[携帯Top] [文字サイズ]
■夏の日の想い出・無茶言うなよ(4)
[*
前p 0
目次 8
時間索引 #
次p]
それで13:20からなら、13:00過ぎてから部屋を出て、ゲートの前で待ってればいいなと思った。ところが12:55くらいに政子から電話が掛かって来たのである。もうこんな時にまたうさぎさんがどうのみたいな話ではと思ったが、ほんとに緊急要件だった。
「ね。タクシー呼ぶのって117だっけ?177だっけ?」
「はあ?そんなの無いよ。タクシー会社に電話してよ」
「その番号が分からないのよ。貴昭から緊急連絡があって、奧さんが危篤らしいの。子供たちを病院に連れてってあげたいの」(*21)
私は青くなった。
松山貴昭の奧さんは2021年の1月に倒れて末期の癌と診断された。その時点で余命半年と言われたのだが、毎月200万くらい掛かる保険外の治療を受けてきた。この費用は私が彼に貸しているが、むろん返してもらおうとは思っていない。
しかしその特殊な治療のおかげで、奇跡的にここまで持ち越えてきたのだが、もうここしばらくほとんど意識が無い状態だと言っていた。松山君は、かえって奧さんを苦しませているだけなのではと悩んでいた。
「今大阪に居るの?」
「うん。子供たちの面倒見ててと頼まれた」
元恋人に頼んでいいのか?でも松山君も他に頼る人がいなくて背に腹は代えられなかったんだろうな。コロナの折、こういうのも他人には頼めない。
「だったら★★情報サービスと協力関係にある大阪の▲▼運輸という会社に照会して。電話番号は、待ってね・・・・06-****-****」
「分かった。ありがとう」
(*21) 政子は自分の車で大阪に行っているのだからその車に子供たちを乗せて連れて行けばこと足りた。しかしこういう時は事故を起こしやすいので、ハイヤーを使って正解。
私は政子との電話を切ってからしばらく考えていた。
ハッとして時計を見たらもう13:25だ。
やばい!
と思って部屋を出る。
地下駐車場に駐めているアコードに飛び乗り“つばめ”のゲートまで行く。これが13:40くらいだった。青葉から送ってもらったゲートパスを提示するとゲートが開く。車を8021の前にある小ケートの所に寄せる。再度ゲートパスを提示して中に入る。車から降りてピンポンを鳴らす。カメラがこちらを向く。
「ケイ先生、どうぞ」
という南田容子の声があり、ドアが開く。
中に入ると南田容子と立花紀子だけである。
「青葉はプールに行った?」
と訊くと
「ショッカーに扮した醍醐春海先生に拉致されて行きました」
と立花紀子が答えた。
「先を越されたか!」
と私は天を仰いだ。
2人によるとテレビカメラも一緒で、拉致現場を“2台の”カメラで撮影していたので、きっと〒〒テレビの企画ではないかということであった。
しかし青葉が居ないのではどうにもならないので私は退散することにした。時間が過ぎてしまったので立花紀子にゲートパスを発行してもらい、そのパスで“つばめ”を退出した。
私はムーランエアーのフライト情報を見た。すると13:20に千里が所有する Honda-Jet
blackが熊谷から能登空港へフライトしたことが表示される。どうもこれに乗せて運んだようだ。
コスモスに連絡したら
「さすが醍醐春海先生ですね」
と言って笑っていた。
「笑い事じゃないよ。UFOたちの事務所になんてお詫びすればいいか頭痛い」
「まあ仕方ないですね。大宮先生が戻られる日程はどうなるでしょうね」
「全く分からないけど、日程が動かしやすい人で調整するしか無いね」
「UFOとかより先輩を使わないとUFOの事務所が怒るでしょうね」
「うん。その問題を私も考えた。だから使えるのは“三つ葉”とか“ボニアート・アサド”あたりかな」
「そのクラスは(暇だから)4月2-3日に使える可能性ありますよ」
「あるね」
それで私はUFO, スパイス・ミッション、ビンゴアキの事務所に連絡し、仕事がキャンセルになってしまったことをお詫びするとともに、ギャラを約束の倍出すから、インタビューを予定していた時間で代わりに、舞音の5月か6月くらいに放送予定のノノ・パパイヤのCMに出てもらえないかとオファー。了承してもらった。
(それでこのCMを急遽撮影することになった。各々の時間が取れる時間帯に3回別録りだが、舞音はその3つ全部に出なければならない。こんな直前変更は舞音のスケジュールを管理している村上麗子が悲鳴を挙げるだろうなとは思ったが仕方ない)
