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■竹取物語2022(12)

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それで旅村と坂口は宝箱を持ちますが、ずっしりと重いので(*99)
「まさかこれの中身は金(きん)か?」
と思いました。
 
「これが相当数積み上げてあったぞ。これだけ財産を持っているのなら、金銭的なものでかぐや姫を満足させることはできまい」
と2人は思いました。
 
匠たちはたくさんの褒美をもらい、車持皇子に感謝の言葉を言って帰って行きました。旅村たちが応接間を見ると竹取翁はたくさん皇子を褒めていたのでバツが悪くなったのか、寝たふりをしているようです。皇子の姿は見えません。
 
「ひとりでお帰りになったのかな」
「まさか。きっと夜の闇に紛れてお帰りになるよ」
「じゃそれまで仮眠してるか」
 
それで2人がかぐや姫の部屋まで戻ると
 
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女童(めのわらわ)の桜(入瀬ホルン)が
「こちらへどうぞ」
と案内してくれるのに付いて行きました。
 
(*99) 撮影は空の箱でおこなっている。きららは割と腕力があるので、2人がかりなら30kgくらいまでは持てる。
 

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藤(花園裕紀)は何とか宴の準備を整えると紫(広瀬みづほ)に声を掛けました。
 
「何とかなったと思う。そろそろお客様が集まってくるかな」
「あ、婚礼は中止になったから」
「なんで〜〜!?」
「玉の枝がニセモノと判明したから」
「え〜〜?たくさん用意したお料理どうすればいいのよ!?」
「匠の人たちに持って帰ってもらいましょう。まだその辺にいるはず」
 
それで匠たちを追いかけて声を掛けますと、大喜びでお料理を持って行ってくれました。
 
「たくさんご褒美を頂いた上にお料理までくださるとは、皇子(みこ)様は素晴らしいお方だ」
と匠たちは皇子を褒めていました。彼らは3年間五穀も肉魚・酒なども断っていたので、お肉・お魚がたくさん、それにたっぷりのお酒に大喜びしていました。
 
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皇子は夜中に旅村たちの部屋に来ると
「帰るぞ」
と言って、坂口を蹴ります。旅村も目を覚まして言いました。
「これをかぐや姫から預かっております」
 
「これは・・・かぐや姫の御衣(みぞ)?」
「いえ。皇子(みこ)様が着て出て行けば目立つまいと」
「涙が出るほど嬉しいよ」
 
それで皇子は女物の服を着た上で、偽物の玉の枝を載せた荷車を曳く旅村・坂口と一緒に闇に紛れて、かぐや姫の家を退出しました。
 
語り手「そしてその後、皇子の行方は誰にも分からなくなりました。確かにいったんお館まで戻ったものの朝御飯を差し上げようと持って行くと、皇子はおられませんでした。馬が1頭居なくなっていたので、皇子が使ったものと思われました。旅村たちは生駒の作業所にも行ってみたのですが、おられませんでした」
 
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「その後、大勢で手分けしてお探ししたのですが見付からず、人々は、きっと深い山に入ってお亡くなりになったのだろうと言いました」
 
「それで「たまさかる」という言葉がうまれたのです」(*100).
 

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(*100) 「たまさかる」というのは通常「魂離る」と書き、魂が抜けたかのようにぼんやりした状態を指す。皇子が作戦失敗して茫然自失になってしまったということか。ここでは魂(たま)と玉(たま)が掛けられて、皇子が玉の枝の作戦を失敗したことがひっかけられている。
 
ところがこの部分はテキストによっては「たまさかなる」になっている本もある。それだと「めったにないことである」という意味になる。皇子のしたようなことは普通誰もしないことだが、たまにこういうとんでもないことをする人もあるということ。
 

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車持皇子がかぐや姫の家を退出した後1ヶ月ほど経った日、旅村と坂口が馬に横乗りした貴人の女性(姫路スピカ)を、かぐや姫の家につれてきました。坂口は荷車を曳いています(*101).
 
旅村と坂口を見知っている紫(広瀬みづほ)が笑顔で応対に出ました。
 
「これはいらっしゃいませ。何かございましたか」
 
女性が自分で馬を降りて用件を言います。
 
「私は車持皇子(くらもちのみこ)の妹で、草笛皇女(くさぶえのひめみこ)と申します。かぐや姫殿にぜひともお願いしたい儀がありまして参りました」
 
紫は思いがけない貴人の来訪に驚き、皇女をかぐや姫の部屋に案内しました。旅村が付き添います。坂口は荷車をかぐや姫の部屋の前k庭へ進めました、かぐや姫(アクア)も帳台から出て、部屋の入口まで来ます。そして皇女に上座を勧めましたが、皇女は「こちらから頼みたいことがあるから」と言って、結局かぐや姫と同じ線に並びます。そして2人は部屋の入口で話しました。
 
