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■春三(13)

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11月6日(日)はコンビニのお弁当で朝食を食べてから、ホテルをチェックアウト。10時過ぎに(新)人形美術館のほうにお邪魔して、再度取材し、お話を聞いた。
 
美術館の後は“お弁当・琥珀”にも寄って、桜坂さん・胡蝶蘭さんにお話を聞き、そちらも取材して、お弁当を12個買って帰った。S市内の道の駅でお弁当は食べた。取材の時も映されながら明恵と青葉はお弁当を食べていたが(真珠が撮影:この分は経費で落ちる)、テイクアウトしたお弁当の内3つは真珠・千里・月子が食べて、1つは月子の夕食用、残り6個は多分誰か食べる。
 
(実際は真珠・邦生・明恵・初海・双葉・幸花の夕食になった:お金を出したのは千里。ただ取材費で出た2人分の代金はあとで返した)
 
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ちなみに青葉が食べたのはブリの照り焼き弁当、明恵は八宝菜弁当、真珠はハンバーグ弁当、千里は焼肉弁当、月子はその場でチキン南蛮弁当を食べ、夕食用に鮭の南蛮漬け弁当を取った。
 
持ち帰るのが、ミックスフライ弁当、トンカツ弁当、フィッシュフライ弁当、唐揚げ弁当、天麩羅弁当、メンチカツ弁当である(もちの良さそうなもの)。
 
買って帰った全ての弁当の映像を番組では流す予定である。メニューにはその他に、ヒレカツ弁当、酢豚弁当、肉ジャガ弁当、海老チリ弁当、炒飯、カレーライス、天丼、カツ丼、親子丼、牛丼、日替わり弁当などがある。もう少し後の時期になると“冬限定”カキフライ弁当と鯨カツ弁当も出す予定らしい。能登では冬季に“地鯨”が穫れる。スーパーに“朝獲れ”シールの付いた鯨肉が並ぶ。これが物凄く美味しい。また穴水湾が牡蛎の大産地である。
 
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「でも以前の井原さんの作ってたお弁当に比べて、薄味だよね」
「うん。井原さんのは化学調味料使ってたけど、胡蝶蘭さんのは天然のだし使ってるね。今の時代はこちらが受けると思う」
 
「チェーン店では無いので、毎回同じ味にはなりません。当たりの日と外れの日があるかもしれませんけどごめんなさい、とか言ってたね」
「それがかえってリピーターにはいいと思うよー」
 
これは金沢の“アイゼン”も同様のことをうたっている。
 
「まあ人形美術館も琥珀弁当も、どちらもうまく行くといいね」
 

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帰り道で、千里が思い出したように言った。
 
「アキちゃんとマコちゃんって心理学科だったよね?」
「はい。正確には文学科の心理学専攻ですが」
「クラスメイトさんたち、みんな就職決まってる?」
「数人まだの子がいるにはいます。卒論を必死に書いてて就活する余裕がないんですよ」
 
「一部下の学年で必修科目を落としちゃって再履修に必死で卒論まで手が回ってない子もいます」
「卒業できるの?」
「うちはハートフルな大学ですから」
 
「そういう子たちでもいいから、もし東京勤務でもいいという女の子がいたら、卒論が落ち着いてからでもいいから紹介してくれないかなあ」
 
「はい,何かカウンセラーのお仕事とかですか?」
「うん。§§ミュージックの女子寮は今看護師さん1人とカウンセラーさん1人なんだけど『忙しすぎるから増員を考えてほしい』という要望が上がってて」
 
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「寮生、何人居るんですか?」
「70人くらい」
「それは1人じゃ無理ですよ。悩みの多い世代だし,ストレスの多い仕事だし」
「だから看護師もカウンセラーも2人くらい増員したいんだよね」
「ああ」
「じゃ卒論のメドが付いたようだったら声掛けてみますよ」
「よろしく」
 

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伏木に帰り着くと一休みしてから、月子は自分のフリードスパイクを運転して浦和に向けて出発した。服装は普段着のTシャツ・ロングTシャツ・フリースにスカート・タイツである!
 