その後私は“三つ葉”(2016 debut)の事務所ΘΘプロの春吉社長、“ボニアート・アサド”(2017 debut)の事務所ζζプロの兼岩会長に連絡し、4月2-3日の2日間、熊谷のコテージに滞在して、美味しい御飯を食べてもらい、もしかしたら“ミュージシャンアルバム”という番組のインタビューを受けてもらうなどという仕事をやってもらえないかと打診した。
「つまりインタビューは無いかも知れないんだ?」
「そうなんです。大変申し訳ありません」
「まあいいよ。休暇みたいなもんだね」
ということで両者とも、引き受けてくれたのである。
私と厚いコネのある春吉さん、兼岩さんだからこそ引き受けてくれたと思う。普通はこんなふざけたオファーは相手が怒る。
もしこれを空振りした場合は、三つ葉(2016 debut)たちの先輩になる、2015年デビューの高崎ひろか・品川ありさあたりを使うことを考え、念のためスケジュールを確保しやすいようにしておいてほしいとコスモスに依頼した。
コスモスも内部のタレントならわりと調整が付くと言った。
政子からは夕方連絡があり、奧さんはかなり危なかったものの今日は何とかもちこたえたということだった。
松山君は奧さんのそばに付いているから子供たちを頼むと言われたので取り敢えず数日滞在するという話だった。私は自身も妊娠している政子をサポートするため、風花に大阪に行ってもらった。
山口暢香は言った。
「なんか高校卒業してから急に忙しくなってない?」
高島瑞絵も言った。
「私も。仕事の量が5倍になってる。忍ちゃんも『休みが無い』と言ってたし」
原町カペラは言った。
「今は特に南田容子が熊谷で大宮先生の助手してるし、アクアが多忙になった影響で松梨詩恩が多忙になってるからリハーサル役の佐藤ゆかも物凄く忙しい。だからあんたたちが使われる」
「ゆかちゃん朝から夜9時頃までひたすら働いているみたい」
「ようこちゃんも時間の取れない大宮先生の負担をできるだけ軽減できるように凄いたくさん作業してるみたい。お陰で音楽制作の勉強をだいぶさせてもらってると言ってた」
「結局中高生は昼間の仕事に使えないからね。だから高校生は中学生より仕事が少ないけど、高卒メンバーには中学生の倍の仕事がある」
「そうだったのか」
「アイドル歌手は18までが勝負だけど、スタッフは18からが勝負」
「私たちはスタッフなのか」
私の小学4年生の時以来の親友・横沢奈緒は“専攻医”(昔の後期研修医)の課程を終え、医師として独り立ちすることとなった。
クロスロードのメンバーで同じく医師になった琴尾蓮菜(葵照子)・前田鮎奈(美空の従姉)は2020年春に研修を負えて、医師として独り立ちしている。
これは蓮菜・鮎奈は学年がひとつ上であるのと、奈緒が1年浪人したためである。
それにしても30歳すぎてやっと1人前の医師になれるというのは、医師になるのも本当に大変なことである。スポーツ選手やアイドルだともう引退の時期なのに。
実際、千里と同世代のプロバスケット選手は大半が既に引退している。また私と同世代でアイドル歌手をしていた人たちも大半が引退している。
2022年4月2日(日)コスモスは全タレント及び全マネージャー向けのメールで、山門麻耶(やまとまや 19歳)を美咲瞳サブデスクの助手・アシスタント・デスクとして採用したと告げた。
今後は美咲瞳と山門麻耶は、システム課の吉原・紀ノ本と一緒に4人で情報共有してスケジュール管理するので、デスクへの電話は美咲と山門のどちらが取る場合もあるとした。
タレントもマネージャーも美咲瞳が辞める訳ではなく増員で、この1ヶ月間は仮採用でテストしていたのかと分かり、みんなホッとした。
山門本人のメッセージも添えられている。
『上から読んでも[やまとまや]、下から読んでも[やまとまや]。2002年9月生まれ乙女座。血液型はAB型です。身長165cm 体重52kgです。未熟者ですが、それを言い訳にしないよう頑張ります。昨年3月に群馬県内の高校を出て約10ヶ月、同県内のファミレスで働いていたのですが、働いていた店舗が消滅したので退職しました。中学時代は剣道部と陸上部を兼部して、陸上では長距離を走っていたので割と体力はあるつもりです。ファミレス時代は夜間勤務に多く就いていたので夜には強いです。英検2級・簿記2級・漢字検定2級・剣道4段・MOSを持ってます。よろしくお願いします』
ということであった。
「剣道4段すげー」
という声多々てあった。後で聞くと彼女はインターハイにも出たらしい。実は剣道に夢中になりすぎて大学受験を失敗し、親から私立にやる金は無いと言われてファミレスに勤めていたとか。元々頭は悪くないのは英検2級・簿記2級というのでも分かる。逆に挫折を経験している人は頼もしい。
