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■春曙(1)

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芳野早百合は2020年3月23日(月)に4年間通っていた福岡市内の国立大学を卒業することになっていたのだが、おりからのコロナの影響で卒業式は、総代のみで実施されることになり、一般の学生はライブ配信を見てくださいということになった。(青葉が卒業した金沢市内の国立大学と同じ措置)
 
早百合は卒業式で着ようと姉から振袖を借りていたのだが、空振りである。仲の良い女子数人と一緒に写真館で記念写真を撮ってもらい、ケーキやケンタッキー、ピザやビールを買い込んで、ひとりの子の自宅でささやかな卒業祝いをした。(全員ダウンして翌朝まで寝ていた)
 
早百合は、これまで4年間は、大学に比較的近い(?)所にある家賃3.5万円・1K(4.5畳+台所)のアパートに住んでいたのだが、とにかく狭いことと、そもそもここは学生さん専用ということだったので、福岡近郊・筑肥線(市営地下鉄に直通)沿い、筑前前原駅から歩いて5分の木造アパートに引っ越すことにした。卒業の翌日3月24日に、大学生協で紹介してもらった引越業者さんの手で引っ越した。安かったけど、椅子と小型テレビを壊された!(椅子は仕方ないので買い直したが、テレビはこの機会にもうやめることにして買い直さなかった:実は受信料を払ってない)
 
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ここは前住んでいた所より広いのに家賃は3万円!でしかも無料駐車場付きである。実はアパート前面の空きスペース(建蔽率の関係で生じる)に5ナンバーに限り、1台だけ駐めてよいということだった。無料で駐車場が使えるならと思い、早百合はこの機会に車を1台買おうと思った。それで、振袖を貸してくれた仲の良い姉・羽都代に付き添ってもらい、福岡市近郊の中古車屋さんを回って、コミ30万円の赤いパッソを買った。駐車場代はかからないが、車の保険代が掛かるのは仕方ない。
 
家賃、車の保険、ガソリン代・光熱費・通勤の定期代!で毎月8万円くらい掛かるかなと考え、お仕事頑張らなくちゃなあと早百合は思った。定期は長期間で買った方が割安だしと思い3ヶ月定期を57,520円で買った。高ぇ!と思ったが、これは仕方ない。一応この定期代相当は会社から通勤費として出るはずである(通勤費は1ヶ月定期で計算して毎月20190円支給されるらしいので、差額1000円くらい儲かるはずである)。
 
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ちなみにこれまではバイト先までスクーター(コミ6万円で買ったYamahaビーノ)で通っていたので、通勤費用はガソリン代だけで済んでいた(通勤費補助として毎月1000円もらっていた)。なお、早百合は高校在学中に原付免許を取り(バイク禁止だったのでペーパー・ドライバー)、高校を卒業してすぐにバイトのことを考えて普通免許を取っている。
 
当時は名前も男名前だし開き直って、自動車学校には男子っぽい服を着て通ったが「君、女の子っぽいとか言われない?」などと随分言われた。自動車学校では“猫をかぶって”男子っぽい写真を使用したが、運転免許センターでは“ちゃんと”女子の格好をして写真に写った。結局自動車学校に通った時が男装した最後である。早百合は大学入学以降、ずっと女装を貫いている。
 
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大学に入ってからファミレスでバイトを始めたが、しばしばお客さんの車の駐車場入れを頼まれ、先輩から「免許持ってるならやってよ」と言われ、実地で鍛えられた(最初は凄く恐かった−実は10分掛かった!)。おかげで駐車場入れは今では大得意だし、実に様々な車の運転経験を得た。
 
20歳をすぎて改名し、この時は取り敢えず記載事項変更をしたのだが、単純な記載事項変更なので改名した旨が免許証の裏面に記載されただけである。これで1度トラブったので、免許証の再発行をしてもらうため、早百合は再度、自動車学校に通って、中型の免許を取った。自動車学校ではもちろん女で通した。名前も早百合だし見た目も女にしか見えないから、誰も性別を疑わなかった(生徒原簿も女になってた!)。
 
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そして大学卒業直前になって、免許証をゴールドにすることを目的として三度(みたび)自動車学校に行き、自動二輪免許を取った。これは長年原付に乗っていたこともあり、わりとスムーズに取れた。
 
それで早百合はゴールド免許保持者ということで、今回買った車の保険は少しだけ安くなったようである。
 
1998.02.27 4:45 出生(呼子町)
2013.04 高校入学
2014.02 16歳
2014.03 原付免許取得(学校には内緒!期限2017.03)
2016.02 18歳
2016.03 普通免許取得でブルー免許(期限:2019.3)
2016.04 大学入学
2018.02.27 20歳
2018.04 改名認可(早矢人→早百合)取り敢えず免許証は記載事項変更。 
2018.08 中型免許取得。早百合名義(期限2021.03)
2020.01 性別訂正
2020.02.28 自動二輪免許取得でゴールド免許(期限2025.03)
2020.03.23 大学卒業
 
