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■春三(16)

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「電話もメールもできないのか」
「誰かに電話して助けてもらうという方法は無効みたいね」
 
「でも日和ちゃん、だったらお母さんに連絡したほうがいい。きっとここなら電話が通じるよ。あ待って。良かったら4時間ほど付き合ってくれないかな。そのあと自宅まで送り届けるから」
 
千里さんもこの子に封印に参加してもらうことを考えたようだ。この子のパワーなら無事なハズ。念のため彼女には千里さんか青葉さんがガードを付けるだろうし、と明恵は思った。
 
「はい。いいですよ」
と日和は答えた。
 
それで電話するが彼女の話は要領を得ない!
 
結局千里が途中で代わって、ついでに4時間ほど借りる承諾も得た。何より千里が彼女のバスケット部を時々指導しているプロバスケット選手、というので信頼してもらえたようである。
 
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「日和ちゃん、整理して話をするのがあまり得意ではないみたい」
「ぼくの話はさっぱり分からないといつも言われます」
 
「そういえば日和ちゃんどこの中学?」
「H南高校です」
「高校?」
 
「ああ、この子、中学生に見えるけど実は高校生なんだよ」
と千里が説明する。
 
「うっそー!?」
「ぼく高校1年です、と言っても中学1年と思われるんですー」
 
「だからこの子の家では妹さんのお下がりをこの子が着る」
「なるほどー」
「基本的に成長が遅いよね。だから生理が始まったのもこの夏だし」
「ああ。でも生理が始まったのなら、これから背丈とかも伸びるかもね」
と明恵は言った。
「みんなからそう言われます」
 

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(*34) マクドナルドのことを“マクド”と言ったことから、この千里が関西に住む4か2Bであることが想像される。
 
結局この事件は、千里2Bと青葉Rという“グラナダ組”が処理したのである。
 
(*35) キツネが稲荷寿司を作った。でも10個作る内2個は自分で試食した!
 

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「そういえば、日和ちゃん“ぼく少女”?」
 
活発な感じの女の子の“ぼく”は違和感無いが、こういう可憐で華奢な美少女の“ぼく”は珍しい。ところが日和は言う。
 
「ぼく男の子ですー」
「は?」
 
千里が言う。
 
「ああ、この子男の子だと自分では主張している。でも事実上女の子だけどね。おっぱいあるし、生理あるし、こうやって女子制服を着てるし」
 
「男の子になりたい女の子?」
「むしろ女の子になりたいよね」
 
と千里が言うと、かぉっと顔を真っ赤にして俯き恥ずかしがっている。
 
青葉と明恵が思わず顔を見合わせる。
 

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「だからこの子、女子中学生に見えるけど実は男子高校生」
「うーん・・・」
「いや高校生は信じるとして男子なんて絶対嘘だ」
「みんなにそう言われてる」
「だいたい男の子に生理があるわけない」
「全く」
 
「まあ取り敢えず封印作業には参加資格があるはず」
と千里。
 
この封印は“魂的に”女性でなければできない。日和が魂的に女性なのは明白である。そして明恵も千里も彼女は自分の身を自分で守れるだけの霊的な力があると思った。彼女は占いなど覚えると凄い占い師になりそうだ。話術に問題があるけど!(きっとクライアントは何を助言されてるのか分からない)
 
「ミッション中は本名を呼んではいけないから、君は金沢チョコということで」
「はい」
 
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金沢ドイル:青葉
金沢コイル:千里
金沢セイル:明恵
金沢パール:真珠
金沢メール:初海
金沢ウール:幸花
金沢クール:邦生
金沢メッセ:双葉
金沢チョコ:日和
---------------
金沢ムーン:月子
 
日和は芸名が“入瀬コルネ”なので“チョココルネ”からの連想で“金沢チョコ”にした。でもそもそも“ひより”が本名なのかは微妙。
 
双葉は「お姉さんがメールだから妹さんはメッセージで」と言われた(本人は“シュメール”を希望した)。
 

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青葉が白い巡礼服のようなものを配る、この場で着替える。日和は女子下着を着けていた。ブラジャーはAカップっぽい。でもバストはちゃんとあるのが確認できる。ショーツには膨らみが無いし、やはり女子の身体であるようだ。
 
