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■春変(13)
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(C)Eriko Kawaguchi 2020-06-07
良は、渚と途中でカフェに移動して2時間くらい話し込んだので、別れたのはもう18時すぎである。夕方は混むので、良は伊予小松駅周辺で少し時間を潰し、20時過ぎに出発した。R11を40kmほど走り、松山市に到着する。
意外に大きな町なので驚く。
田舎の温泉と思っていたのに!
急に不安になるが、すいている時間帯を狙って入ればいいよと渚さんも言ってたし、と思い直す。
道後温泉本館に泊まろうと思っていたのだが、本館では宿泊はできないし、現在は工事中で、お風呂は使えるものの休憩室も使えないという。あ、そういえば工事中という話だった。
「じゃどこか旅館を探さないといけないですね」
と良が言うと
「あなた、ご予算はどのくらい?」
と訊かれた。
「相部屋は困りますが、ひとりで泊まれるなら、できるだけ安い所がいいです」
と良は言う。
「だったら、ここにお行きなさいよ。連絡しておいてあげるから」
と言うので、お礼を言って、紹介してもらって旅館に行き、泊まった。それでお風呂だけ道後温泉本館に来ることにした。
良はその旅館で夕食を頂いた後で、一息ついたらお風呂に行こうと思っていたのだが・・・
目が覚めたら、もう朝だった!!
仕方ないので、(10/7)朝御飯を食べてから行くことにする。旅館で朝御飯が出たので、それを食べ、念のためテープタックをやり直してから、お風呂道具と免許証・財布の入ったバッグを持ち、道後温泉本館に行った。札場で浴券を買い、何の問題も無く、右手の女湯脱衣場に入る。これが10時頃であった。
真新しい壁が左手にある。これが新設された壁で、これで元の男湯脱衣室を左右に区切ったのであろう。脱衣場には、80歳くらいの女性(女湯脱衣場だから女性のはず)が2人いて、何か話しているだけだった。良は彼女たちに背を向けて服を脱ぎ、タオルで身体の前面を隠して、浴室に進んだ。お股はタックしているから、付いてないように見えるはずと思う。
浴室にも客は5人くらいしかいない。見た感じでは40-50代の人が2人と60代の人3人かなと思った。
浴槽の中には大きな円柱形の“湯釜”があるが、そこには、それを見るのが目的のひとつだった、恵比寿・大黒の像は無い。でも工事中なら仕方ないかと思った。
身体を洗う。結構汗掻いてるなとと思う。髪を洗い、顔を洗い、今のところはまだ平らな胸を洗い、タック中のお股も洗う。良はこのタックして何も無くなっているお股が好きだ。最初やってみた時は、こんな画期的な方法があったなんてと感動した。もう女の子になっちゃった気分であった。ただ、タックの問題点は1〜2時間しかもたないことだ(と良はこの時期は思っていた)。
足まで洗ってから、身体全体にお湯を掛け、それから浴槽に入った。この時点で良は10分くらい浸かったらあがるつもりだった。どっちみちここは入浴は1時間以内ということになっている。
ところが、である。
そろそろあがろうかなと思った途端、団体さんが到着してしまったのである!
