広告:國崎出雲の事情 4 (少年サンデーコミックス)
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■春産(11)

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「お姉さんも性転換したの!?」
「そうなんですよ。だから兄弟から姉妹になっちゃったんです」
「凄い画期的だね。あれ、お姉さんも水泳の選手?」
「姉はバスケット選手なんですよ」
「へー!それは凄い。でもバスケットなら、元男性は筋肉が落ちても背丈で有利にならない?」
「姉の場合は身長168cmだからバスケット選手としては背が低い方なんですよ」
「168cmで低いのか!」
 
「プロの女子バスケット選手は180cm代がザラですから」
「凄い世界だ・・・それって女子なんだよね?」
「女子ですよ。でも外国との試合だと向こうは190cm代とかだし」
「ひぇー!女子で190!」
「うちの姉はスリーポイント・シューターなんですよ」
「おお。あれ格好いいね」
「姉の体格では中に進入してのシュートは無理だと言ってました」
「バスケの世界もなんか凄まじいな」
 
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その日はいったん帰宅し、翌日また出てくる。今日は布恋はお昼頃の200mバタフライのみなのでお昼前に出てくると言っていた。青葉は朝1番の400m個人メドレーと10時半すぎくらいの400m自由形である。
 
行ってすぐに400m個人メドレーがある。女子の参加者は15名。予選は2組で青葉は1組、宮中さんは2組であった。最初に1組で青葉が泳ぐ。トップでゴールする。水からあがった青葉をじっと宮中さんが見ていた。その後宮中さんの入った2組が泳ぐ。宮中さんがトップで、タイムは青葉より5秒速かった。そのタイムを見て宮中さんが笑顔になる。青葉は拍手で彼女を迎えた。
 
体力を回復させるため更衣室の隅で少し仮眠した。そのあと少し準備運動して10:40頃、400m自由形の予選に出る。参加者は26名。宮内さんが1組、竹下さんが2組、青葉は3組である。むろん3人とも決勝に進出するが、タイムでは1位宮内、2位青葉で、竹下さんは5位であった。
 
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お昼に持って来たおにぎりを食べ、またしばらく身体を休めておく。12:25頃に女子200mバタフライの予選があり、ギリギリで走り込んで来た布恋が参加する。参加者は11名で、予選は2組おこなわれた。布恋は決勝に進出した。
 
「決勝進出おめでとうございます」
と青葉は言ったが
「A決勝なんて予定外だぁ」
と布恋は言っている。
 

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布恋はお昼も食べ損ねたと言って、おにぎりを食べていた。彼女がなかなか起きないのでお母さんが作ってくれていたらしい。
 
「こういう時は親のありがたみを感じる」
などと言っている。
 
「そうですね。御飯があるっていいことですね」
と言って青葉は微笑んだ。
 
14:15頃に400m個人メドレーの決勝が行われた。今回は青葉がトップで宮内さんは2位。時間差は3秒あった。青葉は宮内さんとコースが離れていたのでゴールしてから自分がトップだったことに気付き「わぁ」と思った。表彰式では「次は負けないからね」と宮内さんが悔しそうに言っていた。
 
400m自由形の決勝は15時頃から行われた。さっき400m泳いでからまだ1時間経っていない。青葉は10分くらい仮眠したのだが、それでも完全には体力は回復していない。しかしそれは宮内さんも同様である。このレースには中学生の竹下さんも参加する。
 
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青葉はその竹下さんと隣のコースだった。スタートからいきなり物凄い速度で竹下さんが飛び出す。わっと思って必死でそれに付いていく。彼女はフォームも美しいし、身体の動きも速い。そして恐らくまだ身体の女性的発達が未熟で水の抵抗が少ないのもあるのではと青葉はチラッと思った。
 
頑張って付いていってはいるのだが、彼女には次第に離されていく。もうダメだぁと思った時、突然彼女のペースが落ちた。へ?と思いながらも青葉は必死で泳ぐ。彼女を抜き去る。そしてそのままプールを1往復してゴール。
 
青葉は1位だった。しかも2位の宮内さんに10秒も差を付けていた。
 
うっそー!?
 
