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■夏の日の想い出・つながり(16)

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6月18日(月).
 
政子はまた○○産婦人科に行き、診察を受けた。
 
「きれいに着床していますね。妊娠成功ですね」
「良かった」
「でもまだ妊娠初期では不安定なので突然胎児の成長が止まったり、あるいは流産ということもありますので、覚悟はしていてください。過度な運動などはしないように」
「分かりました。気をつけます」
「このあとしばらくは2週間に1度来院してもらえますか?」
「はい、そうします、予定日はいつになりますかね?」
 
医師はパソコンの画面を見て確認する。
「来年の2月24日ですね」
「結構早いんですね。10月10日(とつきとおか)というから4月頃かと思っちゃった」
 
「その『十月(とつき)』は1オリジンで数えているから数学的には9ヶ月なんですよね。それにプラス十日、つまり約2週で」
「なるほどー」
「2週ずれるのは、排卵・受精は生理周期の真ん中で起きて、出産は月経と同じ生理周期の端で起きるからですね」
「そうか。出産って、でっかい月経なんだ」
「そうですよ。10回分の月経をまとめてやるんです」
「そうだったのかぁ」
 
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「しかもその『月』も4週間のことだから、太陽暦の月より短いんです。30.6日単位にすると、受精から出産までは8.7ヶ月しか無いんですよ」
「ああ。確かに」
と政子は言った。政子の頭の中で(4x9+2)x7÷30.6という計算式が浮かんで瞬間的に8.6928という数値が浮かんだ。
 
「そうだ。性別はいつ頃分かりますか?」
「そうですね〜。結構個人差があるんですよ。分かりやすい子もいれば分かりにくい子もいる。概して男の子のほうが早く分かることが多いです。まあ5ヶ月か7ヶ月くらいですね」
 
「かなり先ですね。でももうどちらかに決まっているんですよね?」
「ええ。受精した時に、その精子がX精子だったかY精子だったかで決まっていますから」
「途中で変わることは無いんですか?」
「それはありません」
 
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「男の子が生まれたら、おちんちん切ってくれたりしませんよね?」
「えーっと。。。それは生まれてからあらためて外科か何かで相談して下さい」
と医師は困ったような顔で言った。
 

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同日。私がマンションでひたすら楽曲を書いていたら、午前中に丸山アイ、午後から千里が来訪して、先日預けた曲をリファインしたものを渡してくれた。
 
「凄い!これが本来の水沢歌月レベルだよ」
「でも今ケイさんはここまで楽曲を調整するだけの精神的なゆとりが無いでしょ?」
とアイは言う。
 
「そうなんだよ。もうとにかく書き上げたら即下川先生の所に送ってる」
「でもケイさんが凄いペースで楽曲を書いてくれているので、引退させる予定だったのが、曲をもらえた歌手もいるようですよ」
 
「それは良かった」
 
「たぶん、その中からヒット曲出して復活する人もいますよ」
とアイは言う。
 
「そうなるといいね」
 

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2018年7月4日(水).
 
私は葵照子(田代蓮菜)からの電話でそのことを知った。
 
「え?千里の旦那さんが亡くなったの!?」
「うん。私もびっくりした。建設現場で上から落ちてきた建材に押しつぶされたらしい」
「えっと名古屋だよね?」
 
多分蓮菜が認識している“千里”は名古屋に行っている千里(千里1)のはずと思ったが念のため確認する。
 
「そうそう。会社内で新しい棟を建設していた所だったらしい」
「じゃ労災か・・・」
 
「いや、それが労災とは認定できないような状況だったらしくて」
「なんで?」
「信次さんは、その建設には全く関わっていなかった。だから無関係なのに、立入禁止区域に入って死亡している」
「仕事ではないということ?」
「そのあたりがよく分からない。私も今から名古屋に行く」
 
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「分かった。何か詳しいことがあったら連絡ちょうだい」
「うん」
 

蓮菜から再度連絡があったのは、もう22時すぎであった。
 
「まだ現地に居たいけど、私は仕事があるんで最終新幹線に乗った所。現地に桃香ちゃんがいるし、青葉ちゃんも、名古屋に向かっているみたいだから、何かあったら、桃香ちゃんに電話して。電話番号分かる?」
 
