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皇子、船頭、女房装束の旅村と坂口、セーラー服姿の水夫たちは部屋を出て港へ走ります。その後を女たちが追いかけます。
突然皇子たちの前に銀色の天女の服を着た女性(月城たみよ)が姿を現しました。皇子たちは「はさまれたか?」と思ったものの、銀色の女性は皇子たちに身振りで小舟の所に行くよう指し示します。それで皇子たちはそのまま小舟に向います。
皇子が銀色の女性のそばを通り過ぎようとした時、
「皇子(みこ)様、これをお飲み下さい。女にならなくて済みます」
と小声で囁(ささや)いて、銀色の小さな薬(*84) を渡しました。
「分かった。命は捨てる覚悟で出て来たが、男を捨てたらかぐや姫と結婚できなくなる」
と言って、皇子はその薬を飲みました。そして小舟に飛び乗って、2艘の小舟は浜辺を離れ、船へと漕いで行きました。
浜では銀色の女性が島の住民たちを通せんぼしてくれていました。
船は碇を揚げ、船頭と4人のセーラー服の水夫(かこ)が艪を漕いで沖へと出港していきました。
(*84) 撮影に使用したのはアラザンでコーティングしたチョコレート(ドラジェ)である!
船はやがて風を受けて帆走に切り替えます。
旅村が船頭(広瀬のぞみ)の服装に気がつきました。
「船頭さん、その服は?」
「え?あれ?何この服?(*85)」
船頭はいつの間にか、女子高生の制服!みたいなブレザーとチェックのプリーツスカート(*86) を着ていました。
「船頭さん胸が」
「え?どうしてぼくのおっぱいこんなに大きいの?」
「あれ無くなってない?」
「うっそー!?無くなってる。ぼくこれからどうしたらいいの?」
「皇子(みこ)様は身体に変調はありませんか?」
皇子は自分の身体をあちこち触って確認します。
「今の所大丈夫のようだ。おっぱいは無いし、はぜはあるし」
「女たちはたいてい翌日女に変わると言っていました。明日かも」
「嫌だなあ」
(*85) ここから先、広瀬のぞみは女声で台詞を言う。彼は夏休みが始まった7月21日に宮崎を出て東京に出て来て、メゾン・ドゥラ・カデットに入った。
「可能なら早めに出て来て。撮影前に性転換しちゃおうよ」などと言われて少しドキドキしながら出て来たのだが(結構“その気”があるのでは?)、花ちゃんから
「君、女の子の声を出す練習してみない?」
と言われてボイトレに通ったら、ほんの一週間で出るようになった。それで彼はめでたく両声類になれた。もっとも女声が出たあとは2日くらい男声が出なくて焦ったらしい。
「このまま女の子になる手術を受けて女子高生になればいいよ。私お姉ちゃんが欲しかったのよね」
などと妹から言われる。
「待って。多分元の声も出る」
それで3日目にやっと男声が出て、両方切り替えて出せるようになった。
それで彼はこのドラマでの車持皇子の冒険譚では、前半を男声、後半を女声で話した。
喉仏に関しては、アクアのマネージャーの50代の女性が“後半の撮影に入る前に”
「あ、ちょっと貸して」
と言って喉のところにしばらく手を当てていたら、目立たなくなっちゃった!
「喉仏必要なら後で元の状態に戻してあげるけど(←戻すつもりは毛頭無い)」
「いえこのままでいいです」
「だったらそのままで」
なおこの大冒険譚の中で、さくらは全編女声だが、前半をアルトボイス、後半をソプラノボイスで話している。きららは前半を自分の声(男声)で話し、後半の台詞は、信濃町ガールズの左倉まみに吹替えてもらった。左倉まみはこのドラマに出演しているがセリフが無い。
(*86) この女子高生制服風の衣裳もセーラー服と同様“仙境の服”という設定である。広瀬のぞみのサイズに合わせて作ったもの。のぞみは妹に唆されて、女性用ショーツ(*87)とブラジャーを着け、服を汚さないようにスリップまで着けてこの服を着た。下着は妹がサイズを測って調達してくれた。
髪の毛も美容室で女子高生らしい髪型にカットしてもらい、自分の顔に陶酔していた!
