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■竹取物語2022(23)

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語り手「そうこうしている内に、宵の頃もすぎてやがて子の刻(深夜0時)になると、翁の家周辺が昼間以上に明るくなりました。それはまるで満月を10個並べたような明るさで(*185)、隣の人の毛穴も見えるほどでした」
 
★音楽:ラピスラズリ『月よりの使者』
 
「そして月から雲に乗って100人ほどの人々降りてきました。月の人々は高さ2-5m (*186) ほどの高さの空中に雲に乗ったまま並びました。それを見ると、武人たちはみんな魂を抜かれたように何もできなくなりました。必死に気を振り絞って弓矢を取ろうとする者もありましたが、手に取ることはできませんでした。一人、帝の護衛をいつも務めている赤石という者(新田金鯱)が頑張って弓矢を射ましたが、矢は関係ない方角に飛んで行きました」
 
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(*185) 無粋なツッコミだが、満月を10個並べても昼間の明るさには遠く及ばない!満月の実視等級は-12.74、太陽の実視等級は-26.74であってその差は14もある。等級は5等級差があると100倍である。つまり、10014/5= 398107 つまり40万倍の明るさがある。昔の人はさすがにこういうスケールが計算できなかったろう。
 
それでも多少とも算術的感覚のある人なら満月の10倍が昼間には遠く及ばないというのは感じ取ったと思う。つまりこの作者は多分算術には強くなかった!
 
(*186) 原作では「地より五尺ばかりあがりたる程に立ち連ねたり」とあり、五尺なら150cmであるが、このドラマでは一番低くまで降りてきた人が2mほどでそこから階段状に5mくらいの高さまで展開したことにした。これはひとつは当時と今では平均身長が違うのもあるだろうが、150cmでは武人たちの頭とぶつかってしまうこと、それと階段状に並べないと周囲の家の屋根ともぶつかることを考慮した。繰り返しになるが作者は数字的なものの感覚がとてもアバウトである。
 
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月上女経は70尺(約200m)と書くが、そんなに高いと今度は見えない!
 

月の都の人たちは着ている服もたいそう立派なものでした。
 
その中の王と思われる人(non credit !!)が呼びかけます。
 
「造麿(みやつこまろ)出てきなさい」
 
月人の声は抑揚の無い平坦なものでした。年上なのか若いのか、男か女かさえ、よく分かりません。
 
竹取翁は月人が来るまでは、月の使いが来たら引っ掻いてやる、目を潰してやるなどと威勢良く言っていたのですが、月王に声を掛けられると抵抗する気力もなくなり、出て行って月王の前に伏しました。
 
月王は抑揚の無い平坦な声で言います。
「汝(なんじ)、幼稚な者よ。翁にいささかの功徳(くどく)があったので、少しお前を助けてやろうと、少しの時間、かぐや姫をそなたの所に遣わし、少しばかりの黄金も与えた。お前の生活も少しは楽になったであろう。かぐや姫は罪を犯したのでこのような卑しい世界に流したのだ。今はその刑期も終了した。めでたいことなのに泣いているとは何事だ。さっさとかぐや姫を出しなさい」
 
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翁は気を振り絞って言いました。
「少しの時間とはあんまりです。私はかぐや姫を20年以上育てて参りました。もしかして、別の所にお求めの別のかぐや姫がおられるのではないでしょうか。ここに居るかぐや姫は重い病気なので動かすことはできません」
 
(武人たちが動けなくなるほどの凄まじい威圧の中でこれだけ言い返せる翁の精神力はハンパではない)
 
すると月王は竹取翁には返事せず、かぐや姫に直接(抑揚の無い声で)呼びかけます。
 
「かぐや姫、このような汚らしい世界にずっと居てはいけない。帰る時である」
 
すると、家の雨戸・部屋部屋の戸や格子が、誰も触っていないのにどんどん開いていきます。媼に抱かれて座って居たかぐや姫は座ったまま媼の手を離れて空中を移動し、塗籠を出て家の外に出てしまいました。
 
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(この部分はワイヤーアクションである。かぐや姫を演じるアクアの身体を高強度ポリエチレン繊維“テクミロン”のロープで吊って、滑車で移動している。アクアはその間腹筋で頑張って座ったままの姿勢をキープしている)
 
媼はかぐや姫を押さえることができず泣いています。松・竹・柏はかぐや姫に飛び付いて押さえようとしたのですが、身体が動きませんでした。柏はかぐや姫に触ったものの、そこまででした。
 
唯一、福だけがかぐや姫に飛び付きましたが、空中を移動するかぐや姫に引っ張られる形になります。そして庭まで来た所で月人のひとりが彼の身体を掴むとポーンと遠くに放り投げてしまいました(飛んで行く所はCG:誰も彼を心配しない!)。
 
