広告:まりあ†ほりっく 第1巻 [DVD]
[携帯Top] [文字サイズ]

■竹取物語2022(4)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

(*33) アクアがかぐや姫を演じることになった経緯は下記である。
 
「昔話シリーズ」は、昨年のアクア主演『火の鳥』をきっかけに始まった。昨年アクア主演で『シンデレラ』『浦島太郎』『ピーターパン』などを撮って物凄い視聴率を出し、それで今年もやることが決まった経緯がある。それでこのシリーズの担当プロデューサーである鳥山渚は、今回もまずはアクアでスタートし(陽気なフィドル)、アクアで夏休みに盛り上げて、最後もアクアで締めようと計画した。
 
その場合、アクアが『陽気なフィドル』を撮り、『少年探偵団』の撮影が終わる3月中旬から『黄金の流星』『お気に召すまま』と2本の大作映画を撮ることがネックになった。アクア本人の時間が取れない中で何とかする必要がある。
 
↓ ↑ Bottom Top

そこでアクアに主演してもらい、しかも夏休みにふさわしいビッグな物語で豪華な予算を掛けて制作する価値のある話として『竹取物語』が想定されたのである。この物語は、かぐや姫は主役であるにも関わらず実は出番がそう多くない。
 
だから制作に参加できる日数が限られるアクアが主演できると鳥山は考えた。それにアクアって3〜4人居る気がするから多分何とかやりくりがつくだろう!
 

↓ ↑ Bottom Top

問題は「自分は男だから女役だけの仕事は受けない」と常々言っているアクアをどう説得するかであった。
 
鳥山がコスモス社長と交渉したところ
「ギャラは最低2億円。そして本人がやってもいいと言ったら受ける」
と言われた。ギャラはもちろん受諾する。そしてアクアを説得すべく、3月下旬、代々木にあるアクアのマンションをコスモス社長と一緒に訪問したのである。
 
鳥山さんがわざわざ私邸まで来たことで、アクアはかなり警戒していた。
 
鳥山さんなので、彩佳は自分の部屋に引っ込んでおり、代わりに竜崎由結を呼び寄せて応対してもらった。
 
鳥山さんは室内に女性の持ち物があることに気がついたが、アクアは半分女だからあるのだろうと思ったようである。アクアは女物の服を着てテレビ局などに来るのは普通である。ただし男物の服で来ることもあるから、もしかしたらアクアは噂されるように本当に男と女が居るのかもしれない気もする。
 
↓ ↑ Bottom Top

「かぐや姫の役なんですか?ぼくは女役しませんよ」
と案の定アクアは不快そうに言う。
 
(↑アクアはとても微妙な言い方をしている。Fは女役するかも知れないけど!)
 

↓ ↑ Bottom Top

「でもアクアちゃんさぁ、よく自分には感情が無い、愛情もよく分からない。だから映画やドラマで恋人の役をする時は、今まで見た色々な映画とかのシーンを思い浮かべて、恋人ならこんな感じの表情をするのではないか、こんな感じで相手を見詰めるのではないかと想像して演技してると言ってるじゃん」
 
「はい。愛情というのが分からないというのは事実です」
とアクアも認める。
 
「かぐや姫って、まさに愛情の分からない女だよ」
「あぁ!」
 
「今をときめく大納言や中納言からプロポーズされたり、更には帝から結婚を求められたら、普通の女ならそんな凄い人となら結婚してもいいかなと思うものじゃん。でもかぐや姫は愛情が分からないから、熱烈なラブレター書かれても何とも思わないし、ああ結婚せずに済んでよかったなどと喜んでいる」
 
↓ ↑ Bottom Top

「そんな愛情に対してクールな女って、普通の女優さんにはできない。熱い言葉言われたらお芝居と分かっていても気分良くなってドキドキしたりするよ。でもどんなに熱烈に求愛されても何も感じないって、それこそ愛情が分からないと言ってるアクアちゃんにしかできない役だよ」
 
「なるほどー」
 
(↑かなりやる気になっている)
 

↓ ↑ Bottom Top

「それにもちろん2役で」
 
「何の役ですか?阿倍御主人(あべのみうし)あたりですか?」
「あ、やっばりアクアちゃんが見てもあの5人の中の本命は阿倍御主人だよね?」
 
「一番易しい課題でしたから。失敗しましたけど」
「阿倍御主人は松田理史君にお願いした」
と鳥山が言った時、アクアは左手で口を覆った。
 
それを見て、やはり噂通りアクアと松田理史は特別な関係なんだろうなと、鳥山は思った。ただ普通の女優さんなら、ここで頬を赤らめてもおかしくない。それが口を手で覆う程度の反応というのがやはり感情が本当に小さいのだろうと感じた。
 
