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■春曙(20)

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(2020年)5月27日は、早百合の給料日だった。月末近くに給料日のある会社は多いが、“ごとび(五十日)”である25日の所が多い中で、27日に給料日が設定されている会社というのは、要するに資金力の弱い会社が多い。もっとも早百合が大学生時代にバイトしていたファミレスは月末締めの翌月13日払いで、色々な支払い(毎月10日前後が多い)に間に合わん!といつも思っていた。しかし結果的には計画的なお金の使い方が身についたかも知れない。
 
さて・・・。
 
5月27日、給料は振り込まれていなかった。
 
朝出勤途中にお金を引き出そうとした運転手さんが
「入ってない」
と騒ぎだし、経理課に問い合わせると
「午後には何とか」
という解答だったのだが、15時過ぎても入金しておらず、この日にクレカの引き落としや、住宅ローンの返済がある人たちが青くなっていた。
 
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労組側から会社に説明を求める。
 
その結果、会社に資金が全く無いということが判明する。
 
コロナの影響で、みんながお出かけを自粛し、またスポーツ大会の中止でクラブ活動の遠征などが無くなり、結果的にここ3ヶ月ほどの受注が従来の5分の1以下になったため、急速に資金繰りが悪化したのだという。
 
早百合はそもそも4月入社だったので、そんなに減っているというのには気づかなかったが、その時期から、先行きに不安を感じて退職する人が相次いでいたらしい。
 
「給料はいつ出るんですか?」
と労組は会社を追及するが、
 
「今何とか融資してもらえないか金融機関と協議中で」
という答えで、要するに支払いのメドは全く立っていないようだ。
 
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それどころか、どうも小切手の不渡りを出したようだという話が出てくる。
 
小切手は即換金される可能性があるから、本来口座にお金がある状態で発行するものだ。ところが1ヶ月先くらいの日付で小切手を切るということが行われる場合もある。受けとった側は(手形と違って小切手に書かれた日付には意味が無いので)日付を気にせずそのまま金融機関に持ち込めば、即日取立ててもらえる。しかし多くの場合、相手企業との関係に配慮し、書いてある日付が来てから金融機関に持ち込む。それが落ちなかったらしい。
 
要するに1ヶ月程度の間に資金を何とかするつもりが失敗したのだろう。
 
当然銀行からは取引停止をくらう。
 
もはや融資も何もあったものではない。
 
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ダメだこりゃ!と早百合は匙を投げた。
 

翌朝会社に来てみると、ヤクザのような男たちがビル前にたむろしていて、社員が建物に入るのを拒んでいた。早百合はちょうど一緒になった同僚と顔を見合わせ
 
「帰ろうか」
と言ってその日は帰宅した。
 
同僚と一緒に博多駅のケンタッキーでチキンのセットを買って
「じゃバーチャルパーティーで」
と言って別れた。
 
要するに各自自宅で食べようということである!
 
それで早百合は地下鉄/筑肥線で前原に戻り、自宅で金麦!を開けて飲みながら(やけ酒?)、ケンタッキーを食べた。きっと会社はこのまま倒産するのだろう。早百合は畳の上に寝転がると、
 
「4月に買った定期、まだ有効期限1ヶ月もあるのに」
と文句を言った。
 
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ザマーミロ鉄板はマリナが緊急に会社に1600万円の出資をしたおかげで、5月末、6月上旬の危機を何とか乗り切ることができた。板付社長は新しく会社の共同オーナーになったマリナに尋ねた。
 
「何か要望ある。できる範囲で対応するけど」
 
「そしたら会社名変えませんか?インパクトはあるけど、名刺とか渡す時に恥ずかしくて」
とマリナが言うと
 
「私も電話受ける時に恥ずかしい」
と社長の奥さんも言っている。
 
「そうだなあ。サマーガールズ出版のもじりだったんだが。何かそれに似た感じでインパクトのあるものってないかね」
 
「サドマゾ・ノーパンとか」
とケイナが言うが
 
「それを名刺に入れたいの?」
とマリナに睨まれる。
 
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「ちょっと恥ずかしいかな」
とケイナ。
 
「私とても電話口で言えない!」
と奥さん。
 

「サワークリーム食パンとかは?」
と奥さんが言った。
 
「まるでパン屋さんみたい」
「ああ、副業でパン屋さんするのもいいかな」
「設備投資に金がかかりますよ」
 
「ここの1階のパン屋さんが廃業するらしいから、その設備を安く買い取るとか」
「あのパン屋さん、辞めちゃうんですか?美味しいのに」
 
「御主人が年なもんで朝起きるのが辛いらしい」
「ああ。パン屋さんは朝が早いから」
「それにコロナで売上が落ちてるみたいだよ」
 
「パン屋さんは、営業してる所はむしろ客足が伸びてるんですけどね。外食しない代わりに、そういうのを買って帰るんですよ。但し、客が自由にトングで裸で置かれたパンを取る方式はダメです。ガラスケースに入れて指示して入れてもらうか、パンを全て個包装にするか」
 
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「そのための設備投資や労働力の確保ができなかったみたいね」
 

「でもパン屋さんなら、うちの孫がやってくれないかなあ、新宿のパン屋さんでバイトしてるのよ。そこはコロナ対策でお店を1000万円掛けて改装したらしい。人手も増やして全部個包装して並べる」
と奥さんが言う。
 
「社長のところ、お孫さんとかいたんでしたっけ?」
とマリナは訊いた。
 
孫がいるような年齢、しかもその孫が働いているような年齢とは思ってもいなかった。
 
「えっと・・・」
と社長が照れてる!?
 