「うん。桃香なら大丈夫」
 
「それで、まだ明確な状況が分からないんだけど、どうも信次さん、浮気していたみたいでさ」
「あぁ・・・」
 
「信次さんが浮気していたというのは、何人かの同僚の口から聞いた」
「うーん・・・」
 
「それでその浮気相手が名古屋支店に来て、信次さんと言い争いになったみたいなんだよ。それでその彼女が走り出して危険区域に入ってしまったので、危ない!とか言って、彼女を追いかけて、その彼女の上に建材が落ちてきたのをかばって自分が下敷きになってしまったみたいなんだよ」
 
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「うわぁ」
 
「信次さんが彼女を突き飛ばしたので、彼女は無事。その付近は上にいた建設作業員の人たちが目撃している」
 
「彼女には怪我は無いの?」
「うん。信次さんが突き飛ばしたんで、その時転んで手足をすりむいた程度」
「でも何があったんだろう?」
「その付近については、彼女が落ち着くのを待って事情を聞くことになるみたい。彼女が万が一にも自殺したりしないように、女性社員2人が付いて絶対に目を離さないようにしているらしい」
 
「うん。信次さんが自分の命に替えて助けたんだもん。死なれては困るよ。千里の様子はどう?」
 
「放送禁止用語だけどさ。廃人同然の状態」
「うわぁ・・・」
「何か話しかけても心ここにあらず。たぶん私が来ていること自体、全く認識していなかった。実際、魂の中心と身体の中心が容易にずれてしまう感じ。私も向こうにいる間に3回くらい修正してあげた。青葉が到着したら、その付近だけでも何とかしてくれると思う」
 
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「千里は去年からさんざんな目に遭ってるね」
「やはり去年の春に落雷に遭った時から、変な枝道にはまりこんでしまったんじゃないかという気がする。あれで明らかに千里の霊感が落ちた。それが今回の事件にまで繋がっている気がするよ」
 
「そうかもね」
 

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私は時間を見計らって桃香にも連絡してみた。桃香は既に私に連絡が入っていること自体に驚いていたようだが、詳しい状況を話してくれた。
 
「アパートでガス爆発!?」
「そうなんだよ。信次さんが亡くなったという連絡を受けた所にちょうど私が行ってさ。茫然自失になっているのを励まして、病院に連れて行ったんだよ。ところが私たちがアパートを出てすぐくらいの時間に、下の階の住人の部屋でガス爆発があって、アパートが崩壊したらしい」
 
「なんてこと・・・」
 
「それがさ、私はこういう話よく分からないんだけど、誰かが千里に強烈な呪いを掛けたみたい」
「え〜〜〜!?」
 
「それを信次さんが肩代わりしてあげたみたいなんだよ。ガス爆発はその呪いの最後っ屁じゃないかと青葉は言っている」
 
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「その呪いを掛けた相手は?」
「青葉が言うにはさ、それが信次さんが自分の身を犠牲にして助けた彼女ではないかと」
 
「嫉妬か・・・」
 
「そうそう。たぶん信次さんの愛人が、本妻の千里を恨んで呪い殺そうとしたのではないかと。これ、青葉の見解」
 
「じゃその事故が起きる直前に信次さんが彼女と言い争っていたというのも、そのあたりの揉め事か」
 
「おそらく、いつ奥さんと別れてくれるのよ?とか、そんな話だったかも」
 
「うーん・・・・」
 
「ただ青葉は、それだけでは割り切れないものがあると言っている。明日の午前中にも、会社のカウンセラーが彼女から事情を聞くという方向なんで、それで何か分かるかも」
 
「分かった」
 
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深夜になってから、千里2から電話があった。
 
「今どこに居るの?」
「いったん日本に戻ってきたところ。私もちょっと参った。悪いけど、しばらく千里1は作曲どころか編曲とかもできない状態になると思う」
 
「それは仕方ないよ。新婚早々の夫が事故死なんて」
 
「醍醐春海と琴沢幸穂の統括をしている、天野貴子さんと話したんだけど、千里1が使っていたパソコンのハードディスクがガス爆発現場から回収できたらしい。そこからたぶん作りかけの楽曲とかが取り出せると思うから、それをゴールデンシックスの花野子に調整させると雨宮先生は言っている」
 
「カノンも忙しいでしょ?」
 
「うん。彼女も上島代替作戦に駆り出されているから。でも取り敢えずはこちらを優先してさせるということ。花野子にとっても、少し気分転換になるんだよ。ひたすら楽曲書いていたら、精神的に疲労するから。ケイほどじゃないけどね」
 
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「うん。こないだも指摘されたけど、かなり疲労している」
 

7月5日のお昼になって、桃香から連絡があり、信次さんが死亡した時の状況が分かった。
 
「昨日言っていた、信次の彼女なんだけど、実際は彼女の完全な片思いで信次さんと具体的な関係があったわけではないみたい」
 
「そうだったんだ!」
 
しかしそれでは信次さんが浮気していたと同僚が言っていたという蓮菜の話はどうなんだろうと私は思った。ひょっとして他にも彼女が居た??
 