半信半疑で表彰台の所に行くが
「大会新が出ました」
と言われた。
 
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「えー!?」
 
「川上さん、リルちゃんの隣で泳いだからかもね」
と言って、完敗の表情の宮内さんが言う。
 
「あの子は前半飛ばすけど、最後までペースがもたないのよ」
「なるほどー」
 
その竹下リルは4位であった。
 
「でもそれ体力が付いてきたら恐いですね」
「うん。あの子は高校生になったらインハイで全国上位に行くだろうね」
 
青葉はそれで1位の賞状と楯までもらった。400m自由形と100m自由型の優勝者には楯まであるらしい。
 

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15時半頃、200mバタフライの決勝が行われた。布恋は3位であった。本人はまた「うっそー!?」と騒いでいた。どうも上位の選手は青葉が出た400m自由形の直前に行われた50mバタフライにも出ている選手が多く、その疲れが出て、あまり成績があがらなかったのもあったようである。
 
「こんな賞状持ち帰ったら、母ちゃんから捏造ではと疑われそうだ」
などと布恋は言っている。
 
「こんなの捏造はしないでしょう」
と言って青葉は笑った。
 

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これで青葉も布恋も出番が終わったので大会はまだ100m背泳・100m自由形のB決勝・A決勝が続くものの、もう帰ることにする。
 
昨日は布恋は城端線で高岡まで出てきていたのだが、今日は遅刻しそうになったのもあり、車で来ていた。車は赤いナディアである。
 
「この車種は初めて見ました。最近出た車ですか?」
「いや。古い車だよ。2003年型だから」
「へー」
「アイシスの一世代前の車だね」
「わぁ!アイシスは乗ったことありますよ」
 
以前レンタカーで借りて彪志といっしょに東京から長野までドライブしたことがある。
 
「布恋さんの車ですか?」
「ううん。お父ちゃんのを借りてきた」
「へー」
 

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布恋の運転でイオンモール高岡に行く。一緒にフードコートに入ってリンガーハットでちゃんぽんとチャーハンのセットを買ってくる。
 
「ふだんはお上品にミスドとかマクドだけど、身体動かした後は、このくらい入るよね〜」
と布恋は言っている。
 
「ええ。これに牛丼食べてもいいくらい」
と青葉が言うと
「あ、私もそのくらい入ると思った」
と布恋が言うので、結局、すき家の牛丼も買ってくる。
 
「牛丼買うならチャーハンは要らなかったかな」
「入っちゃいますよ」
「だよねー」
 

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「そういえば去年うちの水泳部の部長が連続怪死した事件は青葉ちゃんが解決したんだって?」
 
「あれは事件というのとは少し違うんですけどね。あの中には偶然時期が重なった無関係の事故もあったし」
「ああ、そうなんだ!」
 
「とりあえずこの名刺も渡しておきますね」
と言って青葉は《心霊相談師・川上瞬葉》の名刺も渡しておく。
 
「おお、なんか凄い。いわゆる霊能者ってやつ?」
「まあそんなものですね」
「寺尾玲子みたいな?」
「あんな、凄くないですー」
 
「でもやはり数珠とか使うの?」
「数珠は持ってますよ」
と言って青葉はバッグから愛用のローズクォーツの数珠を取り出してみせる。
 
「凄い大きな数珠だね!」
「触ってもいいですよ」
 
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「へー。なんか凄く優しい感じの数珠。色も可愛いし」
「姉妹3人で色違いの水晶の数珠を頂いたんですよ」
「あれ?3人姉妹なんだ?」
 
「ええ。いちばん上の姉はグリーン・アメジスト、2番目の姉は藤雲石といってラベンダー色の水晶、そして私のがピンク色のローズクォーツなんですよ」
 
「あ、そうか。アメジストって紫水晶だ」
「ええ。でもグリーンのもグリーン・アメジストって言うんですよね」
「へー」
 
「性転換したってのは、どっちのお姉さん?」
「2番目の姉なんですよ」
「いちばん上のお姉さんは元から女?」
「ええ。天然女性です」
 
「おお。生まれながらの女は天然女性と言うのか!」
「男に生まれたけど女に育っちゃった人は養殖女性と言いますね」
「ほほお」
「人工的に女になったというので人工女性という言い方もあります」
「それたぶん微妙に意味合いが違うよね?」
 
