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■春変(7)

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夏樹は“エンド”が気になった。
 
「あのぉ、これ何日くらいかかるでしょうか」
「それは行ってみないと分からないね」
「私、21日から29日まで休みたいのですが」
「ああ、24-26日に休み取っていたね。じゃずれこんだ場合は、その3日間の有休もその後にずらすということで」
 
「私、連休とか創立記念日に合わせてお休みを取って9連休にしていたんですが」
 
「ああ、お遍路に行くと言ってたね。じゃそのあたりは中国から戻ってきてから再検討で」
「分かりました」
 
場合によっては有休の日数も増やしてくれるような口ぶりであるが、今回あまり有休を取ると、12月に予定している性転換手術の時に有休が取れないのにと、夏樹は少し不安になった。(性転換手術を受けるとは話していない。単に海外旅行に行ってきたいとだけ話している)
 
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ともかくもそれで夏樹はその日は坂本課長と色々打ち合わせ、夏樹が通訳を務めて坂本課長が向こうの担当者から状況をできるだけ尋ね、それで必要になるかも知れない道具や部品なども用意して、翌9月10日の便で、重慶(チョンチン)に旅立ったのである。
 
9/10(Tue) NRT 10:00 (IJ357 B737) 14:15 CKG (5'15)
 

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高浜アリスは9/11日に霊山寺を出発し、このような予定で歩くことにしていた。
 
だいたい1日20kmだが、難所は1日がかりである。この阿波路にはお遍路の難所ハード3(焼鶴龍)が揃っているのである(多くの人はここでくじける)。
 
9/11 1-8番 21.85km
9/12 9-11番 37.65km
9/13 12(焼) 55.55km
9/14 13-17 76.15km
9/15 18-19 98.95
9/16 20(鶴) 112.05
9/17 21(龍) 118.75
9/18 22番 125.75
9/19 23番 145.45
9/20 (牟岐) 161.20
9/21 (生見) 185.55
9/22 (佐喜浜) 204.15
6/23 24番 222.05
9/24 25-26 232.35
9/25 27番 259.85
9/26 (赤野甲) 279.90
9/27 28番 297.35
9/28 29-31 326.45
 
最初は札所と札所の間も近く、楽しく歩いて行った。
 
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しかし焼山はほんとうに辛くて、もう中止して帰ろうかと思ったものの、山の中からワープして帰る方法はないので何とか歩ききった。焼山路の入口には
 
《健脚5時間・平均6時間・弱足8時間》
 
と書いてあったが、アリスは実際には途中の休憩も入れて10時間掛かってしまった。念のためと思い朝5時に出たから良かった。最後の方は低血糖になり、非常用に持って来ていたチョコレートもブドウ糖も食べ尽くして、フラフラになりながら、焼山寺に辿り着いた。お寺の人がおにぎりを恵んでくれて、それで随分落ち着いた。
 
しかし焼山を越えたことで自信がつき、お鶴も大龍も何とか歩ききることができた。そして9/19日には讃岐路最後の札所23番・薬王寺に辿り着く。
 
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ここで帰ることも考えたのだが(実際彼氏のお父さんも1年目は阿波だけでいいかもと言っていた)、ここまで歩いて来て、自分は結構いけるという自信がついてきた。それで当初の予定通り、高知市まで行くことにした。
 

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薬王寺(日和佐)と次の札所である、室戸岬そばの最御崎寺(ほつみさきじ)の間は75kmもあり、普通の人は3日掛けて歩くらしいが、アリスは自分は普通のお遍路に比べるとかなり遅いというのを自覚していたので4日掛けて歩こうと思っていた。
 
日和佐(薬王寺)16km 牟岐 24km 生見 19km 佐喜浜 18km 室戸岬(最御崎寺)
 
9/20 日和佐から牟岐(むぎ)までは短く、牟岐から生見までが少し距離があるのだが、ここは牟岐より先に適当な宿泊できそうな集落がないのでしかたない。アリスは来年までには30km/日くらい歩けるようになっておきたいなと思った。
 
