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■東雲(10)

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「青葉通り店の開店で増えてたぶん登録者は60人くらいになると思いますが、特に3月で大学出る子、4月から大学に入る子は女子寮あったら入りたがると思うんですよ。だから20-30室くらいあるといいんじゃないですかね」
とマキコが言うと
 
「その倍で50室くらいにしようよ」
と伊藤君が言った。
 
「そうしようか」
 
和実は、公園を作ると言って、とりあえず大量の土地を買った千里と交渉して女子寮を建てられる土地を買うか借りるかしようと思ったのだが、千里は
 
「ああ、それはお金が余って困っている人に建てさせるよ」
 
と言って、若葉がお金を出して、2月中に6階建て48室(1K仕様)の女子寮を建て、ついでに女子寮とクレール若林店の間に地下通路まで作ってしまった。わずか半月でそれだけの建設と工作ができたので、和実も驚いた。
 
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(津幡のほうの作業はムーラン建設だけでやっているので、播磨工務店は青葉通り店の工事をしていると言っても余力のあるメンバーが多かったのである。そもそも播磨工務店のメンバー自体が現在80人くらいまで増えている−精霊が堂々と働ける会社は少ない!この工事をしたのは“黄組”である)
 
しかしこれで早朝や深夜に帰宅・出勤する時も痴漢などの心配をしなくて済む。
 

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「ねぇ、メイドの衣装をさ、プラスチック・スタイルにしない?」
と伊藤君が言った。
 
「何だっけ?」
「ファイブスター物語に出てくるんだよ」
と言って彼は説明した。
 
これは永野護『ファイブスター物語』(以下ゴチックメイド導入前の用語)に出てくる“ファティマ”という人造人間(多くは女性)が着る戦闘服である。物語当初に多くのファティマが着ていたのはデカダンスタイルと言って、女学生のような可愛い衣装だったが、途中で人間を惑わすような可愛い服は禁止という法律ができて、代わりにファティマが着るようになったのがこれである。無機質で未来的なデザインだが、魅力的でないので、ファンにも不評だった。
 
伊藤君はネットで検索して、デカダンスタイルとプラスチック・スタイルのファティマのビジュアルをみんなに見せる。
 
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「こんな格好させるの〜〜?」
と和実が嫌そうな顔をする。しかし小野寺君は
 
「いや、今の時期ならこういうのはあり得る」
と言った。
 
「うん、今の時期だから成り立つと思うんだよ」
と伊藤君も言う。
 
「感染防止ということなら、メイドにフルフェイスヘルメットでもかぶせたらどうだろうなんてのも考えたんですけどね」
とマキコが言う。
 
「それ行こう。フェイスシールド付けさせよう」
「手は手袋だよね」
「当然。素手では物に触らないようにする」
 
それでみんなでわいわい言いながら詰めていって出来上がったのは凄いスタイルだ。
 
「これって、病院とかの防護服では?」
「うん。実際防護服だと思う」
「宇宙服にも近いね」
 
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「頭にお花つけてもいいですか?」
とマキコが言う。
 
「ああ、いいね。各メイドに自分の好きなものを付けさせようよ」
「それって、個人の識別にもなるんじゃない?」
「確かに。こんな服着てたら、誰が誰か分からないもん」
 
これは各自自由にデザインしたものを3Dプリンタで出力してヘルメット部分に貼り付けることにした。
 
「でもこれ制作費が高そう」
「まあ1着20-30万するかもね」
「いや、その費用は構わない。それで感染防止になれば安いもんだよ」
と和実は言った。
 
(実際には10万円くらいでできたようである。この制作費も若葉が出してくれた。ついでにムーランのスタッフにも同じ仕様のものを着せた!)
 

