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■春拳(18)

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千里の書いた「切り貼り」された譜面を千里自身と毛利さん、助手として来ている雨宮先生の弟子のひとりで奥原さんという「自称男の娘?」、それから伴奏者として来ているバンドの中で楽譜に強い人まで入って、数人で手分けして「大雑把な清書」をした。
 
その後、千里が間違いがないかチェックして多少の修正をした上で、コピーして全員に配り、それを元に演奏してもらうが、ドラムスやベースの基本パターンについては千里自身が演奏してみせて「こんな感じで」と頼んだ。
 
ギターのバッキングやキーボードの音色なども「こんな感じで」とやってみせるので
 
「鴨乃先生って楽器、なんでもできるんですね!」
と伴奏者の人たちから感心されていた。
 
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「鴨乃君は、何でもちょっとだけできるんだよ」
と毛利さん。
 
「です。自信があるのは横笛だけ。あとはかなりごまかしがある」
と千里も言う。
 
「よし。その横笛を演奏してもらおう」
と毛利さんが乗せるので、伴奏者の人たちの演奏に合わせて千里はフルートを吹いてみせた。
 
このフルートは今回《たいちゃん》に言われてパソコン・MIDIキーボードなどと一緒に合宿の荷物に入れておいた愛用の三響総銀フルート Artist(New-E)である。
 
「美しい!」
「今のフルート活かしましょうよ」
という声が出る。
 
「今の録ってたよね?」
と毛利さんがスタジオ技術者に確認する。
 
「録ってますよ」
「じゃフルートは今の演奏をそのまま活かすということで」
 
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千里は毛利さんの指示で考えられるいくつかの譜面の改訂パターンに合わせてフルートを3回吹いて、それを全部録音してもらった。
 
「これだけ録っておけば、後で多少スコアをいじっても、編集でつなぎあわせて何とかなるだろう」
と毛利さんは言っていた。
 
千里は21時近くまで作業を続けた上で
 
「そろそろ合宿所に戻らないといけないので、あとはよろしく」
と毛利さんに言ってスタジオを出た。
 
近くの駐車場に駐めて仮眠していた矢鳴さんに来てもらい、それで合宿所の方に向かっていたのだが、ここで偶然冬子・政子の2人に遭遇。彼女たちを恵比寿のマンションまで送っていくことにする。
 
ところがその途中今度は淳と会い、赤ちゃんが産まれそうという話を聞いて、政子の提案で、全員で仙台まで行くことになった。
 
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千里は新宿で待機してくれていた《すーちゃん》に自分の代わりに合宿所に入ってくれるよう指示した。
 
《すーちゃん》は千里の代わりにNTCに入ったが、玄関近くで自販機でジュースを買っていた玲央美から
 
「すーちゃん、お帰り」
と言われて
「あ、どもー、レオちゃん」
と開き直って答えた。
 

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この日彪志は仕事が早く終わったようで7時には帰って来た。それで一緒に御飯を食べて、一息ついてから、出かける。今日も青葉は少し寝不足状態にしているが、運転は彪志にしてもらう。自分が運転しているのでなければ眠ってしまっても大丈夫だが、完全に寝てしまうと妖怪に会えないので、眠ってそうだったら、彪志に声を掛けてもらうことにした。
 
それで出かけて港区内に入り少し巡回し始めた時のことであった。千里から電話が掛かってくる。
 
「ザォア(お早う)」
といきなり中国語で言われるので、こちらも
「ザォア」
と返す。
 
「ちー姉、今中国だっけ?」
「ううん。今ここは栃木県付近かな」
「あれ?合宿中じゃなかったんだっけ?」
 
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「合宿中なんだけど、作曲の方のお仕事で呼び出されてちょっと出てきたのよ」
「お疲れ様!」
「それで、帰りがけ、淳と偶然会ってね」
「うん」
「そしたら、和実の赤ちゃんが産まれそうだというのよ」
「わっ」
 
