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■春産(8)

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千里たち、バスケット女子日本代表は8月24日に帰国した。その日は都内の合宿所に泊まり、翌日の午前中に解団式をした後で、文部科学省に行き、遠征の報告をした。BEST8は顕彰の対象ではないものの、松野大臣からはねぎらいのことばがあり、キャプテンの広川妙子が4年後の雪辱を誓った。
 
青葉は25日の夕方、千里に電話してみた。
 
「それで結局、ジャネさんは筒石君の恋人になっちゃったの?」
「取り敢えずお部屋の掃除だけしてあげたようです。お友達ならいいよと言っているみたい」
「マラさんがセックス我慢できる訳無いから、きっと済し崩し的に恋人になっちゃうよ」
「なんか吉備津の釜みたいな話になりつつあるなあ」
 
「島下さんの容態は?」
「私もだいぶメンテしてあげたんだけど、退院するにはまだ1ヶ月くらいかかりそう」
「ガス中毒は時間が掛かるもんね。赤ちゃんは?」
「そちらも週に2回くらい通ってメンテしてるんだけど、退院は9月末くらいといわれている。親子が一緒に治療受けられるようにというので、島下さんもK大病院からK医大病院に転院させてもらったんだよ。それで同じ病室にしてもらっているんだ」
 
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「それは良かった」
「私もメンテに行く手間が省けて助かる」
「確かに確かに」
 

「ちー姉は、はねた車を見つけきれないよね」
「私は超能力者でも何でもないから、そんなの見つけきれない」
「あのさあ、そういう素人ぶるのって話が面倒になるから」
 
「長野県**市の修理工場に8月11日頃、入庫した車を調べてごらんよ」
「長野!?」
 
警察も北陸三県の修理工場にはかなり照会していたようだが、長野県までは調べていなかったかも知れない。
 
「分かった。すぐ刑事さんに連絡してみる」
 
「たださあ」
と千里は青葉に警告するように言った。
 
「あまり優秀な霊能者であることを見せると、青葉、このあと頻繁に呼び出されることになるよ」
 
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「うっ・・・」
 
「だから匿名で密告しなよ」
 
「・・・・そうしようかな」
「警察への電話は声も録音されるだろうから、公衆電話から玉鬘ちゃんとかに話させるといい」
 
「・・・・・」
「どうしたの?」
「ちー姉、どうして私の眷属の名前知ってるのさ?」
「さあ。今ふっと思いついたからそういう名前を出しただけだけど、それ青葉の眷属の名前なの?お友達の名前かと思った」
 
ちー姉ってこれがあるんだよなあ! 天然のチャネラーなんだ!玉鬘などという使用頻度が低く、しかも実は人に聞こえる声を発することのできるレアな眷属のことを知っていた訳ではないんだろうな、と青葉は思った。
 
でも「お友達の名前かと思った」なんてのは絶対嘘だ!
 
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あくまで素人を装うんだから。
 

千里は桃香が1ヶ月ちょっとぶりに会ったのに、セックスを求めないのを不思議に思った。今恋人がいるのかな?などとも考えるが、千里は取り敢えずそれを調べたりする余裕は無かった。
 
バスケの活動にしばらく専念していたおかげで、作曲依頼がたまっていた。これを千里はチームの練習に出ながら、カラオケ屋さんなどに入り浸ってこなしていた。また、4チーム共同で建設中の体育館に関する様々な打合せにも出たりしていた。建設は思った以上に早く進んでおり、11月中旬に竣工する見込みということであった。千里は自分以上に忙しそうなケイは置いといて、藍川真璃子、KL銀行の部長さんなどと連絡を取りつつ「決断待ち」になっていたものをどんどん決裁していった。
 
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千里は《くうちゃん》に頼んで、《すーちゃん》と2人だけの空間を作ってもらい、須佐ミナミの件で少し話した。
 
「確かにあまり長くやると、須佐の身元に疑問を抱く人もあるよね」
「うん。だから須佐は今年1年だけということで」
「まあローキューツも今年度から、揚羽が実質的な中心になったことでチームとしてのまとまりもできてきている。すーちゃんが抜けても何とかなるだろうね」
 
「今年度で高校・短大・大学を卒業する子で、こちらに勧誘できそうな子を紫ちゃんに言ってだいぶ調べさせているんだよ。紫にケイさんとも話してもらって、充分優秀な子なら初年度からプロ契約してもいいということにしているし」
 
「うん。強力なメンバーが入ってくれば、すーちゃんも抜けやすくなるよね。その手の交渉を紫にやらせるのもうまいよ」
「取り敢えず私の後任のガードフォワードは旭川N高校の江向音歌を」
「取れる?」
「あの子、福井英美の影に隠れて目立たないんだよ」
「それは言えてる。でもあの子はラッキーガールだし」
「そうそう。それがいいなと思っているんだよ」
 
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それで“須佐ミナミ”は今年度いっぱいで退団させる方向で進めることにした。彼女をローキューツに入れたのは、今年のローキューツの戦力が見劣りしていて《クロスリーグ》のレベルについて来れない可能性があると考えたからである。ローキューツがクロスリーグで全敗ということになると、このリーグの存在意義自体に問題が生じる所であった。プロと対等に戦えるクラブチーム・実業団チームが3つ欲しかったのである。
 
