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■春三(23)
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ところで『黄金の流星』が公開(6.14)されて以来、アクア姉?が松田理史と恋愛関係にあるのでは?という噂が出た。その問題について2人は特に否定せず
「アクアちゃんですか?彼女と恋人になれたら嬉しいですね」
「松田理史君かぁ。彼とはデビュー直後からの長い付き合いだし、もしプロポーズされたら考えちゃうかもね」
などと述べた。2人は事実上交際を認めたのではと世間の人は判断した。報道機関も§§ミュージック(というよりそのバックにいる∞∞プロの鈴木社長)のご機嫌をそこねたくないので、これ以上は突っ込まなかった。
しかしコスモスは、噂が一人歩きしアクアの熱狂的なファンが理史に危害を加えてはならないと考えた。それで理史の事務所社長とも話しあった上で、彼に運転手兼任でボディガードを付けることにしたのである。
“アクアが”雇ったボディガードは2人である。いづれも§§ミュージックと長い付き合いの警備会社から紹介された人で、その警備会社の元社員である。個人的な都合で円満に退職していたものだが、ちょうど仕事を探していたらしい。2人とも個人的にお金が必要とかで高額報酬のこの仕事に飛び付いた。2人の身分はその警備会社に形の上で復職した上でアクアの個人会社への出向とする。
2人とも常に防弾チョッキを付けている。またSP専門の高額の保険に入っている(保険料もアクアが払っている)。
東名高(とうみょう・たかし 34)は普通免許2種、大型免許、牽引免許、大型二輪免許、および国内A級ライセンスを所有していて運転歴16年。そして柔道四段の猛者である。堂々とした体格の持ち主であり、彼が理史のそばに居たら襲う気も失せるだろう。その存在そのものが防御効果を持つ。
結婚歴はあるが現在は独身。義父と2人で返していた住宅ローンが義父の急死で彼だけに掛かって来て返せなくなりお金が必要だった。アクアが保証人になってあげて信販会社は新たなローンに借り換えることを認めてくれた。
もう1人は中央圭(なか・おうか 32)という男の娘さんである。男の娘さんだが恋愛対象は女性と自己申告しているし、実は事実上の妻がいるので雇うことにした。運転歴12年、大型2種・牽引・大型自動二輪と国内A級ライセンスを持っており、剣道四段・空手初段である。
常に特殊警棒を隠し持っている。彼女は理史のマネージャーの名刺も持っている(理史の事務所から発行してもらった)。いかにも無害なおばちゃんに見えて実は無茶苦茶強いのがミソである。
彼女は以前の恋人女性(現在でも事実上の妻)との間に子供が居て生活費を毎月渡している(正確には給与振込口座のカードを奧さんが持っている!)。
向こうの親に反対されて結婚できなかったらしい。月に1回程度会っているが子供からは「おたあちゃん」と呼ばれている。現在はもう男性能力は無いが、性転換手術は受けていない。でも警備会社の同僚女性によるとヌードは女性にしか見えないらしい。
その子供のうち一番下の子が実は大きな病気をして保険外の治療などもして物凄い費用が掛かっていた。アクアがその費用を肩代わりしてあげてお子さんは無事治療を受けることができ、現在回復に向かっている。また消費者金融などへの借金も全て精算させ、アクアが保証人になって給与振込口座のある銀行に返していく形にした。(実際の作業はアクアの顧問弁護士さんにしてもらっている)
つまりふたりともアクアに大きな恩義を感じている。
一般に借金のある人は「買収される危険がある」としてガードマンなどには雇わないのだが、山村マネージャー(勾陳)はその状況を逆用してアクアの絶対的な味方を作ったのである。
千里はこの2人とは別に精霊のガードも2人、理史に付けている。そちらは常陽健龍・常陽開龍と名乗っている。茨城県出身だが、千里の北海道での事業に長年参加していて千里の信頼も厚い。この2人は(その気になれば)人間の目には不可視の状態でも付いていられるのが良い所である。また.44マグナム程度の弾丸が当たっても平気である。
更にもう1人、雑用係の付き人として山陽司(かげとも・つかさ 20)という俳優志望の男性?も雇っている。格闘技は学校で剣道をやった程度だが、中学時代に陸上部で長距離を走っていたということで体力はある。運転免許は持っている。4月に専門学校を出たものの、仕事を探していたらしい。
小学生の頃劇団に入っていて、実は理史の後輩になる。俳優を志望しているが高校の演劇部は『赤っぽかったので』入らず英語部で英語劇をやっていた。英語は英検の1級を持っている。朗読が日本語にしても英語にしてもとてもうまい。彼とボディーガード(2人の内どちらか)が、いつも理史のマンションに泊まり込んでいる。アクアの家に行く時もボディガードは運転手兼任で付いていく。
4人+1人は連携して行動しており、また交替で休むようにしている。万が一にも理史の生命が奪われるようなことがあったら取り返しが付かないしアクアが受けるショックは計り知れないので、千里は万全を期している。
「理史君、万一殺された場合に備えて君を2〜3人に増やしとく?」
「そういうのは勘弁してください」
理史には例えばコンビニやATMに行ってくるなどの雑用は付き人などにさせて、できるだけ不要な外出を控えるように言っている。また窓は絶対開けるなとも言っている。ちなみに彼のマンションの窓、彼の車の窓などは全部防弾ガラスに交換した。
またA大神によると分裂が可能なのは元々二重体・三重体などの多重体(multimer)の状態にあった人であり、そういう状態でなかった葉月の分裂は“一種の事故”だと言う。
桃香は?