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この時和実たちが話し合ったのが、サーモグラフィの導入、それに引っかかった人にお帰りいただくための警備員の雇用、自動噴射式のアルコール消毒スタンド設置、掃除スタッフの雇用、マスクの無料配布、席の間引き、トイレの改造(火牛アリーナと同じ仕様)、コーヒーやフードを入れる容器・皿を当面の処置として全て紙製のカップや皿にして使い捨てること、注文用タブレットの導入(スマホからもオーダーできるようにする)、そしてドライブスルーの導入などである。
 
和実はクレールの土地の西側の空きスペースと、千里が所有している東側の道路部分の土地を等価交換した。それで若林植物公園の駐車場(450台収納)とクレールの駐車場がつながることになる(道路が途切れるが部外者が駐車場を横断するのは全然構わない)。そこでこの駐車場で待っている間に注文をしてもらい、どんどん商品を渡していこうということにしたのである。
 
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(駐車場が広いので注文を取ったり商品を渡すメイドにスクーターを使わせることになる。ついでにスクーターに決済端末を搭載する)
 
「マスク無料配布したら、マスク目当ての来客もあったりして」
「それ全然構わない」
「でもそれで風邪気味の人か来店したら?」
「店内には入れないから問題無い」
「なるほどー」
 
「そのために警備員を立たせる」
「警備員は雇うわけ?警備会社から派遣してもらったら?」
「日替わりで別の人が来るというのは、感染防止の観点からは好ましくない。掃除スタッフも同じ」
「それは言えるね」
「自衛隊のOBを交替要員を入れて4-5人頼もうと思う。ちょっとツテに声を掛けた」
「体格だけでも、睨みが利くよね」
 
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「PayPay導入できる?できたらバーコード式で」
「それ若葉に頼む。ムーランの別部門扱いか何かにしてもらってもいいし」
 
「カフェラテのさ」
「うん」
「ラテアートで、スティックでお絵描きするタイプを当面停止しようよ」
「ああ、それがいいかもね。注ぎ口で作るアートのみにする」
 

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座席であるが、ライブの時はテーブルを撤去して椅子だけ並べたり、更には椅子も外して立見でのライブというのもしていたのだが、当面の間、このような運用はせず、テーブル席のみでの運用とすることにした。
 
更に各テーブルに椅子を4つずつ置いていたのを2つずつ(斜め向かい)の運用にすることにし、座らない席にはプラスチックの立方体の箱を置いた。椅子自体を撤去すると客が勝手に向かい合わせにしてしまう可能性があるので、椅子はわざとそのままにしたのである。
 
しばしばぬいぐるみを置いているお店もあるが、ぬいぐるみは客が「可愛い」とか言って触る可能性があり、感染の媒介になりかねないし、洗濯も大変である。プラスチックの箱なら、アルコール除菌ペーパーで拭けば済む。
 
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ボニアート・アサドのライブでは席数が全然足りないので、3月のライブでは、事務所側の許可を取り、駐車場にプロジェクターと大型の布スクリーンを置いてそこにリアルタイム中継して乗り切った。この日は天気がよく風も適度にあったので、3月(仙台の3月はまだ真冬)とはいえ、何とかなったようであった。この日は店外で聴く客にはホッカイロの無料配布をした。
 

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2月21日に津幡でのローズ+リリー公演が中止になり、大量にビニールの衝立が余ったという話を聞いた和実は、それをクレール(若林店・青葉通り店)にも導入することにした。若林店はテーブルが25個、青葉通り店は1階46個と2F/3Fは各々15個ある。それでこれらを区切るのに必要な衝立の数を計算してみると、若林店は28枚、青葉通り店は1階84枚、2F/3F 各14枚で合計140枚となった。これに楽屋に置く分、上の階のスタジオに置く分を入れて200枚、冬子から購入したのである。
 

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2月上旬。マリナは困惑していた。
 
“あれ”が来ないのである。
 
マリナはローズクォーツのツアーで徳島に行った日、10月16日に性転換して女になってしまったのだが(正確には10月6日に定山渓で一度女になり、この日徳島ではいったん男に戻った上で再度女になった)、翌々日の10月20日に初めての生理が来た。
 