(↑本当はここに居るのがMだから。Fはもちろん喜んでかぐや姫を演じる。またFなら突然理史の名前を出されたら、赤くなってしまったと思う)
 
↓ ↑ Bottom Top

「アクアちゃんに演じて欲しいのはね、かぐや姫が昇天してしまった後、帝と結婚して後任の皇后になる、光輝く姫君だよ」
 
「どちらも女役じゃないですか!」
 

↓ ↑ Bottom Top

語り手「美しい姫がいるらしいと聞き、竹取翁の家の周囲には、多数の若い男性が出没するようになりました。みんな姫君の顔を一目見ようとするものの、垣根から覗いても、姫の部屋はいつも部屋自体に御簾が降りていて、中の様子を見ることはできません」
 
★音楽:ラピスラズリ『プロポーズ・ラプソディ』
 
「中には木に登って中を見ようとする者、垣根を越えて中に侵入する者、更には穴を掘って侵入を試みる者まで現れましたが、女童(めのわらわ)が悲鳴をあげ、他の女房たちも駆け付けてくるので逃げていきました」
 
映像は侵入者(ノンクレジット:実は§§ミュージック・システム部の盛岡君)に気づき、橘(入瀬コルネ)が悲鳴を挙げて、紫(広瀬みづほ)と藤(花園裕紀)が駆け付けてくるシーン。
 
↓ ↑ Bottom Top

語り手「夜も昼も男たちが邸の周囲を這い回るように出没するので、これより後、女に求婚することを“よばい”(夜這い)(*34)と言うようになったのです」
 
語り手「竹取翁はかぐやに何かあってはいけないと考え、武術の心得のある女房を雇い、姫の部屋の外に控えさせました」
 
映像は御簾の降りた部屋の表側に2人の女房、松(夕波もえこ)と竹(川泉スピン)が控えている様子を映す。松は弓矢を持っており、竹は木刀を持っているが腰には万一の場合に備えて刀も差している。
 
(*34) 実際には「よばい」は男女が“呼び合い”することから“呼ばい”という単語が生まれたとされる。以下の作者による語源説明も全てジョークである。
 

↓ ↑ Bottom Top

語り手「紳士的に姫に文(ふみ:手紙)を書く者も多くありましたが、かぐや姫は一切お返事を書きません。使用人に言伝(ことづて)を頼もうとする者もいましたが、使用人たちは一切お断りするように言われているので、どうにもなりません」
 
「あまりにも姫が難攻不落で取り付く島も無いので、次第に多くの人が来なくなっていきました。やがて1年が経過した頃、多数の求婚者の中で、プレイボーイとして名を馳せていた5人の貴公子がまだ諦めずに毎日通ってきていました。それは雪の降る日も雨の日も、台風の日でさえも続きました。5人はこの人たちです」
 
映像では5人の貴公子が1人ずつ字幕付きで紹介される。
 
“黒”石作皇子(弘田ルキア)
“白”車持皇子(キャロル前田)
“赤”右大臣・阿倍御主人(松田理史)
“黄”大納言・大伴御行(森原准太)
“青”中納言・石上麻呂(七浜宇菜)
 
↓ ↑ Bottom Top

(性別の微妙な人が多い気がするのはきっと気のせい)
 
語り手「彼らの中には姫の部屋の前で和歌を詠む者、歌を歌う者、笛を吹く者、琵琶を弾く者、恋しい思いを語る者なども居ました(*35)。彼らは自宅に戻っては坊主に祈祷させたり、思いにふけって恋文を書いたりしていました」
 
★音楽:キャロル前田とアドベンチャー『愛しいかぐやちゃん』
★音楽:松田理史『愛の振動』(龍笛。歌無し)
 
「また彼らは翁(おきな)を捉まえては『ぜひお孫さんを私に下さい』と申し入れたりもしましたが、『あの子が誰とも結婚しないと言うもので』と翁も困ったように言いました」
 

↓ ↑ Bottom Top

(*35) キャロル前田はバンドリーダーで歌もとても上手い。松田理史はアクア本人から指導されていて元々龍笛が吹ける。それで自分の龍笛(手作り煤竹の100万円くらいの品:実はアクアからのプレゼント!)で吹いた。森原准太はギターを弾けるのでその応用で琵琶を3ヶ月でマスターした。七浜宇菜はもちろん歌わなかった!
 

