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■春産(1)

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(E)Eriko Kawaguchi 2017-03-25
 
※お断り。道入寺の掛け軸公開は毎年お盆の時期に行われてはいますが、実際に見に行きたい方は、事前にお寺に日程を確認した方がいいです。全国公は実際には2016.8.11-12に行われました。また金石海岸の清掃活動は2016.8.28に、インターハイ水泳は8.17-20に行われましたが、いづれも物語の都合上、日程を変更しています。
 

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トントンと夜更けにアパートの戸をノックする音で、金麦を飲みながらウトウトとしていた筒石は目を覚ました。
 
「はい?」
と声を掛けると
「あのぉ、夜分恐れ入ります」
と若い女の声がする。
 
「何ですか?」
と言って、筒石は戸を開けた。少し青白い顔をした見た目30歳前後の女が立っている。
 
「ぶしつけで申し訳ないのですが、これで何か飲み物を恵んで頂けないかと思って」
と言って女は十円玉を1枚出した。
 
「へ?」
と言って筒石は女を見る。
 
「十円玉じゃ自販機のジュースも買えないもんなあ。でもいいよ。これでもあげようか?」
 
と言って、筒石は大量に買ってある粉状のスポーツドリンクを水で溶かすと、空いているペットボトルをきれいに洗って、それに詰めてあげた。
 
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「えっと、ペットボトルのふた、ふた、・・・」
と言って探したのだが、こんな時に限って全然見当たらない。
 
「あ、栓はしないままの方が助かります」
「そう? じゃ、このままで。あ、でも俺、ちょっと薄めすぎたかも。貧乏なんでふつうの人の倍くらいに薄めて飲む習慣があるんで、いつも通りにやっちゃった」
 
「いえ。私も薄いほうが助かります。でもありがとうございました」
 
と言って、女は十円玉を置いて帰っていった。
 

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桃香は欲求不満であった。
 
この春から千里がひじょうに忙しいようで、なかなかアパートに帰ってこない。そして帰って来ても自分とすれ違いになるようで、しばしば食料だけ買ってあったり、料理だけ作られていてメモが残っていたりする。
 
6月下旬はずっとヨーロッパに行っていたようだし、そのあと7月の前半はずっと合宿に入っていて、中旬に数日アパートに戻ってきて久しぶりの愛の確認をした後は、また南米に行っているようである。8月の下旬まで戻らないという話であった。南米は今の時期、オリンピックで混んでいて色々大変なのではと桃香は心配した。
 
桃香は千里がまさかそのオリンピック自体に出場しているなどとは夢にも思っていない。
 
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そして・・・・桃香はここしばらく、全く千里以外のガールフレンドもできず、恋愛エネルギーが余りまくっているのである。
 

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今年のお盆は11日が山の日で休み、12日が金曜なので、12日に有休を取って11日から14日(日)までを休む人も多かった。それで桃香はその間は会社に出て休んでいる社員のバックアップをし、代わりに15-17日に休みをもらうことにした。11日と13-14日の代休という扱いである。
 
普段はあまり重要性のない仕事ばかりさせられて不満の多い桃香も11-14日はけっこう重要な仕事をさせてもらい、少しだけ気分が良くなった。このあたりは主任の肩書きを持つ片倉さんが積極的にこちらに仕事を回してくれたおかげでもある。彼は元々、桃香の交渉力や押しの強さを評価してくれているのである。
 
「まあうちは女をあまり評価しない会社だけど、僕個人としてはけっこう君を買っているから」
などとも片倉さんは言っていた。
 
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ただ片倉さんは8月いっぱいで退職することになっている。友人数人と一緒に科学雑誌を立ち上がるために出版社を設立するらしい。
 
「今の時代にわざわざ紙の雑誌作るの?と言われたけどさ。紙だからこそ売れるものってあると思うんだよ。全てを電子の世界でやろうとするのは、無理がある。寝転がって漫画雑誌は読めるけど、寝転がってスマホで漫画見てたら腕も目も疲れるもん」
と片倉さんは言っていた。
 
「まあ小さなスマホだと画面が狭くて見づらいし、かといって大きなタブレットだと寝転がって見るのには腕が疲れますね」
と桃香は答えた。
 
桃香は片倉さんが辞めてしまうと、ほんとに自分はまともな仕事をさせてもらえなくなるかもという気がしていた。
 
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青葉の大学では7月末から8月頭に掛けて前期の期末試験が行われ、その後から9月末まで夏休みに入った。その間は、バイトに精を出す学生もいるが、青葉は毎日自宅から5kmほど離れた高岡市内の公営プールまでジョギングしていき、そこで2時間ほど泳いではジョギングして帰ってくるという日課を送っていた。
 