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かぐや姫は庭で地面に立ち上がると翁に言いました。
 
「私も月の世界に行きたくないのですが、行かざるを得ません。どうか私をお見送りして下さい」
 
「そんな悲しいことを言わないでくれ。あなたを諦めてお見送りなどできない。どうしても行くというのなら私も連れていってくれ」
 

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かぐや姫も涙を流し「文を書きます」と言って、翁に手紙を書きました。
 
「この世界に生まれた身であるなら、こんなに嘆かせることもなくずっとおそばにいることもできたでしょぅに。ほんとに申し訳無く思います。私の衣を脱いで置いていきます。それを私の形見にして下さい。月の出た晩は月を眺めて下さい。父上・母上を見捨てて帰ってしまう月から落ちてしまいそうな気分です」
 
ひとりの月人が天の羽衣の入った箱、ひとりの月人が不死の薬の入った箱を持ってきます。
「かぐや姫殿、この不死の薬をお飲みなさい。地上にいる間、随分汚い物を食べていたでしょうから、お口直しです」
 
かぐや姫はその薬を少しだけ舐めます。そして自分の服を脱いでその服と一緒に翁に不死の薬を渡そうとしましたが、月人はそれを許しませんでした(*189). 仕方ないので服だけ翁に渡します。
 
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もうひとりの月人が銀色の天羽衣を着せようとしますが、かぐや姫は
「少し待て」
と言って、帝への手紙を書きました。
 
「このようにたくさんの人を動員して、私が月に行くのを止めようとしてくださったこと、本当に感謝しております。しかしどうしても私がこれ以上地上に留まることが許されないのです。帝の傍で宮仕えもできなかったことも本当に申し訳ありません。どうか私の代わりに、藤原中納言の姫君を宮に召して下さい」
 
そして歌を添えます。
 
「今はとて天の羽衣着る折ぞ君を哀れと思ひいでける」(*187)
 
(*187) 別れの時なので、あなたのことが特に愛しく思える、というのもあるが、天羽衣を着てしまうと人を思う心も消えてしまうので、自分が人間的感情を持つことのできる最後にあなたのことを愛おしく思うという意味でもある。
 
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そして、かぐや姫はこの手紙と不死の薬を、頭中将(*188) を呼んで帝に託しました。月人が、かぐや姫から取って頭中将(薬王みなみ)に渡しました。(*189).
 
(かぐや姫が呼んだので頭中将だけ動けるようになったと思われる)
 
(*188) この軍勢を率いたのが少将の高野大国であったのに、ここで唐突に少将より上位の頭中将が出てくるのは不自然である。そもそも帝の愛嬪が奪われようとしている重大事態に少将程度が指揮官になるのかというのも不自然である。それで高野大国が少将とするのが中将の誤写で、この頭中将が高野大国であるという説もある。
 
(*189) 月人は、かぐや姫が翁に不死の薬を渡すのは止めたのに、帝には渡した。この対応の差は不明である。
 
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それで月人がかぐや姫に天羽衣を着せようとしますが、そこにいつもかぐや姫のいちばん近くで侍っていた女房の桃(川泉パフェ)が泣いてかぐや姫に飛び付きます。
 
(松や竹も、そして武人たちでさえ、みんな動けない状態になっている中で、かぐや姫に飛び付くことができた桃はただものではない。動けた理由は後述)
 
桃は泣きながら言いました。
 
「かぐや姫様、行かないで下さい。私は姫様に11年仕えて来ました。姫様が結婚して子供を産んでその子が成長して行くのを見守っていくつもりでいました。こんな形で突然お別れするなんて嫌です。私も月へ連れてって下さい。それがどうしてもできないというのであれば、今すぐここで私を殺して下さい」
 
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かぐや姫は泣いて抱き付いている桃の頭を優しく撫でました。そして言いました。
 
「桃、分からないことを言うのでない。後のことを誰かに頼むつもりで、その時間が無かった。藤と桐には、父と母の世話を頼みます。女童(めのわらわ)の桜と橘はそろそろ女房になるべき年ですよね。草笛皇女(くさぶえのひめみこ)様に預かっていただけないか訊いてみて。紫は頭がいいから、残された使用人の再編作業を藤と2人でお願いしたいと思います。そしてあなたには頼みたいことがあります。この手紙を1年後の8月15日に読んで下さい」
 
と言って、かぐや姫は文を桃に渡しました。
 

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語り手「かぐや姫が桃に手紙を渡したところで月人はかぐや姫に銀色の天の羽衣を着せてしまったので、かぐや姫は人の心を思う気持ちも、地上での23年間の記憶も消えてしまいました」
 
ここでアクアの表情がそれまで涙を流していたのが突然無表情になる。
 
(「今の変化すげー」と視聴者の声。「こんなことができる役者はそうそう居ない。さすがアクア」という評が高かった。“たまたま売れてるアイドル”程度に思っていた人たちが随分アクアに対する評価を変えた瞬間だった)
 
そして桃を突き飛ばす!と、空中に浮き上がり(*190)、さっさと月人が用意した車(*191) に乗り、100人の月人たちを連れて月へ帰って行ってしまいました(*193).
 

