広告:オトコの娘コミックアンソロジー~天真爛漫編~ (おと★娘シリーズ8)
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■春変(4)

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今回の千里1の一連の“犠牲者”の中で、最も早く四国入りしたのは高浜アリス(志浦博美)である。
 
彼女は、金沢に出てイオン示野に居た時、偶然金沢ドイル(青葉)と出会い、相談したいことがあると言ったら快く応じてくれた(博美的解釈)。
 
心の中の様々なわだかまりを解消してもらった上で、お遍路を勧められたが、歩くとしたら少し身体を鍛えなきゃと思い、最初は5kmの歩行から始めた。
 
自分がわずか5kmの歩行でクタクタになることに愕然とする。
 
やはり高校出て以降運動不足だよなと思い、毎日5kmから7-8kmの歩行を自分に課した。また歩くのもいい靴を履いた方がいいと思い、金沢大桑町のスポーツ用品店で1万円のアディダス製ウォーキングシューズを買ったら、歩くのが凄く楽でびっくりした。これなら結構歩けるかもと思い、毎日練習を続ける。すると8月中旬以降は毎日10km歩けるようになった。9月頭には20km歩いてみたが、結構ちゃんと歩けた。
 
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それにしても1200km歩くというのは大変なことだと思った。自分の体力では毎日20km歩いても60日、たぶん難所で遅くなることを考えると80日くらいかかってしまう。それで亡くなった彼氏のご両親とも話して、300kmずつ4年掛けて四国を一周しようということにした。
 
そこで、今年の秋には1番札所霊山寺(鳴門市)から、31番札所竹林寺(高知市)までの330kmを歩くことにしたのである。博美が彼の御両親と話し合って計画した日程ではこれを18-20日で歩く。日程に幅を持たせているのは、疲れたら休もうというのと、雨の日は休もうということで、天気次第では20日よりもっと長くかかるかも知れない。また辛かったら無理せず、途中で打ち切って帰ろうということを御両親とも約束した。
 
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それでアリスは(2019年)9月10日(火)に志賀町を出発した。
 
彼のお父さんに車で金沢駅まで送ってもらいサンダーバードに乗った。自分の車で行くと駐車代が恐ろしいことになる。この日出発したのは、実はお父さんが当日、金沢まで出る用事があったので、それに便乗させてもらったのである。
 
9/10 金沢10:56-13:09京都13:25-14:32岡山14:42-15:36高松16:12-17:16徳島
 
この日は徳島駅近くのホテルに泊まり、翌日からお遍路の行程を歩くことにする。
 
ところで。
 
アリスは実は・・・女湯に入れない身体である!
 
といって、男湯に入るのは自分のアイデンティティを自ら否定するようで嫌だ。それでできるだけ旅館を避けて部屋に風呂が付いているホテルに泊まるつもりでいる。どうしても大浴場しか無い旅館に泊まったら、お風呂には行かずに、部屋で身体をウェットシートで拭こうと思っていた。
 
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「やはり、最低おっぱいは大きくした方がいいよなあ。でも豊胸手術代も高いし」
などとアリスは悩んでいた。
 

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9月15日(日)の朝、ロイヤルホストの夜勤を終えた芳野早百合は
「よし行ってくるか」
 
と自分に声を掛け、博多駅に向かった。新幹線に乗って新神戸に向かう。そして新幹線の中で夜勤疲れから来る睡魔に身を任せながら、これまでの旅路を思い起こしていた。
 
1年目(2016)は讃岐路を歩いたので、66番札所の雲辺寺から88番の大窪寺まで歩いた。この時は、博多から下記の連絡で雲辺寺まで行った。
 
博多12:08-13:41福山/福山駅前14:00-15:24今治駅前/今治16:06-17:09観音寺(泊)
観音寺駅前からタクシー(20分)でロープーウェーの山麓駅7:00-7:07山頂駅
 
(山麓駅までの交通機関が存在しない。1日1本(観音寺駅14:53-15:40内野々集落センター)のバスに乗り、そこから山道を30分歩くのが山麓駅に至る唯一の交通機関利用法だが全く実用的でない。タクシーは料金調べサイトの表示では3200円。ロープーウェーは片道1200円・往復2200円。つまり観光バスやマイカーを使わずに参拝したい場合、往復に最低8600円ほどかかることになる。なおこの道は大きな車では通行にかなり注意が必要らしい)
 