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(*101) 日本では馬に荷車を曳かせるという考え方が生まれず馬車は無かったとされる。馬は人間が乗るだけである。平安時代になって牛車が生まれるまで荷車は人間が曳いていた。
 

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草笛皇女はかぐや姫を見て『とんでもない美人だ。なるほど兄が破滅したのも分かる』と思いました。でもなぜ灰色の服など着てるのだろうと疑問を感じました。
 
「皇女(ひめみこ)様、その後、車持皇子様の御消息は?」
「分かりません。でも死んだりはしませんよ。自分の盛大な嘘がバレて恥ずかしがってほとぼりが冷めるまで身を隠しているつもりに違いありません」
「確かに。自殺なさるような方ではないでしょうね」
「ね?」
と2人は同意見になりました。
 

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「車持皇子の馬鹿が」
と皇女は言った。馬鹿なのは同意だなと、かぐや姫も思います。
 
「あなたに贈る玉の枝を作るために、家の蔵、支給されている田、荘園、全ての蔵から金(きん)を持ち出し、米や絹も全て金(きん)に換えていたので、現在うちには何も財産が無いのです。このままだと数ヶ月以内に、使用人たちのお給料も払うことができなくなります」
 
「先のことを何にも考えていませんね」
「全くです。それで単刀直入に、かぐや姫殿にお願いがあるのです。あの馬鹿皇子が作らせた玉の枝を適当な額で買い取っていただくことはできないでしょぅか」
 
旅村と坂口が荷車から玉の枝を取りだして、かぐや姫の部屋の縁側に置きます(*102).
 
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(*102) 玉の枝は本物の金(きん)で作ると後述のように85kgくらいと思われるが、これは撮影用のものなので、金(きん)ではなく真鍮で作って金メッキをしており、更に内部を空洞にしているので25kgくらいである。さくらときららで何とか持つことができた。この2人が全力で持ったので、いかにも重たい感じがよく出た。
 

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「重さはどのくらいありますか?」
「測らせました。金(きん)が2000大両(*103)、銀が100大両、大粒の白玉(真珠)か108個使用されています。白玉を調達した旅村によりますと、1粒2-3大両で買ったそうです。ですから購入資金は金(きん)300大両程度です。重量はそちらで再測定していいですよ」
 
「皇女(ひめみこ)様のところで測定なされたものでよいでしょう。いくらで買い取りましょうか?加工賃まで含めて3000大両くらいで引き取りましょぅか?」
とかぐや姫は尋ねました。
 
「加工賃は匠たちに、かぐや姫殿が代わりに払ってくださっています。それと銀100大両は金(きん)に換算すると1大両にもなりませんから無視して、金と白玉分で2300大両くらいで引き取って頂けると助かるのですが」
 
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「ではそれで」
 

(*103) “両”は後世にはお金の単位としても使用されたが、元々は質量の単位である。当時は“両”に“大両”と“小両”があり、大両は41.9g, 小両は13.9gだった。
 
大雑把に1大両=40gと考えると、2000大両は80kgになる。現代の感覚で1g=1万円と考えると金80kgは8億円に相当する。16の荘園の蔵から各々5000万円くらいずつ出させたことになる。
 
なお、価値的には、銀はだいたい金の1000分の1くらいと等価交換されたので、銀100大両は金0.1大両相当になる。
 
金を80kg, 銀を5kg 使っていたら、玉の枝の重さは85kgということになる。なお、真珠は超巨大な9mm玉でも1g程度であるから、重さとしては無視してよい。
 
簡単のため金の重さを80kg, 金の比重を約20g/cm3として、80000g=4000cm3. この体積の円柱を考えて、例えば長さ50cm とすると断面積は80cm2となり、円形なら半径は5cmになる。つまり玉の枝は長さ50cm 枝の直径10cm程度かもしれない。主枝から多数の小枝が出ていたらもう少し全体の長さは短いか、あるいは太さが細いか。
 
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原文では翁が軽々と持ち運んでいるが、年寄りが持てる重さならもっと小さいもので16の荘園の蔵を開けさせたというのと釣りあわない。また加工に3年もかかるはずもない。3年掛けて制作したというのは、最低でもこの程度の大きさと思われる。これ以上重くなると、今度は運搬に困難を生じるし、蓬莱で皇子が手折ったという話と釣りあわない。なお蓬莱のシーンの画像は樹脂製レプリカである。
 