「それで一方的に千里のことを恨んで強烈な呪いを掛けたのだけど、呪いを掛けてしまった後で、冷静になったらとんでもないことしてしまったと思い直して、それを停めに来たところで信次さんと言い争いになったらしい」
 
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「あぁ・・・」
 
「自分が全部悪い。死んでお詫びをしたいとか言っているのを、せっかく信次さんが自分の命に替えてかばってくれたのに、死んだらその好意を無にするよ、と信次さんのお母さんが言ったらしい」
 
「お母さんがいちばん辛いだろうに、よく言ってあげられたね」
 
「それで泣いてこちらも半分放心状態のよう。そちらは会社の人が責任持って付いてて、当面絶対にひとりにしないようにすると言っていた」
 
「これ以上死なれたらたまらないよね。ガス爆発の方は?怪我人は?」
 
「それが誰一人として怪我してない」
「うそ!?」
 
「全員出かけていたらしい」
 
「それは良かったね。みんな仕事に出かけていたか何か?」
「それが全員が各々異なる理由で出かけていて、結果的に誰も居なかったということ」
「へー!」
 
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「1人は小学生のお子さんが具合が悪くなって迎えに行ってた。1人は先着5名様とかのを買いに出てた。1人は風邪で休んだ人の代わりを頼まれて急遽出かけた。1人は幼稚園が臨時で休みになっていたお子さんが突然ナガシマスパーランドに行きたいと言い出したので一緒に出かけた。1人は実家から急な呼び出しがあって出かけた。1人は紛失したクレカを届けてくれた人があると警察から連絡を受けて取りに行った。1人は唐突にパチンコしにいきたくなって出かけた。それで千里は信次さんが亡くなったという連絡で私と一緒に病院に行ったし」
 
「凄い偶然だね!」
「うん。そういうこともあるんだね」
 
「昔アメリカで教会が爆発したのに、全員別々の理由で遅刻して、死者が出なかったということがあったんだよ」
「あ、それ聞いたことある」
 
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1950年3月1日19:27、ネブラスカ州BeatriceのWest Side Baptist Churchでの出来事である。本来は19:20から聖歌隊の練習が始まる予定だったので、ちゃんとその時刻までに聖歌隊のメンバーが来ていたら、この爆発に巻き込まれていた所だった。しかし15人の聖歌隊のメンバー全員が異なる理由でこの練習に遅刻してしまったのである。
 
牧師と妻と娘は、娘の洋服が汚れていることに気付き、他のドレスを出してきてアイロンを掛けている内に遅れてしまった。Ladonaは幾何学の宿題がなかなか解けずに遅刻してしまった。Royenaは車のエンジンが掛からずLadonaに乗せていってと頼んだが、そのLadonaが宿題で苦しんでいた。Sadieもやはり車のエンジンがどうしても掛からなかった。Schuster夫人と娘は母の家に呼ばれたため遅くなってしまった。
 
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Herbertは大事な手紙を書いていて遅くなった。Harvey氏は妻が出かけていたため子供の世話をしている内に遅くなった。ピアニストのMarilynとその母は、夕食後にふたりともついうたた寝をして寝過ごしてしまった。Lucilleはその日のラジオ番組があまりに面白くて最後まで聴いていたかったため、遅くなった。友人のDorothyは彼女をずっと待っていた。
 
そしてJoyceはこの日寒かったので、もう少し家で暖まっていようと思い遅くなった。彼が渋々家を出て19:27頃に教会に到着する。彼はてっきり自分が最後に教会に到着したと思っていた。そして彼が教会のドアを開けた途端、教会は物凄い音を立てて爆発、屋根は崩れ落ちて瓦礫と化した。
 
Joyceはドアの下敷きになって軽傷を負ったものの(そのドアが防護壁になって彼自身あまり怪我せずに済んだ)、それより教会の中に多数の友人がいたと思い、大声でみんなの名前を呼んだ。しかし実はこの日教会に到着したのは彼が最初だったのである。
 
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かくして全くの偶然の積み重ねによって、この教会の爆発事故では、ひとりの死者も出なかったのであった。
 
 
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■夏の日の想い出・つながり(16)

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