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■春三(22)

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午後からは鈴鹿美里のおふたりをお迎えした。彼女たちは双子姉妹のユニットである。ふたりは顔もよく似ているので、鈴鹿ちゃんと美里ちゃんを見分けるのはとても難しい。2人は髪型もそろえて、いつも同じ服を着ている。
 
ただし彼女らは一卵性双生児ではない。しかし容貌が似すぎているので千里や青葉の推測では“半一卵性”ではないかと。このことにはインタビューではふれない。
 
「今月でデビュー10周年ですね」
「そうなんですよね。芸能界は競争厳しいから2年も生き残れたら上出来かなぁと思ってたんですが、いつの間にか10年経ってました」
 
これはこのインタビューが2023年4月に放送されることを想定したセリフである。そして今日の取材の内、鈴鹿美里が大内小猫より先の4月9日に放送される理由のもうひとつが、デビュー10周年の4月3日(*49)に近いからであった。
 
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「ところで、どちらか鈴鹿ちゃんで、どちらが美里ちゃんですか」
「さあ、どちらでしょう?」
「視聴者の方々にクイズです。左側が鈴鹿だと想う人は青いボタンを、右側が鈴鹿だと思う人は赤いボタンを押してください」
「いや、うちの番組そんなお金の掛かること、やってないって」
「でも正解は番組の最後に」
 
(*49) 2013.4.3 はデビューシングルの発売日で、初お披露目は 2013.2.23名古屋でのローズ+リリーのライブへのサプライズ・ゲスト出演。その後、いくつかのテレビ番組・ラジオ番組にも「デビュー間近の鈴鹿美里さんです」と紹介されて出演している。
 

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「でも君達、今日は来てないけど、ケイとの関わりが大きいよね」
と千里が言う。
 
「はい。デビュー曲をマリ&ケイ先生から頂きましたし、ローズ+リリーのライブでお披露目させてもらいました。そしてローズクォーツの代理ボーカルもやりましたし。他にもいろいろ個人的に相談に乗って頂きました」
 
「今はお二人とも女性ですよね」
と朱美が訊く。これは聞いて良いと言われていた。
 
「2019年の10月にちょっとしたできごとがあって、私たち2人もマネージャーのクララも3人揃って女の子になりました」
と言いながら美里はチラッと千里を見る。
 
「ああ、3人揃って性転換したんだ」
「ええ。そうなんです。それで兄弟ユニットと男性マネージャーから、姉妹ユニットと女性マネージャーに大変身です」(*50)
と鈴鹿。
 
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マネージャーのクララが笑っている。そこをすかさず撮す。
 
「そういう言い方をすると私まで元は男だったみたいに聞こえるのだが」
と美里。
「まあ過去は問わないということで。今女であれば問題無いよね」
と鈴鹿。
「そうですよね」
と朱美。
 
はるこは話は見えないものの、ドキドキしていた。
 

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(*50) 2019年10月13日、香川県の善通寺境内で鈴鹿・美里・クララの3人はお遍路中の千里(暴走中!の千里1)と遭遇し、握手した。その夜、クララと鈴鹿は女性になってしまった。美里も握手したが、特に性別は変化してない。
 
このお遍路では古庄夏樹(現在優子の妻)とか現在大阪で飲食店を切り盛りしながらローザ+リリンのスタッフも(リモートで)を務めている藤山渚など大量の犠牲者が出ている。“お遍路すると女の子になれる”という噂まであった。
 
それに先立つ7月21日、ロックギャルコンテストの本戦で月乃岬(東雲はるこ)は優勝して、審査員の先生たちと握手した。この審査員の中に、暴走中!の千里1が居て、岬はその夜、性転換手術(4/24)で作った女の身体から、本物の女の身体に変化した。まだ残っていた手術の痛みも消失し、半月後には生理が始まっている。3位になった落合茜(町田朱美)も握手しているが、彼女は別に性別は変化していない。
 
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「こんなこと言うと邪道だと思うんですけど『モスバーガーの歌』が好きです」
と朱美。
 