(このシリーズの初期の頃からくすぶっている“桃香実は凄い”説)
11月11日(金).
司法書士試験の合格発表があり、遊佐美里(真白の妻?夫?)は合格していた。彼女は司法試験の予備試験も大学3年の時からずっと受けているのだが、昨年も今年も短答式は通ったものの論文式で落とされている。しかし司法書士試験の方は合格できた。
「おめでとう。独立する?」
とボス司法書士に尋ねられたが
「いえ、ここにこのまま置いてください。給料も今までと同じでいいですから」
「ああ、それは助かる」
やはり上げてくれないのか・・・と思ったが2万円だけ上げてくれた!でも仕事は1.5倍くらいに増えた!!
「なんでぼくがこの書類作らないといけないの?」
と真白は文句を言った。
「真白も法学部卒なんだから、このくらい書けるでしょ?」
「そりゃ法律の条文はだいたい分かるけど」
「じゃよろしくー。真白は試験受けたら行政書士の資格くらいは今すぐ取れると思うけどなー」
「資格取っても事務所開けないから取る意味無い」
という訳で真白に半分くらい下書きさせている状況である!
「あ、そうだ。私当面仕事忙しいからさー。赤ちゃん欲しかったら真白が産んでね」
「無理〜!」
11月13日(日).
大学を受験する生徒のための最後の模試が行われ、S市の遙佳、氷見市の愛佳と舞花、金沢市の双葉などがこれを受験した。この結果は12月上旬に通知され、その結果をもとに、志望校を絞り込むことになる。
11月14日(月).
“きつねうどん”南砺店がオープンした。スタッフは全員おキツネ様であるが、このお店は実は暫定的に留萌・旭川近辺の“一族”のキタキツネで運用している。
実は能登近辺でキツネの寄生虫駆除を始めてからまだ年数が浅く、地元の寄生虫フリーなキツネだけではスタッフの人数を確保できなかった。それでもう20年くらい寄生虫駆除をしている北海道留萌・旭川のグループに出張してもらったのである。ホームシックにならないよう一応一ヶ月交替ということにしている。
ここのグループが北海道に戻った時のために“きつねそば”留萌店・旭川店も作り、“きつねうどん”南砺店と一体にして運用することにした。
スタッフの移動は、(西の)千里のBeach Jet 400XPR(人間なら!9人乗り)を富山空港と旭川空港の間で飛ばしておこなう。
開店日を予告していたので『霊界探訪』の取材班(明恵・真珠・初海・双葉)が初日に来て、撮影して行った。この4人は“マイ丼”をこちらでも使いたいということで、氷見店のストッカーから出してもらい、それを持参してうどんを入れてもらっていた。
11月21日(月).
古庄夏樹(モニカ?)を中心に設計が進められていた火牛アリーナのパイプオルガンの建設がいよいよ始まった。冬季に入るが建設作業場自体を大きな屋根と壁で覆い、雪風を気にせず作業ができるようにする。こういうのは雪の多い播磨の山中や北海道などで長年仕事をしてきた播磨工務店の得意とするところだが、巨大な覆いを見て夏樹は感心した。
なお建設中もアリーナ自体は普通に使える。公演中は工事を中断する。防音性能は多少落ちるが、広い火牛スポーツセンターの中にあるので騒音害などは発生しない。また多少換気が良くなる!
