広告:彼が彼女になったわけ-角川文庫-デイヴィッド-トーマス
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■春三(7)

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手を洗って車に戻る。うーんと悩むが、いいことにした。
 
そうだ。免許証を免許証入れに戻さなきゃと思う。それでバッグの中に取り敢えず放り込んだ免許証を取り出す。その時気がついた。
 
なんで俺の免許証“鈴江月子”名義になってるの〜?なんか写真もお化粧して写ってるぞ。どうして〜〜?
 
彪志は不安になった。免許証が女性名義って、俺まさか戸籍上も女になってたりしないよね?現在身体も女だし、自分が男というのを証明できなかったりして?
 

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取り敢えず気にしないことにして!車をスタートさせる。道の駅までの道でカーナビを使って迷子になったので、今度はナビ無しで行く。
 
道の駅から高岡ICに入る道(この進入路は気付きにくい:彪志は何度も来ているので知っている)を通り、能越道(無料区間)に乗る。1区間だけ走り、高岡北ICを降りる。ランプを降りた所に信号があり、この道を左折する。これが県道32号である。この道をまっすぐ行くと伏木に出る。
 
結局道の駅を出てから20分ほどで、青葉の家に到着する。
 
車を駐車場に入れ、(偽装)洗濯物と伏木滞在中の着替え、お土産と余った食料を持って車を降りる。自分がスカートではなくズボンを穿いていることを確認して玄関に行くと、ドアが開き、青葉が抱き付いてキスをした。5分くらいディープキスをするが青葉が彪志のバストを揉む!揉まれたら揉み返す!ああ、ビアンのカップルってこんな感じかな?などと考えた。
 
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「長時間立ってるの疲れるだろうから中に入ろう」
と言って中に入る。
 
「これ洗濯してもらえる?」
と言って(ダミーの)洗濯物の入ったバッグを渡す。
 
「OKOK」
と言って洗濯室に持っていく。彪志も付いていく。
 
「あれ〜?なんで男物ばかりなの?」
「え?俺は男物しか着ないけど」
「こら〜、嘘つくとキスしてやんないぞ。ちゃんと女物も出しなさい」
 
「分かったよ」
と言って彪志は車から女物のここに来るまで着た分の服が入った着替えのバッグを取ってきた。
 

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「彪志が女物の服着てたって私も気にしないし、お母ちゃんも気にしないから恥ずかしがることないよ」
「そうなの〜?」
 
それで青葉は女物が詰まったバッグの中身を取りだしては洗濯機に入れていた。
 
「あ、このビジネススーツはクリーニングに出したほうがいい」
「うん。後でそうするつもりだった」
 
結局それ以外のものは全部放り込んで洗濯機を回した。男物の“偽装洗濯物”は
「これ明らかに使ってないからそのまま持って帰るといいよ」
と言って彪志に返した。
 
「うーん。速攻でバレるとは」
「別に女装くらいしてもいいし、性転換してもいいからね」
「え〜?」
「彪志が性転換したら2人目は彪志に産んでもらおう」
 
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やはり俺が2人目を産むのかなあ・・・(←かなりその気になってきている)
 
「彪志本人でさえあれば、去勢くらいしちゃっても、女の子になっちゃっても彪志のことは好きだよ」
「俺、青葉が性転換して男になったら愛情維持する自信無いけど、俺自身が女になったとしても青葉のことは好きだよ」
 
ここでキスするが、朋子が声をかける。
「あんたたち仲がいいのはいいけど。部屋の中でやりなさい」
「ごめーん」
「ごめんなさい」
 

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それでふたりで青葉の部屋に入る。
 
「寂しかったでしょ?セックスは控えることにするけど、おちんちん揉んであげるね」
「いや我慢する。それされたら、歯止めが聞かなくなるから」
「ああそうかもね」
「適当に自分で処理するよ」
「OKOK」
 
「そういえばどこで迷よったの?」
「うん。実はさ」
 
といって彪志は詳細を説明した。女物の服を着ていたことがバレてしまったのでここに来る前にコインランドリーで女物を洗濯しようとしたことから話す。しかし閉まっていたこと。それから道の駅に移動して少し時間調整しようとしたら、ほんの10分くらいの距離だったのにどうしても道の駅に到達できず4時間ほど彷徨ったこと。疲れ果てて道の脇に停めたらパトカーに警告されたこと。でもパトカーが先導してくれて道の駅に到達できたこと。
 
