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■春三(20)
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11月26日(土) 21:58.
最大震度3の地震がまたS市および周辺を襲った。
今回は3なので特に大きな被害は無かった。もちろん人形美術館の固定軸はすぐ外れ、人形たちには全く影響がなかった。スイスイ1号は自動停止したが、マリアンは座り込まなかった。薫館長が帰ろうとしていたところだったので、人形たち全体を見回りし、マリアンの歩行路に何か落ちてないか確認した上でスイスイ1号のスイッチを投入した。
レストラン・フレグランスも琥珀も被害は無かった。レストラン・フレグランスは客に全員怪我が無いことを確認の上「お代は要りませんからお気を付けてお帰りください」と案内したが、全員が「最後まで食べてから帰る」と言って完食後、帰った。お代は要らないと言ってるのに、ほとんどの客がお金を押しつけて行った。この人たちにはお土産にパンを押しつけた。(好意の押し付け合い!)
琥珀は地震が収まると点検後すぐに営業を再開。客がはけたところで今日は閉店した。
11月27日(日).
晃はまた生理になった。黒衣魔女絡み分を除くと晃の生理はこうなっている。
7.20 呪い解除/性別軸の調整 排卵起きず
8.17(+28) 排卵起きず
9.14(+28) 排卵再開
9.28(+14) 生理再開
1 09.28 本当に最初の生理
2 10.27 2度目の生理 +29
3 11.27 3度目の生理 +31
- 12.11 排卵予定日?
4 12.25 生理予定日?
日和が規則的に来ているのに対して晃の生理はどうも不規則なようである。
日和が女であることを精神的に受け入れているのに対して晃は男の子に戻りたいと思って“女”を拒否してるからかも(でも内心は女になりたいんでしょ?)。それに元々男の娘の脳下垂体の女性ホルモン制御能力は低い。あれ?男の娘じゃなくて男の子だっけ??
11月26-27日(土日).
青葉はまた伏木の自宅で『ミュージシャンアルバム』の取材をした。これが出産前最後の取材になるはずである。青葉は現在7ヶ月目に入ったところでかなり大きなお腹になっている。今回の取材分が3-4月の放送になるので、次の取材は4月に行えば5月の放送に間に合う。
まず11/26にお迎えしたのは“男の娘組”の弘田ルキアとキャロル前田である。この2組とラビスラズリ・千里をまとめてG450で運んできた。
なおケイは年末が迫っていてあまりに多忙なので欠席し千里が代理する。
午前中に弘田ルキアちゃんのインタビューをするが、自称マネージャーの坂出モナ(ルキアの伴侶)と一緒に来たので一緒にインタビューする。
「モナちゃんがマネージャーやってんだっけ?」
「臨時でーす」
「本来のマネージャーは若林歌織と言って初期の頃アクアさんの付き人してた人なんです」
「アクアの初期の付き人さんってあまりの多忙さに過労死するか(*45) 1〜2ヶ月で退職してたらしいですけど、若林は1年間も付き人を務めたんですよ」
「それは凄いねー」
「中学高校で長距離やってたから体力あるみたいですね。ぼくが声変わりして人気が急落した後も、頑張って仕事を見付けてくれて、安宿に泊まりながらけっこう“ドサ廻り”しましたね」
「ルキアはわりとそういう地道な活動から復活したんですよね。私なんか集団アイドルでチヤホヤされていた所から1円で売却されて♪♪ハウスに拾ってもらいましたから」
とモナは言っている。
(*45) 実際に過労死した人はいない。「すみません。体力持ちません」と言って辞めた人や、危ないと思ってコスモスの指示で交替した人は居た。一番危なかったのは付き人より鱒淵マネージャーである。彼女は辛くても顔に出さない性格なのでコスモスも気付けなかった。危篤状態に陥ったが、勾陳が特効薬(虚空謹製)を盗んできて注射しギリギリ生き延びた。医者も「助かったのは奇跡」と言っていた。