大勢入ってきて、洗い場が空くのを立って待っている人までいるので、良は上がるに上がれなくなってしまった。お股はタックで隠しているからいいけど、何も無い胸を見られたら、物凄くやばい。通報されて警察のお世話になるのは必至かもと思った。
それでしかたなく、良はこの団体さんが去るまで、浴槽の中で待っていようと思ったのであった。
良は結局その後、3時間くらい浴槽からあがることができなかった。
もっともずっと入っていると、さすがに熱中症か脱水症になりそうなので、人が少し減った時に浴槽からあがり、蛇口のお湯を飲んで水分補給した。しかし脱衣室まで行く勇気が無い。浴室の人数が少なくても脱衣場は人が多いので、胸が無いのを見られそうである。
更に途中でタックの留めているテープまではがれてしまい、現在はあれやこれをお股で挟んで隠している。今この状態を見られたらまるで女湯に侵入した痴漢にしか見えないだろう。
それで体力的にも、さすがにそろそろダメ。逮捕覚悟であがろうかと思い始めた頃、23-24歳かなという感じの女性がこちらに近寄って来た。良は『バレた?』と思ってギクッとする。
ところが彼女は意外なことを言った。
「大丈夫だよ。ちゃんと分かっているから」
良が戸惑ったような顔をすると彼女は更に言った。
「私も元は男の子だったんだよ」
「嘘!?」
「もう手術も終わってから10年近くたつかな」
「すごーい」
性転換してから10年って、この人、23-24歳にしか見えないんだけど、まさか中学生で性転換したとか?外国とか行くと、中学生に手術してくれる所もあるんだろうか??と良は疑問を感じた。
「私は千里。Thousand miles.君は?」
"Thousand miles"という英語の発音がきれいだと思った。
「私は星良(セーラ)です。star is good かな」
良はすぐあがるつもりだったが、団体さんなどが入ってきて、あがるにあがれなくなってしまったことを千里さんに説明した。千里さんは
「私と一緒にあがればいいよ」
と言ってくれて、良の身体を隠すようにして一緒にあがってくれた。そして脱衣場でも良が身体を拭いて下着をつけるまでの間、そばに居て他の客の視線から良を遮ってくれた。
「助かりました」
一緒に道後温泉本館を出る。時間超過していること(本来は1時間以内に出なければならない)を注意されたが、
「この子、中で気分が悪くなってしばらく休んでいたらしいんですよ。ちょうど知り合いの私が来たので、それで一緒に出ることにしたんです」
と千里さんは説明してくれて、4時間分の超過料金まで払ってくれた。
「すみません」
「まあ若い内は先輩のお世話になるといいね。君もその内、後輩の面倒を見てあげることになる」
と千里さん。
同じようなことを渚さんにも言われたなと思った。
取り敢えず、道後温泉本館を出たあと、道の途中で話す。
「あれが付いてて、胸が無いのに女湯に入るのはさすがに無謀だな」
と注意される。
「お股はタックしてたんですが、外れてしまって」
「何の接着剤?まさか木工用ボンドとかじゃないよね?」
「あ、いえ、荷造り用の透明テープだったのですが」
「テープなら外れるよ!」
「やはりそういうものですか?」
「防水テープなら、やや長持ちするけどね。それでも温泉成分で外れやすい。お風呂に入るなら最低接着剤で留めなきゃ」
「あ、それやったことないです」
「どっちみち、バストは何らかの方法で大きくしてから行くべきだね。まだ男に戻ることが可能な人は女湯とか女性更衣室に入ってはいけないと私は思う。最低男性能力が無くなり、胸もある程度膨らんでいて“後戻りできない身体”であることが最低条件。できたら睾丸も除去済みであること」
と千里さんは厳しい顔で言った。
「女性ホルモンを飲みたいのですが、なかなか入手方法が分からなくて」
「教えてあげようか?」
「あ、でも別の知り合いに今度教えてあげるよと言われました」
「しゃ、その人経由でも分からなかったら連絡して」
と言って、メールアドレスを教えてもらった。でもガラケーだ!今どき珍しいなと思った。
「だけど取り敢えず接着剤タックは教えてあげるよ。君の旅館に一緒に行こうか」
「お願いします!」
コンビニに寄って、千里さんは、瞬間接着剤と、ゴム手袋を買った。更にアイスを2個買う。
「アイスもおごってあげるね」
「ありがとうございます!」
「ちなみに毛は剃ってるよね?」
「あそこの毛ですか?」
「もちろん」
「短く切りはしたのですが。剃るものなんですか?」
「切っただけじゃダメだよ。剃らなきゃテープタックにしろ、接着剤タックにしろ、留められる訳が無い。すぐ外れちゃうよ」
「それで私の、すぐ外れていたのか!」