「それで淳を連れて今仙台に向かっている所」
「なぜ、ちー姉も行く?」
「なりゆき。それと端末になろうと思ってさ」
「端末?」
 
「青葉、今夜悪いけど、私を通して和実の赤ちゃんの出産をサポートしてくれない?この子はまだ現実と仮想の間にいると思うんだよ。その子を現実世界に連れてくるには青葉の力が必要だと思うんだ。高岡から仙台までちょっと遠いけど、青葉ならできるよね?」
 
「あっと、私、今東京に出てきてたんだよね」
 
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「うっそー!?だったら、青葉の所に寄って一緒に連れて行けば良かった」
「今、どのあたり?」
「ここどこかな? 羽生(はにゅう)パーキングエリアと書いてある」
 
そこは埼玉県の北端付近である。あと3km程度で利根川を越えて東北道は一時的に群馬県内を通過し、更に8kmほど走ると渡良瀬川を越えて栃木県内に入る。
 
「産まれるのは何時頃になりそう?」
「たぶん日の出頃だと思う」
「じゃ4時くらいかな」
「わかんないけど、そのくらいかも」
 
「だったら追いかけて行こうかな。こういうのはできるだけ近くでやりたい」
「青葉、車あるの?」
「彪志がこないだフリードスパイク買ったんだよ」
「おお、それはすばらしい」
と言ってから千里は付け加える。
 
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「だったらさ」
「うん」
「少し遅れてもいいから、桃香も一緒に連れて来てくれない?」
「分かった」
 

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それで桃香に連絡すると、今ちょうど経堂の駅についてOdakyu OXで晩ご飯の買物をしている最中ということだった。
 
「じゃ今からそちらに行くから、桃姉、そのまま食べられるお弁当とかサンドイッチとか、ついでにおやつとか飲み物とか買っておいてくれない?あと、コーヒーとクールミントガムも」
 
「OKOK」
 
それで彪志の運転で世田谷区に向かうことにする。今日は妖怪探索は中止である。
 

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『雪ちゃん』
と青葉は眷属の中で最も“霊的な”能力の高い《雪娘》に呼びかける。
 
『先行して仙台に行っててくれない?ここから・・・・300kmちょっとかな。雪ちゃんなら2時間くらいで行けるよね?』
 
『うん。じゃ先に行く』
と《雪娘》が答える。
 
『俺なら1時間かからないぞ』
と横から《海坊主》が言うが
 
『海ちゃんを出したら私、動けなくなるもん』
と青葉は言う。
 
《海坊主》を稼働させるには自分のパワーの3〜4割の力を消費する。こちらはじっとしていないと耐えられない。雪娘なら2割以下のパワーで動かせる。
 
青葉は《雪娘》を行かせると
「私、アパートに着くまで寝てる」
と宣言して自分を深く眠らせた。
 
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経堂のアパートの所に着いた所で彪志に起こされる。桃香が荷物を持ってアパートから出てくる。
 
「桃香さんがスカート穿いてる!」
などと彪志が言っている。
 
「これ好きじゃないんだけどねー。でも着替えが無いんだよ」
「あら」
 
実は最近千里がほとんど戻ってないため洗濯が滞っているのである。ブラウスなど、しばしば洗濯物の中からいちばん汚れてなさそうなのを掘り出して着ていたりする。
 
ここで青葉も彪志もトイレを借りておく。ミラで駐車場まで移動し、フリードスパイクに荷物を移してそちらに乗り込む。フリードスパイクを出庫して代りにミラを入れる。ETCカードもミラに挿していた青葉のカードをフリードスパイクに挿し直す。青葉の運転で出発する。
 
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「しかし私も和実の赤ちゃんは見たいが、私らが行って何するんだ?」
と桃香が訊く。
 
「桃姉が近くに居た方が出産がうまく行くんだよ」
と青葉。
 
「へー。まあよく分からんが、寝てていいか。今日の宴会では野球拳をやって飲み過ぎた」
「うん。寝てて」
 
それで桃香は後部座席で眠ってしまう。どうも桃香の職場では野球拳の献酒方式がブームになっているようだ。最初献酒&脱衣方式でやったものの、桃香が最初いきなり負けて潔く下着姿になった所でお店の人からストップが掛かり、以後脱衣禁止令が出たらしい。それで単純にお酒を飲む方式に変更したと言っていた。多分男性同僚たちもまさか桃香が何もためらわずにいきなり脱ぐとは思ってもいなかったろう。もっとも彼らからは
 