ルキアの略歴
2015年 スカウトされる。最初のマネージャーは後に§§ミュージックに再就職した城沼咲子(現ルビーのマネージャー)
2016.4 中学入学と同時にデビュー(鷺鷹マネージャー)
2018.5 声変わりて人気急落
2019.5 鷺鷹が解雇され、若林に交替
ルキアは声変わり防止のため鷲鷹マネージャーから女性ホルモンを渡され飲んでいたが、胸が膨らんできたので社長に相談。社長はすぐ飲むのをやめるよう言い、鷲鷹を厳重注意。しかしホルモンを辞めるとルキアは3ヶ月で声変わりして人気は急落した。その後、鷲鷹は他の少年タレントにも女性ホルモンを飲ませていたことが発覚し解雇された。
このような経歴はラピスラズリも聞いているがインタビューでは取り上げない。話題は2019年5月以降のことを中心に話した。
「2019年頃はよく旅番組とかに出てたよね」
「おかげてあの年は全国40ヶ所くらいの温泉に入りましたよ」
「ギャラ安かったでしょ?」
「です。2019年は所得税ゼロでしたから」
「ああ」
「だいたい女優さんと一緒にお風呂入ってるよね」(*46)
と隣からモナが悪戯っぽい顔で突っ込む(嫉妬ではなく面白がっている)。
「共演している女優さんがメインでぼくは刺身のツマですから」
「あれ半分くらい女湯だよね」
「なんでそういう所に突っ込む。基本的には女優さんは女湯に入るのでぼくもお付き合いして女湯に入りますが、ぼくは水着着けてますから」
「男湯を使うこともあるんですか」
と朱美も突っ込む。
「旅館によっては男湯は立派だけど、女湯は貧弱な所が結構あるんですよ」
「あぁ」
「そういう所は立派なほうの男湯を使います」
「でもルキアはちんちんが無いから女優さんも安心だよね」
とモナ。
「ちんちんあるの知ってる癖に」
「なんか重要な証言を聞いた気がする」
「中学生時代に女性ホルモン飲んでたので立たないだけで付いてるよ」
「まあそういうことにしといてもいいよ」
ここで千里が超重大証言をする。
「あれ〜。私一度岡山の旅館でルキアちゃんと一緒にお風呂入ったけど、ルキアちゃん、ちんちん無かったし、おっぱいもあったじゃん」(*46)
(朱美の対応能力を信じてこんなことを言っている)
「醍醐先生、それきっとアクアとの勘違いです」
と朱美は顔色ひとつ変えずに言う。
「あっそうかもね!ごめんごめん」
と千里はすぐ応じた。
ルキアはどう答えようか焦ったが、朱美に救われた。
(*46) 2019年4月8日夜、レポート番組でルキアは女優の里山美祢子と一緒に岡山に来て、有名旅館で夕食と温泉のレポートをした。この時は里山が実は男性なのでルキアひとりで温泉シーンは撮影している(男湯使用)。その後ルキアは「予算が無いので」と言われ、安宿に移動して宿泊した。
ここでお風呂に入り直そうと思って深夜大浴場に行くと、入口の前でバッタリ千里と遭遇した。ルキアが男湯に入ろうとするのを千里は“抱きしめて”停めた。彼が「ぼく男ですー」と主張するので千里は黙って見ていたが、ルキアは千里の予想通り男湯から追い出されてきた。
結局千里と一緒に女湯に入ることになる。女湯というので、よこしまな心半分で入ってみるとルキアは女の身体になっていたので本人が驚く。よく分からないまま女体で女湯に入ってしまったルキアだが、お風呂から上がったあと千里と“握手して”別れ自分の部屋に戻ると男の身体に戻っていた。
ただしこのような“後遺症”が残った。
・骨格が女性的に変化した。
・喉仏が消失した。
・ペニスは前より小さくなった。
・バストが膨らんでいて常時ブラジャー(Aカップ)が必要になる。
