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■春変(23)
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霊山寺を出て駐車場に戻る。
「あ、バイクが違う」
と星良は言った。5月に会った時、渚のバイクはCB600F Hornetだったのである。
「特別ボーナスもらったから買っちゃった」
「へー。特別ボーナスっていいなあ」
実は伊予小松で会った時は、星良が先に出発したので渚のバイクを見ていなかったのである。
ツーリングは、渚(ワルキューレ 1832cc)が先行して、星良(XS250)が後に続くことにする。もし距離が離れたら渚が待ってくれることになっているし、お互いの所在地が分からなくなったら、スマホ連絡でキロポストなどを教え合って場所を確認することにした。
それで高野山方面に向かうことにするが、その前に鳴門の渦を見にいく。
渚は「大鳴門橋の上から見るより、もっと間近にゆっくり見られる所を聞いたのよ」
と言って、自分に付いてくるように言って出発した。
県道12号を東行して海峡方面に行く。鳴門ICの案内が出るが、そちらには行かずに小鳴門海峡まで進み、小鳴門橋を越えて大毛島に渡る。ここは海峡の幅が400mくらいなので、星良はてっきり川の河口付近だと思った。後で渚に教えられて海峡と知った。やがてどこか公園の駐車場に至る。
(小鳴門海峡は四国本土と、その続きにも見える大毛島(おおげじま)・島田島(および両者に挟まれた高島)を区切る海峡で、撫養(むや)瀬戸とも言う。四国本土と大毛島の間には2本の橋が並んで架かっているが、小鳴門橋は一般道、撫養橋は高速道である)
「この先に、渦潮の絶好のビューポイントかあるんだよ」
と渚は言う。
それで大鳴門橋の下!にある道を歩いて10分ほどで“渦の道”という施設に着く。
「高速道路上は停車禁止だからね。それでも停まってる人たくさんいるけど、あれ下手したら、切符切られるから」
「それはやばい」
ここからの眺めが本当に絶景であった。すぐ真下に大きな渦潮が見える。そのあまりの凄さに星良はしばし見とれていた。
結局1時間ほどそこで過ごしてから道を戻る。バイクに乗って、鳴門北ICに行き、ここから高速に乗る。大鳴門橋を越えて淡路島に入り、淡路SAで、じゃこ天とうどんを食べる。「こここは私が出します」と言って、良が2人分の代金を払った。
「じゃこ天、すっかり好きになりました」
「美味しいよね」
それでトイレ(むろん2人とも女子トイレ)に行ってから、バイクに戻る。淡路島をひたすら走り、やがて明石海峡大橋を越えて明石に至った。
高速代金については渚は自分のバイクにETCを付けているが、星良はその手のものはつけていない。それで渚が星良に現金を渡しておいて、後で余った分は返すという方式にしている。
渚は高速代はこの先も全部自分が持つから、このまま高速を走ろうよと言った。星良も下道で大阪市内を通過するのが結構恐いので、同意する。それて2人は
神戸淡路鳴門自動車道→山陽道→中国道→近畿道→阪和道
と、大阪中心部を迂回するかのように走る。そして阪和道の和歌山北ICを降りるとひたすら国道24号を東行した。その日は橋本まで来たところで
「今日はここで休もう」
と言い、渚がホテルを取ったが、行ってみるとツインの部屋だった。
「へ、へ、へ、お嬢ちゃん、いいことしないかい?」
と渚は言った。
「渚さん、レスビアンなんですか?」
と星良は言って、期待するような目で渚を見る。この子、本当にビアンしてみたい?