不本意ながらも!?9月のインカレに出なければならなくなったので、その練習をしているのである。本来なら、大学まで行ってそちらのプールを使えばいいのだが、片道1時間近く掛かり、その時間がもったいないので、近くのプールでたくさん泳いでおこうということなのである。
 
8月14日(日)、青葉は高校時代の友人の美由紀・世梨奈に呼び出されて金沢に出て行った(正確には2人を乗せてアクアで金沢まで走った)。
 
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「私忙しいんだけどぉ」
「忙しいから、息抜きも必要だよ」
などと、うまく美由紀に言いくるめられる。
 

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それで着いた所は、金沢近郊の金石(かないわ)海岸で、この日、FM局主宰のボランティアの清掃活動があるのである。
 
「石川県の海岸線583kmをきれいにしよう」というテーマで定期的に海岸での清掃活動が行われている。
 
「この近所で捨てられた感じのジュースのからとかタバコの吸い殻とかもあるけど、結構遠方からの漂着物もある感じだね」
 
などと空き缶などを拾いながら言い合う。
 
「なんかその板、ハングルが書いてある」
「朝鮮半島から流れ着いたんだろうなあ」
 
1時間ほど清掃活動をした後「ビーサン飛ばし世界選手権」が行われる。世界選手権とは大げさだが、このあたりは軽音のイベント同様《言った者勝ち》の感覚か。
 
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3人1組で参加し、用意されているビーチサンダルを足で飛ばして、そのトータル距離を競うというイベントである。実はこれが3人1組なので、ドライバーも兼ねて青葉が呼び出されたらしい。
 
「いや、青葉がマジで忙しそうだから、車だけ借りて明日香に運転してもらおうかというのも考えたんだけどね」
と世梨奈。
 
「明日香は今週末は東京だもんね」
と青葉。
 
「しかしライブを見にわざわざ東京までって頑張るなあ」
と世梨奈。
 
「まあこないだ私たちはわざわざ苗場まで演奏しに行ったけどね」
と青葉。
 
「それもいいなあ」
と美由紀。
 
「でもお盆の帰省ラッシュと完全に逆方向になったから、余裕で新幹線のチケットが取れたなんて言ってたね」
と世梨奈。
 
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「新幹線で往復するのはブルジョアだ」
などと美由紀は言っている。
 
「東京まで新幹線で往復すると今の時期は東京往復割引切符が使えないから25,000円くらいかな。高速バスだと加能越バスで往復15000円くらい。格安ツアーバスで往復6000円くらい」
と美由紀は続ける。
 
「安くても格安バスに乗る気はしない」
と世梨奈。
 
「恐いよね。事故とかよく起きているし」
と青葉。
 
「ついでに加能越バスではなく加越能バスだな」
と世梨奈。
「あ、それいつも順番が分からなくなる」
と美由紀。
 
加越能バスは加越能鉄道のバス部門だが「加賀・越中・能登で営業する鉄道」という意味で名付けられた。当初は鉄道路線を金沢まで建設する予定だったのでそういう名前にしたのだが(城端線・福野駅から現在の北陸自動車道のルート付近沿いに金沢まで繋ぐ予定だったらしい。北陸本線より5-6km南を通るルートである)、実際には建設工事が途中で停まってしまい、金沢まで開業するには至らなかった。なお現在は加越能鉄道の本体・鉄道部門は第三セクターの万葉線株式会社に営業譲渡され、バス部門だけが残っている。
 
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さてビーサン飛ばし世界選手権の団体戦は「誰でも参加できるが3人のうち1人は女性を入れること」となっている。
 
受付の所で
「3人のうち1人は女性・・・・えっと3人とも女性ですよね?」
と言われ美由紀が
「中学も高校もセーラー服で通っていたし、女かなあ」
などと言うので、係の人が
「えーっと・・・」
と言って困っている。
 
