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■夏の日の想い出・つながり(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-03-16
 
5月下旬。私と「その内婚約することを約束している」木原正望がマンションにやってきた。
 
「フーコ、大変そうだね」
「たいへんだよぉ、もう毎日必死で曲を書いているから、頭がふわふわしている感じ」
 
「全然休めないの?」
「とても休む暇が無い。外出するのも夕食の買物に出る間くらいだよ」
「夕食の買物こそ誰かに頼めばいいのに」
「それが貴重な気分転換の時間だから」
「なるほどー。大変なら僕が何か買ってきてあげようかと思ったけど、要らないかな?」
と正望が言うと、政子が
「ケンタッキーがいい」
と言った。
 

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それで正望がチキン8個入りセットを2つ買ってきた。
 
「美味しい美味しい」
と言って政子はご機嫌である。
 
「正望さんはお仕事忙しいの?」
と政子が訊く。
 
「実は***の集団訴訟に参加することになった」
「あれをやるんだ?」
「きちんと証拠固めしていけば勝てると思うんだけど、証言してくれる人を集めるのが大変そうで」
「元従業員とかは口が硬いだろうね」
「守秘義務と真実の解明のどちらを優先すべきかという問題があるしね」
「だったら、かなり忙しくなる?」
「忙しくなる。特に僕なんかは下っ端の使い走りで全国飛び回らないといけない」
「大変そう」
 
「それでフーコ、しばらく会えなくなるかも知れない」
と正望が言うと
「そもそも2人は全然デートしてない」
と政子が指摘する。
 
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「それはそうなんだけどねー」
と私。
 
「それでさ、フーコ、婚約しちゃわない?」
「ん?」
 
「ふたりって婚約してたんじゃないんだっけ?」
と政子。
 
「指輪はフーコの指に合わせて買ってるけど、受け取ってくれないんだよ」
と言って、正望は青い宝石ケースを出す。
 
「それいつ買ったの?」
「2011年11月15日」
と私は答えた。
「よく覚えてるね!」
と正望が驚いている。
 
政子は少し左上の方を見るようにしたが、
 
「その日って大安だ!」
と言った。ここでパソコンとかスマホなどを使わなくても六曜が分かってしまうところが“人間コンピュータ”の政子である。
 
「あぁ。そんなこと宝石店で言われた気がする」
と正望。
 
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「でも入るの?7年も前なんでしょ?」
と政子は言っている。
 
私は少し考えてから言った。
「じゃ入ったら受け取る」
「うん」
 
正望が指輪ケースを開けてダイヤの指輪を私に渡す。私は左手薬指に填めてみる。
 
「入ったね」
「少し緩い気がする」
「最近忙しいからきっと体重とかも落ちてるんだよ」
「そうかな。きついからたくさん食べてるのに」
「そんなに食べているとは思わないけど」
「まあ、マーサに比べたら、美空とか以外はみんな少食かもね」
 
ともかくもそういう訳で私は正望と婚約することにしたのである。
 
「じゃ、結納もしようよ」
「いいけど、結婚は少し待って。とても今結婚なんかできない」
「うん。僕も今すぐ結婚は無理。今年はいつ東京に戻ってこられるかも分からない」
 
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それで私と正望は双方の母をマンションに呼んだ。ふたりは私と正望が婚約したと聞いてびっくりしていた。
 
「あんたたち、もう自然消滅かと心配してた」
「その内婚約すると約束してたから」
 
「それで式はいつあげるの?」
「少なくとも今年は無理」
と私。
「たぶん2−3年は無理」
と正望。
 
「なんで〜?」
と双方の母が言うが
 
「だって無茶苦茶忙しいんだもん」
と私も正望も言った。
 
「それでさ。提案」
と政子が言った。
 
「結納の品を揃えたりするのは双方のお母さんに任せて、取り敢えず今日はふたりで、どこかホテルにでも泊まったら?」
 
「えーっと・・・」
 
「正望さん、今日は休めるの?」
「明日の朝から札幌に行ってこないといけないけど、今日は休める」
「だったら私がホテル取ってあげるよ」
 
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そう言って政子は椿山荘(ちんざんそう)に電話すると、庭付きスイートが空いていたので、それを予約してしまった。1泊30万円である。値段を聞いて正望が「ひゃー!」と驚いている。
 