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雲辺寺は隔絶された山の中にあり、早百合はいきなり険しい山道の洗礼を受けて、ここから歩き始めたことを後悔した。しかし何とか予定より1日遅れで88番大窪寺までを歩き、下記のルートで帰還した。
 
大窪寺前15:47-16:48オレンジタウン駅16:58-17:28高松18:10-19:03岡山20:05-21:51博多
 
(↑の時刻は2016.3の時刻表による)
 
大窪寺からJRオレンジタウン駅までは“さぬき市コミュニティバス”に乗るのだが、これが1日に3本しか運行されていないので注意が必要である。有名なお寺なのに、きっとみんな観光バスか自家用車なのだろう。
 
この年はしまなみ海道で四国に渡り、瀬戸大橋で本州に戻ったが、しまなみ海道の景色が本当に美しくて感動した。
 
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2年目(2017年)は伊予路に行くので、40番観自在寺から65番三角寺までを歩こうと思ったのだが、ここで、こういう歩き方をしては、県境のルートを飛ばしてしまうことに気づく。そこで、この年は土佐路最後の39番延光寺から、昨年の出発点である雲辺寺までを歩くことにした。この年はこのルートで四国へ渡った。
 
博多8:22(ソニック7)10:44大分10:48-11:14幸崎/幸崎駅11:28-11:47佐賀関
佐賀関港13:00(国道九四フェリー)14:10三崎港14:40-15:52八幡浜駅
八幡浜16:15-16:50宇和島/宇和島駅17:15-19:07宿毛駅(泊)
宿毛7:15-7:27平田(徒歩2.5km)延光寺
 
国道九四フェリーは国道197号の海上区間を走るフェリーである。国道197号は高知市を出発して四国西部を横断し、細長い佐多岬半島を西行、三崎港から海路を大分県の佐賀関まで渡り、大分市に至る。海上ルートを越える国道の中では比較的容易に踏破できるので、これを踏破したことのある人は割と多いと思う。早百合も、八幡浜まで行くフェリーに乗ることも考えたのだが、どうせなら国道フェリーに乗りたいという気持ちがあり(早百合はありし頃の壱岐対馬国道フェリーにも乗っている)、三崎港までのフェリーを使うことにした。
 
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八幡浜から平田駅までは、乗換案内などではいったん予土線で若井(または窪川)まで行き、中村線・宿毛線で平田まで戻ってくるルートを提示するが、それだと遠回りなので、早百合は宇和島から直接バスで宿毛へ移動した。ここは本来、宿毛と宇和島が鉄道でつながれる予定だったルートである。そのため鉄道としては
 
宇和島(未成区間)宿毛(宿毛線)中村(中村線)若井(土讃線)高知
 
のようになっていて、高知から若井・中村に至る列車が下りであるのに対して、宿毛線では宿毛から中村への列車が下りである。実際には建築されなかった宇和島からの鉄道を含めて中村に至るルートが下りとみなされているためである。結果的に中村駅からはどちらに向かう列車も上りである。
 
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この年はこの延光寺から雲辺寺まで歩いたが、昨年の倍の距離なので大変だった。雨が降って休んだ日もあったので予定より3日も遅れた。
 
散々苦労して雲辺寺で今年は、いったん打ち終える。それで昨年のルートで観音寺駅まで戻ろうとして、ロープーウェイで山麓駅まで降り、タクシーを呼ぼうかと思ったら、観光客と思われる60歳くらいのご夫婦が「もし良かったら乗って行かれません?」と言って自家用車(日産リーフ)に乗せてくれた。
 
「私たくさん汗掻いているから、座席が汚れますよ」
「全然平気です。むしろ孫がアイスとか落として結構汚れているかも知れないけどごめんなさいね」
「いえ、それこそ気になりません」
「これも御接待で」
「ありがとうございます。南無大師遍照金剛」
と言って、納札を1枚渡して、駅前まで乗せてもらった。
 
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観音寺市内で1泊するが、翌日帰る前に銭形を見にいった。早百合は近くにあり、昨年もお参りした神恵院・観音寺に再度お参りした上で、銭形の展望台まで行ったが、ここで昨日自家用車に乗せてくれたご夫婦が、今日はガイドさんに連れられてきていた。
 