普通に3人とも女にしか見えないのに、そんな言い方をすると、まるでオカマさんのグループみたいにも聞こえる。
 
それで世梨奈が
「1人は女性ということは、この中の2人までは性転換しても大丈夫だな」
というと、係の人は笑って参加章をくれた。
 
意外に人気だったようで、申し込みの列で青葉たちが72番の参加章をもらい、そのすぐ後で「ここで締め切りです」と言われて、参加できなかった人たちも結構居た。
 
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やがてコートが設定されて競技が始まるが、最初は横風だったのが、途中で風向きが変わり、しばしば向かい風になって「マイナス」の記録を出す選手が続出する。
 
青葉たちの前の組は3人ともマイナスで「合計-4.27m」などと言われていた。青葉たちは、世梨奈が8.21m飛ばして「おっ」という声があがったものの、美由紀が-3.17mとこの日の最低記録更新して大きく後退。しかし青葉が水泳で鍛えたキックで《風の息》をうまく読んで15.37m飛ばし、合計は20.41mで決勝に進出することができた。
 
「おぉ、決勝に行けるとは」
「凄い凄い」
 
決勝の頃になると風も止んで無風に近い状態になり、かなり好記録が出る。青葉たちのひとつ前の組は3人とも体格がよく、最初の男性が17m, 次の女性が14m, 最後の男性が19mも飛ばして、合計50mで結局この人たちが優勝した。これは世界記録を更新したらしい。
 
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青葉たちは世梨奈が出番を待つまでの間かなり練習していた成果が出たようで12.14m飛ばし、美由紀も今度は前に飛ばして5.31m、そして青葉が予選の時よりも長い17.19mというこの日の女性での最高記録を出して合計34.64mとなり、3位になって賞状をもらった。
 
ついでに青葉は「女性最高記録」、美由紀は予選で出したのが「最低記録」で各々個人表彰された。
 
「嬉しいような嬉しくないような」
などと美由紀は言っていた。
 

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大会が終わった後、駐車場の方へ向かう途中、美由紀がキャンディのようなものを出して食べている。
 
「世梨奈たちも食べる?」
「何それ?」
「ドラッグストアにあった。砂糖菓子っぽいけど、そんなに甘くないなあ」
「ブドウ糖?」
「ブドウ味のキャンディかと思ったのにブドウの味がしない」
 
「そりゃブドウ糖はほとんど無味だよ」
「え?ブドウ味じゃないの?」
「ブドウ糖はブドウの中から発見されたからブドウ糖とは言うが、ただの糖であってブドウの味がする訳では無い」
と世梨奈。
「そうなんだ?」
「体内で分解もされずにそのまま吸収されてエネルギー源になるから、てっとり早く糖分を補給するのにいいんだよ。こういう疲れた後で摂るのは割と正解」
 
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「へー」
「糖尿病とかで、低血糖を起こしやすい人がブドウ糖を持ち歩いているね」
「ほほお」
 
そんなことを言いつつも、世梨奈も青葉も数個もらって食べる。
 

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「確かにほとんど味が無い」
「甘くもないね」
 
「でも分解されずに吸収されるって、普通は分解されるの?」
「普通の砂糖は腸内でブドウ糖と果糖に分解される」
「ほほお」
「実は“甘い”のは果糖なんだよね。ブドウ糖はそんなに甘くない。その2つが結合した形をしている砂糖はその中間」
「なるほどー」
 
「ブドウ糖は更に分解されたりしないの?」
と美由紀が訊く。
 
「されない。それ以上分解されない糖類を単糖というんだよ。ブドウ糖グルコースとか果糖フルクトースとか、脳糖ガラクトースとかが単糖」
 
「のうとう?」
「脳神経とかを作る素材になる。おっぱいの主成分の乳糖はブドウ糖と脳糖から出来ている」
と言って、青葉はメモ用紙に
 
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蔗糖=ブドウ糖+果糖
乳糖=ブドウ糖+脳糖
麦芽糖=ブドウ糖+ブドウ糖
 
と書いて2人に見せた。
 
「つまり、おっぱいって身体を作るのに必要な脳糖と、エネルギー源のブドウ糖とで出来てるんだ?」
「そういうこと」
「合理的だね〜」
 
「蔗糖(しょとう)というのがふつうの砂糖?」
「そうそう。砂糖は多数の糖類のミックスだけど、蔗糖が主成分」
 
「麦芽糖って、森永ミロとかに入っているやつ?」
「ミロはネスレ!」
「あれ〜〜?」
 
「水飴も麦芽糖だよ。砂糖は江戸時代の中期頃までは貴重な舶来品で高価だったから、庶民は麦芽糖でできた水飴で甘みを得ていたんだよ」
 

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