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「切符切られた?」
「見逃してくれたみたい」
「良かったねー!」
「県外ナンバーだったし、俺女装してたから女のドライバーならというので見逃してくれたのかも」
「ああ、少し甘くなるかもね」
 

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しかし青葉は何か考えているようである。
 
「ちょっと待って」
と言って青葉は何かパソコンで入力していた。
 
「こんな感じで合ってる?」
 
(28女)深夜に長野県から富山に車で来た。洗濯物が溜まっているのでコインランドリーに寄ったら閉まっていた。仕方無いのでそのまま2kmほど離れた道の駅に行こうと思い、カーナビをセットした。ところがどうしても辿り着けない。カーナビをチラ見しながら運転していたら、あと3分くらいになったとろで、突然あと12分とかになり、目的地を通過してしまっている。疲れ果てて道の脇に車を停めたところでパトカーに声を掛けられた。パトカーが先導してくれると5分ほどで道の駅に入ることが出来た。
 
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「うん。あってる」
「28歳女性ということでいいよね」
「うん。まああと一週間はそれでいい」
 
「そうそう。あと一週間ちょっとでお誕生日だよね。これお誕生日プレゼントね」
と言って、透明な石のイヤリング?を渡す。
 
「俺がこれを付けるの〜?」
「女の子モードの時に付ければいいよ」
「うーん。じゃもらっとく。ありがと」
と言って彪志はキスする。
 
もちろんディープキスになって5分経過。
 
「取り敢えず私が付けてあげるね」
と言って、青葉はそのイヤリングを彪志に付けてあげた。
 
なんか青葉、俺の予想以上に俺が女になることにはしゃいでない?まあいいけど。
 

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そのあとは割と普通におしゃべりしていた。おしゃべりしながらリバーシとか囲碁とかやってたら、この日は彪志が勝ちまくった。
 
「普段は青葉に全然勝てないのに」
「うーん。妊娠のせいかなあ」
「ああ、妊娠すると食べ物の好みが変わったりもすると言うね」
「うん。時々変なもの食べたくなる人もいると言うね。土を食べたいとか。砂を食べたいとか、炭が食べたいとか」
 
「彪志のちんちん食べたい」
「また今度ね」
「切り取ってフライパンで焼いて食べたい」
「ちんちん無くなると困るから」
「残念」
 
「そうだ!お化粧覚えない?」
「え〜〜!?」
「でも私お化粧できないから教えてあげられないなあ」
 
と言ってから青葉は時計を見る。誰かにメールを送ったようである。
「こちらに来てくれるって。それまでに彪志のちんちんの味見をしてようかな」
「御免。パスで」
 
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「まあいいや。取り敢えずスカート穿いて」
「え〜〜〜!?」
「スカートだいぶ好きになったでしょ?穿きたいんでしよ?穿いていいんだよ」
「えっと」
 
それでスカートに穿き換えるが青葉はじっと着替えを見ている。
 
「ショーツにお股の盛り上がりが無い。性転換手術しちゃった?」
「ごめん。タックしてる」
「おぉタックを覚えたか。偉い偉い。ちんちん取りたくなるのは時間の問題だね。彪志、女の子になる手術受けてもいいからね。邪魔なちんちんは取ってすっきりした形の女の子になろうよ。フェラしてあげられなくなるだけだし。レスビアン・カップルもいいと思うよ」
 
などと言って青葉は喜んでいる?
 
彪志は俺が女の身体になってるのバレるのは時間の問題かもと思った。
 
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(2022.11.4)
 
邦生と真珠は17時頃、こちらに来てくれた。結局、明恵も一緒である。
 
「早いね.仕事いいの?」
「川上さんのご用事なら早く行きなさいと言われて16時には銀行を出た」
「ごめーん。完璧にお遊びなのに」
 
“邦生が”彪志にお化粧を教えてあげることになった。化粧品は真珠が適当に買ってきてくれている。
 
「いくら掛かった?」
「2万円くらいでした」
 
(特に高かったのは、ファンデ(+コンパクト)、マスカラ、ルージュ。これが各々4000円くらいしている)
 