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ファミレスは3月いっぱいで辞めることにして、3月31日(火)の勤務で終了した。早百合は夜間のシフトが多かったのだが、コロナの影響で3月以降、夜10時で営業終了になっていたので、最後の勤務は夕方16-22時になった。なんか凄い退職金をもらった。他に店長の有木さんから高そうなパーカーのボールペンを記念に頂いた。有木さんは最後まで
「さゆりちゃんを僕のお嫁さんにしたかった」
などと言っていた。
 
そして、2020年4月1日、早百合はしっかり朝御飯を食べてから、シャワーを浴びて汗を流した。真新しいビジネススーツ(むろんスカート・スーツ)を着て、しっかりお化粧もする。
 
しかし去年の夏の段階では自分がこういう格好で就職できるとは思いもよらなかったなと思う。これもお遍路のおかげだ。
 
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スマホで時刻を確認する。しっかりマスクも着ける。
 
マスクは実は足りなくなって困っていたら、昨年のお遍路で一緒に阿波路を歩いた千里さんから「マスク足りてる?」という連絡があり「無くて困ってます」と言ったら「友人の会社がインドネシアから輸入した分があるから」と言って50枚入り1箱送ってきてくれたので、本当に助かった。
 
前原駅から電車に乗って勤務先の最寄り駅・博多まで行く。地上に上がって、会社のあるビルまで行く。3階までエレベータで上がる。会社はエレベータを降りて右手廊下を行き、左に曲がって少し行った所にある。
 
ドアが開いていない。
 
遅刻してはいけないと思い早めに出て来たので現在は8:00である。会社は9:00からだ。ちょっと早すぎたかなと思い、いったん、フロア内のトイレ(むろん女子トイレ)に行ってきてから、まだ開いていないドアの前で待っていた。
 
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8:30になってから、50歳くらいの女性が通り掛かる。この向こうに入っているビジネス専門学校の先生かなと思った。
 
「あなたどこの人?」
と尋ねられた。
 
「はい。○○産業に今日から勤めることになっているのですが」
と早百合が答えると、女性は言った。
 
「○○産業は倒産したよ」
 
「え〜〜!?」
 
「コロナの影響で経営している教室が全部営業できなくなっちゃってさ。あそこは狭い教室で生徒さんたちの身体に触ってポーズを指示しながら教える方式だったから、その方法ではとても営業できなかったらしい。普通のスポーツジムとかでも休業している所多いもんね。ここは家賃の安い、ビル内の窓もない部屋が多くて換気もよくなかったし。実は生徒さんから感染者が2人で出たらしいよ」
 
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「わぁ」
 
「そもそも去年の消費税アップで、こういう業種はみんなまっさきに経費カットの対象にされて生徒さんが減ってて、かなり経営が苦しくなってたみたいで、1月の給料も2月の給料も遅配になっていたらしい。実は小切手の不渡りまで出したとか。それで銀行取引停止になったまま、取り敢えず営業してたけど、3月は直営店舗が全部営業できなかったし、本社勤務の人たちにも3月分の給料が支払われなかったので、社員が全員出社しなくなって事実上倒産」
 
「きゃー。私どうしよう?」
 
しかし3ヶ月も給料出なかったら、誰も出て来なくなるだろうな。
 
「取り敢えず今日は帰ってゆっくり寝てさ、明日にでもハローワークに行きなよ」
「ああ、ハローワークですよね」
「求職情報サイトとか見るのもいい」
「そうですね」
「今日は帰って美味しいものでも食べて、少し落ち着いたほうがいい」
 
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「そうします」
 
それで早百合は会社に出社できないまま、取り敢えず前原の自宅アパートに帰還したのであった。言われた通り、駅前のJAで牛肉とケーキを買ってきて焼き肉をしてケーキも食べたら、なんか少し気分が良くなった。
 
「こんなことなら3ヶ月定期なんて買うんじゃなかった」
と早百合は布団の上に下着姿で寝転がって、つぶやいた。
 

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3月27日、青葉がその日水泳の練習のため、津幡の“火牛スポーツセンター”に行ってみると、体育館の前に見馴れない建物が建っているので
「何だ何だ?」
と思う。見ていたら、女形ズの福石侑香さんが出て来たので尋ねてみた。
 
