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■春産(22)

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「ところで大学はどうすんの?化学科だったよね?そのまま大学院まで行く?」
「理学部はほとんどの子がそのまま修士まで行くんですよね。だからその流れで僕もあと2年学生生活するつもり。鈴木社長にも一応修士まで行きたいと言ってはいるんですよ」
 
「じゃあと2年間は学生との二足のわらじで頑張らなくちゃ。ただ修士論文を書く間、5月頃から11月頃までは、ほとんど時間無くなるよ」
 
「そうか。鴨乃先生も理学部で修士まで行ったんでしたね」
「うん。だから曲も書きためておいた。もっとも私はしばしばバスケットの活動で凄まじく忙しくなるから、いつも曲はストックがあるんだけどね」
「じゃ、僕も来年は頑張って書きためておかなくちゃ」
「うん。頑張ってね」
 
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横手市で行われていた第5回全日本クラブバスケットボール選抜大会では、40 minutesが優勝、2位ミヤコ鳥、3位セントールで、この3者が全日本社会人選手権に進出することになった。
 

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9月5日の朝、千里が朝食を取って、部屋に戻りかけた時、青葉から電話があった。
 
「青葉たくさんメダル取ったみたいね。おめでとう」
と千里がいきなり言うと
「わ、もしかして速報サイト見てくれた?」
と青葉は逆に尋ねる。
 
「もちろん。リレーの金銀銅も凄いけど、個人で取った800m自由形の銅が一番凄いよ」
「うん。実は私もそれがいちばん嬉しい。リレーはやはりジャネさんの力が大きかったもん」
「あの人も凄いね〜」
 
「それで、ちー姉、今どこにいるんだっけ?」
「今札幌。これから東京に移動する」
「何時頃着く?」
「青葉もしかしてまだ東京にいるの?インカレは昨日で終わったよね?」
「昨夜の高速バスで帰るつもりだったのが、面倒な頼まれごとしちゃって」
 
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「青葉はすぐ火中の栗を拾うからなあ」
「反省している。でも、私以外には頼れる人居ないと言われて。でもこの件はさすがの私も、ひとりだけでは自信が無い」
 
「呪詛か何か?」
「その手のものは無い。実は妊娠した男の娘の妊娠維持と出産をサポートしてくれないかと言われて」
 
千里は当惑した。偶然そんなレアな話が2つ重なる訳が無い。
 
「それ、もしかして成宮真琴ちゃんの件じゃ無いよね?」
「なんで分かるの〜!?」
「実は彼のボーイフレンドから昨日、その件で相談された」
「うっそー!?」
 
「どっちみち、ふたりで少し情報交換した方がよさそうだね。午後の便で帰ろうかと思ってたけど、今からすぐ新千歳に向かうよ」
 
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「ありがとう!」
 

桃香は9月5日(月)も、まだ体調が回復しないと言って会社を休むと、午前中、自由が丘に出かけ、ルピシア本店に行ってみた。
 
ずらーっと茶葉の入った丸い缶が並んでいるが、さっぱり分からない。お店の人に「ニルギリの特上品ありますか?」と聞いて、出してもらったが、わずか50gで2300円というのに、内心「ぎゃー」っと思った。桃香は紅茶をたしなむ趣味はない。せいぜい買っても100円ショップの10個入りティーパックくらいである。
 
ともかくもそれと、ケーキを4個(2つずつ食べるつもり)買い、自宅に戻った。あまり動き回っていて、会社の人に見られたりしたら、病気ということで休んでいて何だ?と言われかねないので、おとなしくしておくことにする。
 
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しかし自宅に戻ってしまうと暇なので、鈴子に電話してみた。
 
「へー。じゃ、向こうの子供は真純のままで出生届出したんだ?」
「そうそう。向こうも《まぁちゃん》とか呼んでいたんで、今更名前は変えられないということで。それであらためて考えてみると、真純(ますみ)って、男でも女でも行ける名前だから、女の子だけど真純のままでいいんじゃないかってことにして、それで届けたらしい」
 