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「そうですね。人工女性という場合、やはりホルモンとか手術とかで改造しているというニュアンスがあるし、養殖女性という場合、周囲がけっこう唆しているニュアンスがあるんです」
 
「個人的な見解だけど、そういう子たちって、けっこう親との共犯っぽい人もいるよね」
と布恋は言う。
 
「居ます居ます。はなっから親が女の子の服を与えて、けっこうその気にさせているケースって割と多いんですよ」
「青葉ちゃんの場合は?」
 
「幼稚園には女児の制服で通ってましたよ」
「ああ。共犯っぽい」
 

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「しかし最初は女1人男2人の姉弟だったはずが、女3人の姉妹になっちゃったわけか。親としてはいちばん上のお姉さんに孫を期待するしかないのね」
 
「そうですね。私が産めたらいいのですが」
と言いつつ、青葉は結局京平君って、ちー姉の子供だから、お母ちゃんにとってはもしかしたら初孫?と考えていた。
 
「でも困ったことにいちばん上の姉はレスビアンで男性には興味無いんですよ」
「それは困ったね」
 
「だから子供3人居ても孫は期待薄かも」
「人工授精とかで子供作っちゃう手は?」
「可能性はありますね」
 
と言いつつ、青葉は5年前、青葉は桃香・千里と知り合って間もない頃、ふたりに協力して千里の「睾丸を活性化」させて、精子の採取をしたことを思い起こしていた。桃姉はその時のちー姉の精子を使えば妊娠することは可能だ。
 
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ただ問題は2つあると青葉は思った。
 
今更ちー姉が自分が父親になることに同意するとは思えないことである。ちー姉は自分が男性の機能を使用することに強い抵抗感を持っていたはずだ。実際にあの時精子採取した際も、ちー姉はかなり嫌がっていた感じもあったが、押しの強い桃姉の勢いに負けて精子の採取をしている。だから採取には応じたものの桃姉があれを使いたいと言っても嫌だと言う気がする。ちー姉の同意書を病院に提出しなければ、人工受精はしてもらえないはずだ。
 
そしてもうひとつ。こちらが重要なのだが、あの時冷凍したのはいったい誰の精子なのかという問題である。どう考えてもちー姉はあの時点でとっくに性転換済みであったはずだ。ということは睾丸なんてそもそも存在していない筈なので射精もできなければ精子も作れなかったはずだ。しかし精液は確かに冷凍された。冷凍する前に顕微鏡で活性度を確認したりしている。ではその精液はどこから持って来たものか。誰のものなのか。桃姉もその問題には気付いている筈だからちー姉以外の人の精子では桃姉は妊娠したくないだろう。
 
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「だけど3人お揃いの数珠って、3人とももしかして霊能者なの?」
と布恋が訊く。
 
「うーん・・・・」
と言って青葉は悩んだ。
 
「いちばん上の姉は、むしろ唯物論者なんですよ」
「へー!」
「だから宗教とか占いとかも嫌いですね。むしろ科学信者という感じ」
「そういう人も今時逆に珍しいね」
「ですから、実は私が持っているのと同じような数珠はあるのだけど、普段はダイソーで買った100円の数珠で法事とかに出てますよ」
 
「あ。それも面白い」
「そんな大きな数珠は分からんと言って」
「いや。こういう大きな数珠は実際、素人には扱えない気がするよ」
と布恋は言う。
 
「いちばん分からないのが2番目の姉で」
と青葉は困惑するように言った。
 
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「本人は自分には霊感とか無いと言うんですよね」
「ふむふむ」
「そして普通の霊能者が見ても、というか私が見ても、姉はごく普通の人にしか見えないんです。まあ少し勘が鋭いかなという感じの人」
「そうじゃない訳?」
 
「最近思い始めたのは、姉はとんでもないパワーの持ち主で、その凄まじいパワー故に、自分にパワーがまるで無いかのように装うことができるのではないかと」
 
「能ある鷹は爪を隠すって奴か」
 
「かも知れないし、本当にただの人なのかも知れないし。私にはまだ姉が分からないんですよ」
と青葉。
 
「でもそういうお姉さんがいるって青葉ちゃんにはとてもいいことだと思う。同じように男の子から女の子に変わった人で、そういうパワーを秘めている人ならね」
 
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「そんな気もしています」
 

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