「昨日はお世話になりました」
 
なんでも車はうっかり昨夜充電し忘れていたので、午前中近くの公共施設で充電させてもらい、その間、観光タクシーに乗って観音寺市内を回っているのだということだった。
 
「電気自動車も大変ですね!」
 
観光タクシーの運転手さんは40歳前後に見えるが、すごく優しい雰囲気だし、知識が豊富だ。この銭形が作られた時の背景とか現在のメンテ体制についても詳しく説明してくれるので、早百合も感心しながら解説を聞いていた。神崎という名札をつけている。ご夫婦の奥さんのほうが「寛永通宝って今でいうといくらくらいの価値なんですか?」と尋ねると
 
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「江戸時代の立ち食いそばが“二八そば”と言われて2×8=16文(もん)ですから、現代の300円くらいと考えると1文20円くらいになりますね。1両が10万円くらいとも言われますが、4000文で1両なのでそこから計算すると1文25円くらい。まあそのくらいの価値ですね」
と詳しく説明してくれた。ほんとにこの人色々なものに詳しいみたい。
 
「まあ1枚20-30円だからいいけど、200-300円くらいだとあまり気軽に銭形平次も投げることができませんよね」
 
「そうそう。銭を投げ尽くして貧乏になって銭無平次、なんてギャグもありました。でも大川橋蔵、美しかったですね」
とガイドさんは言っているので、ひょっとしたらこの人50代かもという気もした。
 
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「物凄い美人でしたね」
とご夫婦の夫の方も言う。
 
「美人って・・・銭形平次役なら男の役者さんですよね?」
と早百合が訊くと
 
「女形(おやま)だったんですよ」
と教えてくれた。
 
「それで!」
「30代の頃までなら、もし女装してその辺を歩いていたら、誰も男だなんて思わなかったと思いますよ」
 
へー。そういう人の若い頃を見たかったものだと早百合は思った。
 
「新吾十番勝負なんかはたまにテレビで再放映されることありますが、凄い美形ですね」
と運転手さんも言っている。
 
うーん。マジで見てみたい。ツタヤに無いかな。
 

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最後に運転手さんがご夫婦と早百合が並んだ所を写真に撮ってくれた。その場でこちらのスマホにも転送してもらう。ご夫婦はこの後、道後温泉に行くという話であった。早百合は今回は道の途中で道後温泉に寄っていた。
 
ご夫婦と別れた後は、この年は、しまなみルート経由で帰った。
 
観音寺12:37-13:39今治/今治駅前14:15-14:48大三島BS15:15-15:27大山祇神社
大山祇神社(車で20分)盛港18:40-19:05忠海港/忠海19:57-21:07広21:27-22:26広島
広島22:32-23:52博多
 
(↑の時刻は2017.5の時刻表による)
 
途中で、日本全国山祇神社の総本社である大山祇神社に寄っている。その後、盛港までバスで行って忠海へのフェリーに乗ろうと思ったら盛港に行くバスは無いと聞く。それでタクシーに乗ろうかと思ったら、ちょうど大型バイクで通りかかった30代の女性(渚さんと言った)が盛港まで乗せてくれた。
 
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「御接待・御接待」
「ありがとうございます。南無大師遍照金剛」
と言って、1枚納札を渡した。
 
「歩いてお遍路してるのか。偉いなあ。私もしてみたいけど、さすがに休みが取れない」
「私、大学生だからできているのかも。歩く時間が取れないならバイクでとかどうですか?」
「ああ。それでもいいかな。バイクなら人間の10倍の速度として5日で回れないかな」
「移動は10倍速でも参拝時間は変わらないから、バイクなら10日くらいみたいですよ。道後温泉で会った女性がそんなことを言ってました」
「ああ、道後温泉も行きたい!」
 
そんなことを言って渚さんとは別れた。
 
忠海(ただのうみ)に着いた後は、ふつうの人なら呉線上りに乗って三島に行き新幹線で帰ると思うのだが、早百合は今日中に辿り着けばいいし、というので長く列車に乗っていられる下りルートを選択して広島に出てから博多に帰還した。
 
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(忠海から三島へは3駅、広島までは27駅)
 
 
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春変(4)

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