制服は撮影終了後本人に贈呈された。
「こんなのもらっても困るんですが」
「こっそり着てればいいよ」
(*87) 最初に試着した時はガードルも着けないと“支障”があったのだが、↓に書く事情で2度目からは支障が無なり、ショーツだけで着られるようになった。
また彼は妹が「費用は出してあげるから」と言うのに乗せられて顔のむだ毛は撮影に入る前にレーザー脱毛しちゃった!一週間はマスクが外せなかったものの「毎日剃らなくていいの凄く楽」と言って喜んでいた。ついでに撮影後に足のむだ毛もレーザー脱毛しちゃった!自分の足の美しさに感激していた。
彼の急速な変化を心配した女子寮長の花咲ロンドは「もし女性ホルモン飲みたいなら1ヶ月待って」と言って彼に精液の冷凍を作らせた。冷凍を作る前の禁欲を守れる自信が無いと言ってたら鈴原さくらが彼の男性器をタックしてくれた。
「これでオナニーしようにもできないよ」
と言われたが、まるで女の子みたいになった股間を見て彼はうっとりしていた!おしっこが凄く後ろから出るのにも感動していた。
撮影中はずっとタックしていたので、彼は女物を着るのに何も支障が無かった。
なお、のぞみは8月いっぱいメゾン・ドゥラ・カデットに滞在して、あけぼのTVに出たり、音源制作の補助(オーボエとトランペットが吹ける。クラリネットとサックスも吹ける)などもした。“女性”トランペッターはわりと貴重である!
「女子寮に移動してもいいけど」
「自粛します」
「スカート穿かないの?」
「癖になったら怖いからやめときます」
(既に手遅れのような気がする)
彼が宮崎に帰る前に、妹は宮崎で進学する予定だった高校(=弥日古が通学中の高校)の女子制服を兄(姉になるのは時間の問題?)にあげた。
「もらっても困る。こんな服着て登校したら叱られるし」
(↑既に着る気になっている)
「私は着ないし、留依香(2人の妹)の身体にこの制服が入る訳無い。お姉ちゃん、これで登校したら叱られるのなら、登校する時だけ男子制服で登校して、下校する時に女子制服に着替えればいいんだよ」
(もう「お姉ちゃん」と呼びかけている。「お姉ちゃん」と呼ばれて照れている)
彼は15秒くらい考えて(←妄想中)から
「そんな恥ずかしいことできないよぉ!」
と言った。
嫌だとは言ってない!
ちなみにこの制服は、ちゃんと試着してみて問題無く着られることを確認した。ついでに写真を撮って母に送ってあげたら母が異様に喜んでいた!
「やーちゃん、9月からはこの制服で通学するの?性別変更届け書いとくね。せっかく作った制服が無駄にならなくて良かった」
父は
「なんでこいつこんなに女の服が似合うんだ?いっそ金玉取って女になるか?」
と呆れていたらしい。
2人は身長は少し違うもののウェストがほぼ同じなので服が共用できる。宮崎でも結構Tシャツやジーンズのパンツを共用していたらしい。妹さんはバスケットをしていて体格がいいので、姉たちの服が入らない。この3人の上に宮崎市の大学に行っているお兄さんがいる。
語り手「皇子の船は西風を受けて順調に東へ向けて航海していました。その後、2日経っても皇子の身体には変調は起きず、女に変化したりはしませんでした。皇子は密かに、これは銀色の女性がくれた薬のおかげだろう、と考えていました」
「もう3日経ちますが皇子(みこ)様は身体にはお変わりはありませんか?」
「うん。変わりない」
「なぜ皇子様だけ無事だったのだろう」
すると女子高生制服姿の船頭(広瀬のぞみ)が言いました。
「それ考えたんだけど、皇子様はあの島の食べ物・飲み物を一切口にしなかった。あの飲み物を飲もうとしたところで私が話しかけて、ずっと話し込んでいた。だから無事なのかも」
「なるほどー。女人国の食べ物や飲み物に口を付けてしまうと女になってしまうのかな」
「でも皇子様、私たち女になってしまいましたが、この後どうすればいいのでしょう」
と旅村(鈴原さくら)が不安そうに言います。
「旅村と坂口は私に女房(にょうぼう)として仕えればよい」
「やはりそうなるのか」
と坂口(夢島きらら)。
「水夫(かこ)たちは良い嫁のもらい手を紹介してやるから安心するように」
と皇子。
「私たち、嫁さんに行くんですか〜?」
と情けなさそうな顔で水夫2(淳子)が言う。
「心配しなくても、もらい手は居るから」(*88)
(*88) 視聴者の特に女子たちからの声
「若南ちゃんに私のお嫁さんになってほしい」
「淳子ちゃんに私のお嫁さんになってほしい」
「大菜ちゃんに私のお嫁さんになってほしい」
「央花ちゃんに私のお嫁さんになってほしい」
君たち結婚の意味分かってる?