「いやそう言う方多いです。私たちの最大ヒット曲だし」
と美里。
「『モスバーガーの歌』派と『モスガバーの歌』派がいるね」
と千里が補足する。
 
「どちらも面白いですねー」
 
元は特撮映画『モスラ』シリーズの挿入歌で双子歌手のザ・ピーナッツが歌った『モスラの歌』である。作曲家は古関裕而大先生(*51)。『モスガバーの歌』はアニメ『星のカービィ』の中で歌われたもの(2003.3.15『モスガバーの逆襲!』)で、この曲の替え歌である。『モスバーガーの歌』はラジオ番組で美里がふざけて即興で歌ったものだが、リスナーにうけて「ぜひ音源化を」と言われ、権利者の許可を取って発売されたものである。あちこちのラジオ局でよくオリジナルとセットで流されたりして、大ヒット曲になってしまった。少なくともセールス的には鈴鹿美里最大のヒット曲となっている。
 
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原曲「モスラの歌」(ザ・ピーナッツ・歌):
モスラーヤ・モスラ、ドゥンガン・カサークヤン、インドゥムウー、ルストウィラードア、ハンバ・ハンバームヤン、ランダ、バンウーンラダン
 
モスガバーの歌(ツインナッツ・歌):
モスガバーや、モスガバー、おっきいけれど、どうてんにん、ししゃ(支社?)は、かんだのびーる、ちっちゃな、やまなしに、けんはるは
 
モスバーガーの歌(鈴鹿美里・歌):
モスバーガー、美味しいね。でも持ち帰ってから食べた方がいい。 汁がたくさん垂れるからー、舐めたいけーど、他人には見られたくなーい
 

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(*51) 「モスラの歌」の歌詞に関してはどうも関係者の証言が曖昧である。
 
ひとつの説では日本語の歌詞を“由起こうじ”が書いた。この“由起こうじ”の正体は、田中友幸、本多猪四郎、関沢新一の共同ペンネームとする説と本多猪四郎のペンネームとする説がある。そしてこの歌詞を日本留学中のインドネシア人留学生(氏名不詳)に訳してもらったというもの。
 
もう1つの説は、中野昭慶助監督が述べているもので、4人の助監督でフランス語の原詩を書き、それを英語読みしてからエスペラント語にし、それを歌ったものを逆再生して文字に起こしたものだという。
 
要するに何らかの方法で神秘の島の聖なる歌っぽく聞こえるようなものを作ったということらしい。
 
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歌のコーナーでは千里推奨の『南海の待ち人』を東雲はるこのピアノ伴奏で歌った。2人の故郷の小浜島(こはまじま)をイメージして鈴鹿美里自身が歌詞を書いたもの(作曲は紅石恵子つまりケイ)である。実はシングル化されておらず、アルバムにだけ収録されている。
 
しかしこの放送をきっかけにシングル化の要請がけっこう来て、次のシングルと両A面で発売されることになる。
 

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インタビューが終わった後、鈴鹿美里とマネージャー、ラピスラズリ、千里、の6人で能登空港近くの朱雀林業輪島支店に移動し、そこで夕食を取ってから能登空港に駐めてあるHonda-Jetblackに乗って熊谷に戻った。
 
移動してから夕食を取るのは、お腹が満ちた状態で山越えの道を走りたくないからである!
 

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ところでアクアであるが、『竹取物語』を8月20日まで制作していて、そのあと西宮で写真集の撮影、それからライブをやって9月の前半は大量のCM撮影。後半は『ザ・天下』の事前撮影で富山に行ったりシングルの音源制作をしたりしていた。10月いっばいは『ザ・天下』の撮影をしていたがその途中1日だけ再度西宮に行き写真集の撮り直しをしている。11月頭に解放されたかと思うとミニアルバムの制作をすると言われ、この制作に北陸組(吉田邦生・日高久美子・田中世梨奈・坂上透)とColdFly5がまた動員された。
 
邦生は11月5日に青葉邸で彪志のお化粧をしてあげて、6日はS市から戻って来た真珠と“お弁当琥珀”のお弁当を食べて一緒に休んだ。しかし11月7日(月)に出社すると
「あ、吉田さん、悪いけど1ヶ月くらい東京に出張してきて」
と言われて
「またですか〜?」
ということで着替えと楽器を持って能登空港に移動。久美子・世梨奈・坂上透と一緒にHonda-Jetblackに乗せられて熊谷に移動して、またもやアクアの音源制作に参加することになった。彼女たちは女子寮のA801-A803に泊めた。
 
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A801:久美子 A802:邦生 A803:坂上透
 
世梨奈は昨年同様、明日香のマンションに泊まる。
 
坂上透は邦生や青葉の2つ下の学年で、高岡T高校の合唱軽音部の部員だった。今年の春に大学を卒業したが、コロナ不況で仕事が無く、派遣で食いつないでいたところを偶然遭遇した世梨奈がスカウトした。
 