そしてこの後、ルキアは自分で女物の服を買うようになり、モナが唆したので高校の女子制服も作ってしまう。そして下着は女物しか着けなくなった。また若林マネージャーに励まされてボイトレに励み半年ほどで女声を取り戻した。
結局あの晩千里と出会って“女体経験・女湯経験”した後ルキアは「自分の思うままに生きよう。女の子らしくてもいいじゃん」と考えるようになり、テレビでの演技にも,大らかさが出て関係者の評価も高まっていくのである。
それまでは「女の子みたいに可愛い」とか言われても「ぼく男の子なんだから男らしくならないと、いけないよね」と思っていた。
「2020年頃から本格的に復帰してきたね」
と朱美は言う。
「あけぼのTVさんで結構使ってもらったから、そこから地上波でもバラエティの雛壇要員とか、サスペンスで殺される役とかに出るようになりました」
とルキア。
「やはりギャラは安い」
とモナ。
「でも深夜のバラエティとかで“オチ”要員とかにも使ってもらって。落ちぶれた元人気タレントみたいなポジションでしたけど。でもあの年にかなりお笑いのセンスを鍛えられました」
「ああ、深夜番組ってそういうのを鍛えられるでしょうね」
「やはりギャラ以上のものを頂いた気がします」
「そこから電場音場さんに“便利なタレント”として使ってもらえるようになって、電場音場さんの『電波音波』がゴールデンに移行したら一緒にレギュラーにしてもらったんですよ」
「ファンメール増えたでしょ?」
「あんた可愛い女優さんやね、とか書かれたファンメールたくさんいただきました」
「まあ君の容姿を見てふつう男とは思わない」
「まあそれは子供の頃からそうだから構わないんですけどね」
「普段着は普通に女物でしょ?」
と朱美は“モナに”訊く。
「そりゃルキアが男装とかするわけないじゃん」
「そうだよねー」
「でもあれ以来ドラマとかでもわりと重要な役を頂けるようになりました」
「でも8:2くらいで女役が多いね」
「『竹取物語』は久々の大きな男役(石作皇子)でした」
「でも最後は女の子になっちゃう」
「あれびっくりした!」
「プロデューサーさんの瞬間的な思いつきだったみたいね」
「最初の台本では初夜を前に『ぼくどうしよう?』と悩む所で終わってたから」
「でも“銀色の女”役の月城たみよちゃん、可愛いかったね。女の子にしか見えない」
「女の子ですから」
「・・・性転換しちゃったの?」
「生まれながらの女の子ですよ」
「うっそー!?」
「ああ。たみよちゃんは自分で『ぼく中学入る前に性転換手術受けて女の子になったんだ』とかジョーク言ってて、結構信じてる子いるし」
歌のコーナーでは『竹取物語』の中でモナに(ぼく下手だからと言って)代理歌唱してもらった『ぼくお嫁さんになっちゃった』をモナのピアノ伴奏でルキアが歌唱したが
「うまいじゃん」
と朱美に言われていた(放送時の視聴者の意見も同じ)。
最後にルキアにウェディングドレスを着せて撮影した。
(放送では3秒ほどだったが、視聴者にとても受けた)
取材終了後、ラピスラズリ、ルキアとモナ、千里の5人てリビングに移動して取材打ち上げと昼食を兼ねた焼肉をした(青葉は妊娠中なのでパス)。
午後からは“キャロル前田とアドベンチャー”の4人のインタビューをした。この4人はヴィジュアルは怪しげだが、とても紳士的(淑女的?)なので、CCDを迎えた時に似て、穏やかなインタビューになった。
「自己紹介をどうぞ」
「キャロル前田とアドベンチャー、ギター兼ボーカルのキャロル前田で〜す」
「ベースのスーザン高橋でーす」
「キーボードのメリー川本でーす」
「ドラムスのジェーン佐藤です」
「みなさん女名前ですよね」
「はーい。僕たち男の娘でーす」
「ヴィジュアルバンドではなく男の娘バンドですよね」
「そうでーす!」
「『竹取物語』で共演した“パシフィック”はヴィジュアル系バンドですけど僕たちは男の娘バンドです」
「世間の人には違いが分からないかも」
「似たようなもんじゃね?」