「女の子と抱き合って何もせずに寝たことはあるよ。でも肉体的には私も女になってからまだ一週間だから女の子との恋愛はしてないな」
と渚は言った。
「それより、星良ちゃんのタックを見せてよ」
「いいですよ。凄く上手にしてもらって、本当に女の子みたいに見えるんですよ。これしてると、おしっこがまるで直接落ちていくような感覚なんですよね」
渚はその星良のことばで、自分の疑惑が確信に変わった。タックしている時のおしっこというのは、まわりくどい通り方をして最終的に物凄く後ろからにじみ出ていく感じなのである。しかし渚は一週間前に女の身体になってから、まさに膀胱から直接滝のように落下していく感覚のおしっこに変わった。星良も「直接落ちていく感じ」だというのは、つまり、そういうことに間違い無い。
それで星良はライダースーツを脱ぎ、パンティを脱いでお股を見せてくれた。渚はタック補正用に持ち歩いていたビニール製手袋をつけて、そこを触った。
「お嬢ちゃん、このタックは開けるじゃん」
「開けたら変なんですか?」
「タックというのは、ペニスをスクロータムの皮で包み込んで隠すのと同時に、左右から引っ張ってきた皮を中央でわざと継ぐことにより、その継ぎ目が陰唇のスリットに見えるようにするテクニックだということを、君は理解しているかい?」
「はい」
「だからそのスリットが開けるというのはおかしい」
「あれ?そういえばそうですね」
「そして君のスリットを開いても中には何も無い。君のペニスはどこに行ったのさ?」
「え?」
それで星良は自分でもそのスリットの中身をよくよく見ていた。
「あれ〜〜?そういえば私のちんちんどこに行ったのかな?」
渚は、この子、旧帝大に通ってる割には“頭が悪い”のではという気がした。
「要するに、君のちんちんは無くなったんだな」
「え?そうなんですか?」
「だって、ここにあるのはクリちゃんだろ?」
「なんかそれっぽいですね」
「おしっこはここの穴から出ていると思う」
「あ、そうかも」
「そしてここにあるのは紛うこと無きヴァギナだよ」
「まるで女の子のお股みたい」
「つまり君は女の子になったんだよ」
「嘘!?いつの間に」
「一昨日の晩、気づいたらおっぱいがあったと言ってたよね」
「はい、そうなんです」
「その時、女の子の身体に変わってしまったのでは?」
「そんなことがあるんですか?」
「私も一週間前に女の身体に変わっちゃったしね」
「ホントにそういうことあるんですね?」
「私が聞いたのでは、ドイツで男の子が手術も何もせずに女の子に変わってしまったことがあったらしいよ」
「へー!」
「その子は森で拾ったよく分からない卵を食べたら、その後熱が出て数日寝込んで、その間に身体が女の子の身体に変化してしまったらしい」
「それ卵が原因なんですか?」
「分からないね。たまたまだったかも知れないし」
「確かに」
「女から男に変わるのは昔からよくある。これは5α還元酵素欠乏症といって12-13歳くらいの女の子に突然ちんちんが生えて来て男の子に変わってしまうんだよ」
「よくあるんですか?」
「うん。そんなに珍しくもない。男の子の場合はアロマターゼ過剰症というのがあって、男の子だったはずが、15-16歳になってから急におっぱいが膨らみ始めて、女の子のような身体に変化する人がいる」
「わあ、私それになりたい」
「アロマターゼ過剰症の場合、身体の変化には数ヶ月かかるみたい。更に症例が少なすぎて男性器がどのくらいまで退化するかとか、そのあたりもよく分からない」
「でも私、道後温泉に入った時はまだ胸が無かったですよ」
「うん。そんなに短期間で女の身体になるなんて、医者でも首をひねると思う」
「でも私、この後どうしたらいいんでしょう?」
「女の身体で何か不都合ある?」
星良は少し考えたが言った。
「何も不都合はないです。むしろこの方が都合いいです」
「じゃ、そのまま女の身体で生きていけばいいね。必要なら戸籍も女に修正すればいいし」
「そうですね」
「私は大阪に戻ったらすぐ弁護士さん頼んで戸籍の訂正をするつもり。それがうまく行ったら、こちらの状況を星良ちゃんにも教えてあげるよ」
「助かります。私も弁護士さん頼んだ方がいいのかな」
「その時は、私が弁護士代も貸してあげるよ」
「ありがとうございます。お願いするかも」