(俺もう男装生活に戻れないかもと不安を感じる←フルタイム女装生活して会社にも女装で出社しようよ)
 
月子は伏木を出た後、呉羽PAで小休憩して、ここで疑似ペニスを取り外した。これを着けていると、おしっこがしにくい。きっとこれFTMさん用のものなんだろうなと思った。アルコールウェットで拭いてケースに格納し、旅行鞄に入れた。来月伏木に来る時まで使わないはずである(←ペニスなんて邪魔で不要だよね)。
 
その後はだいたい100km程度おきに休憩し、夕方上越JCTから上信越道に入る。黒姫野尻湖PAで休憩し、ここでS市で買ったお弁当(鮭の南蛮漬け弁当)を食べた。もちろん食べる前に写真を撮って、真珠ちゃんに送っておいた。汁の出やすい料理だが、シールされた容器に入っているので全く漏れてないのが凄いと感想も書き添えておいた。写真は未開封の状態とシールを剥がした状態を撮影している。
 
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そのあとはトイレに行った後、甘楽PA、三芳PAで休み、所沢ICを降りて夜中に浦和の家に帰着した。
 

ところで〒〒テレビ・スイミングクラブ(通称津幡組)は世界水泳の後、中心になっていた青葉が離脱して、少し気が抜けていた。
 
「パリ・オリンピックまで頑張ると言ってたのに妊娠で離脱とか不注意すぎるよなあ」
などと金堂多江(20)・竹下リル(19)も文句言っている。四六時中泳いでいるのではと思うほど練習していた青葉が居ないと練習にも熱が入らない。それで10月22-23日の短水路選手権でも津幡組は振るわなかった。
 
短水路選手権が終わった後の24日、津幡のプライベート・プールで多江とリルがだらっとしていたら
「こらこら、さぼってないで練習しなよ」
という声が掛かる。
「あ、千里さん」
「なんか凄い水着」
 
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千里が全身金色の練習用水着?を着けている。
 
「この水着を着けてると5%くらい速く泳げるんだよ。君達と普通に競争したら私は全然かなわないからハンディ。さ、私と競争しよっ」
 
と言ってスタート台に行く。
「はい」
と言って2人もスタート台に行く。先日の国体で現役を引退した月見里姉(28)が計時をしてあげる。
 
「3000mいくよ」
「はい!」
 

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それで泳ぐと、千里が圧倒的トップである。しかし3000m(30往復)って長距離競泳選手でないとふつうスタミナがもたないのに千里さんは最後までペースが落ちなかった。
 
「たるんでるなあ。筋力とか持久力付ける基礎練習も頑張りなよ。私しばらく毎日夕方ここに来て、君たちと競争するから」
「頑張ります」
 
それで多江とリルは結構気合が入ったようである。翌日からは筒石とジャネもこの3000m自由形に参加した。筒石はさすがに金色千里よりずっと速いが、多江とリルには強い刺激になった。ジャネは「あんたたち速いね!」と感心していた。
 
月見里妹は「3000とか無理」と言って見学である。南野は「半分だけ参加する」と言って1500m泳いだ所であがっていた。ジャネは2人で1500mずつ泳いでる気がした。
 
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また土日にはリルの妹のハネ(高2)も参加していたが「さすがに3000mはきつい」と言っていた。でも他の子に大きく遅れながらもちゃんと完泳していた。
 
しかしこれで気合が入ったお陰で、11月5-6日(青葉たちがS市に行ってた日)佐賀県で行われた社会人選手権では女子800mでこの2人が12フィニッシュしたのである。南野も4位に入った。3位は永井蒔恵で、事実上津幡組で4位までを独占したようなものである。ネットニュースでは「津幡組復活!」と書かれていた。(この大会には女子1500mが無い)
 
金色の水着を着けた千里はその後も毎日プライベートプールに来た。
 
「千里さん、その水着ほんとに5%速くなってるんですか?10%くらい速くなってません?」
と多江とリルは言っていた。しかし10%upにしてもそれでトップ選手に勝てるというのは元々の千里が無茶苦茶速いことを示している。きっと普通の水着でも軽く日本選手権出場の標準記録をクリアできる。
 
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11月6日(日).
 
今日は高校バスケットボール、ウィンターカップ富山県予選の決勝戦と、シード順決定戦が行われる。会場は本来、富山市の富山県総合体育センターなのだが、女子の決勝は、高岡C高校とH南高校という呉西地区同士の対戦になった。それで女子決勝のみ、高岡市内で行われることになった。
 
女子のシード順決定戦と男子の試合は富山市で行われる。
 
10時から富山市のほうで、男女のシード順決定戦が行われた。女子では富山B高校が富山S高校をダブルコアで破ってシード順3位を獲得した。
 
どうもしばらくは、高岡C高校・富山B高校・H南高校の3強体制が続きそうである。
 

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13:00 高岡C高校とH南高校のメンバーが高岡市内のL高校の体育館に整列した。今日のT/Oは準々決勝で敗退した高岡S高校の部員が務める。モッパーは会場校・高岡L高校の部員たちである。L高校の生徒はそのほか雑用でも頑張ってくれた。
 