「代金は私が出してあげるね」
と言って、金庫を開けて現金を出してくると30万円数えて私に渡し、管理簿に記入した(現金は私と政子の共同管理のものとして用意している。管理簿に出し入れを書いて、定期的に精算する)。
 
「まあ、たまには休むのもいいかな。じゃ、チェックインタイムになったら行ってこよう」
と私は苦笑しながら言った。
 
「正望さんは次いつ休めるの?」
「分かりません。たぶん月に1度くらいは休めると思うのですが」
 
「じゃとにかく結納品セットを用意しよう」
と正望の母。
「それで正望さんの休める日が決まったら、その日に結納ということで」
と私の母も言った。
 
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それで私は久しぶりに正望とデートすることになったのである。
 
「フーコ、前回いつデートしたか覚えてる?」
「ごめん。全然覚えてない」
「一昨年の12月13日」
 
「それ、正望さんが司法修習生の修了試験に合格した時では」
と政子。
 
「そういえばそれ以来会ってなかったかも」
「去年は何度か電話したけど、忙しいから無理と言われた」
「まあ去年はとても余裕が無かったね」
「今年は去年以上に余裕が無い気がする」
 
「次デートするのは結婚式の日だったりして」
と政子は言ったが、本当にそうなるかも知れない、と私は思った。
 

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なお、私の婚約については、正望とのデートが終わった翌日、まずは兼岩会長、そのあと丸花社長、紅川会長、と私が直接訪問して承認を得て、そのあと畠山社長、松前社長、町添専務、浦中副社長、津田姉弟、秋風コスモス社長、前橋社長、観世社長、に各々電話して伝え、そのあと必要な人にメールで伝えた。
 
それで最初に兼岩会長と話した段階で、結婚するのがおそらく数年後という状況なので、マスコミなどには発表せず、聞かれたら答えてもいいことにすることにした。
 

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これはずっと後に本人から聞いた話である。
 
私と正望が一緒にタクシーで椿山荘に行き、私の母と正望の母が一緒に結納品セットを買いに行った後、政子はマンションでおやつを食べながら男の娘陵辱ビデオ!?を見ながら「やはり男の娘は無理矢理責めるのがいいよね〜」などと言って楽しんでいたが、唐突に
 
「冬の馬鹿!」
と叫ぶと、ビデオを停めて「マニュアルに従って」ちゃんとDVDを片付けた後で自らリーフを運転して、港区内の亮平のマンションに行った。
 
(姉が来ている時に突然凄いビデオが再生されて「私だからよかったものの」と注意されて以来、きちんと「マニュアル」を守っている。政子のようなタイプはいったん覚えた手順はきちんと守る)
 
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近所の駐車場に駐め、持っている鍵で勝手にエントランスを開けて、部屋に行く。そして勝手に玄関を開けて中に入る。
 
「亮平いる〜?」
と言ったら、目の前にびっくりした顔をしている女性がいる。
 
「原野妃登美ちゃん!?」
「マリちゃん!?」
 
「あっ、えーと・・・」
と亮平が困ったような顔をしている。
 
「亮平、妃登美ちゃんと付き合ってるの?」
「亮平君、マリちゃんとは切れたんじゃなかったの?」
 

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「私は亮平とは別れたよ。だからただの友だちだから気にしないで。デート中だったら御免ね。私は帰るから」
と政子は言う。
 
「私はまだ亮平君とは付き合ってないよ。口説かれて、まあいいかなと思って部屋まで付いてきたけど、まだ1度もしてないよ」
と妃登美は言う。
 
「でもマリちゃん、別れたけど、鍵は持っているんだ?」
「友だちだし」
「友だちだと鍵を持つんだ!」
 
亮平は更に困ったような顔をしている。妃登美と政子は微妙な笑顔で相手を見つめた。
 
「マリちゃん。物は相談」
「何?妃登美ちゃん」
 
「今夜亮平君と一緒に過ごす権利を賭けて、勝負しない?」
「ああ、それもいいね。何の勝負をする?」
「オセロとかは?」
「いいよ」
 
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「念のため言っておくけど、私、オセロは強いよ」
「私もわりと強いよ」
 