この4人で車に乗る。更に車には九重も乗った。千里が運転して出発する。
 
(青葉Rから千里への直信依頼で千里は小楢を青葉Lのために残した)
 
千里が運転席、九重が助手席、後部座席に青葉(R)・日和・明恵の3人が乗る。青葉も日和も身体が小さいのでヴィッツの座席でも、そう狭くない。
 

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出発する時、月はもう半分くらい欠けていたが走っている最中にどんどん欠けが進行する。西海老坂交差点を曲がった後は、しばらくあまり人家などの無い地域が続く。千里は国道160号を北上していく。窓の外の闇を見詰めながら日和は5ヶ月ほど前のことを思い起こしていた。
 
バスケットの練習が終わってから帰ろうとして何かよく分からない所に迷いこんだ。古風なドレスを着た上品な貴婦人が居て、お茶みたいなのを勧められたので飲んだら中将湯みたいな味がした。
 
(↑なぜその味を知っている?だいたいこんな状況で出されたものを飲むとか極めて危険)
 
ルーレットをやろうと言われて、玉を投げ入れた。玉は赤の23で停まった。
 
「あら、あなた性別変わるわよ」
「え〜?そうなんですか?」
「あなたちんちん生えてきて、殿方になれるわよ。良かったわね」
と女の人は言った。
 
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え〜っと、ぼく今男なんですけど?と思ったところで目が覚めた。どこから夢だったのか判然としなかった。
 
でもトイレに行くと、お股の形が変わっていて、女の子のような形に変わっていた。ちんちんはあったがタマタマは無くなっていて割れ目ちゃんみたいなのがあった。おっぱいとかは特にできてなかった。でもお腹の下の方に何か暖かいものがある気がした。
 
その半月後に生理が来た。そのあと5ヶ月間。自分は男なのか女なのかよく分からなかった。ても、ちんちんがある以上男だと思っていた。でもさっきトイレの中で見ると、ちんちんが無くなって、完全な女の子の形に変わっていた。今車に乗る前に再度トイレに行った時も、やはりちんちんは無かった。
 
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ぼくもしかして女の子になっちゃった?
 

千里が運転する車は、やがて氷見市街地を通り抜け、3日前にも来た九転十起の像のところまで来る。しかしそこで停まらず、千里はその公園の左側の道を登った。
 
「あの像の所じゃないんですか?」
と明恵が訊く。
 
「封印のポイントはもっと山の上なんだよ」
 
千里はぐいぐい道を登り、かなり山奥に入る。そして完璧に森の中で車を停めた。千里と一緒でなければ不安を感じるような場所である。
 
「みんな降りていいよ」
と言って千里が真っ先に降りる。他の4人も降りる。
 
この時青葉は念のため雪娘に日和を守るよう命じた。また蜻蛉を明恵に付けた。雪娘は普段は青葉Lに付いているのだが借りて来た。Lの傍には海坊主もいるから大丈夫のはず。
 
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月は完全に欠けて実質闇夜であるが、車のライトで視界は利く。
 
「あ」
と明恵が声をあげる。
 
「石碑が倒れてるね」
と青葉。
 
どうも車がぶつかったか何かしたようで古い石碑が元々填めてあった台座から抜けて倒れている。(*36)
 

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「これ撮影できます?」
「大丈夫だよ。この妖怪はいたずら好きなだけで基本は優しいから」
と千里が言った。
 
それで明恵は倒れている石碑を撮影した。
 
「古い石碑みたいですが、何と書いてあるんですかね」
「捲土重来(けんどちょうらい)」(*37)
「ああ」
 
「どういう意味ですか?」
と日和が訊く。
 
「負けても再起を図れということ」
「へー」
「まあ九転十起と類語だね」
 

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「俺の出番ですね」
と九重が言う。
 
「よろしく」
 
それで九重が石碑を起こして台座の穴に戻した。
 
明恵は驚かないが日和は
 
「おじさん。すごーい!」
と尊敬というより憧れのまなざしで見ている。
 
千里は念のため「少なくとも高校卒業するまでは彼女が望んでもセックス禁止」と九重に直信しておいた。こういう霊力の強い子は精霊好みでもある。勾陳と違って九重はレイプはしない(と言ってる)が「来る者は拒まない」性格である。
 

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更に九重は手で持ってきた容器の中に入れていたセメントを石碑の周囲に敷き上にベニヤ板を載せて足で踏み固めた。
 