「私たちが結婚したのが1982年なんだけど、当時私たち18歳と16歳で」
「結婚可能年齢ギリギリですか!」
「実は妊娠しちゃったから慌てて結婚したんだけど」
「ああ、悪い男だ」
「実は婚姻届けの翌日に出生届けを出した」
「なんとまあ泥縄な」
 
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つまり奥さんは16歳の誕生日の翌日に母になっちゃった訳か。
 
「出産で高校退学になっちゃったから、NHK学園に再入学して3年かけて卒業した」
「それ凄く偉いです」
「その後、子供2人育てながら、普通の大学に入って女子大生4年やったんだけどね」
「ほんとに偉いですよ」
「まあ自衛隊で給料良かったからできたけど、子育ては全然協力してくれなかったね」
「それはすまん」
 
社長は防衛大学校の出身と聞いた。子供を育てないといけないから、学費が掛からず勉強しながら給料までもらえる防大を選んだのかな、とマリナは思った。
 
「でもその結婚した年に生まれた娘が高校卒業してすぐに結婚して子供を産んで、その子が今年20歳。一応女子大生だけど学校はコロナで休校中」
 
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「すごーい!」
 
マリナは頭の中で計算した。
 
「だったら社長って今年で56歳ですか?」
「うん」
 
「47-48歳かと思ってた!」
「確かに俺は若く見られること多い」
 
「あのぉ、だったら奥さんは54歳?」
とケイナが遠慮がちに訊く。
 
「まだ誕生日前だから53歳だけどね」
「まだ30代だと思ってた!」
 

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§§ミュージックのコスモス社長は言った。
 
「マリナちゃんたち、結構スタジオを借りているよね」
「あ、はい。ネタの練習するのに使ってるんですよ。大きな声出すから、自宅ではできなくて。昨年は1年でスタジオ代で300万くらい使ってるかも」
 
それもザマーミロ鉄板の経営を圧迫する原因のひとつになっていた。
 
「マリナちゃん、3LDKのマンション買ったんでしょ?部屋のひとつに防音工事して、そこで練習したら」
 
あ、それは考えたことが無かった。
 
「それどのくらい掛かるんですかね」
「業者や方式にもよるけど、エレキ楽器の演奏とかがなければ100万くらいで行けると思うよ」
 
「だったら、やっちゃおうかな」
 
それでマリナはコスモス社長から業者を紹介してもらい、自宅マンションのクローゼット!(約5畳)に防音工事をしてもらったのである。防音のレベルはどうせならということで、中でピアノやエレキギターを弾いても大丈夫なレベルにしてもらった。クローゼットを使用したのは、窓が無いので防音化しやすかったためである。費用は150万円だった。
 
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マリナは
「意外に安かったね」
 
と言ったが、ケイナから
 
「150万が安いって、お前、少し金銭感覚くるってないか?普通のサラリーマンなら2年ローンで払う金額だぞ」
 
と注意された。確かにちょっと最近大きな出費が続いたもんなと、マリナは少し反省した。
 

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「あ、そうそう。大阪の藤山さんが先日、こぼしてたんですけど」
と§§ミュージックの美咲瞳は言った。
 
「何か?」
「電話を受ける時、今『こちらローザ+リリンの専属マネージャー、藤山です』と言っているんですけど、オフィス名とかあったら、楽なのにって」
 
「ああ、確かにその応答は長すぎるかも」
 
「でも藤山さんって大阪におられるんですね」
「まあ、テレワークですよ」
「なるほどー」
 
「東京で何か荷物の受け渡しとかある場合は、野々村に連絡して下さい」
 
と言って、マリナは野々村愛華に渡しているスマホの電話番号とメールアドレスを美咲マネージャーに渡した。
 
「この人は都内ですか?」
「自宅は吉祥寺なんですよ」
「だったら、マリナさんたちのマンションからも近いですね」
「自転車で7-8分と言ってましたね」
「ああ、自転車で往復してるんですか」
 
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「それも可能だけど、彼女今妊娠しているんで、自転車とバイクを禁止してます。車で5分くらいみたいですね」
 
「あら、藤山さんも妊娠しているんでしょ?」
「そうなんですよ。だからトリブル妊娠です」
「すごーい!」
 

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名称の件に付いては、マリナは藤山渚本人とラインで話して、オフィス名(屋号)を定めることにした。向こうは店舗営業中で、料理中のようだ。それで途切れ途切れに返事が返ってくる。実はこちらもコスモスから頼まれた作曲をしながらである。
 