そこで千里さんは、女性用カミソリとシェービングフォーム、更に念のためと言ってハサミ、更に新聞を1部買った。
それで旅館に戻ると、アイスを食べて一息ついた所で、
「それではお嬢ちゃん。楽しいことを始めようか。お股を開きたまえ」
などと言う。
「それ凄くHなことされるみたいなんですけど」
「まあちょっと性転換するだけなんだけどね」
「ちょっとでできたらいいですね」
千里さんはやはり毛が長すぎると指摘した。ハサミででもう少し切れる筈というので、新聞紙の上に座り、良は自分でハサミを使い切れる所まで切って行く。このために新聞紙が必要だったのである。レジャーシートとかでもいいよと千里さんは言っていた。
その上でシェービングフォームを付けてカミソリで剃るが、玉袋の上はうっかり皮膚まで切ってしまいそうだ。実際何ヶ所か切っちゃって血が出る。そこを千里さんは持っていたオキシドールと脱脂綿で拭いて消毒してくれた。
しかし毛がきれいに無くなったお股は小学生みたいだ。良は懐かしい感じがした。
「あと毛を切った後は、切った毛が散りばりやすいから、ガムテープできれいに掃除する必要がある。でもセーラちゃんが持っている荷造りテープでも掃除できるね」
「なるほど、そこで荷造りテープが役に立つ訳ですか」
「理想を言うと、紙製のガムテープがいい。手で簡単に切れるから」
「なるほどー」
血が止まるのを待ってから次の作業に行く。
まずは睾丸を体内に押し込むよう言われる。これは良もよくやっているのですぐできた。それから、千里さんが(ゴム手袋をつけた手で)良の棒の先をかなり強く後方に引っ張る。その先を押さえておくように言われる。
「性的に興奮しないでね。興奮したらできなくなるから。何なら先に1発抜く?うしろ向いててあげるから」
「大丈夫です。気持ちを抑えておきます。オナニーはしないようにしています」
「偉い偉い」
良は中学2年の時に自分は女の子なのだから、男の子の機能は使わないと決め、もう5年ほどオナ禁を続けている。最初の1年くらいは辛かったが、慣れてしまうと、しなくても平気になった。オナニーしないことで男性ホルモンの分泌が抑えられ、結果的に我慢できる気もした。
それで良が棒の先を後ろの方に引っ張ったままにしている状態で、千里さんは、中身が無く空になった玉袋で棒を左右から包み込むようにして、接着剤で留めていく。その作業が手際よい。千里さんが元男の子って嘘では?という気さえしたのだが、こういうことができるということは本当に元男の娘だったのだろう。女の子はタックする必要が無い。
「すごーい」
と良は声を挙げる。
「この線が初心者の内はなかなかまっすぐにならないのよね」
と千里さんは言っているが、千里さんが接着剤で留めていく“継ぎ目”は、きれいな直線になっている。
「もう棒の端は離していいから、これが左右に分離しないようにしばらく押さえておいて」
「はい」
それで良は接着された玉袋が左右に分かれてしまわないよう、しっかり指で押さえておいた。
「だいたい5分もすればくっついて離れなくなるから」
「あのぉ、袋を接着した時、ついでに棒の皮膚も一部くっついちゃった気がするんですが」
「それは避けられないね。棒の上にビニールを置いてから接着すれば棒にはつかないけど、その場合そのビニールが取り外せなくなるから、おしっこした時にビニールが濡れて非衛生的だよ」
「ああ、それは困りますね。これ、このままおしっこできるんですよね?」
「全然問題無い。ただどうしても濡れて接着が弱くなるから、適当に補修しておいてね」
「はい」
「あと接着剤が棒の皮膚にもついている状態で、棒の中身が巨大化すると痛いから、巨大化させないようにして」
「それは我慢できるから大丈夫です」
「よしよし」
それで5分ほどした所で「そろそろいいでしょう」と言われて手を離す。
継ぎ目が美しい。まるで本物の女の子のようだ。良はあまりの美しさに、感動して声も出なかった。
「瞬間接着剤は強いから、お風呂くらいでは外れないよ。でもお風呂は、おっぱいがもう少しできるまでは控えよう」
「そうします。できたら、もう1回道後温泉に入っておきたかったけど」
「付いてってあげようか?」
「お願いします!」
それで良は千里さんと2人で道後温泉本館に行った。
「あら?あなたは」
「先程はご迷惑おかけしました。もう体調が回復したので、あらためて入浴していいですか?」
「まあ付き添いがいるならいいかな」
と言って、受付の人は通してくれた。今回は良が2人分払った。
むろん一緒に女湯に入る!
それであらためてのんびりと入浴したが、接着剤タックは、身体を洗っても浴槽に浸かっても、ビクともしなかった。これすごーいと思った。
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