 
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★音楽:高崎ひろか『昇天』
 

(*190) ここもワイヤーアクションである。アクアは小袖の下にハーネスを装着している。アクアが演じたのは車に乗ったところまでで、その先はCG。車は本当に空中に浮かべてあった。
 
(*191) 竹取物語の作者は牛車を想定した可能性が高いが奈良時代に牛車は無い。
 
この車は、2人乗りの馬車のようなものを難燃加工した合板とポリカーボネイト板を組んで作り銀色のスプレーで着色し、外側に大きな三日月型の銀色プレートを取り付けたものである。
 
(再掲)

 
プレートは鉄の棒で外枠を作り薄いアルミ板を貼った。プラダンを使う案もあったが“燃える素材は困る”と§§ミュージックが要求して費用は掛かるがアルミにした。だいたいの所は大道具さんが1日で作ってくれたが、山村マネージャーが細かい注文を付け様々な装飾品が取り付けられてかなりゴージャスになった。最終的に監督の発案でLEDランプを取り付けたので、撮影時にライトを当てる必要が無く(発火する危険も減るし、吊っているロープも目立たない)、いかにも月人の乗物という雰囲気になった。
 
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映画公開時にテレビ局の庭に屋根付きの臨時展示場が設営されて展示された。
 
撮影時には空中に吊り上げ10度ほど傾けて撮影している。乗ったのは羽衣を着けたアクアとドライバー(人形)のみである。展示した時はドライバー人形の隣に羽衣を着けたアクアの1/1サイズ・フィギュア(女の子仕様)(*192) が座った。
 

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(*192) 2021年春に公式に発売された。値段が50万円(シリコンバスト付きは53万円)もするのにこれまでに2500体ほども売れている。男の子仕様と女の子仕様があるが、ほとんどの購入者が女の子仕様を買っている。
 
関節は自由に動くので、助手席に座らせてドライブのお供にすることも可能。結構その手のレポートがブログや動画サイトに上げられている。アクアちゃんとアクアラインを走りました(定番)とか、アクアちゃんと阿蘇に行きましたとか、アクアちゃんと沖縄の海を楽しみましたなどという類いの動画が検索すると多数ヒットする。わりと女性が多い。
 
ラブドールではないので、ヴァギナは無いが購入者が勝手に改造(造膣手術)して挿入(何を?)できるようにするのまでは関知しない。ネットには女性の身体の構造に無知な男性(とは限らない)のために“穴を空けるべき位置と適切なサイズ”を解説しているサイトもあるようである。わざわざちんちん付きを買い、シリコンバスト(オプションとして単独購入可能)を貼り付け、穴を空け(豊胸手術+造膣手術)、ふたなりに改造した人もあるらしい。
 
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(*193) ここに出てくる月人は、全て銀色の絹製のドレスのような服を着ており、これは物語冒頭でアクアが着ていた服、話中で度々登場した月城たみよが着ていた服と同じである。ただし、この場面では全員顔に銀色のベールのような紙をたらしていて、顔が全く見えない!しかも月人は全てノンクレジットだったので、誰が演じたのかも分からないようになっている。
 
アクションがあったのは4人である。
 
月王(セリフあり/動作無し!不動で空中に立っていた)
不死薬の人(セリフあり/地上。動作あり)
羽衣の人(セリフ無し/地上。動作あり)
福を投げ飛ばした人(セリフ無し/地上。動作あり)
 
不死薬の人を演じたのは実は大空由衣子、羽衣の人を演じたのは今川ようこであるが、この物語では、月人は悪役!なのでクレジットしなかった。この2人は五節舞の付添女房役もして、そちらでは顔出ししている。
福を投げ飛ばしたのはもちろん千里!
 
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そして月王は人形!である。空中に浮かんでいたのはテックロープで吊っていたから。つまり操り人形だった!
 
この4人(?)以外の月人は全てCGである。
 
そして月人の声は、月王・不死薬の人ともに、合成音声であった。今の技術なら抑揚を付けて台詞を読めるが、敢えて抑揚の無い状態、まるで20世紀のSFドラマやアニメに出て来たコンピュータ音声みたいな感じで台詞を棒読みさせたのである。
 

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だからこのクライマックスシーンに出演したのは下記21名である。
 
(3)竹取翁・竹取媼・かぐや姫
(10)藤・桐・紫・桃・桜・橘・松・竹・柏・福
(4)頭中将・高野大国・赤石・帝
(3)不死薬の人・羽衣の人・投げ飛ばした人
(1)雪兎
 
五節舞よりずっと少人数である!
 
 
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竹取物語2022(23)

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