「ああ、これ千里さんが建ててくださったバスケット練習場なんですよ」
「千里姉が!?」
「見てみます?}
「ええ」
 
それで中に入ってみると、ずらーっとドアが並んでいる。福石さんは左端のドアを開けて、青葉を中に入れてくれた。
 
「本当は部外者立ち入り禁止なんですが、青葉さんなら大丈夫でしょう」
「すみません」
 
中で5人選手が練習していたが、全員、ビニールシートで区切られた別の区画で練習している。
 
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「内部は15個のストラップに別れています。各々は高さ4mのビニールシートで区切られています。室内は物凄く強烈な換気が掛けられていて、ストラップ間は上の方で繋がっているといっても、実際に隣のストラップと空気が混じり合う可能性は低いです。各ストラップの端に換気扇が回っていて、強烈な排気をします。実際、結構な風が吹いているでしょう?」
 
「ええ。わりと風がありますね」
 
「それで誰かがコロナに感染したとしても、ストラップで分けられた別の区域で練習していた選手に感染させる確率はとても低いんですよ」
 
「なるほどー」
 
「換気扇の向こうは目の細かいフィルターが設置されているので、ウィルスがこの練習場の外に出て行く可能性はほとんどないということでした」
 
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「ああ、二重壁なのか」
 
火牛体育館自体もそういう仕組みになっている。
 
「各ストラップはバスケットコートの長さ28mあって、端にはゴールがあります。途中に木の板でできた人形が置いてあるので、それを敵選手に見立てて、そのガードをかいくぐってゴールまで走り、シュートするという練習をしています。ゴールはリモコンで自由に角度が変えられるので、様々な角度からのシュート練習ができます」
 
「結構便利ですね」
 
「バスケット協会からは、当面チーム練習はせずに個人練習に徹して欲しいとか、ボールの共用をやめて、結果的にはパス練習も控えて欲しいという要望が出ています」
 
「パス練習もしちゃいけないんですか!」
 
「それで人形の中には横向きの穴が開いていてネットがつけてあるのもあります」
と言って、福石さんは実際にその人形のある所まで青葉を連れて行ってくれた。
 
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「なるほどー。これでパス練習をする訳ですか」
 
「これ、バスケットのイベントでやる、スキルズチャレンジで使うパスターゲットの人形と同じ仕様なんですよね」
 
「あ、それ見たことあります」
 
スキルズチャレンジというのは、レイアップシュート、パス、ドリブル、フリースロー、3Pシュートを、できるだけ早く連続して行うという競技である(掛かった秒数で競う)。むろんシュートは全てゴールに入らなければ次に進めない。パスも人形のネットにちゃんと放り込まないと先に進めない。
 
「でもこれいつの間に建てたんですか?数日前に来た時は無かったのに」
 
「3日で建ったみたい。私もびっくりしたけど、今、普通の体育館での練習は事実上禁止ですからね。みんな夜間にジョギングとか、道路でドリブルとかして身体がなまらないようにしていたみたいだけど、これができてみんな喜んでいますよ」
 
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「これ建設許可はどうしたんだろう?」
「工事に伴う仮設建設物は、建築許可が必要ないとか、千里さん言ってましたよ」
 
「うーん」
と青葉は考え込んだ。
 
確かに工事中に建てた仮設建築物かも知れないが、これ工事に必要な建設か?
 
まあ、何か言われたら、法務関係の人に動いてもらおう、と青葉は思った。
 

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青葉は2020年4月1-8日に東京で水泳の日本選手権に出る予定だったのだが、コロナの影響で、東京五輪の延期もあり、選手権そのものが中止になった。
 
それで青葉は4月1日は〒〒テレビに出社し、この日は午前中、コロナ関係の取材で金沢市内数ヶ所をまわった他、午後には中日新聞ニュースを読んだ。一応17時で退出させてもらい、夕方からは津幡のプライベートプールで泳いだ。
 
しかし青葉の高校・大学時代の友人の中には、色々大変だった子も多かったようである。
 
上野美津穂(富山大学心理学科)は新しく引っ越した金沢市内のアパートから、市内・X電子の本社に出勤した。美津穂は2週間の新人研修を経て、同社のカウンセリングルームで助手として勤務する予定だった。
 
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ところが、研修前に配属予定の部署に挨拶に行こうとカウンセリングルームに行ってみると、カウンセラー室長が過労で倒れて病院に運ばれたという。もうひとりの相談員も3ヶ月前から不調で休職しているということで、美津穂は新人研修はキャンセルになり、初日からひとりでカウンセラー室を任されることになってしまった。いきなり「カウンセラー室主任・上野美津穂」という名刺を渡されてしまう。
 
元々こういう電子部品を作っている会社は精神に不調をきたす人が多く発生しがちな上に、コロナの影響でストレスが限界を越える人が続出しているようで、美津穂は医務室の看護師さんに手伝ってもらい、整理券を配って初日だけでも10人の社員さんの相談に乗った。相談希望者が多すぎて、予約の受付などできない状態であった。美津穂は精神的にくたくたに疲れて帰宅し、友人の世梨奈が言っていた「逃げるは恥だが役に立つ」というフレーズをリフレインしていた。
 
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