建設に当たっては千葉本社の坂本課長がこちらに来て、指揮を執っている。また技術継承のため、本社にいた時の夏樹の部下でもある安藤拓朗・朝日なずなの2名も来ている。
この3人の住まいは火牛アリーナの近く、津幡町内に土地を買って播磨工務店にユニット工法で家を建てさせており、通勤用に自動車も貸与した。短期間なら火牛ホテルに泊める手もあるのだが、ホテルより家のほうがリラックスして休めるでしょうということになった。
このプロジェクトは最初に主導していた担当者が過労死しているので、労務環境にはかなり配慮されている。原則として21時以降の作業を禁止している。
なお作業の応援で1ヶ月程度以内こちらに滞在する技術者は火牛ホテルに泊める。また技術者の往復にはムーランが最近買ったDo228(定員19) を使用して、調布から氷見に運ぶが、「プライベート飛行機って凄い」と歓声が上がっていた。
「ムーランはジェット機も多数持ってるけど、熊谷の郷愁飛行場から富山空港か能登空港になるから、そこまでの移動が大変なんだよ」
「それは確かに大変な気がする」
「でも飛行機たくさん持ってるって儲かってるんだね」
(実態は若葉がお金を減らしたいから。でも資産はどんどん増えてる)
坂本課長たち3人に付いては雪道の運転に慣れていない彼らのために専任運転手を付けることにした。これはムーランのお弁当の配送をしている信頼できる各同性ドライバーを3人、冬季の間だけお願いした。彼らは昼間はお弁当の配送をするが、夜坂本らが帰宅する時に送っていき、そのまま家に泊まり翌朝火牛アリーナまで送る。
雪掻きが必要な場合は播磨工務店の雪掻き部隊が出動する(近隣の家々にもありがたがられることになる)。
朝日のドライバーに指名された寺島久美は言った。
「いくら1階と2階といっても男性の家に泊まり込むのは勘弁してほしいんですが。一応私未婚だし」
「大丈夫だよ。ぼくも女だから」
「え〜〜!?」
朝日さんはいつもパンツルックである(*52)。FTMでもビアンでもないと(本人は)言っているが、髪も短くしているし、お化粧など全くしないので、見た目は男性と思う人が多い。(一応スカートは持ってるしプライベートでは穿くこともあるらしい)
「一緒にお風呂入って見てるから彼女が女なのは間違いない」
と同僚の若松一恵の証言。
(*52) YY楽器には(音楽教室部門を除き)現在服装規定が実質無くなっている。一応“標準服”は定められているが(希望者に無料貸与)、私服で勤務してもよい。その際、女子のパンツも男子のスカートも構わないことになっている。音楽関係の会社だけあって、男子のスカートもわりと居る。一応客先訪問する時は、標準服かスーツか社名の入った作業服(無料貸与)を着る規定。朝日はそういう場合は作業服である。
夏樹と優子の子供・奏音(かなで/夏樹が正式に養子にしている)は来年度から小学校に入学する。ランドセルは、夏樹の母・優子の母・信次の母が3人で話しあった結果、優子の母が買ってあげることにして、夏樹の母と信次の母は入学祝いを贈った。奏音はさっそくランドセルをしょって楽しそうに走り回っていた(入学までに壊さなければいいが)。
富山市内に住む桃香の子供?海老珠那(えび・じゅな)が来年度から中学に進学するので、桃香は会いに行ってきて本人に「早めのお祝い」と母親の弥生には、制服代を渡してきた。ついでに電子辞書をねだられたので買ってあげた。
更についでに弥生の父と飲み明かした!(能登の地酒“竹葉”を持って行った)。桃香と弥生の間に既に恋愛感情は無いものの、弥生の父と桃香の関係は良好である。
弥生の父は桃香を男と思い込んでいる可能性がある!
弥生に毎月送金している養育費は実際には千里から借りているものだが(多分返せないし幾ら貸したか千里も桃香も覚えていない)、この制服代・電子辞書代とお祝いは桃香が自分の給料から払った。
11月下旬、青葉・明恵・真珠が青葉邸のサンルームでお茶を飲んでいたら初海がNinja250でやってくる。
「ねね、裏話とか聞きたくない?」
と初海は言った。
「聞きたい聞きたい」
「仕事で失敗したA男(26)さんさ、同僚で結婚とか諦めていた38歳の女性課長がさ、ネットで急速に親しくなった元同級生の子供を妊娠して急遽結婚することになって大阪に引っ越しちゃうらしいのよ」
「ほほお」
「38歳の妊娠なんてたぶん子供を産む最後のチャンスじゃん。だから結婚がバタバタと決まったらしくて。課長にまでしてもらったのに結婚のために退職なんて心苦しいけどと言ったけど、自分の人生を大切にしなさいと女性の専務に言われたらしい。この専務は社長の妹さんね」
「ふむふむ」
「その元同級生は5年ほど前に奧さんから離婚されて子供も母親に付いていったから凄く寂しい思いしてたらしい」
「ああ、それは寂しいよね」
「でもその課長さんが退職するとA男さんを処分した場合戦力が足りなくなるからクビにできなくなったらしい」
「それ誰も傷ついてないね」
「そそ。どうもこの妖怪さんはネガティブなことが嫌いみたい」
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