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かぐや姫は、松と紫、女童たちに玉の枝の警備をさせておき、桃と竹を連れて、皇女と従者を土蔵に案内しました。土蔵警備の男たち(星村泰児・川谷国男)に会釈して土蔵を開けます。多数の宝箱が積み上げられており、皇女はなかなかのものだなと思いました。
 
「ここの箱は、1つに500大両(20kg)(約2億円)の金(きん)が入っています。計るのも面倒ですしこの箱を5つ持って行かれます?」
 
「いえ、あとで揉めてもいけませんし、ちゃんと計りましょぅ」
 
語り手「それで皇女は、旅村と坂口に持参の秤(はかり)で、きちんと金(きん)の重さを量らせました。ひとつの宝箱(500大両)には各々1大両(41.9g)の金の延べ棒500本が入っています。旅村たちはその重さと体積を量り、間違い無く純金であることを確認。宝箱4つと残り金の延べ棒300本を取りました。かぐや姫は空き箱とそれに対応した鍵を差し上げましたので、300本はこれに入れました」
 
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「かぐや姫がひとつひとつの箱を別々の鍵で開けたので、皇女は感心していました。しかもかぐや姫は、皇女がこの箱がいいと言って指し示した箱を開ける鍵を、壁に多数、番号とかも無しに並んで掛けてある鍵の中からさっと取ったので、この人は、ただの美人ではないぞと思います。従者たちは玉の枝を載せてきた荷車を土蔵の近くまで持って来て、宝箱を積みました」
 
「ありがとうございます。助かります」
と皇女は言い、かぐや姫に握手を求めたので、かぐや姫も笑顔で握手をしました(*104).
 
これで車持皇子の家の経済は危機を脱し、草笛皇女とかぐや姫はその後も交友を重ねることになります。
 
またこの玉の枝は、竹取翁のお店に飾られ、それを見るのに大勢の客が押し寄せ、ますますお店は繁盛したということです。
 
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(*104) 握手は古代中国でも行われていたので、唐文化の影響を強く受けていた奈良時代の貴族も握手を知っていたであろう。多分。だから貴族文化の教育を受けているかぐや姫も握手は知っていたと思う。
 
なお身分差がある場合、下の者から上の者に握手を求めてはいけないので、かぐや姫から皇女に握手を求めることはできない。必ず皇女から求める。
 

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川のほとりの粗末な小屋に、女房装束の旅村と平民の男物の服を着た坂口が来ました。坂口は荷車に多数の荷物を積んでいます。
 
「皇子(みこ)様、食料を持って来ましたよ」
「おお、すまんすまん。助かる」
 
それで旅村と坂口の2人で荷物を降ろします。
 
★音楽:常滑舞音『素敵な山の秘密基地』(童謡『山のワルツ』の替え歌)(*105)
 
(*105) 『山のワルツ』とは、このタイトルで認識している人が必ずしも多くないが「すーてきな山の幼稚園〜♪8時になるとリスの坊やがやってきまっすー」と歌う歌(香山美子作詞・湯山昭作曲)である。
 

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「皇子様もそろそろ山を降りられませんか?」
「世間ではどうだ?私のこと忘れてくれたか?」
 
「石作皇女(いしづくりのひめみこ)殿が書いた『車持波行物語』(くらもち・なみゆき・ものがたり)なんて本まで出来て、今、都では話題ですよ」
「あいつー!」
 
「写本がたくさん作られて、写本の売上げは、石作皇女殿と草笛皇女殿とで山分けだそうです」
「なんて恥ずかしい」
 
「10年くらいはこの話で持ちきりですよ」
「都で飽きられた頃、きっと越国(こしのくに:北陸)や吉備(きび:岡山から広島東部)に筑紫(つくし:九州)で話題になりますよ」
「うーん・・・」
 
語り手「この『車持波行物語』が後に音読みされて“しゃじはこう”物語と呼ばれるようになり、それが訛って話が更に膨らんで“しんどばっと”物語と言われるようになったとのことです」
 
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(「嘘だぁ!」という多数の視聴者の声)
 
シンドルバット衣裳の恋珠ルビーの姿が一瞬映り「ん?」と声を挙げる。
 

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「ところで旅村、お前可愛いな」
「は?」
「ちょっとやらせろ」
 
と言って皇子は旅村を押し倒しました。
 
「あ〜れ〜!」
「よいではないか、よいではないか」
 
果たして旅村の運命はいかに?
 
(「ほんと心配だ」という視聴者の声多数)
 
看板係(麻生ルミナ)がこう書かれたプラカードを掲げる。
 
「よい子のみんなへ。皇子たちはプロレスの練習をしてるんですよ」
 
(「嘘つけ!」「今時の子供は欺されんぞ」という視聴者の声多数)
 
 
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竹取物語2022(12)

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