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■竹取物語2022(7)

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車持皇子の場合(前編)。
 
看板係(麻生ルミナ)が白い服を着て「3年前」と書かれたプラカードを掲げる。
 
語り手「車持皇子(くらもちのみこ:キャロル前田)はかぐや姫から“東の海の蓬莱という山にある、銀を根とし金を茎とし白玉(真珠) を実として立つ木の枝”を所望されました。皇子は『そんなもの造ればよいではないか』と考えました」
 
「それで皇子は朝廷には『筑紫(つくし)の国に行き、温泉(*50)で湯治をして参ります』と言い、かぐや姫の家には『玉の枝を取りに行ってきます』という文を持たせました。かぐや姫は、石作皇子の時と同様『無理しないで下さいね。ダメだと思ったら帰って来て下さい』と言伝(ことづて)させました」
 
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映像は車持皇子(くらもちのみこ)が少数の供・船員たちと一緒に難波の港から出港する所、それを多数の人々が見送る所を映します。
 
車持皇子の供
道田 立山煌
旅村 鈴原さくら
坂口 夢島きらら
 
船頭 広瀬のぞみ(広瀬みづほの兄)
水夫 WADOの4人(男装)
 
見送る人々 (ノンクレジット:§§ミュージック・システム部のメンバー)
 

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(*50) 原文“つくしの国にゆあみにまからん”。筑紫(つくし)国は現在の福岡県西部である。後に北部の筑前(博多など)と南部の筑後(久留米など)に分割された。この地域にある古湯としては、次田温泉(現在の二日市(ふつかいち)温泉)が考えられる。太宰府政庁の役人などが多く利用したと言われ、菅原道真の足跡なども残る。
 
この温泉の初出は万葉集6-961 にある大伴旅人(おおとものたびと)の歌である。
 
大伴旅人、次田(すきた)の出湯(いでゆ)に泊って鶴の声を聞いて作った歌
 
湯の原に鳴く丹頂鶴(あしたづ)は我が如く、妹(いも)に恋ふれや時分かず鳴く
 
(河出書房新社・万葉集より)
 
竹取物語の時代は大伴旅人より後である。ただし実は竹取物語の登場人物・大伴御行(みゆき)は大伴旅人の伯父である!
 
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大伴旅人(665-731)は太宰府に赴任していた時(728-730)に奧さんを亡くしていて、それから遠くない時期に詠んだ歌と思われる。60歳を超えてからの地方赴任は異例だが、これには左遷説とエース投入説の両説がある。赴任終了後は政権の中核に入り、大納言に昇進している。
 
なお「つくしの国」をもっと広く“九州”の意味に解せば、二日市温泉よりずっと古く神功皇后の時代と言われる武雄温泉(佐賀県)もある。現代では有名な別府温泉(大分県)は平安時代になってから開発された新しい温泉である。
 

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語り手「車持皇子の船は実際には3日目の夜に密かに難波の港に戻りました。そして、皇子とお供3人の内2人が下船します」
 
皇子は船に残る部下・旅村(鈴原さくら)に命じました。
 
「お前は彼杵(そのぎ)(*52) まで行ってできるだけ大粒の真珠を買い集めるよう」
と言って大量の黄金を渡します。
「分かりました。頑張ります」
「あ、そうそう。私の部下だということがバレないように、お前、女の格好をしておくように」
「え〜〜!?」
 
それで船は出港して行きました。
 
また皇子は一緒に下船した道田(立山煌)に命じます。
 
「お前は私が持つ荘園(私有地)の財産を処分して、米や絹は金(きん)に交換してできるだけたくさんの黄金を調達してくれ(*51)」
「分かりました」
 
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それで道田は皇子の委任状を持ち、皇子の荘園が多数ある東北に向かいました。
 

(*51) 原文「しらせ給ひたる限り十六そをかみにくとをあけ(げ)て」。
 
竹取物語原文の中で最高に難解な箇所。読み方・解釈に定説が無い。どう解釈しても無理がある。ここでは「管理している限りの16所(そ)の(荘園の)管理者に命じて蔵を開けさせて」と解釈した。この後に実は脱落文があったのではとも言われる。
 
(*52) 彼杵(そのぎ)とは九州西部の大村湾を取り囲む地域のこと。大村湾では古くより良質の真珠が産出しており、景行天皇がそこから「具足玉国(そないたまのくに)」と呼んだので、それが訛って「そのぎ」になったという説が肥前国風土記に書かれている(ちょっと苦しい気がする)。
 
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当初彼杵郡が置かれていたが、後に西彼杵郡(西彼杵半島)と東彼杵郡(本土側)に分割された。
 