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「しかし高園は女の下着つけてるのか?」
「女装趣味なの?」
などと言われたらしいが。
 

青葉は近くの永福出入口から首都高に乗ると、4号新宿線を新宿方面に向かう。西新宿JCTでC2中央環状線に乗り、江北JCTでS1川口線に乗って川口JCTから東北道に進行する。今日は幸いにも渋滞に全く引っかからなかった。
 
東北道をひたすら走り、0:25頃、都賀西方PAで彪志に運転交代した。
 
助手席で千里姉に電話する。
 
「ちー姉、今どのあたり?」
「さっき矢吹ICを通過したよ」
「こちらは今、都賀西方PAを出たところ」
 
この時点で両者の距離は100kmちょっとあるようである。千里はしばらく仮眠して福島松川PAで運転交代する予定ということであった。
 
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■冬子・政子のタイムスケジュール
日中 鳥羽水族館に行く。
鳥羽駅15:02-16:37名古屋17:03-18:43東京
19:30-21:00 お寿司を食べる
21:20 千里と会う
 
■千里のタイムスケジュール
16:10 毛利から連絡があり作曲依頼
17:30 合宿所を出る。首都高周回後、19:00頃にスタジオ入り
21:00 Yスタジオを出る。
21:20 |冬子・政子を拾う。
21:30 |港区付近で千里が淳を拾う。
22:30 |羽生PAで休憩。千里が青葉に連絡する。
23:00 |都賀西方PA付近
0:00 |那須高原SA付近
1:00 C福島松川PAで千里に運転交代
2:00 |仙台宮城ICを降りる
2:30 |病院に到着
3:20 妊婦さんが分娩室に入る
 
■青葉のタイムスケジュール
19:00 彪志が帰る
21:30 T大宮のアパートを出る。彪志が運転。
22:30 |港区内で千里からの電話を受ける
23:00 A世田谷区経堂で桃香と会いミラからフリードスパイクに乗り換える
23:10 |永福出入口から乗る
23:35 |川口JCT通過
0:25 T都賀西方PAで彪志に運転交代
1:00 |西那須野塩原IC付近
1:25 A阿武隈PAで青葉に運転交代
2:05 T福島松川PAで彪志に運転交代
2:55-4:55 |菅生PAで作業
5:30 病院到着
 
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青葉たちの方はだいたい1時間程度おきに運転交代することにし、次は阿武隈PAで青葉に交代した。
 
1:45頃、《雪娘》から病院に到着したという連絡が入る。
 
『そちらどんな様子?』
と青葉は運転しながら尋ねる。
 
『陣痛はまだ5分間隔。お医者さんが首をひねってる。この人これまで5人も子供を出産して6人目らしい。経験豊かだからスピーディーに進行するかと思っていたのに陣痛が始まってからの進行が妙に遅いみたい』
と《雪娘》が言う。
 
青葉は「やばいな」と思った。千里姉の言った通りだ。この子はまだ現実と仮想の間に存在しているんだ。何とかして現実世界に連れてきてあげなければならない。しかしここからは操作するにしても遠すぎる。ここから《雪娘》のいる場所まではまだ130kmくらいある。この距離で相手にフォーカス続けるのはそれだけで精神力を使う。
 
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青葉は2時過ぎ、福島松川PAに入れて車を停めた。
 
「彪志、彪志」
と助手席で熟睡している彪志に呼びかける。
 
「あ、うん。交代?」
といって彪志が起きる。
 
「まだちょっと早いけど交代して。私熟睡して体力回復させる」
「了解。ここどこ?」
「福島松川PA。それで菅生PAでいったん駐めてくれない?そこから操作する」
「分かった」
 

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