しかしWADOの4人が全員揃って性転換手術を受けて女になったことを発表してから女性ファンは壊滅的に減ったのだが、最近戻って来ている女性ファンがかなり居るっぽい。WADOのファンクラブでは再登録する場合、以前の会員番号を復活できるサービスを行っているが、解約した女性ファンのこれまでに1割くらいが旧番号を復活させている。
語り手「皇子たちの一行はひょっとして、皇子以外の全員が飲んだニョーニーに女性化の作用があるのかもと話し合いました。それで皇子一行はこの島を“ニョーニー島(じま)”と呼びました。これが後に訛って“にょうごじま”と呼ばれるようになり“女護島”という表記もできたそうです。“にょごがしま”は後にこの表記から派生した読み方です」
と語り手の元原マミはわざわざフリップボードに「ニョーニーじま→にょうごじま→女護島」と書かれたものを掲げてこの説明をした。
(↑視聴者から「無理がある」「さすがに嘘だろ」というツッコミ多数)
でも、女護島に向かった『好色一代男』の世之介って無事だったんでしょうかね。速攻で女に変えられて、二度と女を泣かせることはなくなったとか?
語り手「皇子の船はこのように苦労しながらも航海していきました。皇子以外が男の身は失ってしまったものの、命を失ったものはなく、航海は500日(*89) に及びました。
辰の刻(午前8時)」
「島だ!島が見える!」
と船央の見張り席に座っていた船頭(広瀬のぞみ)が言いました。
(当時は望遠鏡が無いので肉眼で見ている)
皇子もその島影を確認しましたので、そちらに漕ぎ寄ることにします。すると物凄く高い山が海中からそびえていました。
「こんな高い山は見たことが無い」
「これがきっと蓬莱だ」
と皇子たちは言い合いました。
(*89) 当時の船で本当に500日航海した場合、運が良ければハワイに到達する可能性があると思う。和歌山からハワイへは大圏距離で 7000km=3800海里である。これを500日で行くには1日に7.5海里進めば良い。当時の船が1ノットくらいの速度なら1日平均7.5時間、もし車持皇子の船が優秀で3ノットくらい出たとしたら1日平均2.5時間くらい進むことができれば到達できる計算になる。
ハワイの最高峰はマウナケア(4205m) で、富士山より高い。またダイアモンド・ヘッドは西洋人が来た時、山にダイアモンドが大量に転がっていたことからその名がある。ただし、当時ダイアモンドと思われたものは実際にはカルサイト(方解石)であった!
日本からハワイへ大圏航路を進んだ場合、その途中にミッドウェー島がある。するとミッドウェー島がロウライ(女護島)かも!?
海中に高い山があるというのは、伝説のバリハイを思わせる。映画『南太平洋』では現実の島として登場したが、元々は海の向こうに見えていて、辿り着けそうでどうしても到達できない島である。
車持皇子の船は、岩礁に充分気を付けながら島の周りを一周しました。特に怪しげな所はありませんが、皇子は船頭に小舟を漕いでもらい、2人の従者を連れて上陸しました。
ちなみに女人の島で着ていた服は動きにくいので、船頭も従者(女房?)たちも女の作業着に着替えています。船にあった麻布を旅村が縫って作りました。
それで浜辺を歩いていたら、天女のような白い絹衣を着た女性(ビンゴアキ)が山の中から出て来て、銀の入れものに海水を汲み、戻ろうとします。皇子は声を掛けました。
「すみません。ここは何というところでしょうか?」
女性は答えます。
「ここは蓬莱(ほうらい)ですが」
皇子は「おぉ!」と声を挙げて、旅村・坂口と喜び合います。
★音楽:パシフィック『蓬莱』
「そのような質問をなさるあなたはどなたですか?私は宝冠瑠璃(ほうかんるり)と申しますが(*90)」
「これは大変失礼しました。私は日本から参りました車持皇子(くらもちのみこ)と申します」
「それはまた遠い所から。何も歓迎などできませんが、ゆっくりしていって下さい。欲しいものがあったら常識の範囲で勝手に取って構いませんから」
「ありがとうございます」
それで女性は水を汲んだ器を持ち、山の中へ入っていってしまいました。
(*90) 原文「我が名はうかんるり」。ここの部分の読み方について古くから2種類の解釈があり、決着が付いていない。
(1) 我が名は、うかんるり
(2) 我が名、はうかんるり
(1)で解釈すると名前は“ウカンルリ”という無国籍的な名前となり、いかにも仙境っぽい。(2)で解釈すると女性の名前は“はうかんるり”となって、漢字で宝冠瑠璃・宝漢瑠璃、などと書けるとする。
ここでは「我が名、宝冠瑠璃」と解釈した。
なお異本のひとつには「我が名はこらんなり」(我が名は胡蘭なり?)というのもあるが、これは多分原文が何かの誤写ではと考えて修正した、解釈しすぎの本ではないかと思われる、