生理なるものを体験するのは生まれて初めてではあったが、これまでも事務所の方針(板付社長の趣味?)で毎月生理の真似をしていたので、慌てずに普段から携行している生理用品を使ってちゃんと処理した。
 
しかし生理が来たことで、ああ、やはり私は女になったんだという認識を持ち、結果的に自分が女の身体であることを受け入れてしまった。それで10月24日に母から「あんたの改名しといたから」と言われた時も「ま、いっか」と思ってしまった。
 
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次の生理は11月16日に来た。前回の27日後であるが、多分まだ女になりたてだから安定しないのかもと思った。実際その次の生理は12月13日に来て、今度も27日後である。このまま27日間隔で生理が来るのか、それとも次第に28日になっていくのかは、マリナもこの時点では分からないと思った。そしてその次の生理は1月10日に来た。今度は28日後である。
 
そして1月13日、釧路市でマリナは初めて女としてケイナとセックスしたのだが、この時マリナは生理の直後だから万が一にも妊娠することはあるまいと思い、生でケイナのペニスを受け入れた。
 
その後、結果的には毎日セックスすることになってしまったのだが、1月10日に生理があったとしたら1月24日くらいが排卵日だからと思い、1月21日から27日まではセックスの時、ケイナには避妊具をつけさせた。そして多分もう大丈夫だろうと思い、1月28日以降はまた生でやらせている。
 
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さて、1月10日に生理が来たということは、次は28日後の2月7日頃に来そうである。
 
ところが2月7日には生理は来なかった。
 
今度は少し周期が長いのかなとマリナは思った。
 
ところが8日になっても、9日になっても、10日になっても生理は来ない。しかもこれまでは生理の数日前から、おりものが多くなって、パンティライナーを付けていたのに、今回はその現象が無いのである。
 
生理、止まっちゃったのかなあ、元々私は男の身体だったから、そういう制御が不安定なのかも、などと考えていたのだが、2月11日になって、“ある可能性”に気づいてしまったのである。
 

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マリナはドラッグストアに行くと、避妊具などの並んでいるコーナーに行った。そして避妊具の近くに置かれている“あるもの”を買物籠に入れた。
 
ドキドキ。
 
生理用品はもう10年以上買っていて、今更買うのに何の抵抗も無いのだが、こんなものを買うのは初めてである。おやつや生活雑貨などと一緒に精算する。むろんレジのお姉さんはふつうの表情でバーコードをスキャンして売上を計上する。PayPayで支払って出る。そしてドラッグストアの入口の所にあるトイレ(むろん女子トイレ)に入る。時節柄持参のアルコール除菌ペーパーで便座をきれいにしてから座る。
 
今買ったものを箱から出す。念のため説明書を読んで使用法を確認する。
 
おしっこを“それ”の先端に掛ける。
 
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取り敢えずあの付近を拭いて立ち上がり、パンティをちゃんと穿き、手も洗って、トイレの外に出てしばらく待つ。
 
ガーン!
 
マリナはその表示に衝撃を受けた。
 
待ってよぉ!こういう事態は想定していなかったよぉ!
 
とマリナは心の準備ができないまま、思った。
 

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※この付近のタイムスケジュール
 
マリナは徳島で再度女になった時を起点に考えているが、本当は定山渓で女になった日が起点なのである。
 
2019.10.06(日) 定山渓で性転換して女になる(最初の排卵)
2019.10.16(水)+10 徳島でいったん男になるがまた女になる
2019.10.20(金)10/6+14 初潮。
2019.11.16(土)10/20+27 2度目の生理
2019.12.13(金)11/16+27 3度目の生理
2020.01.10(金)12/13+28 4度目の生理
2020.01.13(月) ケイナと初めてのセックス
2020.01.24(金)1/10+14 マリナが想定していた排卵日 (1/21-27は避妊具使用)
2020.02.07(金)1/10+28 生理は来ず
2020.02.11(火) マリナ妊娠検査薬を使う。
 
やはりオギノ式は危険である!
 
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(セックスが刺激になって排卵が起きてしまうのは、よくあること)
 

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