にこの資金を充分に大きくした。震災で出た東北各地の“神的被害”も千里の寄付でかなり復旧できた。
(*29) §§ミュージックがここ7年ほどで急激に営業規模が大きくなったにも関わらず組織の統制が取れているのには、様々な会社を買収してきたので、その旧組織が活きているという背景がある。
§§ミュージックがM&Aにより取得した子会社
§§ミュージック・システムサポート SSS(小熊情報システムを買収)
§§ミュージック・コールセンター SCC (TDタクシーを買収)
§§ミュージック・音楽教育 SME(全国各地の複数の芸能学校・音楽教室を買収)
§§ミュージック・ファンクラブサービス SFC (縦浜出版を買収)
§§ミュージック・ライブビジョン SLV(八王子ライブビジョンを買収)
§§ファン・リテール SFR (ひよこ通販を買収)
最初に買収したのが縦浜出版である。当時所属タレントが増えて、ファンクラブの会報を執筆する人手が不足していた。それでバイトで雇っていた人脈から、知り合いで芸能関係の文章が書ける知り合いがいないか?と聞いてもらっていた所、いっそミニコミ誌『たてはーま』を発行している縦浜出版を丸ごと買ってくれないかという話が飛び込んできた。
ネットで情報が検索できる時代、タウン誌の売上は落ちてもう廃刊は時間の問題になっていた。しかし歴史的な経緯で多数のライターさんとのコネがある。
貸借対照表を見せてもらったが借金は2000万円程度でこのくらいは負担していいと思った。しかし会社買収は素人の手には負えない。
コスモスは父の遊園地勤務時代の友人で、現在SN監査法人の社員(*30)になっている渡辺明会計士に相談した、それでこの買収作業をSN監査法人の手でやってもらった。
そしてそれ以降の多数のM&Aも、同監査法人の手で進めてもらったのである。
(*30) 監査法人の社員というのは一般企業で言えば取締役に相当する。
渡辺明さんは、コスモスの父・伊藤太郎と同様、“まるで仮名みたいな名前”なので、意気投合していた。ちなみに渡辺明さんの奧さんは出生名・田中一子で、やはり“仮名みたいな名前”であり、伊藤太郎の妻(コスモスの母)・出生名:鈴木花子と仲良くなり、家族同士の付き合いがあった。それでコスモスにとっては“明おじさん”という感じで、親戚に近い感覚であった。
それ以降に吸収した会社も、全て経営難になっていた所を救済合併したところばかりで、極めて友好的な買収だった。
各々の債務を精算したが、その精算資金で各々の会社が持つノウハウを買ったようなものである。但し各会社はSN監査法人のスタッフを入れて社内改革し、悪習を撤廃している。コスモス自身が各社員と面談し、話し合って会社方針に同意できない人には充分な退職金を払って辞めてもらい、いわゆるお局様の類いを一掃した。
また中堅社員たちに労働法規の講習を受けさせコンプライアンスの徹底を図った。また女性社員が働きやすいように、ジョブ・シェアリングやフレックスタイムを導入。また同一労働・同一賃金を徹底した。また有休取得は義務である!と宣言した。このような経緯で社員たちはとてもモチベーションが高い。
その上でコスモスは様々な人脈のある子会社間の社員融和を図るため、統一社員証を作り、会ったら他の部門の人とも笑顔で挨拶しようと呼びかけている。それで部門を越えて結婚した社員カップルも多数生まれている。
こういった会社買収のほかに、他の会社と合弁的に作った関連会社も多い、下記はその主なものである。
●サンシャイン映像制作(§§ミュージックとサマーガールズ出版が共同設立。あけぼのテレビの実務部門を担当している)
●あけぼのテレビ(コスモス・ケイ・千里・アクアで90%の株を持つ)
●まほろばグラフィックス(大和映像とあけぼのテレビの共同出資会社)
あけぼのテレビで働いている人には実は、あけぼのテレビの社員とサンシャイン映像制作の社員とが混じっている。また大田区サテライトの半分は§§ミュージックの分室で、ファンクラブ部門、経理部門や信濃町ガールズ関東の研修施設などが置かれている。両者の間にはセキュリティゲートがある。食堂・売店などは両者の共有施設である。
また完全買収ではないが資本参加している会社も多い。
●♪♪ハウス(§§ホールディングが19%の株を持つ:20%未満だから持分会社ではない)
●八千代クリーンサービス(49%の株を§§ミュージックが持つ)
●ハイネットテレビ(あけぼのテレビが51%の株を持つ)
●ムーラン・エアー(コスモス・ケイ・千里で25%の株を持つ)
これ以外にも結構細かい子会社・関連会社が存在する。
八千代クリーンサービスはコロナで仕事が急増した結果、営業規模が膨らんで運転資金が枯渇したのを救済したものである。純粋な資金援助に近いが貸付金ではなく増資分を引き受けたので返済の必要が無い。
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