「まあ確かに、マスミって名前も男女あるよなあ」
「さすがにこちらは、ユミエで男って訳にはいかないからユミオにしたけどね」
「うんうん」
「向こうのお母さんと色々話している内になんか仲良くなっちゃったよ。こちらで買っちゃった女の子用の服と、向こうで買っちゃった男の子用の服も交換しようよと言ってるのよ。元々身体のサイズがほとんど変わらないし」
 
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「ああ、それもいいよね〜」
「向こうも女の子だけど、男の子みたいに育ててもいいかなあ、などと思っていたらしい」
「ああ、そのあたりは結構考えたりするものかもね」
「こちらはまた可愛い服買ってこようかと思ってるし」
「やはり男の娘育成計画か」
 

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千里はお昼過ぎに東京に戻ると、都内の料亭で、青葉と会い、お互いの持っている情報を交換した。
 
「これ真琴さんと2人だけにしてもらって話し合ったんだけど、その8月2,3,4日にセックスした相手は、2日が雅希さん、3日が早紀さん、4日が洋介さんという人らしい。困ったことに全員AB型だし、真琴さんがRh(+)ABだから、子供の血液型だけでは誰の子供かは分からない」
 
「逆に誰が認知しても矛盾が起きない」
「そうなんだよ」
 
「それでこの中で一番可能性の薄いのが3日にセックスした早紀さん。この人は本人は去勢済みと言っている。それを信用していいかは分からないけど」
 
「うん。みんな嘘つきだから」
「自分の性別に関しては嘘をつくよね」
 
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「青葉だって本当は幼稚園に入る前に去勢してるのに中学の時に睾丸が自然消滅したなんて、あり得ない嘘ついてるし」
と千里が言うと
 
「ちー姉はどうなのさ!?」
と青葉は言う。
 
一瞬お互い微妙な微笑みで見つめ合う。
 
「まあいいや。後の2人は?」
「4日にセックスした洋介さんは確実に精子を持っている。実際この人は人前にはほとんど男装で出ていて、普通の男性として生活している」
「ふむふむ」
 
「そして2日の相手の雅希さんがいちばん分からないと言うんだよね、この人、見た目は完璧な女の子で、本人は自分は生まれながらの女で戸籍上も女だと言っている。世間的にも普通に女で通っている。中学や高校の卒業アルバムも見せてくれたらしいけど、ちゃんと女子制服で写っている。この人が男装すること知っている人は凄く少ないらしい。そしてあの付近も絶対に誰にも見せないけど、真琴さんは何度もこの人を自分のヴァギナに受け入れているらしい。ちー姉“ミューチャル・セックス”って分かる?」
 
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「分かるよ。カタツムリ方式だよね」
「うん。カタツムリは雌雄同体だから、ミューチャル・セックスするんだよね」
「鎌田敏夫の『新里見八犬伝』で犬坂毛野がそれやってたね」
「それ読んだことないや。読んでみようかな」
 
「読まない方がいいよ。あまり女の子に勧められる小説ではない。薬師丸ひろ子主演の映画原作になってたから読んだ人結構いると思うけど、女性読者の場合は読んで後悔した人や途中で読むのやめて捨てた人の方が多いと思う。滝沢馬琴の南総里見八犬伝とは無縁の、ほとんどエロ小説だから」
と千里は言う。
 
「うーん・・・・」
と悩むような声をあげた上で
 
「まあそれで結局、雅希さんに精子があるかどうかもよく分からないらしい」
 
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と青葉は説明した。
 
「今更だけどそういう話、私に言ってよかったの?」
 
「ちー姉には話していいと許可もらった。それが分からないと正直、私にしてもちー姉にしても、完全にサポートしきれないよね?」
「うん。遺伝子的に誰の子供かというのを把握しているかどうかで、フォーカスの絞り方の精度が変わる」
 
「青葉、その3人の中の誰が父親か占ってみた?」
「ちー姉は?」
「もちろん占ったよ。それが依頼だったから」
「だったら、お互いの占いの結果を紙に書いてせーので見せない?」
「やってみるまでもない気はするけどね」
 