美咲瞳のアシスタントに関しては20人くらい面接し、その半数くらいは普通の事務職やファンクラブ・通販などのスタッフとして採用している。1人実はマネージャーとして採用し、信濃町ガールズ担当にした。
アシスタントを採用するのに、コスモスが最も重視したのは体力!だった。
物凄くハードな仕事なので体力不足でダウンされると困る。そしてスポーツウーマンなので、不正を嫌う性質があるのではというのも期待した。特に剣道はその手の問題について厳しいスポーツである。
コスモスはまたマネージャー不足で1人のマネージャーが複数のタレントを担当し、また別のタレントのマネージャーがサブで入っているような状況を整理し、一緒に仕事をすることが多いタレント、また制作傾向の近いタレントをまとめてグループで対応するようにして作業の漏れが起きやすい複雑な“兼任”をできるだけ解消した。
それで坂田由里・水谷姉妹は常滑舞音とまとめ、美崎ジョナは七尾ロマンとまとめ、西宮ネオンと立山煌をまとめ、高崎ひろかと水森ビーナの姉妹(*23)はまとめ、薬王みなみは恋珠ルビー・花貝パールとまとめた。
この結果、常滑舞音のマネージングは西岡空世(リーダー:第1付添い)・村上麗子(コ・リーダー:スケジュール及びCM競合管理)・坂田由里(第2付添い)・中原レイ(テレビ局・雑誌社など交渉)・南川晃奈(第1運転手兼オレンジジェット管理)・青山深祢(第2運転手兼ファンクラブ担当)・横浜網美(衣裳管理兼水谷姉妹担当)と7人体制になり、10人体制のアクアのマネージングチームに次ぐ規模となった。
コスモスはこれと別件で、§§ミュージックのタレントがこれまで5人以上集まって会食などするのを禁止していた(つまり会食は4人以内)のを、7人以上を禁止する(つまり6人までOK)というルールに改訂すると発表した。
ただ気が緩みすぎないよう、特に帰宅時の手洗いとうがいは励行するよう述べ、引き締めを図った。公共交通機関の利用禁止はこれまで通りである。また外食は屋外席か、あるいはテイクアウトして自分の車の中で食べるよう求めた。(特に安全性の高い認定店(*22)を除く)
また女子寮本棟2階食堂(現在は第2ダンス練習室として使われている)にムーランとしても初めての固定店舗を出し軽食メニューを提供すると発表した。そのためソーシャルディスタンスを空けたテーブル席を4席×5組設置する。お店とテーブル席が占めるのは食堂面積の4分の1程度なので残りのエリアではこれまで通りダンスの練習をしてよい(歌唱や発声練習は禁止)。
ムーランはテイクアウト以外は当面予約制として、密集が生じないようにする。また3階のサロンからムーランに注文を入れて、寮内のデリバリーシステムを使って自動配送してもらうこともできる。これまでサロンにたむろしていた子たち(≒CAT sisters)は、むしろこの方式で利用するようになる(おやつがタダだし!)。
(*22) あけぼのテレビのレストラン、エヴォン銀座店・神田店・秋葉原店・渋谷店(新宿店は店の構造上認定を取るのが難しい)、ムーラン全店、深川アリーナの牛丼店およびプライベートキッチン、などが認定されている。
(*23) もはや誰も“姉弟”とは思っていない。“姉妹”と思っている。水森ビーナの身体については、彼女の仕事が忙しいのであまり身体に負担の掛からない“女陰形成”方式の性転換手術を受けたという情報が広まっている。
「お嫁さんに行く時までに造膣はすればいいよね?」
「膣拡張する装置取り付けてるらしいよ。皮膚を少しずつ押して穴を深くしていくんだって。1ヶ月に1mm, 1年で1.2cmで10年後には12cmになる」
「へー、そうやって膣を作るんだ?」
(こういう造膣法は古くからあるが“使える”サイズの膣にするまで物凄い時間が必要なのが欠点)
「彼女、小学4年生で睾丸を取って、女性ホルモン飲み始めたらしい」
「中学の内に割れ目ちゃんを作って、女の子の位置からおしっこできるようにする手術受けたと聞いた」
「うん。それで当時は割れ目ちゃんの中にちんちん隠してたんだって。でも去年の11月にとうとうちんちんも取ってほぼ女子になったらしい」
「ああ、だから年末に女子寮に引っ越したのか」
(↑勝手な噂が!推定震源地:セレン・クロム・松梨詩恩!)
「でもちんちん切るのって痛そう」
「あれって液体窒素吹きかけて凍らせてからハンマーで叩くらしいね」
「へー。そうやってちんちん取るのか」
(それはイボの取り方だと思うぞ)
[*
前p 0
目次 8
時間索引 #
次p]
夏の日の想い出・無茶言うなよ(4)