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■夏の日の想い出・龍たちの讃歌(16)

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そういうことで、2人は同点優勝というのを受け入れ、その場で本人・親権者ともに契約書(A契約)にサインしてくれた。
 
私たちは(簡易消毒の上で)、続いて3位の須舞恵夢さん、4位相当だが男子なので選考外の菱田ゆかり君、5位の植野純央さん、と最終的に10位までの参加者を1人ずつ呼び出し、成績を告げた上で研修生にならないかと勧誘。須舞さん・菱田君とその他3人の参加者(植野・横山・緒方)が研修生になることになり、本人・親権者が契約書(B契約)にサインした。
 
12位だった杉浦舞美ちゃんが22時過ぎに「私まだ呼ばれてないんですが」と電話してきたので「10位以内に入らなかったので」と私は言った。しかし彼女は
「それでも研修生にしてもらえませんか?今12位でも12ヶ月後には1位になれるように頑張りますから」と言うので、彼女の積極性を買って研修生になることを認めた。羽鳥さんはもう帰っていたのだが、私とコスモスの2人で面談し、B契約を交わした。
 
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今回の合格者・研修生(信濃町ガールズ)加入者
 
1.雪渡知香・新里好永
3.須舞恵夢
4.菱田ゆかり
5.植野純央
7.横山朋菜
9.緒方飛蝶
12.杉浦舞美
 

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さて、優勝した2人と研修生になる6人の合計8人の中で、都内在住の5位・植野さん、男子の菱田君以外の5人に私は、女子寮の入寮申込書を渡していたのだが、夜遅くになって、3位の須舞恵夢さんから連絡がある。
 
「済みません。女子寮入寮申込書って頂いたんですが、男子でも女子寮に入っていいんですか?」
 
「は!?」
 
ちょうど一緒に居た川崎ゆりこが吹き出した。
 
「あのぉ、まさか須舞さんって男子なの?」
「そうですけど」
「これは女の子アイドルを選ぶオーディションなんだけど」
「え〜〜〜!?」
 
「だって2020ビデオガールってタイトルだし」
「それビデオ映えする人と女の子とを選ぶオーディションと思い込んでました」
 
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それ絶対嘘だろ?確信犯(誤用)だろ?
 
「でも君、スカート穿いてたよね?」
「審査には足の動きがよく見えるようにスカートで参加して下さいということだったから、スカート穿いて出場しましたけど」
「普段もスカート穿くんだっけ?」
「え?誰でも穿きますよね?」
 
まあスカート好きな男の子もいるけどね。
 
「ダンステストでは女の子水着を着てなかった?」
「レオタードでもいいと書いてあったからレオタード着てましたけど」
 
気付かなかった!
 
しかし彼女、じゃなかった彼は充分優秀なので、そのまま研修生になって欲しいと要請。彼は受諾した。
 
「ちなみにアクアさんみたいに、性転換手術うけて女の子にならないといけないということはないですよね?」
「性転換は個人の自由なので、特に求めませんし、禁止もしませんけど、西宮ネオン君みたいに、ちゃんと男の子でデビューした子もいるし」
 
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「あ、そうですよね。安心しました」
「ちなみにアクアも性転換してないんだけど」
「あれ?最初から女の子だったんでしたっけ?」
 
彼の住まいについては、選考除外した菱田君同様、都内のマンションを紹介することにした。夏休み中に物件確保を考える。
 
しかしスカートを普通に穿く子って、男の娘という訳ではないよね?ね?電話での会話でも、なんか性転換手術うけさせられたいみたいなニュアンス感じたし!(自分から積極的に性転換したい訳ではないけど、性転換してと言われたら、素直に手術を受けます、みたいな感じ)
 
だけど恵夢(めぐむ)という名前で男の子なのか?最近の名前の性別は分からん!と私は思った。でも彼(彼女?)を優勝させなくて、良かった!
 