試合が開始される。H南高校はもちろん晃を含まないメンバーで戦う。向こうは晃が当然出てくるものと思って準備していたようだが、こちらは最初からそのつもりはない。
 
両チームは、春の大会の3回戦、インターハイ予選の準決勝、地区リーグの1位リーグ、そして9月の練習試合と戦っている。H南高校の今年の急成長をいちばん肌で感じているチームであり、各選手の特徴ももっともよく知るチームである。
 
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高岡C高校はこの試合、点取り合戦を仕掛けて来た。確かにこちらは、こういう相手にいちばん弱いのである。防御などほとんどせずに点を取られるのは気にせずどんどん攻めてどんどん得点する。するとこちらの方がどうしても実力が低い分得点も低くなる。
 

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向こうは最初は晃対策でセンターを2人入れていたものの、すぐ交替させて、鷹野さん(3年生)・加茂さん(1年生)というダブルシューターにして、この2人がスリーを撃ち、更にスモールフォワードの府中さんもどんどんスリーを撃った。こちらも美奈子・夏生がスリーを撃ち、もはやスリー合戦の様相となる。
 
リバウンドは向こうの寺下さん(170cm)とこちらの河世(165cm)の戦いであるが、本気の寺下さんにはまだまだ河世は対抗できない。少しずつ差が付いていく。それで第1クォーターは34-24と大差が付いた。第2クォーターも26-22 である。春貴は「まだまだ行ける。頑張ろう」と選手を励ますか、実際は高岡C高校相手に前半で14点差はかなりきついなと思った。
 
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晃が「私出なくていいですか」と春貴に訊いた。さすがに春貴も一瞬躊躇したが、姉の舞花が言った。
 
「まだあんた女の子になる覚悟できてないでしょ。それができるまでは完全な女子ではない。女子の公式試合に出るということは一生女として生きるということ。もう男子には戻れない。あんたまだその決断ができてない」
と言った。
 
「そうだね。まだ覚悟できてないかも」
と本人もいう。
 
春貴はそれで頷いた。
 

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妹にそう言った舞花も必死でリバウンドを頑張る。それで第3クォーターは24-26 とこちらが2点リードした。ここまでの合計は84-72。点差は12点である。
 
ここまで来ると向こうのレギュラー陣にさすがに疲れが出てくる。こちらは選手を適宜休ませて疲れが溜まらないようにしているが、向こうは特に、シューターの鷹野・加茂とセンターの寺下はずっと出っぱなしである。さすがにスリーの精度が落ちてくる。矢作先生もとうとう彼女たちを交替で少し休ませる。その間はこちらの得点力が勝る。
 
第4クォーター前半で14-18とこちらが4点リードしてこれで8点差である。向こうの尻尾が見えてくる。ここに来て向こうは精度の低いスリーより、確実な2ポイントシュートで得点する方針に切り替える。2ポイントと3ポイントの差をここまでの貯金を使って逃げ切ろうという作戦である。しかしこの作戦は中に入って撃つ分どうしても接触が多くなり,両チームともにファウルがかさむ。春貴は「シリンダー、シリンダー」と声を掛けるが、まだまだH南高校のメンバーは近接プレイの練習ができてない。
 
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このファウル数が多くなったことが実は最後に効いてくることになる。
 
こちらは必死に頑張る。点差は少しずつ小さくなっていく。じわりじわりと点差が縮まり、残り2:31で、107-105と点差はわずか2点。勝敗は全く予断を許さない状態になる。
 
2:31 107−▲105
2:16 109▲−105
2:05 109−▲108 (1点差!)
1:43 111▲−108
1:31 t/o (*27) 舞花から美奈子へのパスを向こうの分家さんがカットした。
 
(*27) t/o とはturn over. 得点せずにボールの支配権が相手側に移動すること。同じ略語だが table official ではない。
 

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1:23 113▲−108 (5点差まで開く)
1:10 113−▲111
0:54 t/o 向こうのパスを夏生がカット
0:41 t/o 愛佳から美奈子へのパスを加茂さんがカット。
 
t/oの応酬だが、どちらも疲れている。
 
0:31 115▲−111
0:23 115−▲114 (1点差!)
 
残り23秒1点差で向こうのボールだった。24秒計は停まってしまった。 高岡C高校はシュートしない。ドリブルとパス回しで時間を消費しようとする。
 
昨日はH南高校が残り5秒から富山B高校を逆転している。絶対にH南高校に攻撃権を渡してはいけないと矢作先生は判断した。これは充分正当な作戦である。逆の立場なら春貴もそうしている。
 

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春三(13)

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