↓ ↑ Bottom Top

媼(おうな:入江光江)はかぐや姫に諭すように言いました。
 
「およそこの世では、男は女と結婚し、女は男と結婚するものです。あなたも女の形をしている以上、いつまでも男と結婚しないということはできませんよ」
 
「私は誰とも結婚したくないのです」
とかぐや姫(アクア)は言う。
 
(視聴者の声「アクアが男か女かは議論の余地があるが、女の形をしていることは間違いない」)
 
「5人の貴公子はいづれも立派な方でとても熱心にあなたに求婚しています。どなたと結婚してもきっと幸せになりますよ」
 
「得がたいから熱心になっているだけで、いざ私を自分のものにしたら、きっとすぐに飽きて今度は別の女性に入れ込むでしょう」
 
↓ ↑ Bottom Top

「あなたも困ったものですね。私も翁も60歳を越えました(*36)。今日明日にも、あの世からお迎えがくるとも知れません。どうか私たちが生きている間に結婚してほしいのです。でないと安心してあの世にも行けません。だいたい私たちが死んだら、あなたを守る人も無くなりますよ」
 
かぐや姫は溜息を付きました。
 

↓ ↑ Bottom Top

(*36) 原文「翁年七十に餘りぬ。今日とも明日とも知らず」
(翁はもう70歳を過ぎた。今日明日も知れない)
 
ところが後のかぐや姫の昇天の所にはこうある。
 
「翁今年は五十許なりけれども「物思には片時になん老いになりにける」と見ゆ」
(翁はまだ50歳ほどであるのに、心労で一気に老け込んでしまったようだと人が思う)
 
とあって、とっても矛盾している。5人の貴公子の求婚から昇天まではだいたい10年近い月日が経っている。これを後の方を活かして前の部分を
 
「翁年四十に餘りぬ。今日とも明日とも」
 
の誤写と考えると、40歳でいつ死ぬか分からないというのは大げさである。一方で前の方を活かして、後のを
 
「翁今年は八十許なりけれども物思には片時になん老いに」
 
↓ ↑ Bottom Top

の誤写と考えると、80歳は元々老けていて変である。
 
つまりこの問題は単純な誤写と考えても解決できない。おそらく竹取物語の成立過程で複数の物語を繋ぎ合わせている時に生じてしまった矛盾ではないかと思われる。
 
このドラマでは貴公子の求婚の時が60歳ほどで、昇天の時が70歳くらいであり、「急に老けこんだ」という記述は採用しないという方針で制作した。結果的に竹の中に姫を見付けたのは45歳頃ということになる。
 

↓ ↑ Bottom Top

翌日昼過ぎにやってきた(*37) 5人の貴公子に翁は言いました。
 
「かぐやが皆さんにお話があるそうです。どうぞ中にお入りください」
 
5人はお互い顔を見合わせましたが、翁に案内されて中に入りました。
 
かぐや姫のお部屋に通されます。部屋には良い薫りが焚いてあります。控えている女房・女童(めのわらわ)も素敵な服を着ています。姫は
帳台の中に居るようです。
 
(*37) 昔は仕事は夜明けとともに始まり、お昼頃には終わっていた。午後は日記などを書いたり、遊んだりしていた。
 

↓ ↑ Bottom Top

「皆さん、毎日熱心に通ってきて頂いて、本当にありがとうございます」
とかぐや姫が帳台の中で言います。
 
5人の貴公子は、なんて可愛い声なのだろうと思い、ますますかぐや姫が好きになりました。
 
「でも5人の方が皆さん同様に熱心なので、私はその中のひとりに決めきれないのです。それで私が皆さんにほしいものを伝えますので、5人の中で最初にそれを持って来てくださった方がいちばん熱心だと思って結婚したいと思います」
 
語り手「5人の貴公子は、わが国ではほとんど見ない金剛石(ダイヤモンド)とか紅玉(ルビー)でもねだられるか、あるいは広い館でもねだられるかと考えました。そして自分の権力と財力の限りを尽くしてそれを用意してやろうと思いました。しかし、かぐや姫の要求はとんでもないものでした」
 
↓ ↑ Bottom Top

「詳しくは藤から」
とかぐや姫は言います。
 
それで傍に控えていた女房の藤(花園裕紀)が言いました。
 

↓ ↑ Bottom Top

「それでは、石作皇子(いしづくりのみこ)様には、お釈迦様が母君から頂いて使っていたという仏の御石の鉢を。車持皇子(くらもちのみこ)様には、東の海に蓬莱という山があり、そこに銀(しろがね)を根とし金(こがね)を茎とし、白玉(しらたま:真珠)を実として立つ木があるので、その一枝を折って持って来てください。もうひとりの方(阿倍右大臣)(*39)には、中国にあるという火鼠の皮衣をお願いします。大伴大納言様には龍(りゅう)が頸(くび)につけているという五色に光る珠を。石上(いそのかみ)中納言様には、燕が持っているという子安貝をひとつ取って持って来て下さい」
 