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「そろそろ男の娘寮を作った方がいいかも」
などと川崎ゆりこは言っている。
 
「男の子寮じゃなくて男の娘寮なんだ?」
 
「信濃町ガールズの男子メンバーの中にもけっこ怪しい子いるじゃないですか。木下宏紀とか、上田信貴とか、絶対女性指向ありますよ。本人は否定するけど。スカート穿かせると嬉しそうな顔してるし。宏紀なんて『ボクは声変わりしたからアルト音域までしか出ない』って言ってるけど実際は仮歌係をやらせていると、ソプラノまで出てますよ。あれ絶対女性ホルモンやってますよ。だいたい、あの子、喉仏が無いし、いつも女の子ショーツつけてるし」
 
へー。そんなに声が出るのか。凄いなと私は思った。彼がショーツを穿くのはダンスの時にぶらぶらしないようにサポーター代わりだと本人からは聞いている。
 
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「喉仏は目立たない子もいるよ。でも木下君や上田君の性的な志向は置いといて、確かに男子寮はあってもいいかも知れないね」
 
「それで食事には女性ホルモンを入れて提供して、おっぱいが膨らんできたら女子寮への転寮を認めるとか」
 
「マリみたいな発想してるし」
と私は言った。
 

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『ヒカルの碁』の撮影は7月中旬から本格的に始まり、8月下旬まで1ヶ月半ほどの間に集中して行われた。
 
物語の中でのプロ棋士試験は次のような流れで行われる設定になっている(現実の2020年度のプロ棋士試験に準じるが、リアルの夏試験(院生1位が自動合格)を無くして冬試験(本来2名合格)に統合し3名合格としている)。
 
●外来予選
 記譜審査で合格した人で総当たりのリーグ戦をする。
 1日2局。上位4名が合同予選進出。
 椿はこれを勝ち上がっている。
 
●合同予選
 院生B組(10名)と外来予選合格者の合計14名で総当たり戦。
 ヒカルはここから出場する。
 1日2局(持ち時間1時間)、上位6名が本選進出。
 
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●本選
 院生A組(10名)と、合同予選の合格者6名の合計16名でリーグ戦。
 1日1局(持ち時間2時間)、上位3名がプロ合格。
 
●女流特別枠合同予選
 参加者は下記
 ・記譜合格したものの本選に出場できなかった女子
 ・院生B組以上で、本選に出場できなかった女子。
 総当たりのリーグ戦で上位6名が女流本選に進出。
 1日2局(持ち時間1時間)
 
●女流本選
 参加者は下記
 ・本選に出場したが合格できなかった女子
 ・女流合同予選通過者6名
 総当たりのリーグ戦で1位の人が女流特別枠で合格。
 女流特別枠で合格した場合は三段までは報酬が半額。四段になったら通常の本選を合格して四段になった人と同額になる。
 
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ヒカルが万一女子であった場合、本選で上位3名に入れなかった場合も、女流本選に出場する権利が与えられる。むろん通常の本選でプロ合格すれば女流本選には当然出場しない!
 

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今回の映画のストーリーの流れ
 
(1)前哨戦
外来予選の申し込みに来た門脇と対戦することになる。実際には佐為が打ったので門脇完敗。門脇は申し込みを中止。1年鍛え治して来年受験することにする。
 
(2)合同予選に出場。
外来からあがってきた椿と初日対戦するが、彼のペースに巻き込まれてまさかの敗戦。翌日もその影響が出て2連敗。
→椿に会わないよう対局開始ギリギリに飛び込み貴重な一勝。
その後は自分のペースを取り戻し、11勝2敗で本選進出。
 
(3)武者修行
院生A組の和谷・伊角に連れられて碁会所めぐりをするというのが原作だったのだが、後述の理由により、大学の囲碁部を巡る設定に変更された。
 
(4)明日美のデート(?)
 
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(5)全員持碁!
ムシャクシャしていたミナコが、都議とその支援者を相手に全員持碁をやる。同じ日、大学の囲碁部で打っていたヒカルも、4面打ちで全員持碁になる・・・かと思ったら1人だけミスる。
 
実は今回の映画で女装のアクア唯一の登場シーン!
 
(6)本選開始
 
(7)反則
伊角との対局で伊角が反則負け。ヒカルは勝利を拾ったものの心理的に動揺して翌日負けてしまう。
 
(8)本選後半
自分を取り戻して勝ち続ける。椿は落選確定。伊角も越智との対局で自分を取り戻す。「越智、黙れ」はこの漫画の名場面のひとつ。
 
(9)大詰め。
越智は真っ先に合格を決める。最終日前日の和谷との対戦。ヒカルは負ければ落選。和谷は勝てば合格。そして絶体絶命の局面。
 
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(10)最終日。
ヒカルは越智に勝って合格。和谷も苦手の福井に勝って合格。院生No.2だった伊角は落選。ヒカルとの対局での反則が何日も尾を引いてしまった。
 