「じゃ女子4人でこの石碑を囲んで」
 
「女子で囲むのなら、俺はいいですよね」
と九重。
「うん。参加したいなら女の子に変えてあげるけど」
「俺が女になっても変態にしか見えませんよ」
「じゃ撮影してて」
「了解〜」
 
と言って彼は明恵からカメラをあずかり構える。
 

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4人の女子で石碑を取り囲む。“女子”と言われたが、日和は「たぶんぼくも女子でいいんだよね」と思って一緒に石碑を取り囲んだ。なんか“風”のようなものを感じて反射的に“心理的なバリア”を張った。
 
明恵は「ここ霊圧凄い」と思って石碑のそばに寄るとすぐに霊鎧をまとった。見ると千里さんも青葉さんもしっかり霊鎧をまとっている。日和ちゃんを見るとかなり強力な霊鎧をまとっている。「この子凄っ」と明恵は思った。
 
「じゃ***の真言を私、ドイル、セイル、の3人で唱える」
と千里は言う。
 
「あの祝詞じゃないの〜?それに***の真言ではこの“ふた”完全にはしまらないと思うけど」
と青葉は驚いて言う。
 
「だからいいんだよ。理由はあとで説明する」
「分かった」
 
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「ぼくは唱えなくていいんですか?」
と日和。
 
「大丈夫だよ。ただ黙祷するような気持ちで」
「はい」
 
それで千里・青葉・明恵の3人で真言を唱えた。
 
カチッという小さな音がして、霊圧は弱くなった。
 

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「かかりましたね」
と明恵。
「うん。かかったけど封印はどうもここだけではないみたい」
と青葉。
 
(それが分かるのは、さすが青葉Rである)
 
「全部で5ヶ所あるんだよ。ここはその内のひとつ。“藪入り君”たちとしては、この封印を治してほしかったんだろうね」
と千里は言っている
 
「コイルさん、どうしてこの封印の場所が分かったんですか?」
と明恵が訊く。
 
「先日あの像のところに来た時、波動を感じたよ。ただすぐ月食があるからそれまで待った。月食の最中はより小さな力で封印できる」
「へー」
 
“あれで”小さな力なのか、と明恵は思った。けっこう消耗したのに。やはり青葉さんや千里さんのパワーって物凄い。真珠は逃げて正解かも。
 
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「私には分からなかった!」
と青葉。
「妊娠中のせいだよ」
「なるほどー」
 
実際には青葉Rも今日像のところまで来た時に「あ、誰か助けを求めてる」というのが分かった。でも土曜日に来た妊娠中のLちゃんには分からなかったろうなと思ってそういう演技をした。
 
「これで藪入りは出現しなくなりますか?」
「いや出るよ」
「え〜〜?」
「ただ頻度が元に戻るだけだよね」
と千里。
「私もそう感じた」
と青葉。
 

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(*36) この物語はフィクションです。このような石碑はありません。この付近は熊も出ますので、安易に立ち入らないで下さい。
 

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(*37) 始皇帝が作った中国最初の統一王朝・秦(しん)は始皇帝の後、一応2世皇帝が立てられたものの全国的に反乱が起きて、皇帝に祭り上げられた人物には全く対処能力が無く収拾が付かなくなる。そして秦は始皇帝の死後ほんの数ヶ月で滅亡した。その後の支配権を巡って項羽と劉邦が争い、劉邦はひたすら負けたがその度に逃亡しては再起した。
 
しかし最後は劉邦が勝利し、項羽は自害した。
 
劉邦(漢の初代皇帝)は“九十九回負けて最後に1回だけ勝った男”と言われる。いわば九十九転百起の人である。
 
千年ほど後の詩人・杜牧は「項羽は逃げ延びていればまた再起できたろうに」と彼の“諦めの良さ”を惜しんだ。
 
題烏江亭/杜牧
 
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勝敗兵家事不期
包羞忍恥是男兒
江東子弟多才俊
捲土重來未可知
 
戦いの勝ち負けは軍事の専門家にも分からないものだ。
恥を忍び、巻き返しを図るのが、男子たるものである。
(項羽の地元)江東には才能に優れた者も多い。
砂塵を巻き起こす勢いで再度攻撃していれば結果は分からない。
 
 
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