「でも楽しかったでしょ?」
と千里は誘導するように言ったのだが、《すーちゃん》は千里の意図に気付いていない。
 
「うん。私も本格的にバスケやったのは、15年ぶりだったから。最初忘れていた感覚がやっている内にどんどん研ぎ澄まされてきたんだよ。まだ2〜3年やりたいくらいだよ」
と《すーちゃん》は言う。
 
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「だったら来期は私の影武者ができるな」
「え〜〜〜〜!?」
 

最近《千里A》が全然会社に出てきてくれないので、週90時間くらいJソフトで仕事をしている《千里B》こと《きーちゃん》は、ここ1ヶ月ほど全く休み無しで働いて、かなり疲労が蓄積していた。(眠くなったら《千里C》こと《せいちゃん》に任せてひたすら寝ている。《せいちゃん》も週60時間は働いている。つまりふたり合わせると週150時間勤務である!)それでその日も端末の前でついうとうととしてしまった。開いているソースにfffffffffffffffffffffffみたいなのが20-30行入ってしまっているのを慌てて削除する。
 
それを見ていた矢島係長(10月から課長に昇進予定)が千里に声を掛けた。
 
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「村山さん、しばらく全く休んでないでしょ?」
「さすがにちょっと疲れが溜まっている気がします」
 
「だったらさ。今日は**証券の後の作業、私が見てあげるから、今日はもうあがって、何なら温泉とかにでも浸かっておいでよ」
 
「いいんですかぁ?でも矢島さんは?」
「私は先週1回休ませてもらったからね。そうだ、ついでに気分転換にさ、お茶とかしてこない?」
 
「お茶って、カフェとかですか?」
「違う、違う。茶道だよ」
「そっちのお茶ですか!」
 
「千里ちゃん、和服自分で着れると言っていたよね?」
「ええ。訪問着や振袖くらいなら着れますよ」
「振袖がひとりで着れる人は凄いよ。それで和服着て、お茶とか立ててたら、だいぶ気分転換もできるんじゃないかな? 私の知り合いが関わっている茶道教室があるから行ってみない? 明日は有休にしてあげるからさ」
 
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「そうですねぇ」
 
そんなのするより寝ていたいよぉ、とは思ったもののたくさんお世話になっている矢島さんの提案は無碍に出来ない。
 
お茶って・・・・確か50年くらい前に女子高生に擬態して茶道部に入った年があったな、と《きーちゃん》は考えていた。
 

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ここの所忙しすぎたよなあ、などと思いながら龍虎はその夜遅く、旅館の大浴場の浴槽に身体を沈めていた。深夜なので他に全く客が居ない。
 
ゆっくりつかっている内に、疲れが出たのか、ついうとうととしかかったようである。
 
危ない危ない。お風呂の中で寝たら風邪引いたりしかねないし、下手すると水死なんてこともあるよなと思い、龍虎はあらためて100くらい数えてからあがろうかなと思った。
 
ところがそこに2人の客が入ってくる。
 
龍虎はぎょっとする。
 
ふたりがあきらかに女体を龍虎の前に曝していたからである。
 
「あ、アクアちゃんだ」
と丸山アイが言った。
 
「なんでこっちに入っているのさ」
とヒロシが言った。
 
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「ハイライト・セブンスターズのヒロシさん!?ヒロシさんって性転換してたんですか?」
 
「まさか。これはフェイクだよ」
「びっくりしたー!」
 
「アクアちゃんだって、その姿を見られたら、アクアちゃん、いつの間に性転換したんですか?と言われる」
 
「そうかなあ」
「だって、おっぱいあるし、おちんちん無いし」
「フェイクですよぉ」
 
「女性は女湯へと言われるかと思ったのに今日は誰も脱衣場に居なかったんですよ」
などとアクアは言い訳する。
 
「それでさ、今女湯は誰もいないんだよ」
「はい?」
「3人で向こうに入りに行かない?」
「え〜〜〜!?」
 
「ついでに君もぼくたちが作っているクラブに入らない?」
「クラブ・ドゥ・バン・ファム」
「何ですか?それ?」
「日本語で言えば女湯クラブかな」
「へ?」
 
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「女湯に入ろうよというクラブ。むろん女性たちに騒がれないように。女湯に入っている女性たちに溶け込んで、まさか女ではないとは疑いもされないように、邪魔にもならないように、目立たず静かに入ることを是とする。アクアちゃん、女の子の裸見ても何も感じないでしょ?」
 
「はい。ぼくは女の子の裸には何も感じないし、そもそも女の子に興味無いです」
 
「だったらこのクラブに入れるね」
「あとで入会案内送ってあげる」
「入会案内なんてあるんですか?」
「取り敢えず今夜は女湯に移ろうよ。さあ、行こう行こう」
 
「ちょっと待ってくださーい。アイさん、ぼくに女湯に入っちゃだめだよとか言っていたのに」
 
「君が女の子の裸見ておちんちん立っちゃう子ならダメだけどね」
 
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「アイさん、結局おちんちんあるんですか?」
「秘密」
 
それで龍虎はふたりに拉致されるように男湯から連れ去られてしまった。
 
 
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