現在でも大村湾は(養殖による)真珠の大産地のひとつである。
 

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語り手「皇子は残る1人の従者・坂口(夢島きらら)を連れて、生駒の山奥に入ります。そして、用意させておいた山小屋に入りました。周囲を三重に囲って部外者が侵入できないようにしています。ここに7人の宝飾職人を集めており、かぐや姫が言ったような、銀の根・金の茎・白玉の実の木の枝を造らせようというのです」
 
★音楽:キャロル前田とアドベンチャー『山の鍛冶屋』(『村の鍛冶屋』の替え歌)
 
職人(*53)
スーザン高橋・メリー川本・ジェーン佐藤(以上アドベンチャー)
ハワイ竹田・タヒチ永田・パラオ渡辺・サモア高田(以上パシフィック)
 
(*53) 原作では職人は6人だが、ここは出演者の都合で7人になった。パシフィックは、“キャロル前田とアドベンチャー”と仲の良いヴィジュアル系バンドである。7人全員がお化粧をして映っているので、放送時「職人たちの性別がよく分からん」と言われた。
 
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「私は何をすればいいですか?」
と坂口(夢島きらら)が尋ねます。
 
「ここは山の中だからイノシシとかが出る。それを駆除してくれ」
「あはは、はい」
「だからいちばん戦闘力のありそうなお前に、ここに来てもらった」
「確かに旅村とかは女の服を着せて女房にしてあげたほうがいいくらいですよ」
「あとは食料の調達だな」
「はい。米とか麦とか酒とか買ってくればいいですか?」
「玉の枝ができあがるまでは五穀断ち(*54)するから」
「は?」
「米・麦・粟・稗・豆は食べない。もちろん肉・魚も断つ。酒など言語道断」
「何を食べるんですか〜?」
 
「主に野菜だな」
「腹がふくれませんよ」
「そういう状態で頑張るのだ。だからお前野菜を育ててくれ」
「分かりました」
「育てるだけでは足りないから市場で買ってきてくれ」
「足りないでしょうね、野菜だけならたくさん食べないと身体が持ちませんよ」
 
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「買い出しの時、私の部下だというのが分かると困るから、女の服を着るように」
「私が女の服を着るんですか〜〜?」
 
それで女の服を着た坂口(夢島きらら)が山小屋から出て行くところが映像に映ります。
 
(「きららちゃん、ぼくの女装は観賞に値しないと言ってるけど結構可愛いじゃん」という視聴者の声)
 

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(*54) 「五穀断ち」で何を断つかは時代によって異なるが基本的には穀物を取らない。むろん肉や魚も食べない。豆を断つから豆腐・味噌・醤油もNG。主に、木の実、野菜、草などを食べる。蕎麦(そば)は許容された時代もある。
 
でもきっと皇子と従者は別棟で駆除したイノシシ食ってる。
 

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看板係(麻生ルミナ)が「半月後・彼杵(そのぎ)」と書かれたプラカードを掲げる。
 
女の旅装束を着た旅村(鈴原さくら)が現地の真珠採りの親方(西宮ネオン)と話しています。
 
★音楽:薬王みなみ『西海の真珠』
 
「とにかく金に糸目は付けませんから、大粒で白い真珠がほしいのです」
「その手の玉はかなり予約されてるからなあ。でも可能な範囲で分けてあげますよ」
「よろしくお願いします」
 
語り手「旅村は大きな真珠はじっと見てて数日以内に上がるようなものでもないので、どこか近くで待機していて下さいと言われ、近くの武雄温泉で待機することにしました」
 
映像は人を頼んで滞在用の小さな小屋を造ってもらう所(大工さんはムーラン建設の技師さんたち)、そして温泉に入りに行く所を映します。
 
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旅村は何気なく男湯のほうに入ろうとしました。
 
従業員さん(篠原倉光)が飛んできます。
「お客さん、ここ男用!女の人は向こうの女用に入って」
 
それで女用脱衣室の前まで誘導されてしまった旅村が呟きます。
 
「ぼくまさか女湯に入らないといけないの〜?」
 

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視聴者の声
「で、この後、どうしたの〜〜?」
「素直に女湯に入ったのでは?」
 
「さくらちゃんなら男装してても女湯に誘導されると思う」
「さくらちゃんなら女湯に入ってても誰も不審に思わない」
 

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場面が変わる。
 
道田(立山煌)が男(畑野秋美(*55))に書類を渡し、蔵から黄金を運び出させている映像が映ります。
 
(*55) 畑野秋美は、演歌歌手・山折大二郎の弟。実は保育士をしていて、あけぼのテレビ内の託児所に勤めている。通りがかりを徴用した!
 