彼は普通の?“男性”であるが、そのことに花ちゃんは全然気付かず、彼をそのまま女子寮の8階に入れてしまった。彼は健康保険証を持っていない(国保にも入っていない)というので仮に§§ミュージックで健康保険証を作り“坂上透 1999.9.10女”という保険証を渡した。だから彼は当面§§ミュージックの社員である。彼は保険証の性別が女になっていることには全く気付かず、そのまま「ありがとうございます」と言って受け取った。
 
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彼はサックス担当だが高校の時はクラリネットも吹いていた。どちらも高校の備品であった。音源制作に参加するという話が9月に出たので青葉が楽器を買ってあげてずっと練習していた。(邦生以外は9月に言われている)
 

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「昨年は“ゼロティス”とか称してたけど、もう少しまともな名前にして“マリーン・コート”とかはどう?」
「どっからそんな名前が・・・」
 
なおColdFly5の内、栗原リアは音楽的技術が低いのでこのユニットには不参加(不合格)、田倉友利恵も今年はテレビ番組のレギュラーを持っていてこういう時間の取られる活動には参加できない。ということで今回の“マリーン・コート”の基本構成は下記である。
 
KB1 米本愛心(21)★Leader
KB2 花園裕紀(16)
Gt1 山鹿クロム(15)
Gt2 花咲鈴美(17)
Bass 三陸セレン(15)
Dr 木原扇歌(18)
 
結局ColdFly5+金平糖でリズムセクションを構成した。ベースは花咲鈴美よりセレンのほうが上手いので鈴美はリズムギターに回ってもらった。
 
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Sax 日高久美子(24), 坂上透(23)
Tp/Tb/Horn/Tuba 吉田邦生(25)
Vn 大崎忍(19), 鈴木真知子(25), 生方芳雄(24)
Fl 田中世梨奈(25), 安原祥子(20)
Cla 上野美津穂(25)
Cello 田中成美(21)
Vib/Mar 桜井真理子(21)
 
Operation:南田容子(20), 立花紀子(20), 野中春美(23)
 
坂上は状況によってはクラリネットも吹く。クラリネットは安原祥子も吹ける。
 
この他に様々な楽器ができる広瀬のぞみを11月下旬に一週間“職場研修”の名目で呼ぶことにしているので、それでかなり助かるはずである。
 

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リズムセクションは中高生がほとんどなので、この部分の制作は夕方以降におこなう。追加の楽器は主として昼間に収録する。だから実は高卒組は夜は早めに解放されて人間的?な生活を送れる。
 
なお金平糖(山鹿クロム・三陸セレン・花園裕紀)は遅くなったら女子寮のA704,A705,A708 に泊める。(A706=鈴原さくら、A707=長浜夢夜)
 
「クロムちゃんとセレンちゃんって結婚してるんだっけ?同じ部屋の方がいい?」
「ぼくたち別にそんな関係ではありません!」
 
と本人たちが主張するので別の部屋にした。さくら・夢夜はまだ中学2年なのでここには入れてない。クロム・セレンは3年生だから高校生に準じていいだろうということで参加である。彼らは一応20時で作業終了とする。彼らを帰した後は高校生の今川ようこ・左倉まみを使って22時まで主として曲の練り上げを行う。ただし最終音源はクロム・セレンの演奏を使う。
 
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上野美津穂はカウンセラーとして超多忙なのだが「息抜きになる」といって参加である。カウンセラーは増員してほしいと申し入れていたのが、この秋から2人目のカウンセラー・城ルシアが加わったので少し楽になった。
 
オペレーションの助手として今回参加してもらった野中春美は花咲ロンドの大学の時の同級生である。大学を出ても仕事が無く、派遣は3ヶ月で切られてコンビニのバイトをしていたのをロンドがスカウトした。彼女は一時期バンドもしていたがコロナで活動不能になり解散している。しかし楽譜が読めるしCubaseは操作が分かりキーボードもできるのでオペレーション要員に使えると判断した。彼女はメゾン・ドゥラ・カデットに泊める。
 
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ColdFly5の他のメンバーがいないところで、花ちゃんは長年の盟友である愛心に言った。
 
「しかしColdFly5も売れてないよね」
「まあ売れるような曲をやってないという問題はあるけどね」
 
「こちらも管理職が足りないからさ、あんたもそろそろ売れないバンドはやめて、こちらに戻って来て音楽部長補佐代理心得くらいにならない?月100万は払うよ」
 
「何その役職名は〜〜!?」
 

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