と藤(花園裕紀)は読み上げました。
 
この姫の依頼品を聞いた5人の貴人たちは内容に絶句し、
 
↓ ↑ Bottom Top

「要するに2度とうちに来るなという意味か?」
などと言いながら腕を組んだり、首をひねったりしました。
 
かぐや姫(アクア)は桃(川泉パフェ)に御簾(みす)を揚げさせました(*38). かぐや姫の光輝く美しい姿が貴公子たちの前にあらわになります。貴公子たちは
 
「何と美しい姫なのだ!」
 
と感動し、この姫のためなら、何とかしてやろうじゃないかと闘志を燃やしました。しかし、かぐや姫は言いました。
 
「皆さん、どうかご無理なさらないでくださいね。皆様がお怪我などしたら私も悲しいですから」
 
それで御簾は下げられ、5人の貴公子は藤に促されて退出しました。そしてみんな腕を組み、考え事をしながら帰って行きました。
 
↓ ↑ Bottom Top


★音楽:アクア『菅原の市(いち)(スカーバラ・フェア)』(未来居住超訳版)
 
S&G版ではなく古いメロディーを使用している。

 
(Alto)どこに行くの? (Tenor)菅原(すがはらのいち)へ。
(Soprano)Parsley, sage, rosemary and thyme
(Alto)そこに居る人に伝えて、あの人は私の思い人。
 
(Alto)仏様が使ってた
(Soprano)Parsley, sage, rosemary and thyme
(Alto)鉢を持ってきてくれたら、私あなたの妻になるわ。
 
(Alto)東の海の蓬莱にある
(Soprano)Parsley, sage, rosemary and thyme
(Alto)金銀真珠の枝持ってきたら、私あなたの妻になるわ。
 
(Alto)唐国(もろこし)にあるという
(Soprano)Parsley, sage, rosemary and thyme
(Alto)火鼠の衣持ってきたら、私あなたの妻になるわ。
 
↓ ↑ Bottom Top

(Alto)龍が首に付けているという
(Soprano)Parsley, sage, rosemary and thyme
(Alto)五色の玉を持ってきたら、私あなたの妻になるわ。
 
(Alto)燕(つばめ)が持っているという
(Soprano)Parsley, sage, rosemary and thyme
(Alto)子安貝を持ってきたら、私あなたの妻になるわ。
 

↓ ↑ Bottom Top

(掛け声:オリジナル!)
 
(Alto)糸も針も使ってない
(Soprano)Parsley, sage, rosemary and thyme
(Alto)縫い目のない服持ってきたら、私あなたの妻になるわ。
 
(Alto)海と浜の間にある
(Soprano)Parsley, sage, rosemary and thyme
(Alto)土地を買ってくれたら、私あなたの妻になるわ。
 
アクアは2種類の声(Soprano/Alto)を使って歌っている。
 
Tenorを歌ったのは篠原君である。こんなに短い時間で声を切り替えるのはさすがのアクアでも無理。多重録音すればいけるが、そういうことは基本的にしないのがポリシーである。掛け声を掛けたのは木下君。
 

↓ ↑ Bottom Top

(*38) かぐや姫は多くのシーンで御簾内に居る→撮影時の代役がとっても使いやすい!
 
(*39) 原文「今ひとりには」。名前が書かれていないが、他の4人の名前は出ているので、ここで指名されたのは右大臣・阿倍御主人(みうし)である。3番目の人を呼ぶのに「もうひとり」と言ったのは、この物語の求婚者が元は3人だったのを、後で5人に増やした名残であると言われている。
 
今昔物語の『竹取翁見付女児養語』でも求婚者は3人で次のような課題を与えられている。
 
初には「空に鳴る雷を捕へて将来れ。其の時には会はむ」
次には「優曇華と云ふ花有けり。其れを取て持来れ。然らむ時に会はむ」
後には「打たぬに鳴る鼓と云ふ物有り。其れを取て得させたらむ折に自ら聞えむ」
 
↓ ↑ Bottom Top

雷→龍の珠、優曇華の花→蓬莱の金銀の木、と思われる。鼓はこちらには該当するものが無いが、火鼠の衣が少し近いか?
 
それで今昔物語は、求婚者たちには、海へ行って亡くなった者もあれば、山に入って帰って来なかった者もあると書いている。(竹取物語より死亡率が高い)
 
(“打たぬに鳴る鼓”ってデンデン太鼓ってことはないよね?ここでもこれがいちばん易しい気がする)
 
 
↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 
竹取物語2022(4)

広告:たのしいせいてんかんツアー-能町-みね子