それでふたりはオセロ盤を出してきて、ゲームを始めた。じゃんけんで妃登美が勝ち、妃登美は後攻を選んで白を持つ。政子は黒を持ち、4つの石を中央に並べた後、政子から打ち始めた。
 
(オセロ(リバーシ)で先攻と後攻のどちらが有利かは未解析である。4×4盤・6×6盤では後攻有利というコンピュータの計算結果が出ている。実際8×8盤のふつうのオセロでも後攻を好む人は多いが、ハイレベルの人同士の勝負では先攻と後攻に有意な勝率差は出ていないし先攻を好む人もいる。但し低レベルの人同士だと後攻が有利である)
 
対局はゆっくりとした速度で進んだ。
 
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どちらもしばしば長考する。
 
「マリちゃん、強いね」
「妃登美ちゃんも強いね」
 
勝負はかなり複雑になっており、観戦しながら2人に甘いコーヒーを入れてあげていた亮平も腕を組んで考え込んでいた。
 
1時間も掛けた勝負が決着する。
 
「負けたぁ!」
と政子は両手を頭の後ろにやって言った。
 
「勝ったけど、最後の最後まで勝てないかもと思ってた」
と妃登美も額に手をやりながら言った。
 
「なんか凄い勝負だった」
と亮平も言った。
 
「負けたから仕方ないや。今夜の亮平のおちんちんは妃登美ちゃんに譲ってあげるよ」
 
「じゃ、亮平君のおちんちんもらった」
 
「ちんちんを賭けた勝負だったの〜?」
と亮平が声をあげる。
 
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「明日の朝、そのままおちんちんだけ切り取って持ち帰ろうかな」
「それは困る」
 
「代わりにゴムホースでもくっつけておけばいいよ」
「ゴムホースなの〜?」
「実際役割の大半はそれだし」
「いやそれ以外にも大事な役割がある」
 

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「結婚するの?」
と政子は妃登美に訊いた。
 
「私、レコード会社首になっちゃったんだよねぇ」
と妃登美が嘆くように言う。
 
「嘘!?」
 
「私、上島雷太先生から曲をもらっていたけどさ、先生がああなっちゃったでしょう?それで上島先生が書いていた曲をたくさんの作曲家さんで代替することになったらしいけど、私は年齢も高いし、それほど売れている訳でもないから、代替曲まで確保できないから、もうあんたは引退しなさいと言われて」
 
「あらぁ・・・」
 
「だから、私、田舎に帰ってお見合いでもしようかと思ってる」
「そうなんだ!?」
 
「だから今夜亮平君と寝られたら、それを想い出に田舎に帰るよ」
と妃登美。
 
妃登美は政子より4つ年上である。確かに30歳を越えた歌手にレコード会社もプロダクションもあまり積極的にはなってくれないだろう。
 
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「亮平、だったら妃登美ちゃんを奥さんにしてあげなよ」
と政子は言った。
 
「ちょっと待って。まだ最初のデートだから、あと何回かデートしてから」
と亮平は焦っている。
 
「ううん。亮平君の奥さんとかになっちゃったら、私、華やかな芸能界のこと忘れられなくて、また歌手として復帰できないかなあとか考えたりして、結局不幸な人生を歩んでしまう気がする。14年間歌手としてやってきてゴールドディスクも1度も取れなかったし、きっぱり諦めて普通の主婦になろうと思う。だから、私、亮平君と結婚までするつもりはないよ」
と妃登美は言う。
 
「何ならケイに言って妃登美ちゃんに売れそうな曲を書いてもらおうか?」
「ううん。私も引退の潮時だと思うし。赤ちゃん産むこと考えてもそろそろ産んでおかないとやばいしね」
 
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「赤ちゃんかぁ。私も産んじゃおうかな」
「マリちゃんは契約でまだ産めないということは?」
「26歳までは産まないという口約束だったんだよ。だから今から仕込めば違反にならない」
 
「亮平君の子供産むの?」
「どうしようかなあ。まあ私は亮平と結婚するつもりはないんだけどね」
「ふーん・・・・」
「そうだ。妃登美ちゃんが亮平の子供産むとかは?結婚しなくてもきっと毎月400万くらい養育費で送金してくれるよ」
「待って。さすがに400万は無理」
 

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夏の日の想い出・つながり(9)

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