それで青葉と千里は各々紙に書いて見せた。
 
青葉の紙には“雅希”と書いてあり、千里の紙には“2”と書いてあった。
 
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「じゃこの紙は廃棄ということで」
「うん」
 
ハサミで細かく切り、細片はビニール袋に入れて千里がカバンに入れた。確実に消滅する場所に廃棄する。
 

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青葉と千里は一時間ほど2人だけで話した後、真琴本人にも来てもらうことにした。真琴はその件で朝から事務所の野坂社長、およびRainbow Flute Bandsのサブリーダーである三影さんと話し合っていたらしく、一緒に来ていいかということだったので、OKする。料亭の人に3人追加で来るのだけどいいかと言うと「追加承りました。すぐご準備しますね」と女将がわざわざ部屋まで来てにこやかに言った。
 
「ちー姉、このお店結構来るの?」
「雨宮先生に連れられてかなり来た」
「なるほどー!」
 
30分ほどしてその3人が来る。三影さん(芸名:ポール)はこういう場所はあまり経験が無いようで、キョロキョロしていた。彼は戸籍上も生物学的にも女性であるが常時男装しているし、男性ホルモンを飲んでいるので、声変わりもしているし、ヒゲも生えている。むしろヒゲは彼のシンボルマークである。ただし手術はしていないので、実はまだおっぱいもあるらしい。生理はむろん止まっているので生殖能力は無い。
 
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「まあ密談するにはこういう場所がいちばんいいんですよ。こういう老舗の料亭は教育がしっかりしているから、そもそも客の話を聞かないようにするし、万一聞いても絶対に話しませんから」
と千里は言った。
 

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「前回妊娠中ずっとサポートして出産に至らせた人は、hCGホルモンの出が物凄く悪くて、過去に結婚していた男性との間で何度も人工授精や体外受精まで試みたのに妊娠維持が全然できなかったんですよ。それで今の旦那さんと結婚してから、他の女性から卵子を借りて体外受精して、その胚移植から出産時までずっと私と姉の2人で彼女の健康状態とホルモン状態を管理して、脳下垂体を刺激して、hCGホルモンを出し続けさせて、出産まで辿り着きました」
 
と青葉は説明する。
 
「それは医学的なケアではなく、霊的なケアなんですね?」
と野坂さんが訊く。
 
「そうです。法的にはただの祈祷ですし、いわばおまじないのようなものです。ですから、本当は私などが関わるより、ちゃんと病院に入院して、そこで来年の2月末まで過ごして、帝王切開した方がいいです。入院していてもベッドの上で作曲とかはできますよ」
と青葉は言う。
 
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「それではスタジオでの制作とかに関われないから、結果的にはRainbow Flute Bandsの活動は完全に停止してしまう。“フェイ”のマルチ楽器プレイと歌声無しでうちのバンドの音源は制作できない。正直、マコには中絶しちゃえよと言いたいくらいだけど、そんなことしたら、こいつが精神的にダメージを受けて、全く曲が書けなくなっちゃうと思う。だから仕方ないから、妊娠した以上、出産まで辿り着かせるしかないと俺は思っている」
 
と三影は言った。
 
「僕も中絶してくれと言いかけたんだけど、三影君に中絶した場合の成宮さんの精神状態の問題を指摘されて、妊娠出産を維持するしかないかという方向に決心した所です」
と野坂社長。
 
「まあ、マコには違約金1億円課すという線で」
と三影は言っている。
 
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「うん。そのくらいみんなに迷惑掛けちゃうと思う。だから分割でも良ければ1億円払うよ」
と真琴は言う。
 
「いや、成宮さんの妊娠という事態は想定外だったので、妊娠を禁じる条項とかも契約書には無いんですよ。結婚は28歳になるまで禁止していたんですけどね。だから違約金を取る根拠が無いです」
と社長。
 
「だから自主的に1億円払うという線で」
と真琴。
 

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