日和佐にはお店などもあるので、ここで非常用のガーナチョコ・カロリーメイトをたくさん買い、装備も確認して出発する。初日は距離も短いのでチョコも1つ消費しただけで4時間ほどで到着することができた。牟岐は大きな町で、ホテルに泊まることができたので、シャワーで汗を流し、バスタブにお湯を溜めて身体をお湯に沈めると、本当に疲れが取れていく気がした。
 
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やはり9/11に霊山寺を出て以来、なかなかホテルが無く、アリスは入浴がままならない状況で歩いて来た。ウェットシートで身体を拭けば汗はぬぐえるものの、やはり疲れが充分には取れない感じである。
 
それでこの日はちゃんと入浴できたことで、ぐっすり眠るこどできた。
 

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そして、あまりにも熟睡してしまったので、翌日(9/21)は昼近くまで寝ていて、11時すぎ、ホテルのフロントから「宿泊延長なさいますか?」と電話が掛かってきて、飛び起きた。
 
「すみません。チェックアウトします」
と返事して、急いで荷物をまとめる。そして部屋を出てフロントで精算する。
 
本来は10時を過ぎたら、レイトチェックアウト料金を取られる所なのだが、フロントの人は「このくらいいいですよ」と言って、追加料金は請求されなかった。1階の食堂でランチを食べてから12時すぎに出発した。
 
雨が降りそうな気配だったが、折りたたみ傘を頭陀袋(ずだぶくろ)に入れているから平気と思った。
 
それで歩いて行くが今日は24kmもあるので時間が掛かるし辛い。アリスの平均歩行速度は4km/hくらいである。それに30分歩いたら休憩してカロリーメイトをたべてお茶も飲むようにしていた。
 
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お遍路の行程では実はトイレにも困る。男の人なら、その辺でしちゃうのだろうが、女はそういう訳にもいかない。トイレが借りられそうな所があったら確実に行っておくが、時には結構つらい時もあった。
 
(千里や早百合などは汗で出てしまうので、途中でトイレに寄る必要はほとんど無いのだが、アリスはペースが遅いので、汗の量も少なく、トイレに行かざるを得なくなるのである)
 

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牟岐を出て3時間ほど歩き、15時をすぎた頃、雨が当たり始めた。
 
アリスは最初は気にせずそのまま歩いていたが、結構落ちてくるので、傘を差そうと思った。
 
それでいったん立ち止まり、頭陀袋から傘を取り出す。
 
。。。。つもりだったのだが、傘が見当たらない!?
 
嘘?なんで?
 
と考える。
 
あ・・・・
 
傘は・・・もしかしたら朝から使うかもと思い、頭陀袋から出してベッドのヘッドボードの所に置いた気がする。
 
そして急いで出たので、忘れてきたのか!
 

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どうしよう?と思うが、無いものは仕方ない。
 
アリスはできるだけ早く今日の予定地の生見(いくみ)に辿り着こうと、歩くペースをあげた。せめてもの雨避けに、頭にタオルをかぶった。
 

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雨脚は次第に強くなってきた。16時頃には既にアリスはもうずぶ濡れの状態になったが、本来のペーより速く歩いているので、身体も熱を帯び、それで何とかなっていた。
 
しかし17時頃になると、雨も強くなり、身体も冷えてきた。自分でもやばいなと思うが、立ち止まっても仕方ない。身体はきついが歩くしかない。アリスは次第に頭の中が空白になり、全神経を歩くことだけに集中した。
 
そんな状態で、もうどのくらい歩いているか分からない状態のまま歩いていた時、やがて集落が見えてくる。
 
生見!
 
助かった!と思うと、どっと疲れが出てくる。それでも頑張って、この集落にあるはずの民宿に向かう。スマホでナビしながら民宿前まで辿り着いた時、アリスは涙が出て来た。
 
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良かったぁ!生きて辿り着けたよ。
 

玄関の戸を開けて中に入る、
 
「いらっしゃい」
と40代くらいの女将(おかみ)さんが声を掛ける。
 
「すみません、部屋は空いてますか?」
 
「ええ。ちょうど残り1つでした」
 
良かったぁ!!
 