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場面が変わる。
 
職人たちが金の塊を槌(つち)で叩いています。これでのばして枝状にするのです。鞴(ふいご)で風を吹き込み金属を融かしている者もあります。
 
途中までできている金の枝も見えます。
 

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場面が変わる。
 
★音楽:薬王みなみ『西海の真珠』(*56)
 
真珠採りの親方(西宮ネオン)が女物の服を着ている旅村(鈴原さくら)に大粒の真珠を渡します。旅村は金の延べ板を渡し、ふたりは握手します。
 
(*56) 実はこの真珠を受け取るシーンの前に海女に扮する Pumpkin Coach のメンバーが海底から真珠を採ってくるシーンがあったのだが、本放送ではカットされた!!
 
Pumpkin Coach の公式アカウントから
 
「今度のアクアちゃんのドラマに出ます。頑張って潜水の練習しました」
と発信していたのにカットされていたので
 
「うっそー!?」
という悲鳴があがっていた。このシーンは1週間後の再放送で復活して、ファンから歓声が上がった。
 
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(鳥山プロデューサーが事務所まで謝罪に行った。アクアも「何か手違いでカットされちゃったみたいでごめんねー。せっかく頑張ってくれたのに」というコメントを発信していた。実態はテレビ局のスタッフが、有名?タレントとは認識していなかったので、尺が苦しいからカットしたのである)
 

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場面が変わる。
 
旅村が温泉に浸かっています。旅村は近くで浸かっているおばちゃん数人と言葉を交わしています。
 
(視聴者の声:「やはりさくらちゃん女湯だよねー」)
 
ところが、旅村が声を掛けられて振り向くとそこにはおじいさんが2人やはりお湯に浸かっています。旅村は彼らとも声を交わします。
 
旅村が小さい声で呟きます。
「中の湯が男女共通なら、脱衣場を男女で分ける意味って何?」
 
(視聴者の声:「そういうオチかよ!?」)(*57)
 
(テレビ局のコメント:このシーンは武雄温泉の旅館の湯を貸切りにして地元の方たちに出演して頂きました。ちなみに全員水着を着けて撮影しています)
 

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(*57) 日本以外の国の温泉は一般に水着を着けて入浴するので、プール同様、更衣室だけ男女に分かれていて中は男女共通である。
 
ちなみにさくらは共演してくれた地元のおばちゃん・おじいちゃんたちに「美人の女優さんだねー」と言われた:女顔・女声だしバストもあれば女優と思われるのは当然。
 

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看板係(麻生ルミナ)が「車持皇子が山に籠もってから3年後」と書かれたプラカードを掲げる。
 
語り手「山小屋での作業は千日に及びました」
 
カメラは山小屋の中で出来上がった美しい玉の枝を映しています。金の枝に多数の大粒真珠の実がなっています(*58)。周囲で7人の職人たちが伸びています。みんなこれを作るのに疲れ果ててしまったのです。
 
車持皇子(キャロル前田)は部下の3人(立山煌・鈴原さくら・夢島きらら)を起こしました。4人で金の枝を毛氈(もうせん:フェルト)(*59)を敷いた長櫃(ながひつ)の中に納めます。そして4人で長櫃を馬の背に乗せました。
 
(*58) 撮影に使用したものは、真鍮で形を作ったものに金メッキ・銀メッキを施した。真珠は上質の貝パール(人工パール)9mm玉(磨き加工したもの)である。普通の人の目には本物の真珠と区別が付かない。制作には1ヶ月を要し、番組放送後は、テレビ局の展示室で公開された。
 
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(*59) フェルトはモンゴルの特産品で当時は大陸からの輸入品である。この頃はとても貴重で高価なものであるが、皇子クラスの人であれば入手できたかも?
 

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皇子は道田に
「お前は都の私の家に行き、私が戻って来たと言って難波の港まで迎えに来るように言え」
と指示します。
 
「分かりました」
「その後で“車持皇子が優曇華の花を取ってきた”と都の人たちに言いふらせ」
「分かりました」
 
それで道田(立山煌)が出て行きます。
 
皇子は残りの2人に言います。
「夜が明けるまでに難波まで行くぞ」
「はい」
「私が山の中に居るのを見られたらまずいから私は女の服を着る」
「なるほどですね」
「だからお前たちも女の服を着なさい」
「え〜!?」
 

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それで女装の皇子・旅村・坂口の3人が山小屋を出て3頭の馬で難波の港まで降りて行きます。
 
「でも職人たちは起こさなくてよかったんですか」
「くたくたに疲れていたようだったから。取り敢えず寝せておこう。かぐや姫と結婚してから褒美をやろう」
 

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竹取物語2022(7)

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