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実は最初に明日美のデートの場面を撮影した。これはアクアのスケジュールが空かなかったので、先にアクア抜きで撮影できるシーンを撮ったためである。
 
7月下旬に、昨年も撮影に協力してくれた熊谷市内の高校の囲碁部の人たちと、近隣の大学の囲碁部の人とで、予選の様子を、郷愁村に作られている日本棋院のセットで撮影した。
 
例によって参加者は検温の上、撮影現場に入る時は簡易検査キットで検査して陰性であることを確認したのだが、大学の囲碁部の人が1人この検査に引っかかり、正式のPCR検査を受けて陽性確定。本人は全く自覚症状が無かったものの自主的に自宅内隔離。3日目に熱が出始めたが、適切な治療のおかげで一週間ほどで回復。後遺症なども出なかった。検温だけでは見つけきれなかったケースで、あらためて簡易検査キットの威力が認識された。本人も早めに検出してもらって感謝していた。
 
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予選の参加者は14名で各人13戦を7日間でする設定だが、実際には1日に4局ずつ3日で撮影している(1局分は省略!)
 
ヒカルの対局以外はほとんど撮影していない。
 
もっとも、いくら体力のあるアクアでも1日4局はさすがに辛いので、実際にはアクアが2局と葉月が2局打っている。対局は実は全部マジ!である。最初のデート編での葉月の対局を見たら三〜四段の人に負ける訳がないと思われた。アクアは葉月以上に強い。
 
「アクアちゃんも強いけど、葉月ちゃんも強いね」
と院生師範役の鞍持健治さんは言っていた。鞍持さんは“自称二段”らしい。
 
外来受験者の椿俊郎を演じるのは、三橋栄太さんという実際には28歳の俳優さんである。実はヒカルの碁が連載されていた当時は29歳まで受験できたのが、現在は“採用時に22歳以下”でないと受験できない。つまり大学4年生世代が上限になっている。それで椿俊郎の設定も原作では29歳だったが映画では22歳とし、門脇も大学3年生という設定に変更されている。
 
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実はそれでヒカルは“おっさん”たちとの対局の経験を積む必要が全く無くなったので、武者修行編は碁会所ではなく、大学の囲碁部を巡ることになった。またタバコの煙が満ちている中での対局シーンというのが今の世相では好まれない問題もあった。
 
三橋さんの囲碁の腕前は、アマ初段の免状を持っているので石の打ち方などは格好いい。制作側では本人と手を別々に撮影するのは大変なので、最低限まともな石の打ち方ができる人というので探して彼を選んだらしい。ヒカルが彼にびびるという設定があるので、これまでアクアと接点の無かった俳優さんの中から選んだ。
 
が!
 
「幼稚園の娘に頼まれちゃって、アクアちゃん、サインもらえる?」
などと言ってきたりして、撮影後はとても仲よくなった!
 
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8月、いくつかの大学の囲碁部に出張撮影に行き、ヒカル(アクア)・和谷(松田理史)・伊角(計山卓)の3人で打ちまくる。これを4日間撮影している。撮影は窓を開け、扇風機で風を起こして強制換気する中で行っている。昼間は猛暑でとても撮影できないので、全て夜中の撮影である。
 
もっとも、アクアにしても大学生にしても深夜の撮影は全く平気だった。
 
8月の中旬に1週間掛けて本選の様子を撮影した。出演者は和谷・伊角・越智・奈瀬・福井・椿のほかは、高校生や大学生の囲碁部員に参加してもらっている。1日2局で進行するが、これも重要対局だけアクアで撮り、それほどでもない対局は葉月が代行している。
 
鍵となる対局以外はマジ!で打ってもらっている。
 
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撮影は8月24日(月)に全て完了した。
 
最後の会話
「奈瀬さんは女流枠の試験受けるの?」
「うん。本当は一般の本選で合格したいけど、いつまでも院生やってるのもかったるいしね」
「奈瀬さんならきっと合格するよ」
「進藤さんが女流枠試験に来るならかなわないと思ってたけど、一般本選で合格してくれたから、凄く楽になった」
「俺は女流枠試験には出られないよ!」
「それずっと怪しいと思ってるんだけど」
 
 
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夏の日の想い出・龍たちの讃歌(16)

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