まあ国立の子って、だいたい貧乏な子が多いよねと渚は思った。
「さて、このホテルは各部屋にもバスルームがついてるけど、大浴場もあるみたいだよ。一緒に行かない?」
「行きます!」
それで完全な女体になっていることを確認された星良は、一週間前から女体になってしまっていた渚と一緒に大浴場の女湯に入ったのであった。
翌日(10/11)は橋本のホテルを出てから、高野山まで行き、渚が89番目の納経印を頂いた。そのあと一緒に京都まで走り、ここで89個の納経印を提示して成満証を頂いた。その後2人は名神に乗り、桂川PAで夕食を取ってわりと長時間話した。その後、茨木ICで降りて別れた。星良は預かっていた高速代の残金を渚に返し、よくよくお礼を言って国道171号を豊中方面に向かった。
星良が自分の駐車場にバイクを駐めてからアパートに戻る。するとハガキが来ていて、バイト先のマクドナルドからである。試用期間が終わって本採用に移行したいから、健康診断書を提出してくれということであった。大学生は春に大学で受診しているだろうから、その診断書を大学から発行してもらったものでもよいと書かれていた。しかし星良は春には“男子として”大学の健康診断を受けている。そこで、あらためて病院で受けてくることにした。
近くの総合病院に電話して予約を入れる。連休明けの15日なら空いているということだったので、その日の夕方学校が終わってから行くことにし、16時に予約を入れた。バイトは16日である。
12日から14日までゆっくり休んだ。自分が女になっているというのは渚に指摘されるまで全く認識していなかったのだが、星良は、わざわざスーパー銭湯や室内プールに出かけて、女体を人前に曝す悦びを堪能していた。
「ちんちん無いっていいなあ。すっきりしてて風通しもいいし。男の子はみんなちんちんとか取っちゃえばいいと思うよ」
などと過激なことを言っている。
15日、大学の後期の授業が始まるが、星良は初めて大学にスカートを穿いて出て行った。
「あ、セーラちゃんがスカート穿いてる」
「珍しいね」
などとクラスメイトから言われる。
「たまたまそういう気分だったし」
しかしこの後、セーラはほぼ毎日スカートで大学に行くようになった。
15日は大学が終わってから健康診断を予約していた病院に行く。“つつ・あきら”性別女・19歳で申し込んでいる。健康診断は保険証は必要ないので、性別男と印刷された保険証を提示せずに済んだ。
健康診断申込書と、ほかに診察カードを作るからと言われて書類に記入する。星良・つつあきら・性別女、生年月日2000年8月31日生と記入し、住所と実家の連絡先まで記入する。それで診察カードを発行してもらい、タブレットを渡されて、その指示に従って病院内を移動した。
最初に(女子)トイレでおしっこを取り、紙コップをトイレの端にある棚に置く。これは向こう側が検査室になっており、そのまま向こう側から紙コップを取って検査してくれるのである。男性患者が女子トイレの棚に置いていたら病院のスタッフは困惑するだろうが、星良はちゃんと女子として登録されているので問題無い。
その後、検査室で脈拍・血圧を測り、採血される。それからX線検査と心電図に行く。待っている間に問診票を記入し、女性のみ答える質問にも回答する。
月経中ですか? いいえ
月経がよく乱れますか? いいえ
妊娠中またはその可能性がありますか いいえ
妊娠の経験がありますか いいえ
授乳中ですか いいえ
月経は乱れないと答えたものの、私、月経来るのかなあと不安な気持ちだ。渚さんからは、多分半月後か1ヶ月後に月経が来るかもと言われた。
心電図では女性技師さんが胸にクリップを付けてくれたが、男の患者のバストが大きかったらスタッフさんは悩んだかもなどと考えていた。
その後、眼科・耳鼻科で視力と聴力を測った。それから内科で診察を受けた。おっぱいが膨らんだ胸を出して聴診器を当てられたが、医者は特に何も言わなかった。
それで健康診断は終わり、診断書をもらったので、それを翌日バイトに行った時、店長に渡した。それで星良は正式採用となり。10月からバイト代が少しあがったので、嬉しかった。
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