「じゃ指導料と残りはマコちゃんのお小遣いで」
「ありがとうございます」
「いやこちらこそ無理なこと言って」
 
邦生は彪志を見て
 
「わあ彪志さん凄く女らしくなってる。スカート姿に違和感無いし。元々女の子になりたかったんだろうな」
などと思いながら、メイクの指導をした。
 
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「最初に化粧水、それから乳液ですけど、その前に顔を洗ってきてください」
「うん」
 
それで彪志が顔を洗ってきてから邦生は彼のメイクを始めた。
 

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一方、青葉はサンルームに移動し、カーテンを閉めてから、明恵・真珠と打合せを始めた。
 
「これいま彪志から聴取したもの」
「彪志さんもやられたんですか!」
 
といってみんな読んでる。
 
「あのお28歳“女”と書いてありますが」
と明恵が確認する。
 
「ああ、性転換させて2人目は彼に産んでもらう予定だから女でよい」
と青葉。
「私も子供はクーニンに産んでもらおうかなぁ。今既に70%くらい女だし」
などと真珠。
 
君たち精子は?
 

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本題に入る。
 
「今日新たに見つかったケースでも、“誰かに声を掛けられたら”迷路状態から脱出できるというのは共通要素だね」
 
「それはハッキリしてきましたね。それと、このケースにしてもナビを使いながら歩いていた人にしても、ナビが突然飛ぶというのを言ってますね」
 
「うん。だからこれは単に方角が分からなくなっているのではなく、迷路に迷いこんでいるのだと思う」
 
「ドラえもんのホーム・メイロみたいな感じですよね。だから元が狭いテレビ局の中でも広大な迷路と化す」
 
「なるほどー」
 

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「それと迷路に入り込む条件が見えてきた気がする」
「何らかの接触の失敗ですかね」
 
「そうそう。彪志の場合はコインランドリーに行こうとしたら閉まってた」
 
「初海ちゃんの場合は、出入口のところで警備員さんとやりとりができなかった」
 
「スーパーの前を通った後迷路に入り込んだA男さんは、そのスーパーで買物して帰るつもりがもう閉まってた」
 
「病院前を通った後迷路に入ったB子さんはその病院に務めている友人と会うつもりだったが会えなかった」
 
「カフェを出たあと迷路に入ったC子さんはカフェで時刻を訊こうとしたが、店員さんが忙しそうだったので訊けなかった」
 
「ということにするんですね」
「そうそう。訊くと声で男とばれるのではと不安だったので訊かなかったなんて言わない」
 
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「でも人が女装してたって誰も気にしないのにねー」
「何も恥ずかしがることないのに」
「そうそう。悪いことしてるわけでもないし」
「でもまあ本人が嫌がってるから放送しないということで」
 
「まあうちはバラエティであって報道番組ではないから、このくらいの改変は許されるよね」
 
「ええ、バラエティですもんね」
 
みんな幸花の口癖が伝染(うつ)ってる。
 

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「コンビニに寄ったあと迷路に入り込んでしまったD子さんはコンビニを出た直後に、nonnoを買うつもりが忘れていたことに気づき、戻って買おうかとも思ったものの、明日でもいいやと思ってそのまま帰り道に着いた」
 
「ATMの前を通過してから道が分からなくなったE子さんはデートをドタキャンされていた」
 
「それで不愉快な気持ちだったというのも大きな要素ですね」
「そうそう、迷路に迷い込んでしまった人は全員心の中に迷路を持っていた。でもこれは各々の具体例は放送できないね」
 
「プライバシーに突っ込みすぎるからね」
 
「彪志の場合は恋人としばらく会えてなかったのでストレスが溜まってた」
 
女装が私にバレないか不安だったというのは言わずにおこうと思う。
 
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「A男さんは仕事で大きな失敗をしてどこかに飛ばされないか不安を持っていた」
 
「B子さんは子供のことで幼稚園の先生と意見が対立していた」
 
「C子さんは女装していることが会社にバレないか不安を持っていた」
 
「これさすがに放送できませんね」
「プライバシーの問題だよね」
「放送するとしたら“新しい支店かできることになったので、そこの支店長に行かされるのではと不安だった”とでもしましょう」
 
「D子さんは恋人と最近うまく行ってなくて不安が募っていた」
 
「E子さんは前の彼氏にも唐突に振られて自分は恋愛がうまくできないのではと不安を持っていた」
 

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春三(7)

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