「でもあなたずぶ濡れ。お部屋に案内する前にお風呂に入った方がいいわ」
と女将さんが言う。
 
それは助かると思ったが、アリスはここで重大な問題に気づく。
 
「もしかしてお風呂は共同浴場ですかね?」
「ええ。うちは古い民宿なので」
 
「共同のお風呂って男女別ですよね?」
「まあ普通そうですね。男の方と女の人を一緒に入れる訳にはいきませんし」
と女将は戸惑うような顔で言う。
 
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今時混浴の所とかは無いだろう。
 
「どうしよう?」
とアリスが悩むように言った時、先に入っていたお客さんだろうか、22-23歳くらいの長身女性が
 
「今から他の客はみんな食事なんですよ。あなた、その間に入っちゃったら?」
と言った。
 
「あ・・・それならいいかな?」
とアリスも言う。
 
「今、女湯は空いてますよね?」
と長身女性が女将さんに訊く。
 
「女性のお客様は、今日はあなたがたおふたりだけですから」
と女将さん。
 
つまりこの女性と自分の2人だけらしい。そしてこの女性は今から食事をする。それなら今お風呂に入れば誰にも裸を見られなくて済む!!
 
「だったら、泊めて下さい」
とアリスは言った。
 
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それで宿泊手続きをした。宿泊料金があまりに安くてびっくりする。いいの?こんなに安くて。
 
ところでアリスは荷物が全部濡れてしまったので(無事なのはジップロックに入れていた納経帳とお遍路地図だけ)、着替えが無いと言ったら、緊急用の下着を用意しているからお貸ししますよということだった。それを借りて、今夜は浴衣を着ていればいい。濡れてしまった服や着替えは洗濯してあげますよということだったので、それもお願いした。財布も濡れてしまっていたのだが、お札はアイロンかけてあげますよと言われたので、信用できそうな女将さんだし、それもお願いした。
 
そいうわけで、アリスは借りた下着と旅館の浴衣を持ち案内されてお風呂場に行ったのである。
 
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そして女湯に入る。(どきどき)
 

アリスは実は女湯に入るのはこれがまだ2度目である。
 
以前1度だけ、長野の田舎の温泉宿で、深夜、女湯に入ったことがある。こんな夜中なら誰もこないだろうと思い、女湯使用を決行したのだが、それ以来である。
 
濡れた服はこれに入れてくださいね、と言われてプラスチック製のたらいを渡されたので、脱いだ服はそこに入れる。そして裸になって浴室に移動した。
 
小さい民宿なだけにお風呂場は狭い。洗い場も3つしかない。しかし問題無い。
 
まずは湯船のお湯を身体に掛ける。
 
熱い!でも生き返るようだ。
 
それで少し身体が温まった所で洗い場で身体を洗った。シャンプーをして流した後、コンディショナーを掛け、そのままにして顔を手に石鹸をつけて洗い、ついでに耳の後ろ、首、更に胸まで洗う。この胸を大きくしたいなあと思う。顔と胸の石鹸を洗い流した後、お股を洗う。身体が冷えているので、おちんちんが物凄く小さくなっている。実は毛の中に隠れてしまう感じで、これなら人が見ても、お股に何も無いように見えるかもという気もした。このまま小さくなって消えてしまえばいいのにと思う。
 
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この夜はあまりにも小さくなっていて“剥く”のが困難だったので、中まで洗うのは諦めた。指もかじかんでいて、自由に動かないし。
 
その後、足を洗い、特に足の指の間を洗うと、凄く気持ちいい。
 
最後に髪のコンディショナーを洗い流し、身体全体にシャワーを掛けてから浴槽に浸かった。ほんとに今日はどうなることかと思ったけど、何とかなったなあと思った。
 
そのまま10分くらい浸かっていたら、脱衣室に誰か入ってきた音がするので焦る。更にその人物は浴室との間の引き戸も開けちゃった。
 
キャーと悲鳴をあげたくなる気分だったが、女将さんである。
 
「この濡れている服、洗濯機に入れますね」
「あ、はい。お願いします」
 
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それで女将さんは出て行った。
 
良かったぁ!浴槽に入っていて。身体を洗っている最中だったら、男みたいな裸を見られていたところだった。
 

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