「そうなの〜〜?」
「いや世間体でヴィジュアルってことにしてるけど実はって奴は居る」
「それはあるでしょうねー」
「あとヴィジュアル系バンド作る時にその傾向で歌の上手い男の娘とかを誘うケースがある」
「ああ、それはあるある」
「ハイトーンが安定して出せる子多いし」
「だけどルキアちゃんとキャロルちゃんたちって同い年だよね」
と朱美が言うと
「え!?うそー?」
とはるこが驚いている。
「なんか僕たち25-26歳と思われてるみたい」
とスーザン。
「そそ。ルキアちゃんは美少女だけど、キャロルはおっさんと思われる」
とスーザンが笑いながら言う。
「まあ俺男だし」
とキャロル。
「シロガネーゼじゃなかったの?」
と朱美。
「あら、わたくし白銀(しろがね)の億ションに住んでおりますのよ。おほほほ」
「奥様言葉が不自然」
「それにルキアちゃんは自称が“ぼく”だけどキャロルは“俺”だもんね」
「自称ってただの癖なんだろうけど、一度付いた癖はなかなか直らない」
「ルキアちゃんは男役してても“男役してる女優さん”に見える。キャロルは女役してても“女装してる男”に見える」
とスーザンが言う。
「ルキアちゃんは睾丸あってキャロルは睾丸無いのに面白いねー」
と千里。
「でもせっかく性転換手術までしたのに」
と朱美。
「またそれが世間的に誤解されてるけど、僕たち性転換してないです」
「そうだったっけ?性転換したのキャロルだけ?」
「俺も去勢はしたけどチンコまだあります。他の3人はまだ身体にメス入れてないです」
「そうなんだ?でも将来的には取るんでしょ?」
「俺は取りたくねー。男の服は嫌だけど、いづれ女と結婚したいし」
とジェーン。
「レスビアンでもいいんじゃね?」
「うーん・・・」
「いやジェーン以外は、いづれ本物の女になりたいと思ってますよ」
とメリーは言う。
「メスを入れてメスになる、とかダジャレでは言ってますけど」
とスーザン。
「女にはなりたいけど、まだ手術は迷ってるんですよー」
とメリー。
「そうならたくさん迷うといいね。手術したら戻せないしね」
「後悔はしないと思うんです。でも踏み切れないんですよねー」
「ああ。なんとなく分かる」
と朱美が言う。
「でもキャロルちゃんは事務所クビになったあと、どん底から這い上がってきたね」
と朱美は言う。
「まあ音楽やるのは楽しいから本当にアマチュアという立場から再開しましたね。今日は来ておられないけど、ローズ+リリーのケイさんに随分便宜図ってもらったんですよ。スタジオ代を出してもらったり、楽器買ってもらったり」
「アレンジもだいぶチェックしてもらったし」
「楽しいからやるってのは音楽の基本だよねー」
「そうそう。事務所やレコード会社に言われてイヤイヤやるというのは、もうミュージシャンとしての姿を失ってる」
「俺たちはそれをアマチュアからやり直すことで実感してきました」
「ドラマでは“いかれた人”みたいなキャラが続いたね」
「俺たちそもそもいかれてるから」
「ああ、それは分かる」
「他人から言われるとむかつく」
「あはは」
歌の方では『竹取物語』から
『愛しいかぐやちゃん』
『山の鍛冶屋』
『金銀パールをプレゼント』
をメドレーで演奏した。
「この3曲を連続演奏するともはやお笑いにしかならん」
「いや俺たちお笑いバンドだから」
「そうだったのか」
「ドリフターズの孫と言われるように頑張ります」(*47)
「孫娘だね」
「そうですね!」
(*47) この発言は日本のザ・ドリフターズが元々アメリカのザ・ドリフターズ(『ラストダンスは私に』などで知られる)の息子と称して出発したことを下敷きにしている。当初は"Sons of Drifters"だったが、何度かの改名を経て単に“ザ・ドリフターズ”になってしまった。
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