「ケイナとマリナの事務所ということで、オフィス・KM(ケーエム)とか、どうだろう」
 
「わりと短くていいね。でもケーエムだとキロメートルみたい」
 
KMは kilometre (キロメートル)の他に Knowledge Management(知識情報処理)、kokusai motorcars(国際自動車:東京のバス会社)、Kenichi Mikawa (美川憲一!)などがある。
 
「いっそオフィス・キロメートルにする?」
「わりと覚えてもらえていいかも」
「しゃ、オフィス・キロメートルで」
 
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なんか結局長くなったぞ、という気はした。
 
「会社設立する場合は、株式会社粁かな」
「そんな漢字があるんだ!」
「メートルが“米突”の略で米だから、キロメートルは1000倍で粁。ヘクトメートルは粨、デカメートルは籵、デシメートルは粉、センチメートルは糎、ミリメートルは粍」
 
「先生、質問です!デシメートルって“こな”ですか?」
「それって秘密らしいよ」
 

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マリナは渚・愛華と話し合って、荷物の受け取り用を兼ねて、都区内に小さなものでもいいからオフィスを作ろうということになった。それで物件を探した結果、代々木駅の近くに面積12m2(3.0m×4.0m)の小規模オフィスを借りた。
 
代々木なら§§ミュージック最寄りの信濃町駅から中央線で2駅である。UTPのある新宿へは山手線で1駅(実は歩いても20分で行ける)、板橋区のサワークリーム食パン!からは東武東上本線か地下鉄副都心線から池袋乗換で20分くらい、マリナたちのマンションがある三鷹や愛華の住んでいる吉祥寺からは中央線または京王井の頭線から新宿あるいは渋谷乗り換えで20分くらい。
 
という訳で代々木はひじょうに便利な所にあるのである。§§ミュージックの美咲さんと、UTPの甲斐さんにも鍵を渡しておき、何か荷物の受け渡しがあったら誰もいなかった場合でも勝手に入って、荷物を置いたりあるいは持って行っていいことにした。
 
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ここはとても小さいが、キッチン・トイレ付きで、家賃は1ヶ月6万円である!トイレが共用の所ならもっと安い所もあるのだが、コロナ感染予防を考えてトイレ付きの物件にこだわった。
 
玄関に向いた所にカウンターを置き、その後方にパーティションを設置して、ドアで出入りするようにする。このパーティションの内側にテーブル・椅子と仮眠用のベッドを置く。寝る時は確実にパーティションの所に施錠するように、愛華には言った。彼女は防犯用男声アプリとか使いますと言っていた。昔ホステスさんをしていた人なので、その付近の防御意識はわりとしっかりしているようだ。
 
また歩いて200mほどの所に駐車場を2枠(2枠で月7万円)借りた。それで愛華は感染対策もあるし実際には車(日産Cube)で出勤してくると言っていた。愛華も実はバイク好きなのだが、妊娠中はバイク・自転車を夫から禁止されている。出産後はバイクにするかもと言っていた。彼女のバイクはKawasaki Z650である。
 
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「ね、ね、夜間のお留守番役とか要らない?」
とマリナの姉、歩は言った。
 
「は?」
「そのアイファちゃんだっけ?主婦なんでしょ?居られるのは日中だけだよね。でも芸能界のお仕事って夜の方が多くない?だから夜間のお留守番してあげるよ」
 
「要するにそこに住むつもり?」
とマリナは尋ねる。
 
「正解!」
「家賃取るよ」
「留守番の報酬とバーターということで」
「ま、いっか」
 
それでマリナの姉・歩がここに住み込むことになったのである。歩はこれまで川口市内の安アパートに住んでおり、そこから都区内の会社に出勤してきていたのだが、大幅に通勤時間が短縮されることになる。歩が会社が終わってここに戻るのは19時頃であり、愛華は夕飯の支度があるので16時くらいまでしかいられない。結果的に16-19時頃は誰も不在になるが、美咲さん・甲斐さんは鍵を持っているので、大きな問題は無い。朝も7-10時くらいが人が不在になる。
 
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なお、ここは龍虎のマンションからも比較的近い。
 
また、ここはローズクォーツの音源制作が深夜まで及んだ時の仮眠場所としても使うことにした。マリナ自身はいいとしてケイナを同じ部屋に泊めていいものか少し悩んだが、歩−マリナ−ケイナ、と並んで寝れば問題ないということにした。実はこれでホテル代がたぶん年間100万くらい節約できる。
 
ケイナも今更、女性の着替えとか下着姿を見て欲情したりはしない。この辺りは長年の女装生活でケイナは(3次元の)女性に対してほとんど不感症になっていた。2次元の女性にはわりと反応するのだが、先日の引越の時、その手の本を全部揚浜フラフラに捨てられてしまい、わりとオナニーに困っているようだ。
 
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